Xバンドレーダー追加配備_誤報と意味(その2)
前回の続きです。
続いて、配備場所を予測してみます。
日本政府筋によると、両政府は現在、沖縄県以外にある自衛隊基地に配備することで最終調整している。
他の記事でも、日本南部とか島とか報じられています。その上で、沖縄以外の自衛隊基地との報道が間違っていないのであれば、候補は次の3つだと思われます。
・沖永良部島(空自:沖永良部島分屯基地)
・奄美大島(空自:奄美大島分屯基地、海自:奄美基地)
・喜界島(喜界島通信所)
恐らく、周辺のレーダーマスク等も考えると、場所は沖永良部島の可能性が極めて高いと思われます。
沖永良部にAN/TPY-2を配置し、中国大陸方面を監視した場合の監視範囲
これだけ広範囲を監視できるのですから、FPS-5等による監視の補完として、非常に有益な措置です。
イージスやPAC-3による日本のMDにキューイングデータを送る上で、効果があるでしょう。
ですが、この措置の意義は、それだけに止まりません。
車力と沖永良部に配備されることを考えれば、そこには米軍の意図として、別の意味も見えてきます。
AN/TPY-2は、もともとTHAAD用のレーダーとして開発されたものです。
ですから、THAADランチャーを持ってくれば、即THAADシステムとして稼働させられる訳です。
THAADシステムも、C-17等による空輸が可能ですが、ランチャーはどうにでもなるものの、レーダーが十分な性能を発揮するためには、事前にその場所での電波環境にシステムの設定をしなければなりません。
例えば、広範囲を監視するシステムであればあるほど、その覆域内にある他の電波放射源がECMと同様の監視阻害要因となるため、ECCMと似たような活動が必要になってくるからです。
本年度の予算で、石垣島に移動式警戒管制レーダーを展開させるため、防衛省が電波環境調査を行っているのも同様の理由です。
車力と沖永良部には共通点があります。
それは、どちらも極東米軍の戦力発揮に不可欠な重要航空基地の近傍であるということです。(車力は三沢の近傍、沖永良部は嘉手納・普天間の近傍)
つまり、XバンドレーダーAN/TPY-2の配備は、緊急時にTHAADを展開させ、嘉手納等の防護をするための事前措置の可能性があるということです。
嘉手納には、PAC-3が展開していますが、グアムを攻撃できるほどの射程のあるDF-4等をロフト弾道で撃たれると、速度が速いためPAC-3で迎撃できない可能性があります。
現状では、それらに対してはイージスSM-3に期待するしか無い訳ですが、米軍とすれば、THAADとの2本立化を考慮しているのではないかと考えられます。
また、より広範囲なミサイルディフェンスを行う意図もあると思われます。
「早期警戒レーダーを追加配備へ…沖縄以外で調整」(読売新聞12年8月24日)
青森の車力分屯基地より西方に配備することで、北朝鮮の弾道ミサイルに加え、米空母への脅威となる中国の対艦弾道ミサイルへの対応がテコ入れされることになるという。
THAADのランチャー配備制限については、資料がありません。
ですが、PAC-3がランチャーをレーダーと離れた位置に展開させ、防護範囲を広げるランリモートランチという機能を持っていることを考えれば、THAADも同様の機能を持っている可能性は高いと思われます。
仮に、THAADランチャーを沖縄周辺の離島(与那国島、石垣島、宮古島、久米島、沖縄本島、沖永良部島)展開させた場合のTHAADによるフットプリントは、次のようになります。
嘉手納は勿論、下地島、そして何より尖閣諸島周辺まで防護範囲に入ります。
つまり、これは中国の接近阻止戦略に対する対抗策ではないかと思われるのです。
今回の話は、急に降って湧いたような話です。
事の真相は、アメリカに「尖閣を巡ってアメリカの関与を望むなら、THAAD展開の事前準備としてAN/TPY-2を配備させろ!」とでも言われたのではないでしょうか。
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時代は完全に宇宙戦争ですね・・・
南西諸島を要塞化するかのようなTHAADフットプリントの連なりを見ていると
それがよく実感できます
投稿: 名無し | 2012年9月 2日 (日) 14時44分
名無し 様
弾道ミサイル技術の拡散と短・中距離弾道ミサイルの大量使用が戦術として一般化したので、宇宙が身近な戦場になった感がありますね。
それに、先島はどうあっても最前線になってしまいます。
中国の最前線になってないだけ、住民の方にはまだ幸せだと思いますが……
投稿: 数多久遠 | 2012年9月 4日 (火) 00時53分