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2012年9月 4日 (火)

モロッコでのオスプレイ墜落原因は失速_報告書は妥当か?

防衛省がモロッコでのオスプレイ墜落事故に関する分析評価報告書を発表しました。
原因は、なんと失速です。

以前の記事「モロッコでのオスプレイ墜落は、セットリングか?」で、原因はセットリングウィズパワーが疑われると書いたのですが、実際には、もっと遥かに単純な失速だったとのこと。
モロッコにおけるMV-22墜落事故に関する分析評価報告書
Ws000010
防衛省発表の事故概要

ただし、防衛省の報告書には「失速」の語は一語も出てきません。
恐らく、「失速」ではあまりに酷いと言うことで、使用を避けたのだと思われます。
玉虫色であるとも言えるでしょう。

状況を単純に言えば、背風状態のホバリングから、前進速度がつく前にナセルを前傾させたため、固定翼部分が揚力を発生させるに前に、回転翼での揚力も失われたという状況のようです。
原因を詳しく知りたい方は、前掲リンクの防衛省発表資料を見て下さい。

問題は、それが致し方のない人的ミスだと言えるのか、そして、その対策は採られているのかということです。

人間のミスはゼロにはできないため、事故の原因を人的ミスに求めることは、防衛省に限った話ではありません。
しかし、人的ミスは、必ずしも、致し方ない人的ミスとは言えません。
今回のケースなどは、それに当たると思われます。

一つには、フェイルセーフで防げなかったのかと言う疑問です。

人間はミスをするものですから、人間がミスをしても事故に至らないよう、システムを作ります。
このケースでは、前進速度が付くまでナセルを傾けることが出来ないようコンピュータ制御されていれば、事故が防げたはずです。
実際、報告書でも、このことに触れています。

この操作がなぜ上述のコンピュータ制御によって制限されることなく可能となったのかについて、米側より聴取したところ、機速40kt以下におけるナセル角度操作は、ナセル角度を60~75度に設定する転換モードにおける短距離離陸/着陸滑走時に必要となることから、コンピュータ制御によって操作不可能とすることはできず、このため、NATOPS飛行マニュアルによって禁止すること
で対応していると説明を受けた。


一見、なるほどと見えなくもありませんが、転換モードでのSTOL離着陸の場合だけフェイルセーフを働かせないように作り込めば良いだけでしょう。
この説明だけでは、納得し難いです。
むしろ、この書き方では、システム上の欠陥であり、機体というより、設計上の不具合ではないかとさえ思えます。
この事の言及しているニュース記事もあります。

報告書をそう言う方向でまとめないのは、日本政府として、機体設計にまで注文を付けられないという理由があるでしょうが、別の理由があるのではないかとも疑えます。

オスプレイはオートローテーションが難しいと言う情報があります。
そのため、非常時には固定翼モードでの滑空で機体をコントロールするため、強引にナセルを傾斜させられるように作っている可能性が考えられます。
ところが、オスプレイ反対派がオートローテーションが難しいことをもって、欠陥だとのキャンペーンを張っているため、これを言い出せなかったのではないかとも思えるのです。

防衛省がこの報告書をまとめることになった原因は、ウィドウ・メーカーとも呼ばれたオスプレイの欠陥機疑惑です。
ですから、そもそも、この報告書は人的ミスありきでまとめたものなのでしょう。

しかしながら、オスプレイは軍用機ですから、安全だけを考慮して作り込む訳にはいきません。
何らかの攻撃を受けた際、緊急に回避する必要から、通常であれば危険な飛行領域に入れる操作であっても、受け付ける必要もあるはずです。
ですが、そうならば、そうとはっきり書くべきだと思います。

また、対策が採られているのかという問題もあります。
一言で言って、この報告書には対策は何も書かれていません。ただ「事実はこうでした」と書いているだけです。

通常、この手の文書には、原因と対策を書くモノです。まとめるまでにこれだけの時間をかけたのですから、当然そうなっていると誰もが思うでしょう。
だから、沖縄県知事なども反発するのでしょう。

報告書の中を見ても、先ほどのフェイルセーフだけでなく、対策が必要と思われる記述が入っています。

なお、今回の事故を踏まえ、海兵隊においては、NATOPS飛行マニュアルにおける記載の明確化の検討についての提言がなされ、操縦士及び関係者に対する教育の徹底が実施されることとなっている。


この書きぶりも頂けません。
書き出しからして、なお書きで始まっており、読んだ人の印象からすれば、まるで人ごとです。
米軍にマニュアルの是正を求めるか、最低限でも日本政府として、国内で運用するためには特別の手順を求めるくらいは書いてしかるべきだと思います。

この事を指摘しているニュース記事もあります。
米手引書に不備 オスプレイ・モロッコ事故報告」(琉球新報12年8月29日)

米側の調査結果には、調査官の提言として「飛行マニュアル(手引書)内に、追い風の中での離陸から巡航への移行に関する参照事項をほとんど見つけられなかった」と記され、追い風の際の運用に関するマニュアルの不備が指摘されていることが明らかになった。だが、機体の安全性に直結するこの不備は日本側の報告書には明記されていない。


そして、対策についての言及不備は、結局防衛大臣が苦し紛れのコメントをするに至るというお粗末な結果をもたらせています。
オスプレイ:国内運用ルールに人的ミス防止策…森本防衛相」(毎日新聞12年8月31日)

森本氏は「(モロッコでの事故と)ともに人的要因だとすれば、飛行の安全を確保するためにどのような措置ができるのか、日米合同委員会での非常に重要なテーマになる」と述べた。


報告書の発表から、わずか3日でこんなコメントを出すくらいなら、最初からこの事を報告書に盛り込んでおけば、沖縄の反発だって、もう少し落ち着いたモノになっていたはずです。

マスコミは、沖縄の全員がオスプレイに大反対しているかのような書きぶりですが、実際にはそんなことはないでしょうし、政治家もそれなりに歩み寄りは見せています。
知事「受け入れ困難」 防衛相、オスプレイ事故分析を報告」(琉球新報12年8月30日)

 仲井真知事はオスプレイ配備について「原因の究明、安全の確認、日本政府が(安全を)保証することをわれわれが理解、納得できるようにすれば不安は払拭される」と述べ、より徹底した安全性の確認を求めた。


どんな機械にせよ100%の安全はあり得ない以上、保障しろというのは無茶な要求ですが、安全性が納得できれば不安は払拭されるとまで言ってくれているのですから、防衛省としても、もっと腹を割って話すべきではないでしょうか。

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事故」カテゴリの記事

コメント

>まあ・・それは
 
 軍用・と民生用の考え方の違いなのでは?
日本のような<平和最優先>のところと、そうでない
ところとでは違うでしょう。以前何かで韓国では旅客機
の操縦士、空軍の退役パイロットが多いとか聞きました
が操縦荒っぽいとか・・オスプレイ、戦闘機でしょうから、
活動場所は戦場 
 置き場所をどこにするかの問題。

j.i 様
記事のどこについてのコメントなのか分かりませんが、軍用と民生用の区別を付けてないのは、反対派の方々でしょう。
民間機と比べたら、危険の高いミッション・訓練を行っているのですから、端から比較することがおかしいのですが……

数多様

大分亀レスになってしまいました。申し訳ありません。
報告書と、本記事を読んだ感想を述べさせて下さいませ。(あくまで個人的なものであり、多分に推測を含みます)
報告書が失速の語を使用してないことについてですが、本ブログにおける「失速」説の言い出しっぺとして大変に責任を感じているのですが、報告書において失速の語を使用してないことは妥当と感じました。というのは、失速(ストール)というのは、通常の翼面の気流が剥離して揚力を失うことを指しますが、本件においてはそもそも揚力を発生する速度域にいなかったこと、また、エンジンナセルの前傾により、重心位置が前方に移動したことに加え、前傾した機体姿勢に背風を受けたことで釣り合いを崩したことも一因とされていることからです。
これは、ティルト機を含む回転翼機は、固定翼機の失速領域を飛行するのはむしろ通常のことなので、失速という言葉に対する印象が、固定翼屋さんとヘリ屋では、若干異なるのかな、と感じたので指摘させていただきました。(バックサイドと言うべきだったかな、と迷ったのはここが原因です。)
ちなみに、ヘリコプターでも背風下で、急激に前進操作を行って、機体を前傾させると、スタビレータに背風を受けて釣り合いを崩す可能性はあります。確かに本件原因は偏向回転翼機固有の操作にありますが、同条件下では、大小の差はありますが回転翼機に共通するリスクであるといえます。

フェイルセーフについてですが、コンバージョンプロテクションコリドーを超える操作が一部可能になっており、ここを制限することは私も不可能ではないと思いますが、簡単かというと疑問に思います。STOLの時だけ解除となると、WOWスイッチをはじめとした降着装置との連接が必要となるので、システムが複雑化して、対策の費用対効果があまり見込めない上に信頼性を低下させることも考えられます。もちろん数多様がおっしゃるように、高空でヘリモードに不具合があった時に素早く滑空に移行できるようにということもあるでしょうし。

いずれにせよ、本件における副操縦士の操作は不適切としか言いようがありませんが、機長の飛行指揮も不適切で、旋回を行った時点で操作をオーバーライドする必要があったようにも思います。CRMの重要性が痛感させられる事故だと思います。

アルフォンス 様
失速は、普通は速度が低下して初めて起こるものですから、その意味では失速が妥当ではないことは理解してます。
ただ、状況は、もっと悪い方だったらしいので、失速にさえなれなかったと言うべきでしょうか。
固定翼機の失速領域であることは、理解できなかったはずがあり得ないと思います。

CRMという点では、こちらの件はフロリダよりは、まだマシだと思います。
あちらも副操縦士が起こした事故ですが、訓練管理というか飛行指揮がなってないですね。
あれを見ると、オスプレイの機体の安全性より、米軍の安全管理の方が怖くなりました。

数多様

早速のレスありがとうございます。
固定翼屋さんのうんぬんの下りは、当該機のパイロットがという意味ではなく、本記事において、ボルテックスリングに比して、失速が単純な原因とされていることに対してです。ヘリコプターも含め、VTOL機は通常の固定翼に比べれば、翼から揚力が失われる条件は多いんですよ。(勝手に数多様のことを固定翼屋さんなのかな?と思ってしまったものですから)

ところで、前回の記事のコメントで、スワッシュプレートの制御と三舵の切り替えはどうなってるのかな?という疑問を提示しましたが、本件報告書に記載がありましたね。
ナセル角度に応じて徐々に作動の配分が変わって行くという。とすれば、本件事故の場合(背風条件下)、ナセル角度を後退位置で機体を姿勢を修正した上で、ヘリコプターモードのまま、スワッシュプレートにより、ローター回転面を前傾させ、行き足がついたところで、ナセル角度の偏向操作をすれば良かったと言えそうですね。
おそらく、同様の趣旨でフラハンの改訂がなされるんじゃないかなと思います。

アルフォンス 様
ナセル角度に応じて入出力が変更されているという話を見て、ティルトローター技術が、デジタルの賜物だというのが良く分かりましたね。
なかなか実用にならなかった理由が理解できました。

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