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2012年5月30日 (水)

「協同」・「共同」の違いと海自による撃沈訓練の違憲性

最初にクイズです。
「協同」と「共同」は同じでしょうか?
読みはどちらも「きょうどう」でしょうか。
さて正解を発表する前に、このクイズと密接に関連する話題に触れておきます。

リムパックで海自が憲法違反となる訓練を行ったと報じられています。
海自、米豪と演習で強襲艦撃沈=多国間武力行使で憲法抵触の恐れ-10年7月」(時事通信12年5月27日)

 参加国が共通の敵対目標に対して武力行使するもので、憲法の専門家からは訓練内容は自国を守るための個別的自衛権の範囲を超え、憲法解釈で禁じられている集団的自衛権行使に抵触するのではないかとの指摘も出ている。


共通の目標に、協力して攻撃すれば、それは個別的自衛権の行使ではなく、集団的自衛権になるため、憲法違反だというのです。
恐らく「そんなバカな話があるか!」と思う方が大多数でしょう。

集団的自衛権は、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」とされています。
参考:防衛省HP

日米同盟が、片務条約であるのも、憲法上その行使が禁じられているからとする解釈のためです。

この解釈と照らし合わせても、共通の目標を協力して攻撃しただけで、日本がアメリカを守ろうとしたことになる訳でもなく、憲法上の問題になどなるはずがない、というあたりが一般の理解だろうと思います。
ネットを見ても、同様のコメントが多いようです。

どうせ、時事の報道にある「憲法の専門家」なる人物も、凝り固まった”憲法(擁護)学者”に違いなく、時事が騒いでいるだけだと考えると思います。

しかし、事の是非は別として、「マスゴミが騒いでいるだけ」とばかりは言えません。

同報道で訓練の詳細が報じられています。

 米海軍と豪軍によると、演習は「撃沈訓練(Sinking Exercise)」と名付けられ、10年7月10日にハワイ沖で約9時間にわたり実施された。演習は5部構成で、まず米豪カナダの艦艇が連携して、対艦ミサイルを標的の強襲揚陸艦「ニューオーリンズ」に発射。第2波で米豪の航空機がミサイルを上空から撃ち込んだ。
 さらにB52戦略爆撃機がレーザー誘導爆弾を投下。最後に海自護衛艦「あけぼの」とイージス艦「あたご」の2隻と米豪の計6隻が縦列で航行。米イージス艦の砲撃開始後に「あけぼの」が76ミリ速射砲を、次いで「あたご」が127ミリ速射砲を発射した。
 米海軍によると、演習のシナリオは「あけぼの」と「あたご」、米・豪艦艇が「約2000ヤード(約1800メートル)の間隔の縦列を組み、撃沈まで東から西に向けて射撃」となっていた。米の記録では日米の砲撃の時間帯が重なった場面もあった。


問題視されているのは、海自艦が、他国艦艇と縦列を組み、砲撃したからということのようです。

これに対して、海幕は集団的自衛権の行使には当たらないとして、コメントを出しています。
集団的自衛権行使前提ではない=防衛省」(時事通信12年5月27日)

参加国ごとに時間を区切り、射撃順序を決めて訓練を実施しており、参加国が連携・共同して実施したものではない。武力行使の一体化や集団的自衛権の行使を前提として、特定の国または地域を防衛することを目的とした訓練ではない。


海幕も、連携した攻撃行動は、武力行使の一体化として、集団的自衛権の行使に該当してしまう可能性を認めているのです。

ここで、冒頭のクイズの解答です。
防衛省・自衛隊(政府、特に外務省もですが)においては「協同」と「共同」は、明確に区別されています。
読みは、国語的には「きょうどう」ですが、音声で区別が必要な時は、「共同」の方を「ともどう」と呼びます。
文書作成で間違うと、コッテリと怒られます。(私も怒られました)

両者の違いは、端的に言えば、自衛隊内の「きょうどう」は「協同」であり、日米間の「きょうどう」は「共同」です。
このことは、「日米協同」で検索してもらえば、簡単に分かります。
政府関係の文書では、ごくごく少数の誤字で記載されたものを除き、「日米共同」と書かれた文書しかヒットしません。

では、「協同」と「共同」が、どう違うかと言えば、一体化したもの、つまり連携して協力することは「協同」であり、連携せず、単に共に行うことは「共同」と区別されています。
つまり、海・空自衛隊は「共同」するだけでは不十分で、「協同」すべきなんですが、米軍と「協同」すると、集団的自衛権の行使になってしまうため、「共同」に止めよう、ということなんです。

バカげてます。
文書起案で「日米協同」と書いて怒られながら、私もそう思いました。
軍事的に効果的なはずの高度な連携を取ったら、それは憲法違反だというのです。
税金の無駄遣いもいいところです。

という訳で、今回の事案は、海幕が言うように、単に順番に射撃しただけでは集団的自衛権の行使には当たりませんから、憲法違反ではありません。
ですが、例えばアメリカの艦艇が囮になりながら、その隙に自衛艦が射撃するといった想定で訓練を行ったのだとしたら、現行解釈では憲法違反になってしまう可能性があるのです。

改憲して、集団的自衛権の行使を認めることが最も望ましいですが、連携して攻撃したら憲法違反だなどという現行解釈だけでも、早急に改める必要があります。

なお、このニュースで救われる思いだったのは、この件を問題視する他のマスコミが非常に少なかった事です。
私が知る限り、時事の他は、共同通信が報じただけで、後は朝日がこの報道に対する官房長官のコメントを報じていただけでした。
海自の10年の撃沈訓練「問題ない」 藤村官房長官」(朝日新聞12年5月28日)
さらに、ネットの論調は言わずもがな。

現行解釈に問題がある理由は、過去に日米同盟を阻害しようとする左派政党等が強かったためですが、時代は変り、国民一般の世論は変りましたし、マスコミも変ってきました。
解釈だけでも変えて良いはずです。

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コメント

集団的自衛権が違憲という解釈が、無茶なように思います。
分かり易く9条改正をした方が良いと思いますが、以前とは
変わっているとはいえ、まだまだハードルが高いです。
とはいえ、解釈だけで乗り切るのは、苦しい時期にきている
ように感じています。 

確か信濃毎日新聞もこの件について報じていたと思います。私としては今更何を言っているのだろうかと言った所なのですけれども。左派政党も弱くなってきていますし、現内閣の外務大臣も防衛費の増額を主張しているようですから解釈の件もそうですが、これから自衛隊の任務がさらに拡大しても同盟国と協同して危機に対処して欲しいと切に願っております。

これまでの集団自衛権に関する政府の答弁は、「持っているけど使えない」という禅問答のようなものでした。

同盟国の部隊と「協同」することのどこが問題だというのでしょうか。まったく理解できません。この国には9条フェチが多すぎます。

昔の笑い話を思い出しました。

リムパック80(初参加)の時に、日本の報道陣に米軍がサービスで空母に招待して、航空機の発着艦を見せた後、記者さんへのデモとして、日米艦による一つのSHOWを演じて見せたのですが、日米混合で単縦陣形で、空母右約500メートルを後方から並行して通過させ、艦首付近で右に一斉回頭、空母の後ろに回りこませるという機動を見せたのですが・・・

ところが某大手新聞社の記者には、これが空母の護衛と映ったらしく[「至近護衛」を展開、自衛権論議再燃は必至] と大きな見だしを新聞につけたとか・・・米軍から事前に記者向けのデモだと説明があったにも関わらず・・・

進歩から取り残された方々はどこにでも居るということでしょうか?

YouTube に RIMPAC 2010 SINKEX 射撃訓練の様子が出ています。あけぼの、あたごの姿も確認できます。
http://www.youtube.com/watch?v=1Le1VEhjYp8
http://www.youtube.com/watch?v=lkqM9WcKx5M
http://www.youtube.com/watch?v=-3sMbn8FJAg

単なる実弾射撃訓練です。

「集団自衛権は保有しているが憲法上行使できない」とは内閣法制局の解釈ですね。内閣の一下部組織でしかない法制局が司法とは別個に違憲合憲の判断を下し、重要政策がそれによって左右される・・・法制局とは政権にとって法の番人である裁判所以上に影響力があるようですね。
法制局がこれほど影響力をもつようになったのは、矢張り自衛隊が違憲か合憲かでもめていた時代に世話になったため無視できなくなったためでしょうか。

やん 様
改憲が具体的に動くのは、自民が政権を取り戻して、引っ込みが付かなくなった時じゃないでしょうか。

名無し 様
信濃毎日新聞は、自民党議員の息のかかった御用新聞のようですが、それなのに左派色が強いですね。

啄木鳥 様
占領政策のための憲法を、解釈で整合させようとしているところからして、そもそもが無理なんですよね……

海族 様
そのお話、今回の構図と、全く持って同じですね。
時事通信の記者は、実年齢はともかく、頭は100才なんでしょうね。

こじま 様
時事は、極秘訓練だとでも思ってたんでしょうかね。
関連記事の載せ方を見ると、相当気合いを入れて書いたみたいです
特ダネを掴んだと思ったのかもしれません。

matsuzay 様
法制局は、防衛以外に関しても、絶対的とも言える権限を持ってますね。
行政行為が適法かどうかについて、司法は裁判になった時しか判断しないので、指針が必要と考えての処置なんでしょうが、法制局をお祀りしてしまっていることが×ですね。

協同、共同について下らない質問:

仮に、今回の演習で、この目標は名目上でも護衛艦を撃沈すべきの物で、ただ米豪カナダは「加勢」として一緒に攻撃する事に成った場合、例え「協同」でも違憲に成らないですが?

なにせ、現在日本政府の言い訳に拠ると、集団的防衛に反対する理由は「必要最小限の武力行使以上の武力行使に成る可能性が有るから」の趣旨です。例えば、米軍艦で撃沈すべきの艦に向け護衛艦も攻撃する場合、本来武力行使0で済ませる場合を武力行使0.2を行使したから、必要最小限じゃないに成る。

あの馬鹿な理論をOKとするとして、これじゃもし自衛隊は理論上の主体に成った場合、単体防衛なら武力行使1が必要なのに、他軍との協同によって武力行使0.2で済んだ。十分必要最小限の原則に添えるやり方ですので、違憲ではないに成るんじゃない?

どう思いますが?

香港からの客人 様
少し混乱されているようです。
「共同」、つまり同一の国に対して、戦闘行為は可能ですが、加勢するとしたら、それは「協同」で、違憲という解釈になります。

0.2を行使したら、必要最小限ではないという理解は、それで合っていると思います。
確かに、言い訳でしかないと、私も思ってます。

最後の点については、あなたの見解の方が、理論的には整合していると思います。
仰るように、馬鹿な理論なので、日本政府の解釈論の方が狂ってるのでしょう。

一応、補足しておきますが、私は日本政府の見解を、支持なんかしてませんよ。

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