歩哨犬を災害救助犬として活用するための訓練が行なわれているそうです。
「入間基地 中警団管理隊、NPOと協力 歩哨犬で初の救助訓練 災派想定、生存者捜索へ指導」(朝雲新聞12年6月21日)
同記事より
空自入間基地の警備を担当する中警団基業群管理隊(隊長・橋本卓二3佐)は4月27日、神奈川県のNPO「救助犬訓練士協会」(村瀬英博理事長)と初めて災害派遣を想定した歩哨犬による被災地の生存者捜索訓練を合同で行った。
現在8頭の歩哨犬が世界標準の捜索能力を認定する「国際救助犬資格」の取得に向け、連日訓練に励んでいる。
災害派遣が国民に高く評価され、アンケートでも、自衛隊に期待する活動としての1位が災害派遣になる中、これに反対する人は少ないでしょう。
ですが、私は反対です。
私は、当ブログでも何回も紹介しているように、歩哨犬の価値を高く評価しています。
ですが、同時にその訓練の難しさも、承知しているつもりです。
歩哨犬を、一人前の歩哨犬とするだけでも大変なのに、加えて災害救助犬としての訓練まで行なうのでは、本来の歩哨犬としての能力を向上・維持することが難しくなります。
歩哨犬たちは首輪に小さな鈴を付け、シーソーのように動く一本橋やはしごの上を慎重に通過。隊員の「さがせ」の指示で瓦礫の中に入り、空気中の生体臭で模擬被災者の位置を捜索。存在を確信した段階で何度も吠えて隊員に知らせた。
これは、歩哨犬が行なうべき行動とは、明らかに異なる行動です。
異なる行動を行なわせるためには、当然異なる訓練が必要になります。
警察犬でも、災害救助犬としての訓練を受けているのは直轄犬ではなく、嘱託警察犬の一部だけのようです。
直轄警察犬さえ行なっていない災害救助を、自衛隊の歩哨犬が行なう必要性があるのかについて、疑問を持ちます。
昨年の震災直後、同協会は警察庁の要請で宮城県に出動。海自呉造修補給所貯油所(吉浦)の国際救助犬資格を持つ警備犬2頭の捜索チームと一緒に生存者を捜した(23年9月15日付既報)。管理隊の橋本隊長は「海自警備犬の活躍を見て隊員たちは出動を熱望したが、災害救助犬の訓練実績がなく行きたくても行けなかった」と話し、宮田班長も「微力でも協力できたのでは、と歯噛みするほど悔しかった」と振り返る。
「普段から訓練を行なっていれば行けたのに」という悔しい思いは理解できます。
ですが、そのために真に行なうべき任務に対する能力が不十分になったのでは、税金の無駄使いというものです。
自衛隊の歩哨犬デモでは、臭気判定など、警察犬のマネゴトを行なうこともありますが、米軍の軍用犬デモでは、ほとんどが襲撃や戦闘の補助などです。
犬は、人間ほど飲み込みが早くありませんし、寿命が短い(10数年)ため、現役でいられる年数も短く、あれもこれもできるという状態にすることは非効率です。
竹山修治分隊長は「大切なのは情熱と情愛。本気で褒め叱らないと犬はついて来ない。受験に向けた仕上がりは約50%で、担当犬を持つ全員が11月の試験に合格できるよう特訓中」という。
今年の1月から本格訓練を始めたそうなので、使い物になるまで1年もかかるということです。
現役期間がせいぜい10年なのに、災害救助犬としての訓練に1年もかけたのでは、自衛官が、訓練の1/10以上(錬成後の技量維持訓練も必要なので)も災害派遣訓練を行なうようなものです。
ここは、敢えて止めるべきだと思います。
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