北朝鮮の「ハリボテ」ミサイルは脅威
先日15の北朝鮮における軍事パレードで登場した新型ミサイルが「ハリボテ」だと、報じられています。
ですが、これは単なる「ハリボテ」ではなく、脅威の存在を示す「ハリボテ」です。
「北朝鮮の新型ミサイルは「はりぼて」…米専門家」(読売新聞12年4月21日)
平壌に招待された報道陣が撮影したミサイル6基の鮮明な写真を比べたところ、胴体の表面に伸びる電線用ダクトの取り付け場所や、ミサイルを固定するベルトの位置が少しずつ異なるなど、不審な点が見つかった。
本物のミサイルなら、規格は同じはずで、細部にばらつきがあることは考えにくい。
詳細が分からないからコメントしずらいな~と思っていたら、ブログ「海国防衛ジャーナル」様が「北朝鮮の新型長距離弾道ミサイルは模型:独専門家」として、Markus Schiller 氏とRobert H. Schmucker 氏による、同種の見解を翻訳までして載せてくれました。
ここでは、内容は転載しないので、細部を確認したい方は、前掲リンクを見て下さい。
問題は、読売が紹介した「憂慮する科学者同盟」による分析にせよ、前掲2氏による分析にせよ、パレードで行進したミサイルに関する個別の評価は正しいかも知れないものの、それらインフォメーションからインテリジェンスを導き出す、情報分析の最終段階で、間違いというよりも、半ば意図的な虚偽ではないかと思える結論を導いていることです。
ライト氏は「現実のミサイルを反映した模型ではないし、実物のミサイルでもない。これは新たな脅威ではない」と結論している。
「海国防衛ジャーナル」様に掲載された2氏による分析の結論も、ほぼ同様です。
北朝鮮の新型ICBMは、模型(mock-up)であり、パレードで見せるというショーのためのものだというのです。
これらの分析を検証するためには、大量の写真等を見なければならないので、直接の分析はしません。
ですが、あくまで彼等のインフォメーションの評価が正しいと仮定しても、私は別の答えを導くべきだと考えます。
私が注目したのは、6基のミサイルが細部において異なっていると判断された点です。
彼等は、実際のミサイルなら細部が異なっているはずはなく、これは単なるズサンな模型制作だ、と評価しています。
しかし、これが単なる政治ショーのための着ぐるみのごときハリボテではなく、兵器開発でよく行われるところのモックアップ(模型)だと考えれば、細部が異なっていることにも合理的な説明ができますし、結論は全く違ったモノになってきます。
航空機開発でも、モックアップ(模型)は頻繁に作られます。というか作ってあたりまえです。
F-2のモックアップ(エアーパークHPより)
それは、主には整備性の検証、例えば、部品交換の際に、整備員がどうやってその場所までアクセスして作業するのか、手は届くのか、照明は十分なのか等、実物大の模型がなければ確認が困難な事項が多いからです。
北朝鮮の移動式ICBMは、危険性の高い液体燃料を使用している可能性もあり、燃料注入作業等の作業性や安全確保ができるかどうかは、モックアップを使用して確認する必要性が十分にあると思えます。
そして、今回登場したモックアップが、そういうモックアップであるなら、検証と改良を繰り返したでしょうから、各基の細部が異なっていることは当然と言えます。
純粋に政治ショーのためのハリボテであるなら、6基の細部を変えるようなことはしないでしょう。同じに作った方が楽です。
6基が異なっているなら、この模型は、実戦配備を視野に入れたミサイル開発のためのモックアップだと評価すべきと考えます。
そして、そうであるならば、このICBMが「ハリボテ」であることの意味は、「これは新たな脅威ではない」ではなく、「これは新たな脅威を作ろうとしていることの証左だ」となるべきです。
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