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2012年10月

2012年10月30日 (火)

H25概算要求-その1_宇宙関連

もう大分前の話になりますが、25年度の防衛省概算要求資料が発表されています。
我が国の防衛と予算-平成25年度概算要求の概要
その中から興味深いモノを、何回かに分けてピックアップして書きたいと思います。

第1回目としては、宇宙関連を取り上げます。

25概算要求では、初めて「宇宙状況監視に関する取組」という施策が盛り込まれました。

BMD対処能力の向上、自衛隊が利用する衛星の防護及び日米協力等の観点から宇宙状況監視※の実施を視野に入れた検討を推進

※宇宙状況監視:衛星、スペースデブリ等を発見及び識別し、軌道情報を確定してデータベースに登録し管理するとともに、その情報に基づき監視を行う活動


多くの方にとって、何のために何を行うのか、良く分からない施策でしょう。
この施策には、2つの事件が契機となっていると思われます。
一つは、2009年4月の北朝鮮によるミサイル発射の際、FPS-5が衛星軌道上の物体を探知し、それを弾道ミサイルと誤認して誤警報を流してしまった事件
もう一つは、今年2012年の北朝鮮によるミサイル発射の際、2009年とは逆に、誤警報を恐れるあまり、必要な警報を早期に出すことができなかった事件

これらの事件を契機として、ミサイル警報を出すための情報収拾を、より正確にする必要性に迫られた(政治家に怒られた)ものと思われます。

具体的な施策としては、2009年の誤報時に記事「誤報の原因と課題」で指摘したとおり、スペースデブリ等をデータベース管理し、FPS-5等で捕捉した航跡データと照合することで、誤警報を減らすことがあります。

また、このデータベース化とその照合には、副次的にFPS-5等の探知性能を向上させる効果もあります。
フェイズドアレーレーダーは、新たな反射波を捕捉すると、その目標の移動を確認して航跡として確立するため、最初の反射波周辺に多数のレーダービームを打って、2回目、3回目の捕捉を行おうとします。
ところが、レーダーがデブリまで捕捉できるほど高性能だと、デブリの捕捉と確立でレーダーが手一杯になってしまい、本来捕捉すべき弾道ミサイルの捕捉が遅延してしまいます。
データベースがあれば、最初からデブリの位置をマスク処理することで、レーダーの処理負荷が軽減し、本来の目標である弾道ミサイルの捕捉性能が向上するのです。

また、このデータベース化により、中国の衛星攻撃衛星が機動を始めたことを察知できるため、目標となっていると思われるわが国の衛星に、回避機動を採らせることが可能になります。
このために「自衛隊が利用する衛星の防護」の文言が入っているのだと思われます。

しかしながら、日本単独でこれを行う事は、はっきり言って非現実的です。
日本が保有するレーダー等の探知範囲が、日本周辺に限定されるからです。
そのため、概算要求資料でも「日米協力等の観点から検討」とされているのでしょう。

この事は、概算要求に「赤外線センサーの衛星搭載に関する研究」が盛り込まれていることも関係します。
これについては過去記事「日本独自の早期警戒衛星は不要だ!」で詳しく書いたので、そちらをご覧下さい。

私は、この事業の必要性を、2009年の誤報時に前掲記事で指摘したくらいなので、正直防衛省の動きは遅すぎるようにも思っています。
ただし、これらの動きを防衛省単体で行う事は予算執行上非常に不効率です。
そのため、JAXA法の改正によって、JAXAを防衛のために動かせるようになることを待っていたのだろうと思います。

概算要求資料では、あっさりと書かれている事業ですが、非常に広範で効果の高い施策だと思います。

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2012年10月27日 (土)

危機管理の取り違え

政府は、危機管理を何か取り違えて考えているようです。
原子力規制庁、初代長官に池田前警視総監 危機管理に軸」(朝日新聞12年9月12日)

原子力規制庁の初代長官に池田克彦前警視総監(59)が起用されることが固まった。原発事故などに対応する危機管理を重視した。
中略
 池田氏は1976年に警察庁に入り、警備局長などを経て2010年1月から昨年8月まで警視総監を務めた。
中略
事務局のトップに原発と関係のない省庁出身者を充てることで、「原子力ムラ」のイメージを払う狙いもある。


私は、防衛問題で警察官僚の起用に反対することが多いですが、この件でも、基本的に同じ考えです。
原子力ムラのイメージ払拭は理解できるものの、原子力行政のトップに警察官僚を据えるなんて、理解に苦しみます。

「僕はものすごく原子力に詳しいんだ」と言いながら、暴走する原発に海水注入を止めさせた元首相のようになるのが関の山です。

原発事故が起こった際に、周辺住民の避難誘導を行うためには警察官僚の能力は有用だと思います。
ですが、原子力規制庁の所掌事項は、周辺住民の避難ではないでしょう。
勘違いも甚だしい人事です。

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2012年10月25日 (木)

尖閣上空への無人機による領空侵犯対処

中国が、無人機による尖閣上空の領空侵犯を画策していると報じられています。
中国、無人機で尖閣領空侵入を計画 米調査機関、領有権主張狙う」(産経新聞12年10月20日)

 中国海軍は東シナ海での尖閣諸島を中心とする将来の作戦活動でも、無人機をフリゲート艦あるいは新配備の空母「遼寧」から出動させ、尖閣諸島の日本側が自国領空とする空域にも侵入させて、日本側の活動を偵察させると同時に、尖閣地域での中国側の「領空権」や「主権」の主張を強める効果を意図しているという。

 報告はまた、日本側がこの無人機への対応に苦慮し、「日本の現在の憲法の制約下では、たとえ自国の領空侵犯でも外国の無人機を撃墜はできないだろう」との見方を示し、中国側も日本のその制約を知っているため、無人機の尖閣空域への飛行をあまり恐れない、としている。


公船を領海進入させるのですから、航空機だって領空侵犯させるでしょう。
その点では、大して興味をそそられる報道ではないのですが、問題は、法制上無人機の撃墜はできないだろうとしている点です。

果たして、本当にそうなのか、考えてみたいと思います。

まずは、問題の報告書が、本当に”憲法”の制約下と書いているのか非常に疑問です。
それなりの専門家が書いたのですから、憲法は読んだと思いますが、当然ならが憲法には無人機は攻撃してはいけないなどと解釈されるような法文はありません。

自衛隊法には、84条において、対領空侵犯措置について規定しています。

(領空侵犯に対する措置)
第八十四条  防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 (昭和二十七年法律第二百三十一号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。


問題は、「わが国の領域の上空から退去させるため必要な措置」に無人機の撃墜が含まれるのかです。
対領侵における具体的な措置内容、方法については、次の文書で規定されています。
・「領空侵犯に対する措置に関する訓令」(昭和39年防衛庁訓令第3号)
・「領空侵犯に対する措置に関する達」(自衛隊統合達第5号)
ですが、これらについては、どうでもいい部分しか公開されていません。
(私はどちらも(達は空自達時代の内容)知ってますが、当然ここで書く訳にはいきません)

これらの内容について、良く言われる話としては、正当防衛及び緊急避難に該当する場合は、撃墜できるというものです。
しかし、無人機が、対領空侵犯措置を行っている航空機や、無人の尖閣諸島に対して正当防衛及び緊急避難に該当すると判断されるような飛行態様をすることは、まずありえないと見るべきでしょう。
リーパーのように武装した無人機もありますが、大抵の無人機は偵察目的の非武装ですし、下が無人島では、例え武装していたとしても、緊急避難と判断することには無理があります。

しかしながら、これらは過去のほぼ有人機しかなかった時代の情報ですので、最新の訓令及び達では、無人機を撃墜してもよい事になっている可能性もあります。
国際法上は、民間機でないことを確認していれば、撃墜しても問題ありませんし、無人機を「退去させるため必要な措置」としては、堕とす以外に方法があるとも思えませんから、国内法上も、決して無理のある解釈ではないと思われます。(憲法9条に自衛隊が抵触していないと解釈するより、余程自然な解釈です)

もし、訓令・達が無人機を堕とせることになっていないのであれば、それこそ防衛省と内閣法制局の協議だけで処置できることなのですから、早急に行うべきです。

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2012年10月22日 (月)

集団強姦致傷事件で加速する沖縄県の日本帰属意識の希薄化

沖縄で、2名の米軍人による集団強姦致傷事件が発生しました。
ただでさえ、オスプレイの件で、反米軍感情が高まっている所にこれですから、これで更に感情が悪化することは避けられず、思わず天を仰ぎたい気持ちになりました。

しかし、懸念はそれだけではありません。
今回の事件に関する報道を見ていて、思った事が2つほどあります。

1つは、以前の記事のコメント欄で言及したこともある、米軍人の沖縄に対する認識に、どこかナメたような所がある点です。

本土の米軍人は、お客さん的な、どこか周囲に遠慮した感がありますが、沖縄の米軍人は、米本土にいるかのような感覚を持っているように思います。
それは、米軍人にとっては開放感であり、喜ばしい事なのかも知れませんが、こう言った事件の遠因にもなっているでしょうから、単に”綱紀粛正”というだけでなく、何か認識を改めさせるような教育が必要であるように思います。

もう一つは、少し間接的ですが、もっと深刻かも知れない日本国内の問題です。
それは、この事件に対する沖縄と本土の温度差です。

私は、この事件の一報に触れた際、「これはマズイ」と思いました。これを機に、反米キャンペーンが起こるのではないかと懸念したためです。
ところが、翌日からの報道を見ていると、全国紙は、産経以外が社説を掲げたものの、その後は、淡々と事実関係を報道するだけになっていました。

それを見て、ホッとしたのは事実です。
ですが、良く考えてみると、これは更に恐ろしい事態を惹起しかねません。

オスプレイの配備は、台湾防衛、ひいては尖閣・先島・沖縄防衛に必須のものですから、沖縄の反対が強くても、説得を続けて納得してもらわなければなりません。沖縄県民だって、尖閣に対する中国のあからさまな野望を見ていれば、例え軍事に明るくなくても、防衛力強化の必要性は分かるでしょう。

ですが、こう言う事件に対する感情において、本土の人間が、沖縄県民にシンパシーを抱いていないとなったら、沖縄県民は、自分達はいらん子なんだと思ってしまうと思います。
かつて、西銘順治元沖縄県知事は、沖縄の心を、ヤマトンチュウ(大和人)になりたくて、なり切れない心と表現しましたが、こう言う状態が続けば、当のウチナーがヤマトンチュウになりたいとは思わなくなってしまう可能性があります。
そうなれば、それこそ中国につけ込まれます。

今回の事態に対して、米軍当局は相当に危機感を感じているようで、在日全米軍将兵に夜間外出禁止を命じるなど、対応策を探っています。

集団的自衛権の解釈変更が行われ日米同盟の片務性が解消されない限り、及びPC遠隔操作による冤罪発生があったように日本の司法当局が人権を軽視した活動を改善しない限り、地位協定の改定自体は難しいと思います。

ですが、沖縄メディアだけでなく、全国紙も、沖縄県民に対するシンパシーを示し、抜本的で実効性のある地位協定の運用改善を声高に求めるくらいなことをした方がよさそうです。

今回の米軍の対応を見ていると、可能性もありそうに見えます。

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2012年10月20日 (土)

米韓を威嚇?

先日記事を書いた韓国弾道ミサイルに対する北朝鮮の反応は、予想通りのものでしたが、それを報じた読売新聞の取り上げ方は、想定外でした。
北朝鮮「ミサイルにはミサイルで」と米韓を威嚇」(読売新聞12年10月9日)

 報道官は、北朝鮮の弾道ミサイルが「南朝鮮(韓国)当局の本拠地だけでなく、日本やグアム島、米国本土までを命中攻撃圏内に入れている」とし、「核には核で、ミサイルにはミサイルで対応する準備ができている。想像もできない戦争を(米韓などに)味わわせることが、わが軍隊と人民の意思だ」などと威嚇した。


日本に対して、弾道ミサイル攻撃をすると、名指しで恫喝しているにもかかわらず、なぜ「米韓を威嚇」とのタイトルが付くのか、私には理解できません。

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2012年10月17日 (水)

政治的配慮による800km制限

アメリカの意向で300kmに制限されていた韓国の弾道ミサイル射程が、300kmから800kmに緩和されることが、米韓で合意されました。
韓国ミサイル、射程800kmに…北の反発必至」(読売新聞12年10月7日)

 緩和により、韓国南部からでも北朝鮮全域が射程に入る。核・弾道ミサイル開発を進めて韓国への武力挑発を続ける北朝鮮をけん制する狙いだ。

対北朝鮮抑止力を強化した韓米ミサイル合意」(中央日報12年10月8日)

北朝鮮の脅威に実質的に対応できるレベルまでミサイル能力を向上させられる転機が用意されたという点で評価できる。


北朝鮮北部を800kmの射程内にカバーできる韓国弾道ミサイル配備範囲
800
FLand-Aleで作成(正距方位図法)
これを見て頂ければ分かるとおり、韓国中央部からでも北朝鮮北部を射程に収めることができます。
しかし、この手の兵器は、敵による目標とされることも確実で、できることなら極力後方に配置したいと考えるのが、軍関係者の思考です。
実際、韓国は1000kmまで緩和することを求めていました。
韓国弾道ミサイル、最大射程引き上げか 米韓が最終調整」(朝日新聞11年3月11日)

韓国側には射程千キロまでの延長を求める声もあったが、米国は応じなかった。日中ロなど周辺国を刺激する可能性を考慮した結果とみられる。

北朝鮮北部を1000kmの射程内にカバーできる韓国弾道ミサイル配備範囲
1000
FLand-Aleで作成(正距方位図法)

1000kmならば、韓国南端からでも北朝鮮全域を射程に収められる訳ですから、軍事的合理性に則って考えれば、当然これを求めることになります。

アメリカがこれを認めなかったのは、朝日が報じるように、日中など周辺国に対する配慮です。これは、地図を見て頂ければ、一目瞭然です。
韓国東端から800km及び1000kmの範囲
8001000
FLand-Aleで作成(正距方位図法)
800kmなら東京を攻撃できませんが、1000kmなら可能です。

韓国北西端から800km及び1000kmの範囲
8001000_2
FLand-Aleで作成(正距方位図法)
800kmなら北京を攻撃できませんが、1000kmなら可能です。

日本の報道で、韓国の弾道ミサイルを脅威と見る人は、決して多くありませんが、韓国が潜在的に日本を敵視していることは防衛関係者は承知しています。
どの程度かは不明ですが、韓国が射程延長をアメリカに求めた際に、日本の外務・防衛関係者からも懸念を伝えていたと思われます。

そしてそれは、米中間でも同様であったでしょう。

結果として、アメリカは、韓国が東京や北京を直接攻撃する能力の保持を認めなかったということです。
前掲の中央日報では、悔しさを滲ませながらも、この政治的判断を、やむなしとして受け止めているようです。

北東アジアの変化した安保の現実を勘案すれば十分ではないという見方もあるが、国際政治の現実を考慮すれば最善ではなくても次善の成果はある。
中略
  ミサイル主権を前面に出して指針をなくすべきだという声もあるが、国際政治の現実と韓米同盟の重要性を考えると、こうした主張には無理がある。 任期末を控えて李明博(イ・ミョンバク)政権がこの程度のラインでミサイル交渉を妥結したのは不幸中の幸いだ。


この800kmという弾道ミサイルの射程は、実に政治的な配慮で決められたものだと言うことです。

なお、アメリカは、300kmから延長することに関しても、抵抗をしてました。
李大統領が米に圧力 韓国のミサイル射程延長で」(産経新聞12年10月12日)

 韓国紙、朝鮮日報は12日、米国との覚書で300キロに制限されていた韓国の弾道ミサイルの射程が米韓合意で800キロまで延長されたことに関し、李明博大統領が今年4回にわたり、覚書を破棄し射程を延長すると一方的に宣言しようとするなど、米国に圧力をかけていたと伝えた。


火病の国ですし、アメリカの懸念は当然です。
日本としても、韓国が日本の西部に対する弾道ミサイル攻撃能力を保持することになったという事実は、認識しておくべきです。

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2012年10月15日 (月)

UHX談合疑惑は、トカゲの尻尾切りで決着へ

UHX官製談合疑惑は、担当者をトカゲの尻尾として切り捨てることで解決を図る方向のようです。
佐官級幹部らを刑事告発 防衛省、官製談合防止法違反の疑い」(産経新聞12年9月28日)

 防衛省が発注した次期多用途ヘリコプター開発をめぐる不正疑惑で、同省技術研究本部(技本)に所属していた佐官級幹部が、事業を受注した川崎重工業(神戸市)側に有利な取り計らいをしたとして、同省が官製談合防止法違反罪で、技本に所属していた佐官級幹部ら数人を東京地検特捜部に刑事告発する方針を固めたことが28日、関係者への取材で分かった。


この疑惑が、技本の佐官レベルで決定されていたはずはあり得ないので、これは完璧にトカゲの尻尾切りでしょう。

官製談合防止法の条文を見ると、処罰は、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金となるようです。
今回の場合、部内の処分も、恐らく懲戒免職になる可能性が高いと思われます。
それでも、告発された佐官がケツをまくらないと見ているようですので、恐らく免職になった後、なんらかの形で、良い条件で再就職を周旋する約束をしているのでしょう。

こんな事を書くと怒られそうですが、私は今回の談合が、日本の防衛に害を与えているとは思いません。
防衛予算は少なく、防衛産業を育成維持するためには、生産調整は必要だろうと思います。

その配慮をどうどうと行い、指名競争入札でも支障がある場合は、従来のように随意契約だって良いはずです。
恐らく、随意契約を財務に説明しきらなかったのでしょうが、その付けを技本の佐官にさせることがマズイのです。

防衛装備の調達における入札については、防衛省、財務省、それに経済産業省の役人が集まって、防衛産業界からの意見も聞いた上で、あり方から見直す必要があるのではないでしょうか。

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2012年10月13日 (土)

航空手当(パイロット手当)の見直し私案

既に、来年度の概算要求が公開されて久しく、それについての記事を書かなければならないところですが、その前に今年度予算に関連して書いておきたい記事があるので、こちらを先に書いておきます。

今年度から、パイロットに支給される航空手当が見直されています。

24年度 重要施策を見る <5> 人事・処遇 人的基盤抜本改革 階級構成を見直す 士増やし幹部・曹は減」(朝雲新聞12年4月12日)

 【主な諸手当の改善】▽航空手当の見直し=航空機乗員が行う業務の変化等を踏まえ、空自戦闘機等の乗員の支給割合を引き上げる。(階級初号俸×80%)。その他の陸海空航空機の乗員の支給割合を一律とする(同×60%)。


以前の手当については、資料がありませんが、ジェット機70%、レシプロ機60%だったと記憶しています。

これは、適性のあるパイロットの確保が困難になってきているためです。
最も端的なのは、視力です。
体力、知力だけでなく、視力も良い若年者が少なくなっており、視力の基準を引き下げたものの、それでも人が集まらないため、戦闘機パイロットの手当が引き上げられました。

財源となったのは、C-1などのパイロット手当のようです。

人が集まらない以上、求人条件を良くすることは、当然です。
どこの業界だって同じです。

ただし、もっと巧い方法があると思われます。

この手当、階級初号俸の80%が支給されます。
つまり、
パイロットなりたて3尉¥236,000円の80%
=188,000円
一人前の2尉¥244,000円の80%
=195,200円
現役バリバリ1尉¥269,900円の80%
=215,920円
ベテラン3佐¥319,000円の80%
=255,200円
隊長2佐¥346,700円の80%
=277,360円
そろそろ定年1佐(二)¥456,600円
の80%
=365,280円
司令官クラス空将¥720,000円
の80%
=576,000円
と、階級に応じた支給となるのです。

定年間近の手当までしっかり見越してパイロットになる人間が、果たしてどの程度いるでしょうか。(いや居ない!)
むしろ若年パイロット支給率をアップさせ、目先の利益に目をくらませた方が、もっと人員確保には役立つと思いますが、如何でしょうか。
例えば、3尉を200%(つまり号俸の3倍支給)として、以後階級が上がる事に一定額の上昇とかです。
今でも無理して高級外車に乗っている若年パイロットは居ますが、それを当たり前にしてやれば、もっと人は集まりやすいでしょう。

もちろん、それを実際に行なうためには、混乱が生じないように、時間をかけて行なうべきですが、この方が、より優秀な隊員を集めやすいように思います。

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2012年10月10日 (水)

メディア・リテラシーと日本がからむ領土問題のアメリカでの報道

アメリカメディアでの尖閣や竹島についての報道に、日本メディアがセンシティブになっています。
米メディア 揺れる「尖閣論調」 NYT「日本の戦利品」に総領事館反論
(zakzak12年10月4日)

日本の立場がしっかりと報道されるよう、アクションを取って行く必要はあると思いますが、アメリカでの報道に一喜一憂する日本人の姿は、メディア・リテラシーの点で、非常に情けないです。

メディア・リテラシーは、一般に情報を主体的に読み解く能力と理解されます。
欧米では、学校のカリキュラムになるくらいに一般的で、持っていて当たり前だと言えます。
ですが、日本では、報道は公正で無ければならならず、公正であるはずだとの認識が強いためか、メディア・リテラシーの必要性が説かれることは、欧米に比べて非常に稀な気がします。メディア・リテラシーを、情報を受け取る側ではなく、情報を発信する側に、強く求めているとも言えます。

だからこそ、前掲記事にあるニューヨークタイムズの記事が、中国寄りの間違った記事であるとして、憤るような報道がなされるのでしょう。

 一方で間違った情報に基づいて日本を批判する報道や論説もある。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は先月19日、尖閣諸島について「中国の立場に同情を感じる」との記事を掲載した。


しかし、日本と違い、情報を受け取る側のメディア・リテラシーが教育されているアメリカの報道ですから、この記事自体を、それほど脅威と考える必要はないと思います。

 記事は台湾の研究者の投稿として掲載され、日中の記録を引用しながら「日本が1895年に(日清戦争の)戦利品として事実上、中国から島々を奪った」などと主張。一緒に掲載された著名コラムニストのニコラス・クリストフ氏の論説は「日本の学者は反論を」と促した。

 クリストフ氏はこれまでも日本を批判する記事を数多く書いている。妻は中国系3世の作家、シェリル・ウーダン氏。


台湾の人間が書いた物が、投稿として掲載されただけです。
このブログの記事も、たまにYahooのニュースにリンクが貼られたりすることがありますが、それと大差ない話です。
これを読むアメリカ人とすれば、中国・台湾寄りの内容であることを、当然と理解した上で読んだはずです。

ただし、こう言った動きに対抗措置を取って行くことは必要です。

 ニューヨークの日本総領事館は2日、「尖閣諸島は日本固有の領土。歴史的にも国際法上も疑いがない事実だ」との反論を川村泰久首席領事名で投稿した。


ですが、こんな方法ではダメです。
メディア・リテラシーの浸透したアメリカで、日本政府の役人が何か言っても、役になど立ちません。

金を使ってもいいのです。
金を払い、アメリカ人の研究者か、悪くても日系人に投稿記事を書かせたら良いのです。
大使館で振る舞われるワイン1本分くらいで、その程度記事を書かせることは容易い話でしょう。

メディア・リテラシーを分かってないのは、一般人も外務省の役人も同じであるようです。

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2012年10月 8日 (月)

森本大臣は留任

10月1日、野田改造内閣が発足しましたが、防衛大臣は森本氏が留任でした。

森本氏の大臣就任が6月4日だっただめ、これで交代となれば、短すぎるという判断だったようです。
森本を自民とのパイプ役にしようという判断もあるようです。
玄葉外相、森本防衛相留任有力…中韓との対立で」(読売新聞12年9月28)

その識見からすれば、もちろん反対ではないのですが、オスプレイの普天間への導入問題などに関して、森本氏の”政治家”としての能力には疑問も感じます。

防衛省が発表したモロッコ、フロリダでのオスプレイ墜落原因についての文書は、如何にも自衛官が作ったっぽい文書であり、普天間への配備を円滑に進めるという目的に対して、政治的手法を配慮した内容になっているとは言えませんでした。
また、沖縄県知事を始めとした、自治体首長との面会における政治力の発揮も、正直乏しかったように感じます。

こう言った点を見ると、つくづく”北沢氏であったならもう少し巧く立ち回るだろう”と感じてしまいました。

識見はあるので、一川氏や田中氏と違って、防衛省に”正しい方向”を指し示すことはできるでしょう。
政治家としての能力に関しては、誰か良い先生を見つけて、その正しい方向に”導くことができる”よう、頑張って欲しいと思います。

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2012年10月 6日 (土)

中国空母は脅威か?

中国が、苦節7年にしてワリャーグを「遼寧」と命名して空母の配備に漕ぎ着けました。
これが脅威なのか否かについて、話題になっています。
中国空母、日本に脅威?それとも張り子の虎?」(zakzak12年9月24日)

今回は、この「遼寧」と、この後建造されるであろう空母が、日本の防衛にとって脅威なのか、そして脅威だとすれば、対策は如何にあるべきなのかについて、空母の防御力の観点から考えてみます。

遼寧は、実験用あるいは訓練用と言われています。つまり、中国としても、本格的な戦力としては認めていない訳です。
ですので、この艦の艦載機運用能力を持って、脅威でないと断じることは油断だと言えます。

ただし、空母の能力を測る上で、搭載機数だけでなく、発艦及び着艦の艦載機運用能力が、重要なことは言うまでもありません。
中国は、遼寧にカタパルトを装備できませんでした。
結果として、恐らく発艦のためには、第二次大戦時の空母のように風上に向かって高速航行しなければならないでしょう。
下手をすると、風の状況、無風だったり、風向が激しく変わるような状況によっては、艦載機の発艦ができない可能性もあります。

カタパルトについては、技術的に大したことなさそうな気もしますが、アメリカのエセックス級空母では、カタパルトを使用することで艦の航行能力を低下させた程だったそうなので、以外に難しいのでしょう。
開発中のフォード級では、電磁カタパルトの開発も相当な困難に直面しているようです。

この点からすると、遼寧以降の艦にカタパルトが装備されるかどうかが、中国の空母が現実的な脅威となるか否かを計る物差しになると思われます。

カタパルトが戦闘能力に直結するというのは分かりにくい話かもしれませんが、空母が艦載機による防空を行うケースを考えてみれば分かりやすくなります。
陸上航空基地でも同じですが、防空では敵の航空機を迎撃するため、敵編隊を探知した後、短時間で多数の航空機を発艦させなければなりません。
この点で、やろうとさえ思えば、1分間に10機近くもの航空機を上げられる陸上基地と空母は雲泥の差があります。
カタパルトは、1機発艦させた後、元の位置に戻して蒸気を再充填しなければならないため、どうしても時間がかかるためです。
(電磁カタパルトを装備するフォードは、この点で革新的な性能を持つ予定)

この意味では、中国が、もしもいきなり電磁カタパルトを開発したら、相当注意を要する事態だと思われます。

空母機動部隊の防空を考える場合、空母だけでなく、周囲を固める艦艇の能力は、空母以上に重要です。
アメリカの空母機動部隊の場合、第7艦隊水上戦部隊だけでも、巡洋艦×2、駆逐艦×7もあり、しかも全てイージス装備となっています。

中国は、空母の開発配備にあたり、防空艦の増強も急いでいます。
「中華イージス」建造ラッシュ 052D型ミサイル駆逐艦も登場」(海国防衛ジャーナル12年9月7日)
しかし、現状では、中国全体でも第7艦隊水上戦部隊と同程度の防空能力しかありません。
(最新の052C型で6艦)

中国の空母が、現実の脅威となるか否かは、空母そのものだけでなく、これら防空艦艇の配備の進捗にもよってくるという訳です。

しかし、中国空母の脅威を防御面から考える場合、その防空能力に対し、対潜能力は歪だと言えます。

対潜哨戒機のSH-5は4機しかなく、前述の空母に随伴するとみられる駆逐艦も、どの艦も対潜能力は限定的だと言われています。

艦載ヘリについても、前述の6隻の052C型及び1隻の051B型は2機の艦載ヘリを収容できるものの、日本や欧米の艦載ヘリに比べると、能力は劣っていると見られています。
最新の051C型に至っては、艦載ヘリは搭載していません。2隻あるソブレメンヌイ級及び同じく2隻の052B型駆逐艦も、能力の低い艦載機が1機のみです。

これは、おそらく中国の空母機動部隊にとっての一番の脅威を、アメリカの空母部隊によるミサイル攻撃だと考えたため、対潜能力よりも対空能力を重視した結果でしょう。

また、中国潜水艦の対潜水艦作戦能力も、十分とは思えません。
本来であれば、空母機動部隊に随伴すべき攻撃型原潜は、騒音が凄まじいと言われる漢級が2隻、ロサンゼルス級なみの静粛性になったと言われる商級原潜はまだ1隻のみです。

速度面で空母随伴が難しい通常動力潜水艦だけは、それなりの性能とかなりの数を揃えています。
ただし、小型の艦艇が多く、空母機動部隊の行動半径を広げるためにどの程度役に立つかは疑問です。(行動半径が広がらなければ、そもそも空母を持つ意味がない)

このため、中国が本格的な空母を開発配備できるとしても、対潜能力を大幅に高めなければ、それほど脅威と見る必要はないと思えます。

そして、防衛省もこの点を認識しているため、潜水艦の増勢を図っています。
本来なら、一時期話題になった原潜の導入が望ましいですが、これは福島原発の影響で、政治的に無理になりました。

日本としては、中国の沿岸まで接近可能な、大型で航続能力が高く、静粛性の高いAIP搭載の潜水艦を増強して行くべきだと思われます。

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2012年10月 4日 (木)

民主、政治主導でナイスプレー

民主の脱官僚主義・政治主導は、普天間の県外移転等、碌な事を言い出しませんでしたが、たまにはナイスプレーもするようです。

中国の尖閣の海図に異議あり…日本が国連に反論」(読売新聞12年9月27日)

 玄葉外相はニューヨークで26日、尖閣諸島について、「これまでは領有権の問題は存在しないということから、積極的にわが国の立場を国際社会でPRすることを控えていた面があったが、方針転換した方がいいという指示を(事務方に)出した」と記者団に語った。


外務省による尖閣を国際問題としない方針など、とうの昔に破綻している訳ですが、伏魔殿は自己の誤謬を認められない体質なのか、政府は、あくまで領有権の問題は存在しないという従来の方針を変えられませんでした。

玄葉外相は、この方針まで変えさせることができた訳ではないようですが、少しだけ前進させられたようです。

何事も信賞必罰は、必要です。
良いことをした時は、誉めてあげることにします。

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2012年10月 2日 (火)

尖閣領有権問題は台湾から切り崩すべき

尖閣諸島の領有権問題解決には、国際司法裁判所への提訴など、様々な方法が考えられますが、台湾から切り崩すことは、非常に有効です。

その理由は2つあります。
①実行可能性の高い方法がある
②中国に口を出させずに、中国の歴史的主張を否定することができる

①の方法ですが、以前の記事「李大統領の竹島訪問阻止は可能だった」で韓国に対して使用を提言した方法と同じです。
つまり、台湾有事における周辺事態法の適用ストップをさせるというブラフを撃つことです。
そしてそれ以上に、「普天間を閉鎖し、海兵隊を追い出すぞ」というブラフは、更に強力です。

その効果は、対韓国の比ではありません。
韓国には、相当の量の在韓米軍が居ますが、台湾には常駐米軍戦力はゼロです。

台湾有事に対処する戦力は、全て沖縄に駐留しているため、周辺事態法の適用ストップは、その戦力発揮を間接的に阻害することになりますし、普天間の閉鎖は、緊急時の3MEFの台湾展開を大幅に遅延させます。

周辺事態法の適用ストップは、嘉手納からの航空戦力の投射には直接影響しませんが、日本が後方支援を行わなければ、嘉手納からの攻撃能力にも遅効性のボディーブローとなります。
また、台湾有事においては、米空軍は那覇空港やそれ以上に下地島空港を使うつもりでいるでしょうが、周辺事態法の適用ができなければ、それは不可能となります。
如何に、スーパークルーズと長大な航続性能を持つF-22でも、下地島が使えなければ、台湾へのエアカバーは相当きついでしょう。

米海軍の行動についても、佐世保、横須賀における日本の支援が無ければ、影響は無視できません。

日本が台湾に対して、本気でブラフを撃てば、尖閣程度は簡単に投げ出すはずです。
何せ、それは台湾(国民党政権)の生存に直結するからです。

②の中国に口を出させずに、中国の歴史的主張を否定することに関しては、1020年に中国の漁民が遭難して魚釣島に漂着した際、これを救助した事に対して、中華民国駐長崎領事が尖閣諸島のことを「日本帝國沖繩縣八重山郡尖閣列島」と明記して感謝状を贈っていた事実と関係します。
Letter_of_thanks_from_roc_consul_to
wikipedia(尖閣諸島問題)より

ブラフを撃って、台湾(中華民国)政府に尖閣の領有権が日本にあることを認めさせれば、当時の中国の正当政府が、1920年当時から、正式に尖閣の日本領有を認めていたことになるからです。

1920年には、中国共産党は結党さえされていません。(結党は翌年1921年)
当時、中国の正当政府は、現在台湾しか統治していない国民党政権でした。
これによって、中国共産党に口出しされることなく、”中国”が尖閣の日本領有を認めていたことを歴史的に明らかにできます。
尖閣がICJに提訴されるとしたら、この点は提訴前に明確にしておいた方がいいでしょう。

方法があり、しかもその(法的)効果は絶大です。
この方法を実際に行えば、アメリカも大騒ぎになるでしょうから、表立って行わない方が望ましいですが、最近の台湾は増長して日本の巡視船に放水までしていますから、舞台裏で銃を突きつけるくらいはしてOKでしょう。

ちなみに、台湾公船による日本公船への放水を、国連海洋法条約違反だとして咎める報道がありますが、あれは間違いです。
台湾船が海保に放水…国連条約違反、日本は抗議」(読売新聞12年9月26日)
何せ、台湾は国連海洋法条約に加盟してないので……

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