Xバンドレーダー追加配備_誤報と意味(その1)
日本南部にXバンドレーダーが追加配備されるそうです。
新聞報道は誤報+突っ込みが甘いので、誤報の指摘と配備の意味(アメリカの真意等)について書いてみます。
長くなるので、2回に分けて掲載します。
「早期警戒レーダーを追加配備へ…沖縄以外で調整」(読売新聞12年8月24日)
日米両政府は、アジア太平洋地域のミサイル防衛(MD)能力を向上させるため、飛来情報を解析する米軍の早期警戒レーダー(Xバンドレーダー)を日本国内に追加配備する方針を固め、調整に入った。
今月3日の米国での森本防衛相とパネッタ米国防長官の会談で早期配備で一致したもので、2013年春にも配備したい考えだ。日米関係筋が23日、明らかにした。
現在、青森県の車力に配備されているAN/TPY-2に加え、もう1カ所に追加配備するそうです。
車力のAN/TPY-2については、過去記事「コレが車力のFBX-Tサイトだ!」を参照下さい。
日本の弾道ミサイル防衛にも貢献する処置ですから、もちろん歓迎すべき話です。
4月13日あった北朝鮮による弾道ミサイル騒ぎ等でも、もし配備されていれば効果があったでしょう。
読売以外でも報道されていますが、やはり否定的論調は見られません。
さて、ではまず誤報について書いておきます。
(以前からこの件をフォローしているJSF氏が週刊オブイェクトで書くかなと思ってましたが、書かないようなので……)
オブイェクトの関連記事「産経新聞がXバンドレーダーの性能を誤って報道」
このニュースのソースはウォールストリートジャーナルのようです。
「日本南部に追加配備検討 米ミサイル探知レーダー 北朝鮮や中国の脅威に対抗」(産経新聞12年8月24日)
また、森本防衛大臣も会見で言及しています。
「米レーダー追加配備を日米で検討 ミサイル探知で日本に」(共同通信12年8月24日)
日米両政府は、発射されたミサイルを正確に追尾できる米軍の「Xバンドレーダー」の日本国内への追加配備に向けて検討に入った。森本敏防衛相は24日午前の記者会見で「どのような形で配備するか、日米間で話を進めている」と述べた。
どの記事も「Xバンドレーダー」と記述しています。
この言葉が、現在車力に配備されているAN/TPY-2と同じモノを指すのか、それとも海上配備Xバンドレーダーの地上配備版を指すのかはっきりしませんが、どうもAN/TPY-2のようです。
レイセオンのAN/TPY-2ページ
AN/TPY-2(ウィキペディアより)
海上配備Xバンドレーダー(ウィキペディアより)
両者は、サイズが決定的に異なるため、探知距離が大きく異なります。
AN/TPY-2は、最大でも2000km程と見られており、もう一方の海上配備Xバンドレーダーでは5000kmにも及ぶと言われています。
冒頭の読売の記事は、この両者を混同しています。
Xバンドレーダーは、弾道ミサイルを探知するため、米国が開発。米軍は06年、青森県の航空自衛隊車力分屯基地に初めて配備した。探知距離は約4000~5000キロ・メートルと非常に幅広く、追加配備されれば、MD体制は飛躍的に強化されることになる。
2009年に産経が犯したミスと同じミスを、読売も犯してしまったようです。
ちなみに、同じミスを韓国の中央日報も犯しています。
「数千キロ監視レーダー基地…米国が日本南部に追加建設も」(中央日報12年8月24日)
早期警報レーダーのXバンドレーダーは数千キロ離れたところにある小さな目標物も識別できるという。米国はすでに06年から日本青森県でXバンドレーダー基地を運営している。
ウォールストリートジャーナルの記事は有料版なので、元記事まではチェックしてませんが、もしかすると、元記事が間違っているかもしれません。
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