尖閣で、もはや示威行為と呼ぶべき中国公船の活動が行われました。
「尖閣:中国船6隻、領海を出る」(毎日新聞12年9月14日)
海保幹部は「警備体制を強化していたために対応できた。中国側は抗議行動のレベルを上げており、今後も警戒を強める」と話す。
海保が、本当に「対応できた」と認識しているなら、それは甚だしい誤解です。(少なくとも、現場にはそんな認識はないと思いますが)
先日、このブログが転載されているBLOGOSと日本財団が主催するイベント「最前線から考える領土問題」に行ってきました。
そこで、一色正春氏が、尖閣周辺の中国公船についての活動について、海保巡視船も中国公船も、お互いにこの海域から出て行けと言っており、占有時間と隻数が違うだけで、”実効支配”が非常に危ういと言ってました。しかもこの状況は、中国が公船の拡張を行っている事と相まって、徐々に中国側に傾きつつあるとも言ってました。
今回の領海侵入事案は、まさに一色氏が指摘したとおりの展開だと言えます。
海保の方が、現場海域に多くの隻数、長くの時間止まっていたというだけで、双方の活動には大差ありません。
同趣旨の分析を載せている報道もあります。
「中国、多数の船で管轄主張…日本の支配崩す狙い」(読売新聞12年9月15日)
近く漁業監視船も派遣する予定で、尖閣諸島海域に多数の政府所属の船を常駐させて尖閣海域での「管轄の実態」を作り上げ、日本の実効支配を突き崩すのが狙いだ。
また、尖閣周辺海域では、既に日本人による漁業ができず、中国人ばかりが漁業を行う状態になっており、この点ではむしろ中国の方が主権を行使していると言えます。
弱腰の政府・外務省が尖閣に人を上陸させない状況において、公船の活動においても、中国の活動の方が活発になれば、もはや実効支配しているのは日本ではなく中国ということになります。
これに対抗するには、エスカレーション・ラダーを上がり、危機を高めなければなりません。
ブロガーを含む保守系の言論人でも、危機管理の観点などから、日本側からエスカレーションさせることに関して否定的な人が少なくありませんが、キューバ危機でも、核戦争直前まで危機を高めたからこそ、危機を終息させ得たのだということを学ぶべきです。
エスカレーションをさせるには、大義が必要ですが、今回の事態を考えれば、国際法的には十分に可能です。
日本語で「魚釣島は中国の領土。本船は正当業務を執行中」と無線で応答してきたという。
前掲毎日新聞記事より
通過とは考えられない航路を採り、「魚釣島は中国の領土」とまで言っているとなると、国連海洋法条約19条の2d「沿岸国の防衛又は安全に影響を与えることを目的とする宣伝行為」に該当しており、もはや無害通航とは言えません。
日本の主権に対する明白な侵害行為であり、国際法的には、自衛権を発動することも可能です。
ただし、ラダーを一気に駆け上がる必要はありません。
中国が引き下がりやすいように、一段づつ上がればOKです。
「政府、尖閣警戒を強化…中国漁船押し寄せ情報も」(読売新聞12年9月15日)
16日以降、大量の中国漁船が尖閣周辺に押し寄せるとの情報もあり、政府は海上保安庁による警戒監視を強化する方針だ。
中国は、明かに実効支配奪取を狙っており、前回同様に上陸させてやる訳にはいきません。警察を事前に上陸させておくことも必要ですが、海保の手が足りないようであれば、自衛隊に海上警備行動を発令させ、海保を手伝ってやることが必要です。
公船だけが来たとしても、海洋法条約に違反する以上、海警行動を発令して、自衛隊によるブラフを行うことも、日本政府の意志を示すことになります。
ちなみに、海警行動は空自にも発令可能です。那覇のF-15に周辺を哨戒させることも可能ですし、対艦攻撃能力の高いF-2を那覇に緊急展開させることも、中国に対し明白なメッセージを与えることができるでしょう。
何よりも、尖閣を渡さないという、日本の意志を明白に示すことが重要です。
以前の記事「「海保法改正による公用船への危害射撃」は不可能」にも書いた通り、例え海警行動が発令されても、自衛隊、海保双方とも中国の公船に対しては実力行使ができません。
「公船の領海侵入に弱い対抗措置」(産経新聞12年9月14日)
監視船は軍艦に準じる公の船に該当。日本が批准する国連海洋法条約では、領海内で正当な理由のない活動をする公船に、退去要求以外は何もできない。同条約は領海や海洋資源などをめぐるルールを定めているが、こうした公船への対抗措置は定められていないためだ。
ですから、日本が海警行動を発令しても、中国が対応を変えない場合は、次のラダーとして、安全保障会議を招集して、自衛隊に防衛出動を発令する構えを見せることも予期しておくべきです。
ここまで行けば、次は実際に防衛出動を発令しての戦争しかありません。そうなれば、アメリカにも関与してもらう必要があり、さすがの中国も考えを改めるでしょう。
中国は、日本による尖閣実効支配の有名無実化を狙っています。
私は再三主張してますが、これを阻止するためには、エスカレーション・ラダーを上がり、危機を演出する必要があります。
もし、そうなれば、中国は不当な邦人拘束等、理不尽な手を使ってくるでしょう。
そのためにも、そして自衛隊を動かすというブラフを有効化させるためにも、国民の強い意志が必要です。
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