不安と緊張の行進訓練
レンジャー訓練で都内のど真ん中を行進したそうです。
「陸自「レンジャー」行進始まる 23区内では42年ぶり」(朝日新聞12年6月12日)
陸上自衛隊の精鋭隊員「レンジャー」の訓練生ら約20人が12日、東京都練馬区と板橋区の市街地を行進した。武装したレンジジャーによる東京23区内での行進は42年ぶり。顔に迷彩を施し、小銃にヘルメットといういでたちのレンジャーの姿に驚く住民もいた。
11週間の訓練の最終日で疲れた表情の訓練生らは午前9時、板橋区内の荒川河川敷を出発。練馬駐屯地までの約6.8キロの道のりをゆっくりと歩いた。
同記事より
徒歩での行進は、軍隊の移動方法の基本です。
レンジャーに限らず、新隊員過程の訓練などでも定例的に行なわれています。
それでも、23区内となると、さぞや目立ったことでしょう。
レンジャー訓練の最終日に行なわれたとのことなので、気力も尽きそうな被訓練者に対して、周囲の目を利用して、限界以上の精神力を鍛錬しようというのが、訓練を計画した側の意図だったのでしょう。
自衛隊の姿を国民に見せるという政治的な意図もあったかもしれませんが、こっちはオマケでしょうね。
行進訓練は、私も、自身の訓練としてもやりましたし、新兵の訓練教官としてもやりました。
決して難しい訓練ではありませんが、重量のある荷物を背負っての行進は、なかなかにきついものがあります。
それは、肉体的にというより、少しでもダラけた姿は見せられないという精神的な負担が強い訓練です。
また、この周囲の目というのは、別の意味でも、被訓練者に不安と緊張を強います。
自衛官も人の子、一般の人に、どんな風に見られるのか気になるのです。
河川敷には約100人の市民が集まった。反対派が「私たちの町を演習場にするな」と抗議する一方、賛成派は「自衛隊頑張れ」という声援を送った。
やはり反対されれば落ち込みますし、声援を貰えれば嬉しいものです。
私が教官として新兵訓練で行進を行なった時には、心ない非難で自衛隊に入ったばかりの隊員がショックを受けないか、ちょっと不安にもなりました。
その時は、黄色い帽子を被った幼稚園児が手を振ってくれたりしたため、不安は杞憂でしたが。
少し穿った見方をすれば、今回のレンジャー訓練は、震災などで対自衛隊感情が好転したことを自衛官も感じる中、相変わらず存在するあからさまな非難にも耐え得る精神力を鍛えたかったのかもしれません。
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