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2012年8月28日 (火)

空中回廊形成でイラン空爆ルート

シリア情勢の進展で、シリア正規軍が崩壊しなくても、イスラエルによるイラン空爆ルートができる可能性が出てきました。

以前の記事「シリア情勢混沌化で高まるイスラエルによるイラン攻撃」でイスラエルによるイラン空爆が行われるとしたら、ルートは、ゴラン高原を越えて、シリア-イラク経由になると書きました。
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その際の条件としては、シリア正規軍の防空指揮系統が崩壊する必要があったのですが、全域の指揮系統が崩壊する程の事態にならなくても、シリア北部にルートができる可能性が出てきました。
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その理由は、自由シリア軍が対空戦力を向上させ、シリア正規軍空軍機が自由に行動できないエリアが形成されそうになっていることです。
自由シリア軍の戦闘力が向上。対空兵器を手に入れた場合、「安全地帯」が生まれる可能性も」(アル・ハヤト12年8月13日)

自由シリア軍は、依然として政府軍による上空の支配に影響を及ぼす有力な対空兵器を必要としている。革命勢力が、特に米国製のスティンガーミサイルのような肩から発射する携行式の対空ミサイルを手に入れれば、戦闘力のバランスを一気に覆して有利な戦闘を行うようになるだろう。

観測筋によれば、欧米諸国は、テロ組織に手に渡ることを恐れ、最新兵器のスティンガー・ミサイルを自由シリア軍に提供することにかなり躊躇しているという。このことから、SAM7やSAM14といったロシア製のミサイルを革命勢力に横流しされる可能性もある。なお革命勢力は、そもそもシリア政府軍の兵器庫に保管されていたこうしたミサイルを保有し、使用してきた。


実際に、MiG-21やヘリが撃墜されたとの報道もあります。
シリア:反体制派が戦闘機を撃墜したと主張」(アル・ハヤト12年8月14日)
「軍ヘリを撃墜」=シリア首都で空爆中-反体制派」(時事通信12年8月27日)

前掲アル・ハヤト紙にあるとおり、自由シリア軍は、北部と東部で支配地域を広げています。

アサド政権は、特に東部と北部において広範囲に亘る地域や国境管理所の支配権を失うこととなった。


先日、ジャーナリストの山本美香氏が亡くなったのも、北部の要衝アレッポです。
シリア北部は、隣接するトルコが自由シリア軍を支援していると伝えられ、自由シリア軍が活発に活動しています。
もし、アレッポを自由シリア軍が完全に支配し、何らかの防空火器も装備するようになれば、シリア北部でのシリア空軍の活動は、制限されたものになる可能性があります。

また、イスラエルがシリア北部を通り易い理由が、もう一つあります。
本年6月22日に、トルコのRF-4がシリアによって撃墜されるという事案が発生しています。(シリアは領空侵犯を主張、トルコは公海上を主張)
これがトルコをして自由シリア軍を援助させる理由の一つともなっているため、シリア(特に防空軍)とすれば、トルコ軍機の可能性のある航跡に対して、攻撃行動を行う事を躊躇せざるを得ない状況になっているのです。

こうなると、イスラエルは、シリア北部を奇襲的に空中回廊として使える可能性が出てきます。
そして、冒頭に上げた過去記事に書いたとおり、イラクは防空戦力が皆無ですから、イスラエルから、地中海を通り、シリア北部-イラクと、イランに至るルートが出来上がることになります。
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自由シリア軍が、SA-7等のMANPADSを入手したとしても、SAM圏が形成されるのは低空域だけですから、シリア空軍の活動が完全に阻害される訳ではありませんが、活動が制限されることは間違いありません。
イスラエルも、相当に痺れが来ていますから、これに付け込む可能性は否定できないでしょう。

イスラエルも、相当にやばいことをやる国ですから、もしかすると、トルコの国籍標章を付けて飛ぶ、なんて言う小説顔負けのことをやるかもしれません。

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