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先日の記事「シリア情勢混沌化で高まるイスラエルによるイラン攻撃」で、イスラエルはイランへの攻撃ルートとして、シリア、イラク経由ルートを狙っているのでは、と書きましたが、ニューヨークタイムズは、シリア迂回ルートを予測しているようです。
「Iran Raid Seen as a Huge Task for Israeli Jets」(ニューヨークタイムズ12年2月19日)
ニューヨークタイムズが予想する飛行経路(前掲記事より)
注釈として「Any Israeli attack on Iran would involve crossing another country's airspace.」と書かれており、イスラエル機による攻撃が、第3国の領空を通過する必要があることを指摘しています。
記事でも、最初の問題が、ルートであると書かれています。
military analysts say the first problem is how to get there. There are three potential routes: to the north over Turkey, to the south over Saudi Arabia or taking a central route across Jordan and Iraq.
ルートの分析の中で、ニューヨークタイムズも、私が前掲記事で指摘したように、イラクを経由するルートが有望であると指摘しています。
イラクは、イスラエル機を阻害する能力を持っていませんし、撤退を完了した米軍も、もはやイラクの領空を守る義務もないからです。
The route over Iraq would be the most direct and likely, defense analysts say, because Iraq effectively has no air defenses and the United States, after its December withdrawal, no longer has the obligation to defend Iraqi skies. “That was a concern of the Israelis a year ago, that we would come up and intercept their aircraft if the Israelis chose to take a path across Iraq,” said a former defense official who asked for anonymity to discuss secret intelligence.
しかし、ニューヨークタイムズは、イラクに至る有効なルートとして、シリアを通過するルートが選択される可能性については言及していません。
シリアは、イスラエルの周辺諸国の中でも、仇敵と言える間柄ですし、装備が旧式のモノが多いとは言え、相当の防空能力を持っているからでしょう。
シリアの防空能力については、アシナガバチ様が、次のブログ記事で紹介しているので、そちらをご覧下さい。
「シリア動乱とイラン攻撃の可能性に思うこと」(アシナガバチの巣作り日記12年2月12日)
ニューヨークタイムズは、ヨルダン、トルコ、あるいはサウジが、イスラエル機の領空通過を許可する可能性があると見ているようです。
しかし、イスラエルの周辺国家の中では、比較的温和な国とは言え、これらの国がイスラエル機の通過を許容するとは、到底思えません。
トルコは、ガザへの支援船の問題以降、イスラエルとはかなり険悪ですし、ヨルダンやサウジは、イスラエル機の通過を許したりしたら、共に王制が吹っ飛びかねません。
イスラエルが、これらの国の中で特に防空能力の低いヨルダン領空の強行突破を企図したとしても、如何に能力の高いイスラエル空軍とは言っても、無理があるように思います。
イスラエル-イラン間の距離が遠いため、空中給油機までも、イラク領内まで突破させないと、イラン攻撃は成功したものの、燃料切れで墜落、という結果になりかねないからです。
ここでは触れませんが、ニューヨークタイムズの記事は、この他地中に防護された核施設をイスラエルが保有する武器で破壊できるのか、と言った問題も取り上げています。
興味のある方は、元記事を見て下さい。
実際にイラン攻撃が実施されたとしたら、世界の一大事ですから、滅多な事は不謹慎で言えないのですが、私か、ニューヨークタイムズか、どちらが当たるか、純粋に知的ゲームとして、興味は尽きません。
北海道に居住した経験でも無ければ知らないかもしれませんが、全国的にも有名なさっぽろ雪まつりは、自衛隊の協力無くして成り立ちません。
大規模雪像に関して言えば、実質メイン会場と言えた真駒内会場が陸自駐屯地だった(現在はつどーむに移っています)ことを含め、影どころか、間違いなく祭りの最大の功労者です。
陸自の部隊削減などのあおりを受け、現在は以前ほどの貢献をしていませんが、それでも、主力であることに変りはありません。
そしてそれは、今年も同じです。
「準備進む"さっぽろ雪まつり"厳寒の中 雪像づくり 制作隊3隊が"競作"11旅団」(朝雲新聞12年2月2日)
彼ら(陸自)の作る雪像は、ほんとにスゴイの一語に尽きます。
空自OBの所感としては、「さすが陸自、空自には無理だな」というところです。
陸自の作る雪像は、非常に巨大で精緻です。
まさに、「用意周到 動脈硬化」と言われる陸上自衛隊気質の面目躍如です。
昨年のさっぽろ雪まつり自衛隊協力作品
11旅団HPより
空自が同じモノを作ろうとしたら、「似ているけど、別のモノ」になってしまうでしょう。
空自が「勇猛果敢 支離滅裂」と言われるその気質を、良い意味で発揮して雪まつり協力するとしたら、「何でもいいから、明日までに面白いものを作れ」とでも言われた場合でしょうか。
「伝統墨守 唯我独尊」と言われる海自の場合は、どんなものを作るんだろうか?
先日、陸自がやっとパトリオット部隊の警備を始めてくれたとの記事を書きましたが、同様に重要で、同様に大変なレーダーサイトの警備にも腰を上げてくれたそうです。
「30普連 46警戒隊と合同訓練 レーダーサイトの警備実施」(朝雲新聞12年2月2日)
やっと重すぎる腰を上げてくれたのは、弾道弾防衛にガメラレーダーが必須なことを陸自もやっと理解してくれたからだろうと思います。
また、背景には大綱が改正されたことも大きいでしょう。
ほとんどの空自のほとんどのレーダーサイトは、それなりに高度のある山の頂付近にあり、山岳戦の訓練を積んだ隊員が多数警戒に付かなければ、ロケット砲等で簡単にレーダーを破壊できるような環境にあります。
対する空自のサイト勤務員は、他の例に漏れず、警備に避けるような人的余力はなく、ゲリコマに対抗できるような技量は、当然のようにありません。
当然、陸自に警備をお願いするしかない訳ですが、こちらもパトリオット同様に、「やっと」やってもらえる方向になってきたようです。
これも、北朝鮮が弾道弾騒ぎを起こしてくれたおかげでしょうか。それにしては遅すぎますが……
朝雲の記事には、「このほど」という記述がありますが、掲載されている写真を見ると、どう見ても、最近の画像ではありません。
朝雲新聞より
冬の佐渡は、真っ白だからです。
記事の掲載が遅く、実際にはもっと前から訓練が始まっていたのであれば良いのですが……
普天間移設問題は、ひたすら頑なになる沖縄(マスコミ?)世論のおかげで、迷走の度を深めています。
沖縄世論が頑なな理由は、復帰前のアメリカによる統治が良くなかった事に最大の理由があると思いますが、沖縄県民の国際情勢と軍事に対する無理解と、それを誠意を持って説明しようとしない日本政府の姿勢も、大きな理由だと思います。
移設問題の最も忘れてはならない、そして非常に忘れられがちな焦点は、なんと言っても在沖海兵隊の存在意義です。
日本政府の基本的スタンスは、在沖海兵隊が「抑止力」だから必要だとするものです。ですが、この説明は、少々歯切れが良くありません。
「「抑止力」根拠示さず 在沖海兵隊の意義 防衛省、県に回答」(琉球新報11年12月21日)
防衛省は、在沖米海兵隊が九州や本州に駐留した場合、「台湾、東南アジアといった地域から遠ざかり、種々の事態への対処に遅れが生ずる」と指摘するが、同地域で想定される海兵隊の具体的な任務は示さず、政府が強調する在沖海兵隊の「抑止力」の根拠は示さなかった。不安定さが増す見込みの北朝鮮に対しては九州、本州への駐留が「確かに朝鮮半島に近くなる場合がある」と有利との見方を示している。
中略
沖縄に展開している陸、海、空、海兵隊の米4軍のうち、在沖海兵隊について「唯一、地上戦闘部隊を有している」と価値を強調。「抑止力の一部を構成する要素として重要」と指摘しているが、海兵隊が「抑止力」にどの程度必要かは明示しなかった。
沖縄メディアであることを差し置いて読んでも、政府の物言いが、奥歯に物が挟まった言い方なのは、分かると思います。
ナゼなのか。
それは、在沖海兵隊が、「日本を防衛するための抑止力」ではないからです。
だからこそ、詳細な説明を聞いたはずの鳩山元首相から、抑止力だと言ったのは方便だった、などという発言が出てくるのです。
では、何処を防衛するための抑止力か、と言う事になりますが、主要な候補が韓国と台湾しかないのは、誰でも分かることです。
しかし、この内、韓国防衛用であるとする説明は、かなり苦しい説明です。
在韓米軍には、陸軍第8軍もおり、数的にも装備的にも、戦闘力としては在沖海兵隊主力である第3海兵遠征軍(3MEF)よりも強力です。
一方で、仁川上陸作戦のような大規模な後方への上陸作戦を行う戦力としては、3MEFだけでは足りないでしょう。
韓国防衛用なら、総数を減らしても、第8軍を増強した方が良いくらいです。
残る可能性は、台湾しかありません。
以前にも、普天間の意義は台湾だとする記事を、何回か書いていますが、沖縄に拘る米軍の真意が、ヘリの航続距離という物理的制限から、台湾を意識したものであることは間違いありません。(オスプレイの配備が進めば、状況が変る可能性についても、以前に書きました)
この観点に関しては、「週刊オブイェクト」でJSF氏も、中国が斬首戦略(戦略というか戦術ですが)を実行する可能性も踏まえて言及してます。
ですが、確かに斬首戦略の可能性もあるものの、私はそれ以上に、台湾に常駐戦力を政治的に置くことができないアメリカにとって、海兵隊とその足であるヘリ部隊を沖縄に置くことが、中国に対して、「アメリカは台湾を見捨てない」という政治的メッセージの軍事的な発信手段だから、という点を重視しています。
先日情報が出てきた、海兵隊のフィリピンへの配備も、効果は同じです。
危機の勃発に対して、海兵隊を迅速に送り込むことが、アメリカの方針として確定路線であれば、在韓や在日の米軍が、それぞれの国に対して人質であるとする考え方と近い様相を作り出せるからです。
これは、逆に言えば、在沖海兵隊を県外移転させれば、中国に対して「台湾はあげるよ」、台湾に対しては「もう面倒は見られない」と言うメッセージを発信することになります。
当然、アメリカにそんなことは出来ません。
ですから、普天間に拘るのです。
この事を理解してもらっても、沖縄の方は、「俺は台湾のためになんか、米軍を引き受けたくない」と言うかもしれません。
ですが、それはまた、とんでもない勘違いです。
中国は、接近阻止戦略の実現にあたり、何としてでも第1列島線である台湾-沖縄ラインを確保したがっています。
ですが、政治的にも、軍事的にも、中国が台湾を飛ばして、沖縄に侵攻する可能性は低いでしょう。
つまり、沖縄県民からすれば、他国である台湾を防衛ラインとして使う事が可能で、沖縄に米軍を受け入れ、他国(台湾)を戦場にすることで、自分達の土地を戦場にすることなく、平和を確保できることになります。
米軍を駐留させるだけで、沖縄を戦場にすることを避けることができるというのに係わらず、なぜそれに反対するのか……
日本政府が、中国に遠慮して真実を語らないことも悪いのでしょうが、沖縄の方々が無知なのか……
あるいは、沖縄県民から、琉球自治共和国民になりたいのか……
ロシアによる大規模な挑発飛行が報じられています。
「ロシア空軍機が挑発 「近年最大規模」」(産経新聞12年2月9日)
統幕発表資料
統幕発表資料でのロシア機飛行経路
確認されたのは、AWACSを含む次の3機種です。この他、空中給油機が活動していたもよう。
A-50 1機
TU-95 2機
SU-24 2機
TU-95については、以前の記事「ロシア爆撃機による日本周回飛行の軍事的意味」の際と、大きな差異のある飛行とはとは思えません。
SU-24は、防衛省発表が経路だけで時間的要素が分からないのため、TU-95のフライトとの関連が不明ですが、2機がそれぞれ輪島と大湊のレーダーサイトに直進しているように見えるため、サイトに対するSEADのように見えます。
A-50については、こんな所まで出てくる戦術的な意義はないため、これはやはり産経が報じるように政治的な意図の強いフライトだと思った方がいいと思われます。
北方領土の返還はしない。いざとなれば、TU-95やSU-24を管制して、武力で阻止するぞ、という意思表示でしょう。
以前も書いたような気がしますが、空自機に北方領土周回飛行でもさせないとダメですね。
シリア情勢が、いよいよ首都にも及ぶ気配が出てきました。
「ダマスカスで軍将官殺害、騒乱が首都にも飛び火か シリア」(CNN12年2月12日)
これにより、イスラエルによるイラン攻撃の可能性が高まってきます。
近隣諸国の情勢とは言え、一見余り関係のないシリア情勢とイスラエルによるイラン攻撃ですが、軍事的には、両者には深い関係があります。
先日の記事「愚かなパネッタ国防長官_イラン攻撃を予見は真珠湾を予告するようなもの」で指摘したとおり、イスラエル空軍機によるイラン攻撃は、イスラエル機の領空通過を許可しない周辺諸国によって阻害されます。
一回だけの奇襲なら可能かもしれませんが、イランが行おうとするシャハブ等の弾道ミサイルによる反撃を、イスラエルがシャハブハントを行う事で防ぐことは出来ません。
アラブやイスラム諸国など、イスラエルの領空通過を、当然に許可しないだろう国を、表示してみます。
(イスラエルを青、領空通過を許可しないだろう国を赤、目標であるイランを緑で表示)
一見して分かるとおり、イスラエルには攻撃経路がないのです。
ですが、ここには一つの盲点と、シリア情勢という不確定要素があります。
シリア情勢が混沌化し、軍の統制が取れないような事態に陥ると、シリア軍がイスラエル空軍機による領空侵犯を阻止できなくなる可能性があります。
そして、もう一カ国、阻止しようにも、する能力がない国として、イラクがあります。
イラクの対航空戦力は、イラク戦争によって徹底的に破壊され、未だ再建できていません。
空軍は戦闘機を保有していませんし、陸軍は高高度の航空機を攻撃できる高性能SAMを保有していません。イスラエルが領空侵犯しようにも、指を咥えて見ているしかできないのです。
前掲の地図から、両国を除くとこうなります。
イスラエル北部からゴラン高原を経由して、見事に、イラン全域への攻撃経路が確保されたことになります。
イスラエル国防省にとって、このシリア情勢が、またとないチャンスに見えていることは間違いありません。
シリアが混乱したとしても、それが永続することはないでしょうし、イラク空軍もF-16を導入する見込みです。F-16の引き渡し時期について、最近の情報がないのですが、今年中に引き渡されるとの情報もあります。
米軍も、撤退してしまっている以上、手出しはできません。(それ以前に、国内政治的に手出しできないでしょうけど)
先日のパネッタ長官発言は、これらの要素を踏まえて、春には攻撃があると分析しているものと推察されます。
シリアが混乱し次第、イラクにF-16が引き渡される前、ということです。
イランによる核開発の進展や、IAEA等を通じた政治的圧力による時期予測もありますが、軍が動く事態である以上、軍事的な要素は最重要です。
アメリカ国務省が、イラクで外交官の外出時の警護用としてUAVを使用しているそうです。
「米、在イラク大使館警備に小型無人機配備」(読売新聞12年1月31日)
機種が分かりませんが、全長で数十センチ程度で非武装とのことですし、ニューヨークタイムズにはヘリコプターだとする報道もあるので、恐らくRQ-16(T-Hawk)だと思われます。
飛行可能時間が40分とのことなので、これで足りるのか?、とも思いましたが、よく考えてみれば、燃料が切れる前に着地させて燃料補給を行えばいいだけですね。
車両に随伴させて、広範囲を監視するためには非常に都合の良い、運用の利便性が高いUAVなんでしょう。
イラクが主権侵害(領空侵犯?)だと抗議しているみたいですが、(国際)法的には微妙な所のような気がします。
穿ちすぎなのかもしれませんが、もしかするとこんな記事が載ったのは、製造元のハネウェルが、日本にT-Hawkを売りたがっているのかも知れません。報道官が会見で話したとは言え、日本で新聞に載せるほどの話題かどうかは疑問です。
福島原発でも使用されました。途中でコケたのでアヤが付きましたが……
同社は、日本にも法人を置いており、防衛宇宙部門のパンフレットにも、ばっちりT-Hawkが載っています。
確かに、VIPの警護用とかで使えそうですし、自衛隊でも基地警備用とかに有用そうです。
しかし、これが売り込みに来たのだとしたら、バトルプルーブンの実証付きってことになるのでしょうから、技本の球形飛行体は、早急に実用化しないと、芽が出せなくなるでしょうね。
沖縄防衛局長が宜野湾市長選に向けて「講話」を行った問題について、思うところがあったので書いてみます。
事案の概要としては、親族を含めて職員のリストを作り、そのリストを対象者として立候補者予定者の名前と主張について「講話」し、選挙に行くよう呼び掛けたとのこと。
以前の記事「参院選総評」で書いた通り、(航空)自衛隊では、選挙前になると、教育(ミーティング)が行われることは良くありましたが、リストを作って特定隊員に対してだけ教育を行うようなことは聞いたこともありません。
教育内容についても、菓子折をもらってはいけないとか、とにかく「政治に関わるな」というスタンスの教育で、候補者の名前や主張に言及するようなことはありませんでした。ただし、選挙には行くようには指導してましたけど。
そのため、今回の事案は、「考えられない」、というのが正直な所です。
内局と制服には、文化の違いがあることは確かなのですが、上記のような「政治に関わるな」という教育を行っていた理由も、そもそも内局から「政治に関わらせるな」という通達が出ていたからです。
ですから、真部局長は否定していますが、今回の事案には、防衛省・自衛隊外からの関与があったのではないか……という邪推をしてしまうのです。
一報を聞いたときは、まさにそう思いました。
民主党政権になってから、非常に自衛官の思想的締め付けを行っていたことも、そう思った背景になってます。政権が、自衛官の(政治)思想を統制することに違和感がなくなっているのではないか……と。
真部局長を更迭していない理由は、いろいろと言われてますが、ケツまくられるのが怖いだけなのではないのか……と思えてなりません。
アメリカのパネッタ国防長官が、イスラエルによるイラン攻撃を予見しているとの報道が流れています。
「「イスラエル、春にイラン攻撃」 米長官が想定との報道」(朝日新聞12年2月3日)
「米国防長官、イスラエルがイラン攻撃する可能性高まる=報道」(ロイター12年2月3日)
恐らく、オフレコ懇談か何かで口を滑らせたのか記事ソースなのでしょう。(完全なデマの可能性もありますが)
だとしたら、愚かな話です。
イスラエルがイラン攻撃に踏み切れば、イスラエルが意図するイランによる核兵器保有の阻止に成功するか否かを問わず、中東情勢は極めて混乱した状況になることは間違いありません。
イランは、間違いなく弾道ミサイルによる報復に出るでしょうし、対するイスラエルによる再反撃は、イスラエルが極秘に保有すると噂される核を用いない限り、決定的な打撃力を持ち得ません。
イスラエル得意の空軍力による攻撃は、イスラエルの攻撃を容認できない国々(トルコ、イラン、サウジ等)の領域を経路にしなければならず、1回切りの奇襲ならばともかく、その後の大規模な航空活動は大幅に制限を受けます。
当然陸軍力で攻める訳にはいきません。
イスラエルの海軍力は、質はともかく、量では貧弱です。
アメリカがイスラエルに肩入れしない限り、イスラエルが直接たたけるのは、イランの傀儡軍事勢力と言えるレバノンのヒズボラくらいで、独力でイランの意志を完全に挫くことは困難です。
しかし、イスラエルが先に手を出したとなれば、周辺アラブ諸国の反応も考慮して、アメリカがイスラエルに関与することは困難です。
アメリカもイスラエルも、その事は理解しているからこそ、今イランに経済制裁を主力とした圧力をかけ、核開発を諦めさせるか、イランが暴発することを待っている状態でしょう。(イランが暴発してホルムズ海峡の封鎖に出れば、アメリカは大手を振ってイランを叩けます)
まさに、太平洋戦争の勃発前夜、日本を追い詰めた時のように。
しかし、これを口にしてしまってはいけません。パネッタ長官は、当該報道に関してはノーコメントを貫いているようですが、そもそも報道機関に書かれる事自体が、下手を打ったというものです。
オバマ大統領は、慌ててイスラエルによる攻撃が決まったとは思わない、などと前記報道を否定する発言を行っています
今頃、田中防衛相が野田首相に失言を怒られているように、パネッタ長官は、オバマ大統領に怒られているのではないでしょうか。
琉球新報が、またぞろオスプレイ欠陥機キャンペーンを展開しました。
パイロット発言に基づく事実報道
「オスプレイ緊急着陸 固定翼のみ 米軍操縦士が説明」(琉球新報12年1月21日)
前日の事実報道を受けての可能性の指摘報道
「オスプレイ 緊急着陸時、回転翼飛散の恐れ」(琉球新報12年1月21日)
可能性を人命軽視として社説掲載
「オスプレイ 欠陥機容認は人命軽視だ」(琉球新報12年1月21日)
キャンペーンの展開は、事実報道→可能性の指摘→反対社説の掲載、となかなか良く考えられています。(誉めてません)
キャンペーンの趣旨は、オスプレイのエンジン停止した際の緊急着陸が固定翼モードでの滑空となるため、その際に地面を打った回転翼が離脱し、基地周辺に飛散するのではないか、とするものです。
エンジン停止した際の回転翼モードでのオートローテーション機能が無いことにも言及してますが、記事は、ここにはフォーカスしてません。
回転翼でのオートローテーションより、固定翼での滑空の方が安全だということくらいは認識しており、下手なキャンペーンは、むしろ私のような者から叩かれるだけだと言うことを認識しているのかもしれません。
話を戻します。
オスプレイは、固定翼モードでは、ローター下端が、機体下面よりも、かなり下になります。
共に、ボーイング社V-22ページより
固定翼モードで滑空着陸すれば、当然ローターが地面と接触してしまう訳です。琉球新報の記者は、ギアが出ない状態で着陸したプロペラ機のペラが、地面を激しく叩くような状態を想定したのでしょう。
その際に、ローターが離脱するように設計されているとなれば、ローターブレードが遠心力で基地外に飛散するかも、と考えたのだろうと思われます。
と言う訳で、記事は、一見「確かに危険かも」と思われる書きぶりになってます。
ですが、これは杞憂というよりも、ただの無知による誤解、あるいは悪意による曲解です。
固定翼機がエンジン停止で着陸する際、プロペラは、通常、空気抵抗を少なくするため、プロペラの翼面を進行方向と同方向(プロペラ回転面に垂直)にするフェザー状態にします。
フェザー状態にすると、プロペラの翼面は揚力を発生しないので、回転は停止するか、非常にゆっくりと回る状態になります。
一部エンジンが故障した状態のプロペラ機の写真で、故障したプロペラが停止したように写っているのは、故障しただけではなく、フェザー状態にしたからです。
オスプレイがエンジン停止し、固定翼モードで滑空する際も、当然そうするでしょう。
回転していないローターが地面を打って、プロペラから離脱しても、せいぜい数十m程度しか飛散しないと思われます。
当然、その程度であれば基地内です。
琉球新報の記者は、知ってか知らずか、この点を、間違った認識で記事を書いたようです。
一方で、通常反オスプレイネタがあれば追従するはずの沖縄タイムスは、この件に対しては沈黙しています。
琉球新報の記事が、間違っていると認識していたからかもしれません。
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