ブログランキング&ツイッター

  • 軍事・防衛 ブログランキング
  • ツイッター

« PSI航空阻止訓練の実施と法的枠組み不備 | トップページ | 屋根の上の地対空ミサイル……東京での五輪開催に意外な障害 »

2012年7月14日 (土)

予備自制度が槍玉に……見直し私案

財務省が、予備自衛官制度を槍玉に挙げています。
予備自衛官の見直し必要、震災出頭103人だけ」(読売新聞12年7月3日)

財務省は3日、2012年度予算の無駄遣いを点検する予算執行調査の結果を発表した。

 見直し対象には、防衛省の予備自衛官制度(予算額80億4900万円)も挙がった。


「財務が、何てことを言うんだ」と言うところです。
普段なら……
ですが

予備自衛官のうち、東日本大震災で出頭可能と回答した人は4497人と全体の17・1%にとどまり、実際に出頭できたのは103人だけだった。


というデータがあると、何とも反論がし難いです。
財務でなくとも「存在意義のある制度なのか?」という疑問は持つでしょう。
出頭に応じることが出来なかった人数分も、手当や報奨金も支払われている訳ですし、招集に奔走した地本の方の労力だって非効率だった訳です。
制度を廃止して、その分の予算を常備自衛官に回したらどうだ、という議論が起こることはやむを得ないと思われます。

と言うか、今まで書いた事はありませんでしたが、正直言いますと、私は予備自衛官制度には、現役時から疑問を持ってました。
招集に応じるのか、という疑問ではなく、たかだか年間数日の訓練だけで、自衛官として役に立つのか、という疑問からです。

ただし、これには、私が空自だったという点もあるかとは思います。
空自の場合、一通りの取り扱いを覚えるだけでも大変な器材が多く、常備自衛官であっても、空士では戦力とは良い難い部分が多々あります。ぶっちゃけ言えば、3曹昇任前後になって、やっと使い物になるというのが実情です。

ですので、予備自は、基本後方地域で使うとはなっていても、果たして本当に使い物になるのかは疑問を持ってました。
ただし、これも正直に白状しますと、実際に予備自の方といっしょに訓練を行なった経験はありません。ですので、予備自の方に「馬鹿にするな」とのお叱りを受ける可能性はあると思っています。

また、空自だから、とも書きましたが、予備自制度に熱心なのは、言うまでも無く陸自です。
即応予備の制度を陸自だけが設けていることからも、この点は明らかです。
陸自の場合は、空自よりも予備自の活用ノウハウが整っており、より有効な活用もできるのでしょうし、必要性も高いのだと思います。

ですが、結果的に出頭率0.4%では、制度として問題があると言わざるを得ないでしょう。

では、どうすべきか?
企業や国民の理解を得るための施策は、今までもさんざん考えられてきたでしょう。
私が今更考えるまでもないと思います。

予備自制度を廃止して、多少でも常備自衛官を増やすことは可能でしょう。
ですが、これだけでは、効率的で弾力的な人的戦力の確保という、予備自制度の趣旨は満足できません。

私は、有事及び大規模災害時に適用する、自衛官の速成プログラムを、今よりも真剣に整備して、予備自制度に替えるべきだろうと考えています。
空自の場合で言えば、教育隊で行なわれている3ヶ月の新隊員課程を圧縮し、1ヶ月程度で部隊に送り出すのです。

もちろん、現在でもこうした速成プログラムは考えられています。
ですが、隊舎の確保など、真剣に速成プログラムを行なうために必要なリソースは、基本的にありません。
ですが、これらを用意すれば、事態が発生する前から入校していた学生は、一ヶ月以内に部隊に送り込める計算になりますし、更に一ヶ月あれば、もう1期分の新米自衛官を部隊に送り込むことができます。

そして、事態が収束すれば、以後の採用を抑制すれば良いのです。

流石に、予備自ほどの即応性は確保できませんが、今回の震災でも、予備自衛官の招集にそれなりの期間を要したことを考えれば、この速成プログラムでの制度代替でも、平素は予算をかけることなく、有事に同等以上の人員確保ができるのではないかと思います。

予備自衛官制度があっても、出頭率が0.4%しかないのであれば、十分に有効な代替制度となり得るのではないかと思います。

にほんブログ村 政治ブログ 軍事・防衛へ
にほんブログ村

« PSI航空阻止訓練の実施と法的枠組み不備 | トップページ | 屋根の上の地対空ミサイル……東京での五輪開催に意外な障害 »

人事」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。

財務省の資料を読んでみました。

 「平成 24 年度予算執行調査の調査結果の概要」
http://www.mof.go.jp/budget/topics/budget_execution_audit/fy2012/sy2407/2407c.pdf

 「総括調査票 」
http://www.mof.go.jp/budget/topics/budget_execution_audit/fy2012/sy2407/36.pdf


低出頭率もさることながら、読んでみて驚いたのは予備自衛官の動員について包括的かつ具体的な災害対処計画が策定されていなかったことです。

わずかに[東部方面隊の「首都直下地震災害対処計画」等]が存在したに過ぎず、これですら[予備自衛官の招集期間、雇用企業との連絡調整などの事項]は定められていないと指摘されていました。

昭和29年から始まった歴史ある制度のようですし有事の際の予備役招集は常識であるにもかかわらず、防衛省は予備自衛官制度を実際に運用しようとは考えてこなかったのではないかと受け取られても仕方ないように思います。

もちろん国民の間に自衛隊への好意的な認識があまりなかった時代が長かったという事情もあるとは思いますが、記事にもあるように実態に合わせる形での運用体制を新しく構築するか、または制度の趣旨に沿って実効性ある対処計画をあらためて整備するのか、今回ばかりは防衛省は財務省の指摘を真剣に受け止めるべきだろうと思います。

>出頭率が0.4%

地本からの問い合わせに「出頭可能」と回答したものの
結局召集がなかった予備自もいるので(っていうか私がそうなのですが)
戦時に根こそぎ動員する覚悟で召集をかけた場合は
この数字ももっと上向き、17%に近づくのではないかと思われます
まぁこの2割弱という数値を十分な大きさと見るかといえば
それはまた別の問題ですが

私も教官時代に二回程、予備自の招集訓練を担当しました。
個人的には、教官勤務のなかで最も思い出深い経験でした。(一番若い方でも入隊期別が私より上なのには閉口しましたが^_^;)
というのも、かつての自衛隊の古い話などを聞かせてもらったりして多いに勉強になったというのが大きかったですね。特に定年直前の最後の招集訓練に臨まれた方が、家庭の事情でやむなく現役を退かれた際のエピソードなどは感涙ものでした。
なので、現役にはなるべく多くの方に招集訓練を担当してもらいたいという思いはありますが、いかんせん、現状では訓練日数が少なすぎますし、人数も少なすぎますね。(規模が小さすぎるがために活用しようにも、制度設計出来ない)
しかも、訓練日数の制約があって、意欲がある人も出頭出来ないということもあると聞いています。
訓練する自衛隊から、機能する自衛隊への変革の中で、予備自の招集訓練と制度の活用というのは、どこか施策としておいていかれてるのかな?と感じています。

まりゅー 様
私もそうですが、予備自は有事のためのものという認識があり、予備自までかき集めるほどの、今回のような極めて大規模の災害が起きるとは考えてなかったんでしょうね。

ご指摘の通り、方向性はどうあれ、防衛省はこの件を真剣に捉えて、抜本的な対策を採ることが必要でしょうね。
ニュースが出た時期を考えれば、おそらく来年の概算要求には、関連予算が入る見込みなんでしょう。

名無し 様
恐らく、受け入れる部隊側も混乱していたでしょうから、声のかからなかった方も多いでしょうね。
それでも、17%では、やはり低すぎると思います。
恐らく、企業の姿勢が変わらないと、この数字は高くならないでしょうね。

アルフォンス 様
空自の場合、招集訓練は、たしか100%教育隊での実施だったと思いますので、基本的に接する機会はないです。
臨時勤務の教官は、新隊員過程か曹候補士過程が多く、教育特技者以外は、招集訓練には係わりません。
なので、なかなか得難いお話も聞けそうなので、ある意味もったいないことをしているのかな、と思いました。

確かに、予備自は、機能するよりも、存在することを求められる存在でしょうから、確かに置いて行かれているという側面もあるように思います。

海自の場合、数は少ないですが、実施部隊でも行っています。(とは言ってもおそらく艦艇部隊では行っていないと思いますが…)
私も実施部隊における招集訓練は担当したことがないので、なんとも言えませんが、私の経験の範囲で言わせて頂ければ、教育隊では基本教育の範囲内での教育訓練しか出来ないので、実任務による招集のことを考えれば、実施部隊において訓練を実施しなければ、予備自の実効性を確保出来ないのではないかと思います。
即ち、招集される側の訓練だけでなく、招集する部隊の側の訓練がなければ、(即ち予備自を招集し、活用する訓練)実効性のある体制にはならないのではないかと感じました。
ですので、予備自の招集訓練の理想としては、教育隊での基本教育と、実施部隊における部隊訓練の二本立てで行うことであるとは思いますが、さて実現可能性となると…?
また、海自の場合、民間の船員や船舶、あるいは航空機とその関係者に対する予備役制度なんかも検討の要はあるように感じます。(この辺は空自も一緒ですかね?)
しかし、素朴な疑問ですが、空自の場合、100%教育隊となると、場所が限られているから、年次の招集訓練、出頭が大変そうですね(^_^;)

アルフォンス 様
実施部隊において訓練を実施しなければ、予備自の実効性を確保出来ないという点については、全く同意です。
その意味で、空自は予備自を使う気もないとも言えると思います。
陸は、確かにこの点で大分違うのでしょうね。

2本立ては……ムリでしょうね。
やっぱり。

仰るとおり、熊谷と防府しかありませんから、北日本の人間なんて、移動するだけで一苦労だと思います。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 予備自制度が槍玉に……見直し私案:

« PSI航空阻止訓練の実施と法的枠組み不備 | トップページ | 屋根の上の地対空ミサイル……東京での五輪開催に意外な障害 »

最近のトラックバック

ブックマーク、RSS