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2012年5月10日 (木)

脅威の旧式ミサイルJL-1(巨浪1号)

何やら自己矛盾したタイトルですが、決してジョーク記事ではありません。
今回は、”日本にとって”脅威である中国の旧式潜水艦発射弾道ミサイルJL-1(巨浪1号)について書いてみます。

JL-1 (ミサイル)(wiki)
Jl1
中国網
日本語版より

JL-1は、中国の潜水艦発射弾道ミサイルで、オリジナルのJL-1が射程1700km、改良型のJL-1Aが射程2500kmと言われています。
ノドンよりも長射程ですが、区分としては中距離弾道ミサイルであり、イージスSM-3で対処が可能と思われますし、PAC-3でも範囲はノドンよりも狭くなるでしょうが、対処不能ではない程度だと思われます。

JL-1を搭載する潜水艦は夏級潜水艦で、1隻ないしは2隻しか就航していないと見られています。1隻の搭載数は12発で、最大でも24発しか運用できない計算になるため、数的にも、300を越えると見られるノドンには遠く及びません。

質(射程・速度)でも、数でも、日本のMDシステムで対処できそうです。

ではナゼこのJL-1を脅威と言うかと言えば、日本のMDシステムで対処不能だからです。

「何言ってんだコノヤロウ」という声が聞えて来そうです。すいません。

正確に言うと、捕捉できれば迎撃は可能な見込みなものの、ミサイル監視・警戒網をかいくぐってしまう可能性(というか大)があり、その場合に、迎撃ミサイル(SM-3、PAC-3)を発射する間もなく着弾してしまう可能性が高いからです。

弾道ミサイル監視・警戒は、固定レーダー(FPS-5、FPS-3改)とイージス艦が実施します。

これらのレーダーが、遠距離を飛翔する弾道ミサイル捕捉のためには、例えフェンスサーチの機能があっても、高い電界強度を確保する必要から捜索角度は制限を受けます。
また、FPS-5の場合、3面あるレーダー面の内、弾道ミサイル監視用の面が1面しかないため、当然に、これによる制限も受けます。

加えて、フェイズドアレイレーダーの特性もあって、方位角を限った集中捜索をする必要があります。
関連過去記事「BMDシステム総合検証の意義と妥当性 その1
これは、レーダーを4面持ち、全周捜索ができそうなイージス艦でも同じです。
北ミサイル対応、F15がイージス艦を警護へ」(読売新聞12年3月30日)

イージス艦はミサイルを探知、追尾する際、レーダーをミサイルに集中させるため、周辺状況を把握できず、一種の「無防備状態」に置かれる。


つまり、どのレーダーも、限定的な方位しか監視できないため、あらかじめ脅威がありそうな方位に向け、方位を限定した捜索を行うことになるのです。

北朝鮮が相手の場合は、国が小さく、この制限は大した問題にはなりません。
ですが、対中国となると、対象とすべき方位角は広く、ただでさえ警戒・監視は困難です。

地上発射のDF-21を警戒するだけでも、困難が伴うにも係わらず、これに加えて、たった24発でも、全く違う方位から撃たれる可能性のあるJL-1が加わると、警戒・監視の困難は飛躍的に高まります。

夏級潜水艦を常時貼り付いて監視できれば良いのですが、漢級潜水艦に領海侵犯された事例さえあるのですから、これも困難です。
大体において、それができるなら夏級潜水艦が1隻なのか2隻なのか分からないなんてこともないでしょう。(海自は把握しているのかもしれませんが)

結果、JL-1を警戒するためには、中国とは、全く方位の異なる太平洋方面まで含めて警戒しなければならないのですが、前述の通り、レーダーの性能等によりこれは不可能です。

中国の弾道ミサイル関連の話題としては、中国近海からでもアメリカに到達する予定の開発中ミサイルJL-2ばかりが話題になりますが、こと日本の防衛を考えた場合には、既に旧式と化し、脅威の性能は持っていないJL-1も、日本のMD態勢にとっては、十分過ぎる脅威です。

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コメント

まあ・・・日本周辺の大方の潜水艦は日米の監視下だっていう噂はよく耳にしますが・・・この噂を一種の都市伝説の類いと見るか・・・それともココム事件以降日米海軍が共同で強化した対潜関連の各事業を考えれば当然と考えるかは・・・微妙ですね・・・

ふむ・・・
そうなると日米の両イージス艦を足して監視にあたる必要がありそうですね。
足りなきゃ監視の目を増やすくらいしか。
当然潜水艦監視も怠ってはなりませんし

FPS5を増やすorイージス艦を増やすくらいが妥当ですかね。。

海族 様
海自さんは、潜水艦の捕捉状況については、領海侵犯された時をのぞいて、頑として口を割りません(当然ですけど)から、一般の方には、彼我ともに能力の程はうかがい知れませんよね。
状況が悪くなりつつあることだけは、確かでしょうけど。

ナオ 様
アメリカのイージス全艦を持ってきても、果たして十分かどうかは疑問ではあります。
その場合も、弾道弾監視をするよりも、潜水艦監視をした方が効率的かも。

JL-1/2監視をするつもりなら、南方及び東方まで監視のできるFPS-5を整備するしかないように思います。

ベトナムやインド等に日本の中古潜水艦を売る(または援助で提供する)方がアメリカのイージス艦をもってくるより良いと思います。

まあ、民主党政権である限り無理でしょうけど、要は中共にどれだけ負担をかけるかですからね。

潜水艦を提供すれば、対潜訓練も行なえますしね。(ベトナムに)イージス艦は無理でも対潜ように船を改造すること位は可能でしょう。

みやとん 様
確かに、ベトナム等への潜水艦の供与は、中国潜水艦の脅威を低下させるでしょうけが、可能性をゼロにはできない以上、日本としては、変らず警戒しなければならないところが、難しいところでしょうか。

東南アジア諸国と協力して、中国包囲SOSUSでも作った方がいいかもしれませんね。

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