オスプレイ事故原因と沖縄配備に向けた運用制限
4月に発生したモロッコでの墜落事故に続き、今月13日には、フロリダでもオスプレイの墜落事故が発生してしまいました。
「オスプレイ、米で訓練中に墜落 日本配備に影響必至」(朝日新聞12年6月14日)
こうなると、旧式過ぎるCH-46を使い続けることが間違いなく危険であるとは言え、「オスプレイに更新した方が安全だ」とは言いたくても言えなくなってしまいます。
原因については、まだまだ分かりませんが、2日後には飛行を再開したようです。
つまり、米軍は、4月の事故だけでなく、今回の事故も、機体の不具合が原因ではないと、ほぼ断定しているのでしょう。
「「基本設計の欠陥を疑う理由ない」 オスプレイ墜落で米司令官」(産経新聞12年6月15日)
飛行再開については、次の元記事に記載があります。
「Air Force begins investigation of CV-22 Osprey crash at Eglin」(スターズアンドストライプス12年6月15日)
この記事を見ると、事故はルーチン的な射撃訓練中に発生したようです。
"This particular mission was a gunnery training mission, so it was a two-aircraft formation," Slife said. "When the lead aircraft turned around in the gun pattern, they did not see their wingman behind them, so they started a brief search and found that they had crashed right there on the range."
発生時刻は18時45分とのことで、フロリダでの日没がはっきりしませんが、薄暮か夜になったばかりだったでしょう。
射撃が、固定翼モードだったのか、回転翼モードだったのか不明ですが、乗員が助かっていることから見ても、回転翼モードだった可能性が高そうです。
今までの事故の多くが回転翼モードでの事故でしたから、興味の尽きない点です。
これは推測ですが、2機編隊での後続機が、恐らく回転翼モードで、恐らく低速・低高度で事故を起こしたとすれば、前方機を避けるために高度下げ、セットリングウィズパワーに入ったとされる3回目の事故に類似した状況だったかもしれません。
もしかすると、事故前にセットリングウィズパワーを警告する音声が出ていたことを乗員が聞いていたのかも。
というか、そんな状況でもない限り、たった2日で飛行再開するとはちょっと考え難いですし……
ティルトローター機のメリットを考えれば、オスプレイの価値は、通常のヘリとは比べるべくもないですが、今回の事故が、それほど高難易度な訓練を行っていた訳ではないことも考えると、(事故が回転翼モードだったとすると)回転翼モードでは、通常のヘリと同様の能力があると考えることも無理があるのかもしれません。
そもそも、通常のヘリと同様の操縦性があるなら、CSAR-Xがオスプレイにならない理由が、想像すらできませんし。
この事を持って、オスプレイ配備反対派の方は、「構造的な欠陥」と呼ぶかもしれません。
ですが、もし回転翼モードでの操縦性が、通常のヘリに劣るとしても、普天間や辺野古では、”離着陸はSTOLでしか行わない”と言った運用上の制限を設けることで、安全性の確保はできると思います。
沖縄をなだめるだけではなく、今回の事故が、そう言った突っ込んだ説得を始める契機にもなれば良いと思います。
なお、今回の事故の機長、ブライアン・ルース少佐は、2010年にアフガンで発生した事故の際の副操縦士だったそうです。
この時も生き残り、今回も生き残った訳です。
何ともダイハードな方です。
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まぁアメリカのことですから無理やりでも配備することは出来るでしょうが、アメリカとしても
欠陥だとしても操縦のミスだとしてもいまだに事故が減らないのは困るでしょう。
いざ台湾へのヘリボーンって時に事故られちゃたまりませんから
ラプターみたいに配備されてから数年たって問題が出るなんてこともありましたから・・・
兵器開発ってのは金と時間がかかるものですねえ
投稿: ナオ | 2012年6月17日 (日) 01時25分
数多さんの推測が正しいとすると、V-22が(欠陥機だとまでは思いませんが)やっぱりかなりナーバスな機体ということになるのでしょうね。前後でなく左右にローターを持つ特異な形状のせいで、回転翼モードでは旋回時に片翼だけがボルテックス・リングに嵌り込み易い深刻な脆弱性を抱えてることになります。つまり一番危険が予想される降下地点での回避行動に制約を課されるわけで、ヘリコプター故に上下の回避で制限され(降下率)、ティルトローター故に左右で制限され(旋回率)ることになると、あとはもう前後しかないじゃん(><;)みたいな。降下時に前後に回避する「オスプレイ踊り」みたいな言葉が一般化したりして?それはともかく、調達が減る事態も杞憂でないかも知れません。
投稿: だ | 2012年6月17日 (日) 02時33分
数多様の記事は、かなり的確な分析だと思います。
一度、ヘリパイの方にオスプレイの事故について尋ねて
みたいと思います。
某キ○タニ氏の論によれば、US-2を調達することが無駄で、
救難機はオスプレイを配備するべきだそうです(汗)
投稿: やん | 2012年6月18日 (月) 00時07分
ナオ 様
今更ティルトローターをやめることはないでしょうが、これだけ事故続きだと、米軍も頭を抱えているでしょうね。
どんな既存カテゴリーの兵器でも、開発では苦労するものですが、全くの新兵器なんですから、苦労して当然のはずではあるのですが……
だ 様
情報が少ないので、推測というより憶測めいた話になってしまいますが、私も同様のことは考えました。
要改善事項が多そうですが、米軍は苦労してもやり遂げるでしょうね。
ティルトローターには、それくらい価値があると思います。
やん 様
私も、回転翼については、素人同然なので、ヘリパイの方がどう考えるのか、聞いてみたいです。
救難機の場合、平時の任務は、多くが悪天候下の救難なので、オスプレイの操縦性でそれが可能なのか、正直疑問があります。
本文記事にも書きましたが、それが可能なら、CSAR-Xがオスプレイにならない理由が想像できません。
投稿: 数多久遠 | 2012年6月18日 (月) 22時58分
>平時の任務は、多くが悪天候下の救難
そういう意味ではUS-2もまた平時の救難機としては難ありですね。
US-2が着水できる3m程度の波で、外洋を航行可能な船舶が遭難することはまず考えられませんから。
投稿: cbn | 2012年6月23日 (土) 14時31分
cbn 様
長距離救難用の機体として、US-2を止めてオスプレイにしろという主張は、確かにありますね。
ですが、US-2は、カタログスペックだけを見てもオスプレイより航続距離がかなり長いですし、オスプレイの場合、現場での救難時もホバリングせざるを得ないため、実際の救難での行動範囲はUS-2より大分狭い範囲になりそうです。(US-2は着水してしまえば、エンジンを止めることさえできます)
それに、外洋での救難では、大型船舶が多いので、航行不能になるようなケースだけではなく、急患の発生や火災など、天候に関係のないものも、かなりあります。
投稿: 数多久遠 | 2012年6月24日 (日) 20時18分