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2012年7月20日 (金)

書評「塩の街」「空の中」「海の底」

有川浩(ありかわひろ 女性)の自衛隊三部作と呼ばれる作品群です。
ただし、三部作とは言われているものの、3作品とも、全く関連はありません。(なので、どれから呼んでもオッケーです)

「塩の街」(陸自に焦点。ただし主人公は空自P)

「空の中」(空自)

「海の底」(海自)

となっているが故、自衛隊三部作と呼ばれているようです。
(陸・海・空の順でないのは、刊行順だからです)

3作とも、ジャンルで言えばSFで、SF的設定の中で、自衛官が活躍する小説となっています。
自衛隊ではなく、米軍だったなら、ハリウッド映画にありそうなストーリーとも言えます。

著者の有川浩は、wikiでもライトノベル作家とされていますが、筆致は軽めなものの、ストーリーや登場人物は、ちっともライトノベル的ではありません。
ただし、3作品とも人がバタバタと死んで行きますが、それでありながら、作品に重苦しさを感じさせないところには、ライトにしようという作者の意図は感じます。

そして、3作品に共通して見事なのは、深刻なストーリー展開にも係わらず、全く違和感を感じさせずに、しっかりとラブストーリーになっている所です。
これも、ある意味ハリウッド的で、映画「トップガン」にも通じるところがあるように思います。
有川氏は、ラブストーリーの名手と言われていますが、これらの作品の中でも、それは遺憾なく発揮されている感じです。

自衛隊の行動や装備に関しては、間違いも少なからずありますが、自衛隊が描かれる小説としては、良く調べて書いてある部類だと思います。
ですので、ミリタリーファンでも、あら探しが趣味でなければ、十分に楽しめると思います。

ハリウッドを引き合いに出してますが、それだけ優れたエンターテイメントだということです。
「ミリタリーにラブストーリーをかぶせるんじゃねえ!」という硬派な方でなければ、読んで損はないでしょう。

なお、外伝的続編として「クジラの彼」、「ラブコメ今昔」も刊行されています。


以下、各作品について、少し細かく書きます。
ネタバレ有りなので、未読の方はご注意下さい。

「塩の街」
著者のデビュー作であり、電撃ゲーム小説大賞(現在の電撃小説大賞)で大賞をとった作品です。
電撃小説大賞と言えば、押しも押されぬライトノベルの小説賞な訳ですが、先にも書いたとおり、ちっともライトノベルではありません。
そのため、一旦は電撃文庫で刊行されながら、その後に大幅加筆され単行本化された上、現在は角川文庫に収蔵されるという、変った出版過程を経た作品になってます。
(ただし、今でも、単行本版どころか電撃文庫版も新品で手に入ります。恐るべし……)

内容としては、疫病?による崩壊後の世界を描いた作品で、自衛隊の活躍も、戦闘というより治安維持や災害派遣的です。
3作品の中では、最もラブストーリー色の強い作品です。

「空の中」
最初から、単行本としての刊行された作品で、いわゆる(知的生命体との)ファーストコンタクト物のSFです。
SFとしては、定番のネタですが、良く練られており、ベタなSFファンの観察眼にも耐える作品だと思います。
3作品の中では、最もSF色の強い作品です。

「海の底」
これも単行本です。
SFはSFですが、怪獣物と呼んだ方がしっくり来る作品で、停泊中の潜水艦内に閉じ込められて、というより閉じ籠もった自衛官と子供達の交流?を描いた作品と言えます。
設定は、なんとなく、「ガメラ2 レギオン襲来」を彷彿させるところがあります。
3作品の中では、最もミリタリー色の強い作品です。

個人的には、「海の底」がお勧めですが、SFファンなら「空の中」がいいかもしれません。

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コメント

自衛隊モノの女流作家では高野由美子さん(うろ覚え)というかたもいましたけど、亡くなられてしまい結構経ちます。
ベトナム戦争時代にイントルーダー乗りだった作家スティーブン・クーンツの作品の翻訳で知られる翻訳家でしたが、自らも「マリン・スノー」という航空冒険小説を手懸けたりし始めたんですが、作家としてこらというときに亡くなられてしまいました。

有川先生には、またまだこれからも頑張ってほしいです。

ひまじん 様
「マリン・スノー」は、読んだことありませんが、機会があれば手にしてみます。

有川氏は、まだまだ自衛隊ものを書いてくれそうですね。

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