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2012年9月11日 (火)

UHX談合疑惑と自衛隊の装備開発姿勢

疑惑の内容が良く分からないため、積極的に書きたい話題ではないのですが、ここ数日のアクセス解析を見るに、無視できない話題なので、私が感じた自衛隊の装備品開発の姿勢と絡めて書いてみます。

疑惑の内容自体は、UHXの開発に関して、公示前に、その内容である仕様書の内容を伝えたことのようです。
ヘリ不正納入:陸自佐官級幹部ら 「仕様書」の内容伝える」(毎日新聞12年9月7日)

 陸上自衛隊のヘリコプターを巡る不正納入事件で、契約に関与した防衛省技術研究本部(技本)に在籍した複数の佐官級幹部らが同省の内部調査に対し、ヘリ開発に関する情報を受注企業側に伝えたと認めていることが分かった。必要な性能などを記した「仕様書」の内容を、企業選定時の「公示」の数カ月前に伝えたという。


仕様書自体を川重が代理作成していたとの報道もあります。
防衛省ヘリ談合 川重が“代理作成”か 仕様書で受注有利に」(産経ビズ12年9月7日)

 提案書の参考となるのが、研究や開発を担う技術研究本部(技本)が提示する仕様書。関係者によると、技本の複数の佐官級幹部が川崎重工の担当者らにヘリの機能として最低限必要とする仕様などを漏らし、これを受けて川崎重工側が仕様書を“代理作成”した疑いがあるという。


事実関係は、捜査中なのではっきりしませんが、この報道に対して清谷信一氏が興味深い記事を書いています。
UH-X談合疑惑そもそも論

 防衛省の装備調達で、本命業者が仕様書を書いてるなんで、業界では常識、公然の秘密です。
 実際メーカーの方で、開発しながら仕様書書いたり、本来官側が書くべき各種レポート書いていたと証言する人間を何人も知っています。


私は、開発の最前線で働いた経験はないので、この話が本当なのかは知りません。ですが、感覚的には、ありえそうな話という気がします。
開発中の装備やこれから開発される装備に関して、現場の意見が反映されることが、あまりにも乏しかったからです。
「防衛省として欲しいモノ」が開発されるのではなく、「メーカーが作れるモノ」を開発するという姿勢ありきだったように感じてました。

清谷氏は、こうも書いています。

 既に過去ぼくが指摘してきたように防衛省の調達担当部署の人員は列国に比べて一桁少ない陣容です。それでまともな調達ができるはずないじゃないですか。

 ですが仕様書が書けないということは、本当は自分たちが何を欲しいかと把握していないということです。
 つまり防衛省には当事者能力がない。 


人員不足に加えて、私が感じていた問題は、開発に関する運用系の人間が関与できるチャンネルが非常に少ないことです。

空自の場合ですが、開発集団への現場を知る人員配置が少ないことがあります。技術特技の人間だけでなく、運用や整備の現場に携わった人間が定期的に開発集団にも配置され、開発に携わることが必要だと思いますが、それらは非常に少ないと感じました。
それが左遷ととられる事も問題だと思いますが……

指揮系統に沿った現場意見の反映は、確かにされてます。
空幕に意見を上げて、空幕の装備体系課がそれを開発サイドと調整してゆく訳ですが、何せこちらも人員が少ないためか、十分に機能しているとは思えませんでした。
もちろん、予算の制約とかが多いのでしょうが……

そんな訳で、業者が仕様書を書いてるなんて話は、とんでもない話ではありますが、私は「さもありなん」と感じてしまいます。

結局、調達・開発にかける予算の不足が根本原因なんでしょうね。防衛費総額の問題でもありますが、自衛隊の極端な「槍の穂先重視」が背景にあるように思います。

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研究開発」カテゴリの記事

コメント

しんぶん赤旗が防衛省と川重の秘密会談の議事録を入手して公開していますね。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-09/2012090915_01_1.html

アシナガバチ 様
情報、ありがとうございます。

赤旗の記事を見てみましたが、なんとも強烈ですね。
これが真実であれば、起訴は避けがたいように思われます……

こう言うモノが外に出ると言うことは、警察が動いた契機は、自衛隊か川重か、どちらかからの内部告発っぽいですね。

初めまして。
コメントは初めてですが、いつも興味深く拝見しております。

今般のUH-X官製談合問題については、数多久遠様ご指摘の通り、自衛隊の極端な「槍の穂先重視」が背景にあると私も思います。

開発・調達にかける予算・人員が絶対的に不足しているにもかかわらず、仕様書作成や原価計算はあくまで官側が行う建前になっているため、手に余った担当官が受注予定企業に丸投げするという図式です。
これは防衛省だけでなく、他の中央省庁や地方自治体においても同様です。

そもそも2年ごとに技本~部隊~幕~学校と転勤を繰り返す官側担当官に、メーカーを指導し仕様書を書く専門能力を求めるのは無理というものでしょう。

本気で再発防止を図るつもりなら、現実と全く乖離してしまった建前を捨てて企画競争方式を止め以前の一社随意契約に戻し、裏でこそこそやらずに制度上も仕様書作成や原価計算のメーカー丸投げを公然と認めるようにするか、あるいは戦前の陸軍造兵廠・海軍工廠を復活させてメーカーを上回るほどの自前の開発製造能力を持たねばならないのでしょうが、後者は費用的にも期間の面でも到底無理でしょうね。

数多久遠様の
>開発中の装備やこれから開発される装備に関して、現場の意見が反映されることが、あまりにも乏しかったからです。
>「防衛省として欲しいモノ」が開発されるのではなく、「メーカーが作れるモノ」を開発するという姿勢ありきだったように感じてました。
というご指摘は、長年装備品の開発製造に携わってきた者として耳が痛いです。

幕や学校、技本からの公式ルートでの要望だけでは情報が十分でないことはメーカー側も承知しており、部隊への訪問や運用部隊の隊員さん方のメーカー研修の機会を通じて本音を伺い運用の実態に即した装備品を作るべく努力していましたが、予算の制約はいかんともしがたく・・・。

アシナガバチ様がご教示くださったしんぶん赤旗の記事を拝見しました。
こういう内部文書が流出するというのは、先般の三菱電機による過剰請求事件が明るみに出た経緯と同様、防衛省や防衛関連企業が一種のモラルハザードを起こし始めているのかなという気もします。

ぶーちん 様
民間でも、必ずしも競争入札に相当する相見積をやっているわけではなく、信頼のおける取引企業と原価を見せて交渉するようなケースだって無い訳ではないのですから、何らかの形で、透明性を持たせるようにすれば、私も随意契約に戻した方が良いのではないかと思います。

今回のケースなどは、実質随意契約にしたがっていることが見え見えですし。

「メーカーが作れるモノ」を作ることに関しては、私は官側の責任の方が多いと思います。
守秘義務があるということを、自分達の言い訳にして、メーカーに対する情報発信が少なすぎると思っていました。

モラルハザードとのことですが、確かにそうである一方、競争入札にすると言いながら、実態がこれでは、不正を行っていることに対して、正義感から内部告発する人が出ても間違いとは言えないと思います。
これもやはり、清々堂々と随意契約を主張しなかった防衛省か、それらを理解しない財務省の責任だろうと思います。

上の連中が現場の意見なんて聞かないよ!まともな装備品すら導入しない馬鹿ばかり、未だにSIG製9ミリ拳銃初期型のP220だし、64式、89式の弾納ポーチは米軍タイプじゃないし、背嚢、雨衣等!武器、兵器以外は個人で購入している!

元陸自 様
SIGは悪い銃ではないと思っています。
(個人的には、ダブルカラムの装弾数が多い銃の方がいいですが、共通装備としては、あのサイズくらいが適当ではないかと思います)
個人購入は減っていると聞きますが、まだありますか……

一般競争入札は怖いです
器材の整備能力の無い会社がある器材の修理を落札したとします
修理方法が分からない入札者が製造メーカーに
修理方法を聞いても、ライセンス契約等も結んでいない
得体の知れない会社に修理方法を教えるはずがありません
結果、契約不履行、多数の装備品が非可動
(修理見積もりからはじまるので少なくとも2年間非可動)

防衛産業は、天下った自衛隊OBに言います
「天下って貰ったのは、あなた達に儲けさせて貰ったお礼です」

その給料は装備品の価格に跳ね返っているわけです

名無し① 様
そのようなリスクのあるケースで入札による場合は、指名競争入札になります。

名無し② 様
天下った人間の給料が装備品価格に跳ね返っているのは事実ですが、天下りがない場合、防衛知識の乏しい営業マンに防衛知識を付けさせる場合も、同じか下手したらそれ以上のコストがかかるかもしれません。

それと、儲けさせて貰ったお礼に天下りを受け入れるのではなく、天下った後に営業成績を上げさせるために受け入れてます。

保険会社もそうですかね?
ゴルフばかりの天下りもいますが、あれも仕事?

名無し 様
保険会社については、団体生命保険の引き受け狙い、及び維持でしょうか。
団体生命については、いざという時に支払いを渋らなければ価値はあると思ってますが、外資が入っていると、果たして本当に機能するのか疑問に思うこともあります。

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