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2012年5月

2012年5月 2日 (水)

嘉手納統合案によりアメリカは那覇拡張を求める

在日米軍再編計画見直しの「共同発表」がリリースされました。これは再編計画の中間報告にあたります。
普天間移設、辺野古以外も検討へ 再編で日米共同文書」(琉球新報12年4月27日)

この共同発表最大のポイントは、普天間の移設先候補として辺野古を「唯一の有効な解決策」とする方針を転換し、事実上、県内移設の可能性を示したことです。

方針転換の理由は二つです。
 ・辺野古への移設が、地元の反対により、政治的に困難になっていること
 ・アメリカ(議会)の国防予算削減要求(事実上、選択肢は嘉手納統合のみ)

文言としては、移設先として次の4つの条件を満たすこととしています。
 (1)運用上有効
 (2)政治的に実現可能
 (3)財政的に負担可能
 (4)戦略的に妥当


「戦略的に妥当」との条件により、沖縄県外は困難です。
その一方で「政治的に実現可能」との条件がありますから、辺野古以外のどこにもっていったとしても、地元の反対は変らないでしょうし、「財政的に負担可能」との条件も踏まえれば、この条件は、辺野古を断念する場合の候補として、事実上の嘉手納統合1択となります。

問題は「運用上有効」との条件が付されたことです。
嘉手納統合案だと、回転翼と固定翼が同一基地で運用されることをもって、アメリカが問題視しているとの論もありますが、米軍基地でも自衛隊基地でも、両方が同一基地で運用されているケースは山ほどあり、この点が問題になるとは思いません。

では、何が問題になるかと言えば、以前の記事「普天間の代替候補地条件」や「普天間は嘉手納の予備飛行場」で書いたとおり、嘉手納統合案だと、米軍が自前で使える嘉手納の予備飛行場が確保できなくなるということです。

嘉手納統合案で動くことになれば、有事の予備飛行場としてはもとより、平時の天候不良やフラットタイヤ等によるランウェイ閉鎖の際のダイバート先としても、米軍が那覇を使う事態が、当然として発生します。

ですが、那覇は超過密状態で、空自の2個飛行隊化でさえ苦労している状況です。
有事に嘉手納が被害を受け、在空機が那覇に押し寄せるような事態でも飛行場機能を維持できるためには、那覇空港の拡張は必須となってきます。

那覇空港の拡張の軍事的価値については、以前の記事「那覇空港の拡張案は軍事的にも評価できる?」を参考にして下さい。

幸い?にして、以前から拡張プランはありますので、検討を早めることはできます。
ちょうど、5月末を目処に沖縄県が拡張の基本計画をまとめるところですし、観光面からの要望もあります。
県観光審議会が知事答申 那覇第2滑走路要望」(沖縄タイムス12年4月24日)

苦々しく思う点は、予備飛行場の確保が、米軍のニーズであるにも関わらず、那覇空港の拡張となれば、100%日本側の費用負担で行わなければならない点でしょう。
辺野古への移設でも日本側負担があるので、単純に増える訳ではありませんが、嘉手納への統合にあたっても日本側負担を要求されるでしょうから、やっぱり釈然としないものがあります。

とは言え、そもそも辺野古への移設が政治的に困難になった理由が、日本政府(鳩山民主政権)にあるので、国防費の削減を目指すアメリカ議会としても、那覇拡張を裏からプッシュすることはあっても、金を出すはずはありません。

おそらく、アメリカとしては、政治上の配慮(沖縄が反発する)から、表面上で那覇の拡張を要求することはないでしょう。
ですが、裏で要求することは間違いありません。
もしかすると、共同発表がされたことで、既に動き出しているかもしれません。

2012年5月 5日 (土)

米軍による民間空港使用で虚偽報道

先日の「衛星」発射直前、嘉手納の米空軍機が宮古空港の使用を申請しました。

在沖米軍、きょう宮古空港使用 北朝鮮の「発射」対応か」(琉球新報12年4月12日)

嘉手納基地からHH60救難ヘリ3機とMC130輸送機1機がフィリピンに向かう途上、天候不良などで空中給油ができなかった場合使用するとしている。
中略
 県空港課は米軍の動きに関して、北朝鮮の長距離弾道ミサイルの発射実験とみられる「衛星」の発射に備えたものとみている。


沖縄県の空港課の見解として、「衛星」がらみだと報じていますが、同じニュースを報じた沖縄タイムスは、米軍が理由を公表していないため、関連は不明としていますし、むしろグリーンベレーがらみではないかと匂わせる書き方です。
米軍、宮古空港の使用申請」(沖縄タイムス12年4月12日)

 北朝鮮が人工衛星打ち上げと称する長距離弾道ミサイルの発射に備えた動きかは不明。
中略
 MC130は沖縄に駐留する米陸軍の特殊部隊グリーンベレーと行動を共にすることが多い。


下地島等、過去の米軍による沖縄県内の民間空港利用も、多くは東南アジア方面への移動の際の燃料給油などの中継がほとんどです。

今回だって、米軍は、フィリピンに向かう途中で空中給油ができなかった時の緊急利用だと明言しています。
なのに、どうやったら「衛星」がらみだなどという見解が出てくるのか不思議です。

沖縄県の空港課は、過去の使用実績や利用理由は当然熟知しており、今回だって4月16日から開始されたフィリピンでの米比合同軍事演習バリカタン参加のための移動だろうということくらい、簡単に予想がついていたはずです。
フィリピンと米国が合同軍事演習「バリカタン」を開始
(中国網日本語版12年4月16日)

機種が偵察機だったりすれば話は別ですが、MC-130とHH-60は、どちらも特殊作戦に多用される機体です。
その程度のことは当然知っているはずの沖縄県の空港課が、琉球新報に対して、「衛星」がらみだなどと発言するとは、到底思えません。

それほど悪意のある報道だとは思いませんが、こういうのは誤報とは呼ばず虚偽報道と呼ぶべきではないでしょうか。

2012年5月 7日 (月)

新多用途へり(UHX)国産開発決定と要求性能

陸自の新多用途ヘリ(UHX)が、川重が受注しての国産開発で決まったそうです。

陸自の新多用途ヘリ 川崎重工業が受注 OH―1を母機に開発」(朝雲新聞12年4月5日)
Uhx
同記事より

UHXは、陸自が現在でも140機あまりも使用し、多用途ヘリの主力としているUH-1の後継となるものです。

UH-1以外の多用途ヘリは、UH-60JAですが、価格が高価であるため、現在でも30機あまりの配備に止まっています。
UH-1は、累計では350機を越える機数が納入されており、この後継とされるということは、必然的に陸自のこれからの動的防衛力実現のための必須のプラットフォームと言えます。

 川崎重工業では、同社が開発したOH1観測ヘリをUHXの改造母機とし、これまで蓄積した同機の技術・製造基盤を活用、開発に当たっては技術リスクを抑えると同時に機体のライフサイクルコストの低減を実現させたいとしている。


UH-60の配備が30機で頓挫している理由も、コストです。
十分なコストパフォーマンスを示し、価格が安くならなければ、結果的に十分な数をそろえることもままならず、動的防衛力の実現にも赤信号が灯るでしょう。

そのためにも、どの程度の要求性能を設定するかは、重要な問題です。

搭載力や速度なども、決して軽視できる要素ではありませんが、最も重要なのは足の長さ、航続性能でしょう。

 技本によるとUHXは重量約5トンで、最高速度140ノット(約260キロ)以上、行動半径230キロ以上で、各種作戦、災害派遣活動、国際平和維持活動などに活用できる機体を目指す。
 エンジンも国産で、UH1では難しかった洋上長距離飛行も可能となり、島嶼防衛のような離島の作戦でも中心的な役割を果たすことができる。


朝雲の記事では、行動半径230kmで、洋上長距離飛行が可能とあります。

この性能は、宮古島(および下地島空港)と魚釣島間の距離およそ200kmを念頭に置いた要求性能でしょう。
宮古空港あるいは下地島空港から飛び立ち、リペリング等で隊員を降下させ、問題なく帰って来られる性能ということです。

現有のUH-1は、航続距離が512km(by wiki)しかなく、同じ事を行った場合、何らかのトラブル(中国軍機に追われて慌てて逃げる、天候不良で迂回経路をとる等)があった場合には、燃料がなくなって洋上に墜落しかねません。
現有のもう1機種、UH-60JAは、航続距離が1295km(by wiki)もあり、性能的には十分ですが、宮古・下地からの運用を考えればオーバースペックです。(だから価格も高い)

言うなれば、UHXは、島嶼防衛におけるベストバランスを狙ったモノと言えます。

先にも述べましたがUHXの開発・配備がうまく行かなければ、動的防衛力の実現が危うくなります。
それに、防衛産業界も危機に陥ります。

性能・価格ともに、良いモノができることを期待します。

2012年5月10日 (木)

脅威の旧式ミサイルJL-1(巨浪1号)

何やら自己矛盾したタイトルですが、決してジョーク記事ではありません。
今回は、”日本にとって”脅威である中国の旧式潜水艦発射弾道ミサイルJL-1(巨浪1号)について書いてみます。

JL-1 (ミサイル)(wiki)
Jl1
中国網
日本語版より

JL-1は、中国の潜水艦発射弾道ミサイルで、オリジナルのJL-1が射程1700km、改良型のJL-1Aが射程2500kmと言われています。
ノドンよりも長射程ですが、区分としては中距離弾道ミサイルであり、イージスSM-3で対処が可能と思われますし、PAC-3でも範囲はノドンよりも狭くなるでしょうが、対処不能ではない程度だと思われます。

JL-1を搭載する潜水艦は夏級潜水艦で、1隻ないしは2隻しか就航していないと見られています。1隻の搭載数は12発で、最大でも24発しか運用できない計算になるため、数的にも、300を越えると見られるノドンには遠く及びません。

質(射程・速度)でも、数でも、日本のMDシステムで対処できそうです。

ではナゼこのJL-1を脅威と言うかと言えば、日本のMDシステムで対処不能だからです。

「何言ってんだコノヤロウ」という声が聞えて来そうです。すいません。

正確に言うと、捕捉できれば迎撃は可能な見込みなものの、ミサイル監視・警戒網をかいくぐってしまう可能性(というか大)があり、その場合に、迎撃ミサイル(SM-3、PAC-3)を発射する間もなく着弾してしまう可能性が高いからです。

弾道ミサイル監視・警戒は、固定レーダー(FPS-5、FPS-3改)とイージス艦が実施します。

これらのレーダーが、遠距離を飛翔する弾道ミサイル捕捉のためには、例えフェンスサーチの機能があっても、高い電界強度を確保する必要から捜索角度は制限を受けます。
また、FPS-5の場合、3面あるレーダー面の内、弾道ミサイル監視用の面が1面しかないため、当然に、これによる制限も受けます。

加えて、フェイズドアレイレーダーの特性もあって、方位角を限った集中捜索をする必要があります。
関連過去記事「BMDシステム総合検証の意義と妥当性 その1
これは、レーダーを4面持ち、全周捜索ができそうなイージス艦でも同じです。
北ミサイル対応、F15がイージス艦を警護へ」(読売新聞12年3月30日)

イージス艦はミサイルを探知、追尾する際、レーダーをミサイルに集中させるため、周辺状況を把握できず、一種の「無防備状態」に置かれる。


つまり、どのレーダーも、限定的な方位しか監視できないため、あらかじめ脅威がありそうな方位に向け、方位を限定した捜索を行うことになるのです。

北朝鮮が相手の場合は、国が小さく、この制限は大した問題にはなりません。
ですが、対中国となると、対象とすべき方位角は広く、ただでさえ警戒・監視は困難です。

地上発射のDF-21を警戒するだけでも、困難が伴うにも係わらず、これに加えて、たった24発でも、全く違う方位から撃たれる可能性のあるJL-1が加わると、警戒・監視の困難は飛躍的に高まります。

夏級潜水艦を常時貼り付いて監視できれば良いのですが、漢級潜水艦に領海侵犯された事例さえあるのですから、これも困難です。
大体において、それができるなら夏級潜水艦が1隻なのか2隻なのか分からないなんてこともないでしょう。(海自は把握しているのかもしれませんが)

結果、JL-1を警戒するためには、中国とは、全く方位の異なる太平洋方面まで含めて警戒しなければならないのですが、前述の通り、レーダーの性能等によりこれは不可能です。

中国の弾道ミサイル関連の話題としては、中国近海からでもアメリカに到達する予定の開発中ミサイルJL-2ばかりが話題になりますが、こと日本の防衛を考えた場合には、既に旧式と化し、脅威の性能は持っていないJL-1も、日本のMD態勢にとっては、十分過ぎる脅威です。

2012年5月13日 (日)

爆弾作った高校生をリクルートせよ

爆弾を作った高校生が逮捕されました。
「爆弾作り方ネットで」 薬品窃盗容疑の男子高校生「自慢したかった」」(産経新聞12年5月2日)

こう言う学生を、野に放ってはいけません。
将来、何をするか分かりません。

ですから、防衛省がリクルートすべきです。
「防衛省・自衛隊に入れば、爆弾作り放題ですよ」、「しかももっと強力なやつを作れますよ」、「爆破実験も派手にやれますよ」てな具合にです。
防衛省には、大学の学費を防衛省が肩代わり(毎月5万4000円が支給される)する代わりに、防衛省・自衛隊に入らせる(技術)貸費学生という究極の青田刈り制度もありますから、親御さんにもアピールできます。

爆発物にはロマンがあります。
少年が、憧れることは、仕方のないことだと思います。
ですから、彼等の情熱が、社会にとって良くない方向に向かないように、情熱を発散させてやる場を与えることも必要です。
暴力に対する憧れを、格闘技のショーで発散させるようなものです。

こう言う学生は、野に在っては危険人物ですが、防衛省の中なら有用な人材に成り得ます。
防衛省に取り込むことは、社会にとっても、防衛省にとっても有益だと思うのです。

ただ、窃盗はいけませんね。
科学クラブにでも入れば、実験と称して多少の爆薬を作るくらいはできると思うのですが……
黒色火薬くらいなら、私も小学生の時に作りました(先生の指導の下です!)し、黄色火薬を合成して、理科室の天井を焼いた(もちろん事故です!)知人もいます。
この学生は鉄パイプ爆弾を作るほど、大量に、大規模なものを製造したかったみたいですね。
派手に吹っ飛ばして見たかったんだろうな~

2012年5月15日 (火)

訓練と演習の違い

自衛隊(軍隊)における訓練と演習の違いについて書いてみます。

まず最初に自衛隊ではなく、世間一般での意味を押えておきましょう。(出典は広辞苑)
「訓練」:①実際にあることを行って習熟させること
     ②一定の目標に到達させるための実践的教育活動
「演習」:①物事に習熟するために練習を行う事
     ②軍隊・艦隊などが実戦の状況を想定して行う訓練

次に自衛隊での意味です。
明文化された定義としては、「自衛隊用語集」や「述語の解」と呼ばれる本に載っていると思うのですが、退職時に処分してしまったようで、手元にありません。
なので、あくまで記憶というか一般的理解で書きます。(明文定義とは齟齬があるかもしれません)

「訓練」に関しては、一般の意味と同じです。
「演習」は、一般の意味における「実戦の状況を想定して行う訓練」に近いですが、「実戦環境を想定した訓練」が、演習ではなく、あくまで訓練として、頻繁に行われているように、自衛隊(軍隊)における「演習」は、もう少し狭い意味の概念です。

「訓練」と「演習」には、まず規模の違いがあります。訓練は、個人訓練と呼ばれる訓練があるように、1人から大規模なものまであります。対して「演習」は、空自であれば、通常の計画主体は航空方面隊以上であり、小規模演習であっても、参加者・部隊はかなりの数に及ぶことが普通です。

そして、規模以上に大きな違いは、目的です。
訓練の目的は、個人や部隊の能力を向上させることにあります。
演習は、勿論、能力向上も目的ではありますが、もう一つ、計画(多くは作戦計画)の検証という目的を持つことが普通です。
(政治的な示威を目的とすることもあります)
作戦計画に沿ったシナリオに基づいて演習を実施し、計画に不備がないか確認するのです。

このため、逆に、演習シナリオを見れば、作戦計画の概要が分かることになります。
次に挙げるニュース記事などは、この典型です。
陸海空3自衛隊 尖閣奪還作戦を策定 「中国が占領」連携対処」(産経新聞12年5月9日)

さらに、訓練なのか演習なのかによって、前述の政治的な示威の意味・効果も変ってきます。
つまり、全く同じ内容で行ったとしても、「訓練」であれば、能力の向上を意図して、たまたまそういう想定で行っただけと言えますが、「演習」の場合、仮想敵に対して、作戦計画を持ち、本気でやる気なんだと、(あくまで)言外にプレッシャーを与えることが出来ます。

それが故、ヘタレ日本の場合、本来「演習」と呼ぶべきものなのに、対象国に配慮して「訓練」と呼ぶケースもありますが……

2012年5月18日 (金)

自衛隊用語「煙缶」

自衛隊用語は数あれど、最も有名な自衛隊用語は、この「煙缶」でしょう。

「煙缶」(エンカン)は、灰皿のことです。
自衛隊では、直径15cm、高さ20cm程度の業務用缶詰の空き缶を灰皿として再利用(火災予防のため、真っ赤に塗装されてます)している事が多いため、こう呼ばれるようになったようです。
用語として定着しているので、普通の灰皿も、「煙缶」と呼びます。
3幕共通みたいです。たぶん、旧軍からの継承なんでしょう。

はい、終了!
では味気ないので、この「煙缶」にまつわる小話を紹介します。
有名な小話なのですが、何故かネットで探してもそれらしきものは見つかりませんでした。
恐らく、各地で細かいバリエーションがあると思いますが、ここでは大筋をちょっと脚色して紹介します。

煙缶の小話

 自衛隊が、今ほど世間の評価を得ていない頃のお話です。

 ある隊員が、基地外のバーに、1人で飲みにでかけました。
 店内を見渡すと、カウンターの並びに、可愛い女の子が、これまた1人で飲んでいます。

 当然、声をかけない手はありません。
 相手の女の子だって、1人で飲みに来ているのですから、声をかけられることを期待していたのかもしれません。

 自衛官だとバレると、引かれてしまう可能性もあるので、仕事には触れないように注意しながら、各種の話題を駆使し、なんとか、良い雰囲気に持って行きました。

 かなり打ち解けた頃、喫煙者だった隊員は、タバコが吸いたくなりました。
 しかし、手近に灰皿がありません。
 見渡すと、女の子の向こう側に、ありました。

 「あ、そこの煙缶とってくれる?」
 「はい、どうぞ」

 何気なく頼んだ隊員。

 何気なく応じた女の子。

 その瞬間、お互いが自衛官だと理解して、目を見つめたそうです。
 チャンチャン

2012年5月20日 (日)

「衛星」騒ぎで露見した艦船輸送力の不足

先般の北朝鮮による「衛星」発射騒ぎの際、わずか4個のパトリオット高射隊(それもフルスペックではなく最低限)でさえ、海自の輸送部隊だけでは運ぶことが出来ませんでした。

行き先と輸送艦(船)は次の通りです
石垣島:LST-4003くにさき
宮古島:LST-4001おおすみ
沖縄本島:民間船

おおすみ型輸送艦の2番艦しもきたが、どこにいたかは、調べがつきませんでしたが、整備中か何かだったのだろうと思われます。

おおすみ型以外の海自輸送艦は、ゆら型のみで、こちらもまもなく退役の予定のため、今回のパトリオット部隊輸送は、海自輸送力の全力と言ってもおかしくないものでした。

重量物の輸送を一手に引き受ける艦船での輸送力は、この程度しか整備されていなかった訳です。
動的防衛力と言っても、このままでは画餅と言うべきでしょう。

それに問題は、海自輸送艦の不足だけではありません。
次の写真を見て下さい。
Photo
石垣島
PAC3が石垣到着 配備地の新港地区へ」(沖縄タイムス12年4月4日)より

Photo_2
宮古島

Photo_3
沖縄本島
那覇と宮古島にPAC3到着 自衛隊700人展開へ」(朝日新聞12年4月4日)より

全てパトリオットの発射機(LS)ですが、一目で分かるとおり、民間船で運ばれた発射機にはミサイル(実弾)が搭載されていません。実弾を搭載していないため、火薬類取締法で定められたマル火マークも取付けられていません。
沖縄本島に運ばれたパトリオット部隊用の実弾は、空自輸送機が空輸しました。
那覇港と宮古島にPAC3到着」(沖縄タイムス12年4月3日)

弾薬部分は空自の輸送機などで運んだとみられる。


大きすぎて積めなかった訳ではありません。
海自艦船と違い、自衛隊車両を積んだとしても、民間船は、あくまで民間船です。
そのため、法令(危険物船舶運送及び貯蔵規則等)による制限で、実弾が運べなかったのです。

動的防衛力を実現するため、艦船での輸送能力確保は必須ななずです。
今回の「衛星」騒ぎで、国民や沖縄県民にも、かなりのアピールが出来ました。

輸送艦の追加配備、民間船の法的制限緩和等を早急に進めないといけないでしょう。

2012年5月23日 (水)

F-22飛行制限と機上酸素発生装置 (OBOGS)の不具合

F-22は、昨年4カ月半もの間、飛行停止措置が取られました。

パイロットに酸素を供給する機上酸素発生装置 (OBOGS=Onboard Oxygen Generation System、オボグス)に不具合があり、パイロットが低酸素症に陥る可能性があるためでした。
2010年の11月に発生したF-22の墜落事故は、この不具合による低酸素症が原因と見られています。

部品の不具合→飛行停止措置は、良くある話で、飛行停止措置が解除になったため、対策が出来たのだろうと思っていましたが、有効な対策が採られないまま飛行再開されていたようです。

そのため、パネッタ国防長官が、F-22の飛行制限と対策の実施を指示しました。
F22戦闘機パイロットに低酸素症の懸念―米国防長官が対応を指示」(ウォールストリートジャーナル12年5月17日)

 F-22の訓練飛行については、今後飛行距離が制限される。パネッタ長官はまた、予備の酸素供給システムの開発を急ぐとともに、緊急着陸できる範囲内に飛行を制限するよう命じた。


OBOGS搭載機は、OBOGSの不具合に備えて、小さな液体酸素ボトルemergency oxygen supply (EOS)を搭載しています。ですが、あくまで緊急用で、基本的にマスクを外しても問題ない高度まで降下するためのものです。
そうなると今度は巡航高度まで高度を上げられないため、場合によっては基地に帰るまで燃料が保たないという問題が発生する可能性があります。パネッタ長官がF-22を基地周辺での運用に限るという制限を課した理由も、こういう理屈からでしょう。

改修がなされれば、今後、F-22は、事実上OBOGSを2台積むことになるんでしょうね。

さて、前記記事内容に戻ります。

 空軍はF-22の操縦を拒否したパイロットもいることを認めている。また同機の墜落で死亡したパイロットの未亡人は訴訟を起こした。

低酸素は非常に怖いものです。
パイロットが、機械的な警報が無い場合、努力や注意で回避できるものではありません。
それにも係わらず、2010年のF-22墜落事故原因が、パイロットエラーとされていることなどからすれば、乗りたくないと言い出すパイロットが居ることは、あたりまえにも思えます。

低酸素症(Hypoxia)については、また別の機会に詳しく書きたいと思いますが、自覚症状としては、ちょっとほてった感じがする、頭がボーとする、体がだるい等、で呼吸が苦しいというような事は全くありません。(呼吸の苦しさは酸素不足ではなく、二酸化炭素過多によるものです)
その一方で、簡単な計算ができなくなるなど、知能活動が低下します。しかも、恐ろしいことに知能低下しているので、知能低下していることを自覚することは難しいという事態に陥ります。

2010年のF-22墜落事故では、パイロットのジェフリー・ヘイニー大尉が、OBOGSの作動停止後、適切にEOSを作動させず、誤って
(EOSを作動させるつもりで)機種下げ操作をしたため墜落したと結論付けられています。
他にも多数のパイロットが低酸素を訴えていることを考えれば、この時も低酸素症のため、パイロットが正常な判断力を失っていたと考える方が妥当だと思いますが、なんとも酷な調査結果です。
F-22 oxygen system malfunctioned moments before crash 」(Flightglobal11年11月10日)

The accident investigation board still blames the accident on the pilot, Captain Jeffrey Haney, who failed to activate an emergency oxygen supply (EOS) that could have saved his life and the aircraft.
中略
The investigators said Haney failed to activate the EOS during the 31s period after his normal oxygen supply became restricted.
中略
The report concluded that Haney inadvertently pointed the aircraft at the ground while trying to activate the EOS, a procedure that calls on the pilot to pull up on a small ring tucked into the side of his ejection seat.

Simulator tests later concluded that this manoeuvre may have led to inadvertent stick or rudder movements.

The investigators ruled out loss of consciousness as a possible cause, despite possible oxygen deprivation.


ウォールストリートジャーナルの記事に戻ります。

 空軍はまだ問題の原因究明には至っていない。ホィーラー氏はパイロットが訴えた症状について、酸素欠乏でなく、汚染物質あるいは毒素が原因であることを示す証拠もあるという。


OBOGSが生成する酸素に、エンジン排気が混じった可能性があるようです。
OBOGSの生成する酸素に排気が混じれば、燃焼しきっていない燃料が含まれていた場合、最悪空中爆発などの事故も想定されます。
そのため、前掲のFlightglobalの記事にもありますが、F-22は、排気が混じった可能性があれば、OBOGSを停止させるように作られているようです。

 F22は昨年飛行が再開された後、1万2400回出動したが、その間にパイロットが体調不良を訴えたのはわずか11件だった。空軍関係者によると、症状の発生率がこのように低いため、原因解明が遅れているという。

再現性の低い不具合ほど、原因究明が難しいトラブルはありません。
パネッタ長官が指示したとは言え、この不具合は、長期化する可能性が懸念されます。

ちなみに、航空自衛隊機では、F-2とT-4がOBOGSを搭載していますが、F-22と違い、排気が混じる可能性はないので、日本での心配は無用でしょう。

2012年5月26日 (土)

退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況2012

防衛省が公表している資料「退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況」が2012年3月31日付の情報に更新されました。

以前の記事「退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況」を2010年の6月30日付の情報を元に書いていますが、その時の状況と比較してみましょう。

総数
 181人→203人
県庁等に多数を配置している都道府県
 1位 広島(5人)・長崎(5人)→変らず
 2位 東京(4人)→変らず
県庁等に無配置都道府県
 福井・長野・沖縄→長野沖縄

総数で22人増えています。やはり、震災の影響でしょうね。以前の詳細記録が出てこないのですが、東北エリアが特に増えているような気がします。

前回記事で、批判した無配置県ですが、福井は、やっと1名を配置しました。
あれだけ原発があって、原発災害が想定されるんですから、当たり前です。

今後、継続して不安なのは、やはり沖縄です。
県民保護を考えれば、備えあれば憂いなしのハズなんですが……

「なんくるないさ~」の県民性は、備えなくても憂いなしのようです。

2012年5月28日 (月)

嘘新聞の嘘記事

嘘のジョーク記事ばかりを載せるニュースサイトはいくつかあると思いますが、先日その最大手?と呼ぶべき虚構新聞で、ちょっとしたトラブルがありました。
橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」(12年5月14日)

あまりにもあり得そうな嘘だったため、信じた上でツイッター等で拡散した方が多数となり、嘘が真実だとして広まってしまったそうです。
で、虚構新聞がツイッター上で謝罪するに至っています。

【お詫び】本日付記事でネット界隈をお騒がせしたことをおわび申し上げます。現実にありえないことをお伝えするのが本紙のポリシーですが、今回非常に多くの方から「橋下氏ならやりかねない」と思われたのが最大の誤算でした。今後はもっと現実離れした虚構報道を心がけます。申し訳ありませんでした。


ここまで、前振りです。
さて、この嘘ニュース、ご存じの方も多いと思いますが、防衛・軍事の分野でもあります。
虚構新聞とは違い、名前だけでは嘘ニュースとは分からない航空機新聞社です。

この航空機新聞社、実に良く出来てます。
出来すぎてます。
トップページには、とっても小さく「USO800認定」と書いてあり、嘘であることを、ちょっとだけ仄めかしているのですが、それ以外は嘘であることを思わせるところは、記事の内容だけです。

なので、直リンクで記事ページを直接見た方などは、「!」となること請け合いです。

しかも、例えば「おおすみ ハリアー」なんて、如何にもマニアな方が打ち込みそうな検索語でググると、トップに表示されるのが、この航空機新聞社の記事「海上自衛隊航空母艦配備に向けVTOL戦闘機の離着艦試験を実施」だったりします。

また、時間経過のため、あまり嘘ではなくなってしまった記事「【海上自衛隊】次期固定翼哨戒機P-X研究開発について」なんかもあります。

惜しむらくは、2005年以来、更新がストップしてしまっている事です。
非常に好きなHPだったのですが、残念です。

存在意義もあると思っています。
ネットの浸透による玉石混交した情報が氾濫する一方、田母神元航空幕僚長が音頭をとった尖閣に関する渋谷デモをマスメディアが完全無視する等、情報リテラシー、メディア・リテラシーを強化の必要性が高まっていますが、そのトレーニングのためにも、こう言った嘘ニュースは格好の教材となります。
冒頭で紹介した虚構新聞に騙された方などは、リテラシーが不足していると言えるでしょう。
(航空機新聞には、私も「!」と思ったことがあるので、自戒も込めて)

航空機新聞は、合成写真の制作を含めて、記事の作成には労力がかかるでしょうが、再開して欲しいものです。

なんなら、記事だけなら書きますよ。
航空機新聞社様!

なお、この航空機新聞社は、広告も凝っており、広告さえも完全に嘘です。
良くやるなあ……

2012年5月30日 (水)

「協同」・「共同」の違いと海自による撃沈訓練の違憲性

最初にクイズです。
「協同」と「共同」は同じでしょうか?
読みはどちらも「きょうどう」でしょうか。
さて正解を発表する前に、このクイズと密接に関連する話題に触れておきます。

リムパックで海自が憲法違反となる訓練を行ったと報じられています。
海自、米豪と演習で強襲艦撃沈=多国間武力行使で憲法抵触の恐れ-10年7月」(時事通信12年5月27日)

 参加国が共通の敵対目標に対して武力行使するもので、憲法の専門家からは訓練内容は自国を守るための個別的自衛権の範囲を超え、憲法解釈で禁じられている集団的自衛権行使に抵触するのではないかとの指摘も出ている。


共通の目標に、協力して攻撃すれば、それは個別的自衛権の行使ではなく、集団的自衛権になるため、憲法違反だというのです。
恐らく「そんなバカな話があるか!」と思う方が大多数でしょう。

集団的自衛権は、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」とされています。
参考:防衛省HP

日米同盟が、片務条約であるのも、憲法上その行使が禁じられているからとする解釈のためです。

この解釈と照らし合わせても、共通の目標を協力して攻撃しただけで、日本がアメリカを守ろうとしたことになる訳でもなく、憲法上の問題になどなるはずがない、というあたりが一般の理解だろうと思います。
ネットを見ても、同様のコメントが多いようです。

どうせ、時事の報道にある「憲法の専門家」なる人物も、凝り固まった”憲法(擁護)学者”に違いなく、時事が騒いでいるだけだと考えると思います。

しかし、事の是非は別として、「マスゴミが騒いでいるだけ」とばかりは言えません。

同報道で訓練の詳細が報じられています。

 米海軍と豪軍によると、演習は「撃沈訓練(Sinking Exercise)」と名付けられ、10年7月10日にハワイ沖で約9時間にわたり実施された。演習は5部構成で、まず米豪カナダの艦艇が連携して、対艦ミサイルを標的の強襲揚陸艦「ニューオーリンズ」に発射。第2波で米豪の航空機がミサイルを上空から撃ち込んだ。
 さらにB52戦略爆撃機がレーザー誘導爆弾を投下。最後に海自護衛艦「あけぼの」とイージス艦「あたご」の2隻と米豪の計6隻が縦列で航行。米イージス艦の砲撃開始後に「あけぼの」が76ミリ速射砲を、次いで「あたご」が127ミリ速射砲を発射した。
 米海軍によると、演習のシナリオは「あけぼの」と「あたご」、米・豪艦艇が「約2000ヤード(約1800メートル)の間隔の縦列を組み、撃沈まで東から西に向けて射撃」となっていた。米の記録では日米の砲撃の時間帯が重なった場面もあった。


問題視されているのは、海自艦が、他国艦艇と縦列を組み、砲撃したからということのようです。

これに対して、海幕は集団的自衛権の行使には当たらないとして、コメントを出しています。
集団的自衛権行使前提ではない=防衛省」(時事通信12年5月27日)

参加国ごとに時間を区切り、射撃順序を決めて訓練を実施しており、参加国が連携・共同して実施したものではない。武力行使の一体化や集団的自衛権の行使を前提として、特定の国または地域を防衛することを目的とした訓練ではない。


海幕も、連携した攻撃行動は、武力行使の一体化として、集団的自衛権の行使に該当してしまう可能性を認めているのです。

ここで、冒頭のクイズの解答です。
防衛省・自衛隊(政府、特に外務省もですが)においては「協同」と「共同」は、明確に区別されています。
読みは、国語的には「きょうどう」ですが、音声で区別が必要な時は、「共同」の方を「ともどう」と呼びます。
文書作成で間違うと、コッテリと怒られます。(私も怒られました)

両者の違いは、端的に言えば、自衛隊内の「きょうどう」は「協同」であり、日米間の「きょうどう」は「共同」です。
このことは、「日米協同」で検索してもらえば、簡単に分かります。
政府関係の文書では、ごくごく少数の誤字で記載されたものを除き、「日米共同」と書かれた文書しかヒットしません。

では、「協同」と「共同」が、どう違うかと言えば、一体化したもの、つまり連携して協力することは「協同」であり、連携せず、単に共に行うことは「共同」と区別されています。
つまり、海・空自衛隊は「共同」するだけでは不十分で、「協同」すべきなんですが、米軍と「協同」すると、集団的自衛権の行使になってしまうため、「共同」に止めよう、ということなんです。

バカげてます。
文書起案で「日米協同」と書いて怒られながら、私もそう思いました。
軍事的に効果的なはずの高度な連携を取ったら、それは憲法違反だというのです。
税金の無駄遣いもいいところです。

という訳で、今回の事案は、海幕が言うように、単に順番に射撃しただけでは集団的自衛権の行使には当たりませんから、憲法違反ではありません。
ですが、例えばアメリカの艦艇が囮になりながら、その隙に自衛艦が射撃するといった想定で訓練を行ったのだとしたら、現行解釈では憲法違反になってしまう可能性があるのです。

改憲して、集団的自衛権の行使を認めることが最も望ましいですが、連携して攻撃したら憲法違反だなどという現行解釈だけでも、早急に改める必要があります。

なお、このニュースで救われる思いだったのは、この件を問題視する他のマスコミが非常に少なかった事です。
私が知る限り、時事の他は、共同通信が報じただけで、後は朝日がこの報道に対する官房長官のコメントを報じていただけでした。
海自の10年の撃沈訓練「問題ない」 藤村官房長官」(朝日新聞12年5月28日)
さらに、ネットの論調は言わずもがな。

現行解釈に問題がある理由は、過去に日米同盟を阻害しようとする左派政党等が強かったためですが、時代は変り、国民一般の世論は変りましたし、マスコミも変ってきました。
解釈だけでも変えて良いはずです。

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