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2012年8月

2012年8月31日 (金)

Xバンドレーダー追加配備_誤報と意味(その1)

日本南部にXバンドレーダーが追加配備されるそうです。
新聞報道は誤報+突っ込みが甘いので、誤報の指摘と配備の意味(アメリカの真意等)について書いてみます。
長くなるので、2回に分けて掲載します。

早期警戒レーダーを追加配備へ…沖縄以外で調整」(読売新聞12年8月24日)

 日米両政府は、アジア太平洋地域のミサイル防衛(MD)能力を向上させるため、飛来情報を解析する米軍の早期警戒レーダー(Xバンドレーダー)を日本国内に追加配備する方針を固め、調整に入った。

 今月3日の米国での森本防衛相とパネッタ米国防長官の会談で早期配備で一致したもので、2013年春にも配備したい考えだ。日米関係筋が23日、明らかにした。


現在、青森県の車力に配備されているAN/TPY-2に加え、もう1カ所に追加配備するそうです。
車力のAN/TPY-2については、過去記事「コレが車力のFBX-Tサイトだ!」を参照下さい。

日本の弾道ミサイル防衛にも貢献する処置ですから、もちろん歓迎すべき話です。
4月13日あった北朝鮮による弾道ミサイル騒ぎ等でも、もし配備されていれば効果があったでしょう。
読売以外でも報道されていますが、やはり否定的論調は見られません。

さて、ではまず誤報について書いておきます。
(以前からこの件をフォローしているJSF氏が週刊オブイェクトで書くかなと思ってましたが、書かないようなので……)
オブイェクトの関連記事「産経新聞がXバンドレーダーの性能を誤って報道

このニュースのソースはウォールストリートジャーナルのようです。
日本南部に追加配備検討 米ミサイル探知レーダー 北朝鮮や中国の脅威に対抗」(産経新聞12年8月24日)
また、森本防衛大臣も会見で言及しています。
米レーダー追加配備を日米で検討 ミサイル探知で日本に」(共同通信12年8月24日)

 日米両政府は、発射されたミサイルを正確に追尾できる米軍の「Xバンドレーダー」の日本国内への追加配備に向けて検討に入った。森本敏防衛相は24日午前の記者会見で「どのような形で配備するか、日米間で話を進めている」と述べた。


どの記事も「Xバンドレーダー」と記述しています。
この言葉が、現在車力に配備されているAN/TPY-2と同じモノを指すのか、それとも海上配備Xバンドレーダーの地上配備版を指すのかはっきりしませんが、どうもAN/TPY-2のようです。
レイセオンのAN/TPY-2ページ
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AN/TPY-2(ウィキペディアより)

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海上配備Xバンドレーダー(ウィキペディアより)

両者は、サイズが決定的に異なるため、探知距離が大きく異なります。
AN/TPY-2は、最大でも2000km程と見られており、もう一方の海上配備Xバンドレーダーでは5000kmにも及ぶと言われています。
冒頭の読売の記事は、この両者を混同しています。

 Xバンドレーダーは、弾道ミサイルを探知するため、米国が開発。米軍は06年、青森県の航空自衛隊車力分屯基地に初めて配備した。探知距離は約4000~5000キロ・メートルと非常に幅広く、追加配備されれば、MD体制は飛躍的に強化されることになる。


2009年に産経が犯したミスと同じミスを、読売も犯してしまったようです。
ちなみに、同じミスを韓国の中央日報も犯しています。
数千キロ監視レーダー基地…米国が日本南部に追加建設も」(中央日報12年8月24日)

  早期警報レーダーのXバンドレーダーは数千キロ離れたところにある小さな目標物も識別できるという。米国はすでに06年から日本青森県でXバンドレーダー基地を運営している。


ウォールストリートジャーナルの記事は有料版なので、元記事まではチェックしてませんが、もしかすると、元記事が間違っているかもしれません。

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2012年8月28日 (火)

空中回廊形成でイラン空爆ルート

シリア情勢の進展で、シリア正規軍が崩壊しなくても、イスラエルによるイラン空爆ルートができる可能性が出てきました。

以前の記事「シリア情勢混沌化で高まるイスラエルによるイラン攻撃」でイスラエルによるイラン空爆が行われるとしたら、ルートは、ゴラン高原を越えて、シリア-イラク経由になると書きました。
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その際の条件としては、シリア正規軍の防空指揮系統が崩壊する必要があったのですが、全域の指揮系統が崩壊する程の事態にならなくても、シリア北部にルートができる可能性が出てきました。
Ws000012

その理由は、自由シリア軍が対空戦力を向上させ、シリア正規軍空軍機が自由に行動できないエリアが形成されそうになっていることです。
自由シリア軍の戦闘力が向上。対空兵器を手に入れた場合、「安全地帯」が生まれる可能性も」(アル・ハヤト12年8月13日)

自由シリア軍は、依然として政府軍による上空の支配に影響を及ぼす有力な対空兵器を必要としている。革命勢力が、特に米国製のスティンガーミサイルのような肩から発射する携行式の対空ミサイルを手に入れれば、戦闘力のバランスを一気に覆して有利な戦闘を行うようになるだろう。

観測筋によれば、欧米諸国は、テロ組織に手に渡ることを恐れ、最新兵器のスティンガー・ミサイルを自由シリア軍に提供することにかなり躊躇しているという。このことから、SAM7やSAM14といったロシア製のミサイルを革命勢力に横流しされる可能性もある。なお革命勢力は、そもそもシリア政府軍の兵器庫に保管されていたこうしたミサイルを保有し、使用してきた。


実際に、MiG-21やヘリが撃墜されたとの報道もあります。
シリア:反体制派が戦闘機を撃墜したと主張」(アル・ハヤト12年8月14日)
「軍ヘリを撃墜」=シリア首都で空爆中-反体制派」(時事通信12年8月27日)

前掲アル・ハヤト紙にあるとおり、自由シリア軍は、北部と東部で支配地域を広げています。

アサド政権は、特に東部と北部において広範囲に亘る地域や国境管理所の支配権を失うこととなった。


先日、ジャーナリストの山本美香氏が亡くなったのも、北部の要衝アレッポです。
シリア北部は、隣接するトルコが自由シリア軍を支援していると伝えられ、自由シリア軍が活発に活動しています。
もし、アレッポを自由シリア軍が完全に支配し、何らかの防空火器も装備するようになれば、シリア北部でのシリア空軍の活動は、制限されたものになる可能性があります。

また、イスラエルがシリア北部を通り易い理由が、もう一つあります。
本年6月22日に、トルコのRF-4がシリアによって撃墜されるという事案が発生しています。(シリアは領空侵犯を主張、トルコは公海上を主張)
これがトルコをして自由シリア軍を援助させる理由の一つともなっているため、シリア(特に防空軍)とすれば、トルコ軍機の可能性のある航跡に対して、攻撃行動を行う事を躊躇せざるを得ない状況になっているのです。

こうなると、イスラエルは、シリア北部を奇襲的に空中回廊として使える可能性が出てきます。
そして、冒頭に上げた過去記事に書いたとおり、イラクは防空戦力が皆無ですから、イスラエルから、地中海を通り、シリア北部-イラクと、イランに至るルートが出来上がることになります。
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自由シリア軍が、SA-7等のMANPADSを入手したとしても、SAM圏が形成されるのは低空域だけですから、シリア空軍の活動が完全に阻害される訳ではありませんが、活動が制限されることは間違いありません。
イスラエルも、相当に痺れが来ていますから、これに付け込む可能性は否定できないでしょう。

イスラエルも、相当にやばいことをやる国ですから、もしかすると、トルコの国籍標章を付けて飛ぶ、なんて言う小説顔負けのことをやるかもしれません。

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2012年8月26日 (日)

尖閣切り崩しは国際司法裁判所と台湾から

政府は、尖閣に領土問題は存在しないとの立場です。
ですが、現状を鑑みるに、その主張は既に困難ですし、拘泥する必要もないと思われます。
中国が、領土的野心を引っ込める可能性がない以上、むしろ、国際問題化させた方が、日本の正当性を強く世界に喧伝できると思われます。

具体的には、現在の実効支配を続けることは勿論ですが、竹島以上に国際司法裁判所の活用を考えるべきです。
国際法的には、先占についても、実効支配についても、日本が裁判で負ける要素はありません。(だから中国が提訴に応じるはずはないのですが……)

中国国内は情報統制されているため、歴史の事実などが正しく伝えられていませんが、ICJに提訴されれば、中国版ツイッターで拡散したような法的論拠も、中国国内で知られる可能性が高くなるでしょう。
広東の企業幹部が「尖閣諸島は日本領土」、中国版ツイッターで発言、人民日報記事など証拠挙げ、賛同広がる」(産経新聞12年8月25日)

中国広東省の民間企業幹部が24日、中国版ツイッター「微博」で「1949年から71年まで中国政府は釣魚島(尖閣諸島)を日本の領土と認めていた」と異例の発言をした。日本領有を示す53年1月の中国共産党機関紙、人民日報の記事や、複数の公式地図など根拠を挙げている。


政府が尖閣問題をICJに持ち込まない理由は、おそらく台湾への配慮だと思われます。
私も、断言できる程の知識はありませんが、台湾(中華民国)は、日本政府としても国家承認していませんし、台湾自体が国連に加盟していません(1971年脱退)から、ICJへの負託権限がないはずだからです。

ですが、ICJに負託せずとも、台湾とは政治上の対話で、解決できるはずです。
台湾は、戦略的に、日本との関係を悪化させることはできないからです。

アメリカは、台湾関係法を根拠として、台湾と事実上の同盟関係にありますが、中国に配慮して、直接戦力は配備していません。
台湾有事のための緊急展開戦力は、3MEFを始めとした在沖縄駐留米軍ですし、後方作戦基地は、嘉手納や横須賀を始めとした在日米軍基地です。

尖閣を理由として、日本の対台湾感情が悪化すれば、それによる不利益は、竹島における韓国の比ではありません。

そのため、現在でも台湾の尖閣問題でのトーンは決して高くありません。
竹島・尖閣不法上陸 中国メディア、攻撃的トーンに終始…韓国では「冷静」呼びかけも」(産経新聞12年8月20日)

 与党・中国国民党寄りとされる有力紙、聯合報系列の聯合晩報は16日付の解説記事「進退窮まる台湾」で、「小島の主権争い」のために、地域のバランスが崩れ、対中包囲網が崩壊しかねないと、アジア全体を見渡す視点で危惧を示した。

 台湾については「中国と連携して反日のレッテルを貼られることを恐れる余り、怒りを飲み込んで声を出せずにおり、韓国のような強硬姿勢をとれない」と微妙な立場にあることも示唆した。


尖閣の領有権については、中国に対してはICJ提訴で、台湾に対しては政治解決で、それぞれ切り崩しができると思います。
問題が存在しないという政府・外務省の方針は、間違いでしょう。

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2012年8月23日 (木)

中国による北極海航路開発の軍事的意図

中国の砕氷船が北極海航路を横断しました。
読売、ロイターは、物流ルートとしての価値と資源開発の狙いを指摘していますが、軍事的価値も極めて大きなものがあります。

極地開発に狙い…中国砕氷船が北極海航路を横断」(読売新聞12年8月20日)

 新華社通信によると、雪竜号は7月2日に山東省青島を出航。同22日までにベーリング海峡を越え、ユーラシア大陸北岸沿いを進み、ノルウェー北部沖のバレンツ海を経てアイスランドに達する航路を航行した。


中国の砕氷船が初めて北極海を横断」(ロイター12年8月20日)
Photo
ロイター記事より

中国が、北極海を軍事的に重視している理由は、次の地図を見て頂ければ、理解できるはずです。
Ws000010
ワシントンD.C.を中心とした正距方位図法(Fland-Aleで作成)

赤い線は、ワシントンD.C.から8000kmの円です。
つまり、今回砕氷船が通過した北極海航路のどこからでも、JL-2(巨浪2号)SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)によって米首都を攻撃できるということです。
(JL-2の射程は、8000km以上と見られています)

北極海は、経済的には未開発の海ですが、1958年に米原潜ノーチラス(SSN-571)が北極点に到達してから現在に至るまで、米ソ(ロシア)が互いに潜水艦発射弾道ミサイルの発射ポイントとすべく、原潜の活動地域としてきました。
海氷に覆われた北極海は、氷との衝突の危険性や、他の海とは異なるソナー特性があり、潜水艦にとって、必ずしも行動しやすい海ではありません。(逆に良い条件もありますが)

ですが、ここで行動できるノウハウを習得しさえすれば、水上艦や対潜哨戒機による対潜水艦戦がほぼ不可能な上、敵潜水艦にとっても、海氷が障害や音の反射源になったり、音波が塩分濃度のばらつきで複雑な屈折をしたり、殊に氷縁部においては海氷同士による接触で音を出すため、対潜水艦船は困難が多く、弾道ミサイル搭載原潜(SSBN)にとって、格好の隠れ場所になります。

性能が米潜水艦に劣るであろう中国のSSBNが、アメリカを攻撃するため、太平洋のど真ん中にのこのこ出て行くことは、危険性が高い作戦になります。
一方、北極海に入るためには、チョークポイントであるベーリング海峡を通過しなければなりませんが、ここさえ通過してしまえば、少なくとも太平洋よりは安全です。

また、アメリカが弾道ミサイル防衛を行う上でも、中国本土や太平洋方面だけでなく、北極海からも攻撃される可能性がある場合は、警戒の困難性は、飛躍的に高まります。
関連過去記事「脅威の旧式ミサイルJL-1(巨浪1号)

このように、北極は中国SSBNにとって、新天地である訳ですが、前述の通り、活動には困難が多いため、砕氷調査船による海図作成や海氷観測データの整備が不可欠です。
今回の北極海横断は、通商航路開発や資源開発だけでなく、これらの観測データ取得も目標としていると見るべきです。

なお中国は、難航が伝えられるJL-2(巨浪2号)SLBMの開発も進めています。
中国が相次いで核ミサイル実験??? 」(海国防衛ジャーナル)

中国は、通常戦力による作戦能力だけでなく、弾道ミサイル開発を始めとした核戦略も着々と推し進めています。

日本のマスコミは、ニュースの経済的側面ばかり見ますが、軍事的観点で見ると、同じニュースでも全く違う価値になります。
ニュースを軍事面で見る目も必要です。

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2012年8月21日 (火)

防衛白書と中共の求心力

今年の防衛白書が決定されてます。
報道によると、やはり中国関連の記述が多いようです。

その中でも、注目だったのか産経の記事です。
中国の党軍関係の変化「危機管理上の課題」」(産経新聞12年7月31日)

 かねて懸念を示してきた軍事力の透明性に関し「意思決定プロセス」でも透明性が欠如していると指摘。(1)共産党指導部と人民解放軍との関係が複雑化(2)対外政策決定での軍の影響力が変化-との見方も示した。

 古代ギリシャの市民制度が、兵役と密接に関連していたことを紐解くまでもなく、中ソ国境紛争以後は、ほぼ国内(チベット等の占領地区を含む)治安維持しかしてこなかった人民解放軍が、スプラトリー諸島での権益確保に貢献していることなどから見ても、人民解放軍の発言力が高くなることは、当然の結果と言えます。
武力を背景とした実行支配で領有権を奪取しようとするのですから、人民解放軍が動かなければ何ともしようがないからです。

その一方で、党権力の地盤沈下も起こっています。
四川省暴動事件 一党独裁のほころび露呈」(産経新聞12年7月19日)

政府当局は一応、公安警察を現場に派遣して警戒に当たらせたが、警察部隊は本格的な実力行使に踏み切らなかった。そして、共産党什●市委員会の李成金書記は、くだんの金属工場建設の中止を発表した。

 今の中国では、当局が力ずくで民衆の反乱を押さえ込むようなことはそう簡単にできなくなっている。


人民解放軍の発言力が高まる一方で、中国共産党の権威・権力は低下しています。

このことから、冒頭の記事は、防衛白書が人民解放軍による暴走に対して警鐘を鳴らせていると報じています。

 白書は、こうした中国の党軍関係の変化は「危機管理上の課題としても注目される」と結論づけた。日本にとって危機管理の対象として連想すべきは、東シナ海での事態だ。一昨年の沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件のような「偶発的」な衝突が、党の統制を無視して軍主導で「意図的」に引き起こされる危険性がある-。


私には、まだまだ人民解放軍が、党の統制を無視して動くとは思えませんが、以前より、党が軍の意向に影響を受けやすくなっていることは間違いありません。
やはり、それだけ中国は強硬な手段に出やすくなっていると見るべきでしょう。

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2012年8月19日 (日)

天皇陛下に対する自衛隊の認識と感情

大統領の竹島訪問と天皇陛下への謝罪要求で対韓感情が悪化してますが、韓国メディアが指摘する通り、原因の比重は、竹島よりも謝罪要求の方が遙かに影響が大きかったように思います。

韓国メディア、李大統領批判広がる 天皇陛下謝罪要求「日本の提訴招く」
(12年8月19日)

日本研究者の分析として、天皇は国家の求心点で侵すことのできない尊い存在と考える日本において、大統領の謝罪要求は「深刻に受け止められる可能性がある」と伝えた。その上で、「ICJへの提訴など日本が強硬なのは、独島訪問よりも謝罪に言及したことに憤慨したからだ」と評した。


今の日本国内の沸騰ぶりは、正直言って驚きです。
竹島問題への一般の関心は、決して高いとは言いかねる状況で、JINROを飲み(同社がサイバー独島士官学校を支援しているにも関わらず)、K-POPを聞き、韓国ドラマを見ているのが大半の日本人だったからです。

実際、大統領は初めてでも、韓国の国会議員は、何度も竹島を訪れています。それでも、外務省も、日本の世論も、ほとんど無視でした。

それと比較すると、やはり今回の沸騰ぶりは、天皇陛下に謝罪しろと発言したことが大きいのだろうと思います。

さて、ちょうど良い機会なので、天皇陛下(及び皇族の方々、以下単に天皇陛下と記述)に対する自衛隊の認識について、書いてみたいと思います。

なぜ、こんな記事を書こうかと思ったかと言えば、一般の方の自衛隊のイメージが、結構というかかな~り誤解を受けていると思われるからです。
ただし、以下の記事は、空自に限った話なので、陸海ではちょっと違うかもしれません。

自衛隊における天皇陛下に対する認識は、実は相当ドライです。
政治関与が禁じられているせいもあるかもしれませんが、私が自衛隊において、天皇陛下に絡む教育を受けたのは、儀礼のやり方についてのみです。(敬礼等がその他VIPとはレベル異なるため)

尊敬しなければならないとか、敬意を払わなければならないと言った教育は、一切ありませんでした。
天皇陛下に関わる発言は、政治的行為とも取られかねないこともあり、むしろタブー視されていたように思います。

右翼の街宣車等から連想されるのか、一般の方の自衛隊に対するイメージは、天皇陛下に対して、特別の敬意を持っているように思われているかもしれませんが、それは誤解です。

私の体験としても、昭和天皇崩御の際、自衛隊員ではない友人から記帳に行かないかと誘われた際、私が面倒だからと言って断ると、そんな事で良いのかと怒られた記憶があります。

ただし、長く自衛隊に勤め、特別な敬礼を行ったり、国家に尽くす事に誇りを感じるようになると、国家の象徴である天皇陛下に対しては、自然と敬意を払うようになるように思います。

何の時、どこでだったか良く覚えておりませんが、休日に、天皇陛下が基地の近傍を通過することになりました。
そのため、基地ではと列(直列不動で並ぶ)を行うことになり、各部隊何人というような割り当てが来て、沿道に並んだのですが、僅か一瞬のために休日に出てくる(もちろん出勤扱いになる訳ではありません)際にも、要員を集めることに特に苦労はせず、不平を言うこともなく並んでおりました。

ただ、今回のケースを見ていると、そう言う自然な敬意は、何も自衛官だけではないのかなとも思います。

謝罪要求が首相に対してされたのなら、そして、もしそれを受けて首相が謝罪するようになったとしても、これほど対韓感情が悪化することはなかったでしょう。
政府が侮辱されても、自分のことのようには感じなくても、天皇陛下が侮辱されると、自分が侮辱されたように感じるのかもしれません。

実は、多くの国民が、自分で考えている以上に、愛国者なんでしょうね。

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2012年8月17日 (金)

レンガ投付は適法_政府に説明責任と情報公開の責任

尖閣への上陸に絡んで逮捕された14人は、国外退去となりました。
14人を強制送還へ 9人の入管引き渡しを完了」(産経新聞12年8月16日)

これが、適切な処置であるのか、政府は説明する責任があります。
野田首相自らが、「法令にのっとり厳正に対処する」と発言しているからです。

過去の不法入国事案等と比較し、不法入国しか問える罪がないのであれば、確かに強制送還だけでも、やむないでしょう。
ですが、それだけでは無かった疑いが強く持たれます。

 海上保安庁によると、巡視船は抗議船の活動家らかられんがやボルトを投げられ、船体の一部が破損した。ただ損傷はわずかで、それ以上に巡視船を接触させ進路を変更させようとした際にできた損傷の方が大きかったと判断。巡視船の乗員に直接危害を加えようとしたとは認定できず、海保幹部は「公務執行妨害や器物損壊といった容疑は適用しない」と話している。


ボルトは大きさによりますが、レンガなど当たった日には、死んでもおかしくありません。
この情報だけでも、公務執行妨害等にあたらないとは到底考えられませんが、明確な証拠がある以上、政府はそれを国民に説明する責任があります。

海保はれんがを投げられたような場面を撮影したビデオがあることを認めた。石破茂前政調会長らは藤村修官房長官にビデオを公開するよう申し入れた。


今回も、流出に期待するしかないのでしょうか。
これがまかり通るのであれば、今後は首相官邸でデモをされる方々は、官邸にレンガやボルトを投げ込んでもOKでしょう。

また、今回の逮捕では、沖縄県警があらかじめ尖閣に上陸し、不法入国者を逮捕するという国家権能の発露として警察権行使を行っています。
尖閣で香港の活動家ら14人逮捕 不法上陸容疑などで」(朝日新聞12年8月16日)
Photo
同記事より(琉球朝日放送撮影)

これは、日本が尖閣を実行支配している証左であり、日本としてアピールすべき事項です。
ですが、この映像も、政府はちっとも宣伝しません。
是非、沖縄県警のHPに載せてもらいたいと思います。

また、純粋に推測ですが、今回逮捕された不法入国者たちの行動で、面白い点が一つありました。

彼等は、逮捕され署に連行される際は、カメラに対し、盛んにアピールしていましたが、その後入国管理局に移送される際はおとなしくしていました。
この間、何が在ったかと言えば、中国の政府関係者が面会しています。

その結果、活動家らは不服申し立てをせず、強制送還となっています。
恐らく、彼等は逮捕、起訴される覚悟を決めていたでしょう。
ですが、中国政府関係者から、不服申し立てをして起訴されれば、かえって日本の実効支配を強める結果になってしまうこと、及び日中関係の悪化が避けられないことから、不服申し立てをしないようお灸をすえられたのではないかと思われます。

なお、琉球朝日放送撮影の動画は次のリンクに、ほんの数秒だけですが写っています。
尖閣魚釣島上陸14人の活動家達は
琉球朝日放送ナイスです。

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2012年8月16日 (木)

国際司法裁への提訴不成立の構図_先占と実効支配

政府が竹島の領有権に関して、国際司法裁判所(ICJ)への提訴を検討しています。

竹島領有権で国際司法裁判所に提訴検討…外相」(読売新聞12年8月11日)

この動きに期待する向きもありますが、紛争当事国の両国が、提訴に同意し、成立することはほとんどありません。

日本の提訴に韓国が同意しないことで、主張に自信がないからだと主張することは可能で、その意味において、提訴は無意味ではありません。

ですが、国際司法裁への提訴合意は、基本的に不成立になる構図があります。その意味では、提訴はほとんど無意味と言えます。

領土取得要件には、譲渡や添付もありますが、竹島で問題になっている要件は先占です。
先占とは、国家が領有意思をもって無主地を実効的に占有することですが、最近では、何をもって占有とするかが争われることも多く、国際司法の場で、実効支配の有無に、より重きを置いた判断がなされるようになっています。
参考:竹島領有権紛争の焦点――国際法の見地から

近年に至り、当該領土に対する支配の実効性を更に重視した「国家権能の平穏かつ継続した発現」という権原が、国際判例を通じて示されている。これは、行政権の行使など国家権能の発現を証明することができるかどうか、紛争当事国のいずれがより多く(国家権能の発現の)証拠を示せたかによって領有権を判定する、歴史的主張よりも支配(主権行使)の実効性が重要、実効性を伴わない主張は争われると、いうことである。


一言で書けば、国際司法の場で、「先に占有」したかどうかよりも、「実効支配しているか否か」が重要視されるようになっている、ということです。

こうなると、実効支配している側は、実効支配が長引けば長引くほど、司法判断が有利に働くことになります。
つまり、国際司法裁判所(ICJ)に提訴されても、実効支配している方としては、同意しない方が、司法的に有利になるということが、構図として存在する訳です。

このため、竹島に関して、日本が何回提訴したとしても、韓国は応じません。

ですから、国際司法裁判所(ICJ)に期待をすることは、止めた方がいいでしょう。

むしろ、近年になって韓国が実効支配していることは明かですから、下手をすると実際の裁定で負けることもありえます。
韓国が警察を常駐させようとも、民間人を居住させようとも、各種施設を建設しようとも、全て指を咥えて見てきた訳ですから……

韓国が、提訴に応じるとしたら、それは「もう負けないだろう」と思った時です。
そんな状況になれば、日本として提訴に応じる訳にはいきませんが……

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2012年8月14日 (火)

朴選手のメダル剥奪・五輪追放を求める

オリンピックのサッカー日韓戦で、韓国の朴種佑選手が、竹島に関して政治的表現を行ったとして問題になってます。
IOC委員長「朴種佑は政治行為、旭日旗ユニフォームは…」」(中央日報12年8月14日)

この件に関して、日本は、朴選手のメダル剥奪、五輪追放を含む、考えられる限りの強硬な懲罰を求めるべきです。

朴選手の行為が、五輪憲章に違反し、オリンピックの精神を汚す行為だから……ではありません。

もちろん、その通りなのですが、正直言って、そのあたりは興味がありません。
この件で、日本がごねることで、韓国が領土問題は存在しないと主張する竹島の領有権紛争を、世界に宣伝できるからです。

上記リンクの記事を見ると、朴選手の処分は、五輪追放どころか、メダル剥奪にもならないようです。
これを聞いて憤慨する方もいるでしょうが、これはむしろ喜ぶべきことです。厳しい処分が出されたにも関わらず、日本がごねれば、日本の印象が悪くなりかねませんが、処分が軽ければ、ごね放題だからです。

個人的な気持ちを書くと、朴選手は、ただ愚かなだけでしょうから、実際にメダル剥奪等となればかわいそうな気もしますが、竹島の不法占拠を続ける韓国に遠慮はできません。
日本としては、朴のメダル剥奪と五輪追放など厳しい処分を求め、竹島に領有権紛争が存在することを、世界にアピールすべきです。

それにしても、朴選手は、五輪憲章を知らないだけでなく、日本にとって、またとない宣伝の機会を作ってくれたのですから、2重の意味で愚かです。

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2012年8月13日 (月)

自衛隊及びマスコミにナチスシンパが潜入?

オリンピックにおける韓国選手の政治的パフォーマンスに対して、韓国では旭日旗の方が問題だとして、話題になっています。

「韓国ネットユーザーら、「旭日旗のほうが問題だ」(中央日報12年8月12日)

日本が第2次世界大戦当時に使った旭日旗が五輪競技場に登場した写真とともに説明が加えられた。書き込みした人は、「旭日旗は第2次世界大戦時の日本の国家主義とナチズムを象徴する。人種差別主義と帝国主義の象徴である旭日旗の使用をIOCが認めるのは受け入れられない」と説明した。

  現在ツイッターなどでもこれに対する反応が熱くなっている。あるネットユーザーは「旭日旗は欧州の国が競技する時にナチスのマークを持って振るのと変わらない行為」とし、また別のネットユーザーも「欧州でナチスを象徴する旗を掲げ応援するのは想像もできないこと」と主張した。


ところが、私が独自に調べたところ、この旭日旗が、海上自衛隊内でも掲揚されていることが判明しました。
Jieikanki
wikipediaより

つまり、海上自衛隊内には、ナチズムや人種差別主義のシンパが蔓延っているようなのです。
これは、自衛隊内に危険分子が潜入することを防止する情報保全隊の大失態です。
田母神元空幕長や佐藤正久議員を追いかけるよりも、こちらの方が遙かに重大な事態にも関わらず、なぜ放置されてきたのか、はなはだ疑問です。

ところが、ところがです。
私は、この原因には、自衛隊の健全性を監視すべきマスコミの姿勢にも問題があるのではないかと懸念してきましたが、何とこの度、マスコミ内にも、同様のナチズムや人種差別主義のシンパが入り込んでいることを強く推察できる証拠を入手しました。
マスコミ内でも、特に政治的な影響が大きい大手新聞社の朝日新聞が、旭日旗を意匠に取り入れた社旗を採用していることが判明したのです。
Asahi1
Asahi2
wikipediaより

これでは、正常な監視機能が働くはずもありません。

海上自衛隊と朝日新聞社は、諸外国から強い非難にさらされること必定です。

迅速な対応が必要でしょう。

(本記事はジョークです。くれぐれも本気にしないで下さい)

2012年8月10日 (金)

李大統領の竹島訪問阻止は可能だった

韓国の李明博大統領が竹島を訪れました。
大統領の訪問は、求心力を失った大統領の国内世論対策と見られており、日本政府・外務省にとって、かなり以前から予見されていたはずの事態です。
ですが、それを防ぐ手立てを講じることはなく、形ばかりの訪問中止要請をしただけで、結果として、指を咥えて見ていただけに終わっています。

これを受けて、大使を召還すべきとか、いっそ断交すべきと言った意見も多いですが、そもそもその前に、訪問を断固阻止させるべきでした。
実際、阻止することは可能でした。
以前にも書いたことのある、強力なカードが日本にはあるからです。

しかもそれは、表面上は、何ら事を荒立てずに済む方法でした。
具体的には、非公式の外交ルートで、アメリカに噂を流すだけです。
「大統領が竹島を訪問すれば、対韓世論が悪化し、日本政府は、韓半島有事への周辺事態法適用が不可能と考えている」という内容です。

何故これで竹島訪問を阻止できるかと言えば、日本が周辺事態法の適用をしなければ、米軍は十分な後方支援ができなくなるため、米兵の死傷者が増大するからです。

そもそも、周辺事態法自体が、アメリカが作らせたものです。
1994年、核開発問題により、アメリカが北朝鮮の爆撃を検討するほど危機が高まりました。そのため、アメリカからの圧力を受けて、日米防衛協力の指針(日米ガイドライン)が見直されました。
そして、それを国内法制化するために、1998年に制定されたのが周辺事態法です。
早い話が、周辺事態法は、米軍が十分に力を発揮するための後方支援の法律な訳です。

アメリカ政府は、米兵の死傷者が多くなることは望みません。
日本が周辺事態法を適用しない恐れがあるならば、李大統領に対して、何としてでも竹島訪問は止めろと言ったでしょう。

政府・外務省が、交渉において、こんな簡単なテコの原理を使えない事には、毎度のことながら驚かされます。

ですが、実際に使えないようです。
これからは、実際に周辺事態法の適用に反対運動を起こしましょう。
北朝鮮が韓国に侵攻しても、日本は米軍に協力することで、韓国を支援する必要はありません。
それによって、韓国人はもとより、米兵の死傷者が増えようと、核搭載ノドンを、日本に打ち込まれる理由を作ってやる必要などありません。

また、実際に、周辺事態法適用への反対運動が起これば、アメリカでも、大きな関心が持たれることになります。
そして、それは、日本政府が主張する「竹島をめぐる紛争が存在」をアメリカ世論に訴えることにもなります。
韓国は、竹島の呼称問題や領土問題は存在しないとの立場です。
日本としては、この問題を国際世論に訴えるためにも、周辺事態法の適用に反対しましょう。

(本当に北朝鮮が侵攻したら、座視している訳にはいきませんが……)

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2012年8月 8日 (水)

東京都の尖閣上陸と事前対応策

東京都による尖閣上陸を政府が認めるようです。
尖閣上陸、政府が容認検討…都が近く申請」(読売新聞12年8月1日)

政府・外務省に任せておいたら、永久に何もしないでしょうから、都の動きには大賛成です。
問題は、中国の反応とその対応策です。

武力をもって阻止しようとしてくる可能性は低いと思われます。
もし、実際に衝突の可能性が高くなれば、軍事衝突を望まないアメリカは、衝突前に空母を派遣する等、介入の構えを見せるでしょう。
そうなれば、1996年の台湾海峡ミサイル危機のように、中国とすれば、恥をかかされた上、逆効果でしか無くなります。
歴史的にも、国際法的にも、中国の主張は根拠に乏しいため、結果的に、ここで事を大きくすれば、中国の非道が世界的に広まる結果になるからです。

となれば、打ってくる手は、嫌がらせと日本の世論に対する揺さぶりです。
尖閣諸島中国漁船衝突事件のように、関係のない邦人を拘束したり、レアアース等の輸出を止める等の措置をとってくる可能性が高いと思われます。

これらを、完璧に封じる手はないでしょう。
ですが、中国の無法ぶりを世界に向けてアピールすることで、いくらかは予防措置がとれると思います。
例えば、報復措置が予想されるとして、事前に中国に対する渡航自粛要請を出す、経団連を通じて、企業に注意を促す等です。
これを事前行っておけば、「それ見たことか」中国は無法国家だと宣伝できます。

中国としても、経済が減速気味であることもあり、チャイナリスクを顕在化させるこれらの措置は、諸刃の剣でもあります。
何もしてこないことはあり得ませんが、いくら一党独裁とは言え、出来ることは限られているでしょう。

日本としては、何より国民全体が、強い意志を持って望むことが必要だと思われます。

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2012年8月 5日 (日)

低酸素症と航空生理訓練

低酸素症の発生で、運用制限の課されていたF-22ですが、制限の緩和を受け、嘉手納にローテーション配備されるそうです。
F22嘉手納暫定配備へ 不具合対策未完了」(沖縄タイムス12年7月26日)

さて、ちょうどいい機会なので、以前に書くと言っていた低酸素症(Hypoxia)と航空生理訓練について書きます。

低酸素症は、高空を飛ぶ飛行機に搭乗したり、高山に登ったりした場合、あるいは火災や重い気体が滞留した空間に入った場合に発生します。(いわゆる高山病も低酸素症の一種です)
その名の通り、低酸素状態になったが故に生じる症状です。
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パイロットのための航空医学 低酸素症より

低酸素症が怖いのは、自覚症状が乏しい事と、知能活動の低下が起こるため、自分が低酸素症になっていることを自覚することが困難なことです。
後で書く低圧訓練の際、私自身が体験した低酸素状態では、ちょっと顔がほてった感じがしたのみでした。
ですが、この時、999から1づつ引いた数を紙に書かされていたのですが、途中から、めちゃくちゃな数字を書き、文字は乱れ、最後は意味不明の線となってました。
もちろん、本人は、ちゃんと書いていたつもりでした。
そのまま、あと1分も低酸素状態が続いていたなら、危険を感じることもないまま、意識を失い、最終的には死んでいたでしょう。

また、航空機操縦に関しては、自覚症状が乏しいだけでなく、意識を保てる時間が、かなり短いことも問題です。
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パイロットのための航空医学 低酸素症より

高高度で巡航するとなれば、高度は40000ftくらいになりますが、この高度での有効意識時間は僅か30秒です。

低酸素症は、自覚が極めて難しく、それでいて死に直結するモノなので、非常に危険性の高いトラブルです。

そのため、航空自衛隊では、戦闘機やジェット練習機に搭乗する場合、この低酸素症に対応するための訓練が義務づけられています。
後席に搭乗するだけでも必要なため、部外者がこれらの機体に乗る際にも必要です。(ブルインに乗ったキムタクもやったんでしょう)
この訓練は、航空生理訓練と呼ばれており、その中でも低酸素症に関わる訓練項目は、低圧訓練と呼ばれています。
参考:航空生理訓練及び飛行適応検査の実施に関する達

ちなみに修了者は、こう言うものを貰えます。これがないと、戦闘機等には乗せて貰えません。
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入間基地HPより

自衛隊には、降下塔・パラシュートでの降下訓練やディッチングトレーナーでの脱出訓練等、危険でかつ強い恐怖感を抱かせられる訓練は、多々あります。

それに比べると、低圧訓練は、ちょっとドキドキする程度のもので、さして怖くはありません。
ですが、実際に死の直前まで行く体験をさせられるという点では、自衛隊の訓練の中でも最も怖い訓練とも言えます。(ちゃんと管理されているので、危険ではありません。事故が起きた話も聞いたことがないです。耳が痛くなる程度は、当然ありますが)

問題の低圧訓練の訓練内容は、100%酸素を呼吸しながら高度36000ftと同程度まで減圧した後、マスクを外し、低酸素の状態を体験させる訓練や、高高度で与圧が壊れた場合を想定した急減圧訓練を行ないます。
Sf017_1_03
入間基地HPより

これを体験すると、低酸素が如何に恐ろしいかが分かります。
私自身も、急減圧が起きて、大きな音がしたり、周囲の空気が霧で真っ白になったのでもなければ、恐らく気付かずに死ぬだろうなと思いました。

また、これを体験すると、戦闘機に乗るということが、如何に恐ろしいものかも分かります。
戦闘機でも与圧はありますが、完全な与圧にすると、機体を作りあげる上でも大変ですし、被害を負った時に、急減圧でパイロットが戦闘を継続できなくなるため、圧力は十分ではありません。そのため、100%酸素の呼吸可能な酸素マスクを着けて搭乗します。
この酸素マスクですが、装着要領が悪く、酸素が漏れるような状態ですと、ただただ移動するだけのフライトであっても、低酸素になって、目的地に着いたときには死んでいたということにもなりかねないのです。

低酸素症というのは、こう言った怖いものですから、F-22がこれだけで飛行停止になったり、運用制限が課されることも、当然なのです。

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2012年8月 2日 (木)

自衛隊への協力は、企業にとってのCSR活動

陸自の補給統制本部が、民間小売り企業と災害時の物資供給に関ついて協定を結んだそうです。

陸自補統 「イオン」など小売2社と 補給体制の強化図る 災派時の糧食など 緊急調達へ協定」(朝雲新聞12年6月28日)
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同記事より

 東日本大震災では全国的に物流が混乱し、災害派遣部隊に補給する糧食や衣料などの調達が困難を極めた。被災者への炊き出しを優先し、隊員は長期間にわたり非常用糧食で食事をとるなど被災地に展開する部隊の補給状況が改善するまでかなりの時間がかかっている。
 今回の協定締結によって、大規模災害発生時には主に隊員や被災者らへの食料や衣料品、復旧に必要な物資が供給される見通しで、被災地に展開する部隊の円滑な救助や復旧活動に欠かせない後方支援体制が強化される。


大規模小売り企業と組むことで、自衛隊を通じて、実質的に配給に近い態勢を構築することができるようになるのかもしれません。

 セブン&アイ・ホールディングス総務部グループ渉外シニアオフィサーの成田庄二氏は、「国民の命を守る自衛隊は私たちの誇り。災害派遣で活躍した自衛隊をサポートできるのは感慨深い。微力ながら役に立てる活動をしていきたい」と述べた。


そして、このニュースが一つのエポックメイキングだと思える点がこのコメントです。

今まで、民間企業が自衛隊を強い繋がりを持つことは、企業にとってマイナスイメージととられる事の方が多かったと思います。
ですが、このコメントに見られるように、自衛隊に協力していることが、企業にとってのCSR(企業の社会的責任)活動になり得る時代になったということです。

何ともはや、変われば変わるものです……

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