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2012年1月24日 (火)

核兵器使用の正当性とキリスト教

ちょっと古いニュース記事になりますが、軍事教育と宗教に関して、興味深い記事がありました。

米空軍、核ミサイル発射担当将校にキリスト教で聖戦教育」(朝日新聞11年8月4日)

地上発射式の核搭載弾道ミサイルを管制する幹部に対する教育だと思われますが、「nuclear ethics(核の倫理)」なるコースで、聖書の記述などをテキストとして、核兵器を使用することの正当性を教育してきたようです。

なお、この問題を公にした「軍における信仰の自由財団」のリンクを貼っておきます。
軍における信仰の自由財団

前掲の朝日の記事では、あまり詳しく語られていないので、関連する記事を探したところ、二つほど見つかりました。

Air Force suspends ethics course that used Bible passages to train missile launch officers

Air Force yanks nuclear ethics course

キリスト教の教義と核兵器使用(及びそれによる大量虐殺)については、個人的には興味のあるテーマなのですが、軍事・防衛からは外れて行くので、ここでは触れません。

ただし、非常に気になったのは、2つめにリンクを載せたエアフォースタイムズの記事に次のような記述があったことです。

While much of the presentation is aimed at preparing airmen for potential internal conflicts over their faith and job responsibilities that could involve killing others, one slide notes that fewer than 20 percent of soldiers in World War II shot at the enemy.


これによると、このコースで使用されていた教材が、以前の記事「書評「戦争における「人殺し」の心理学」」」でも紹介した、2次大戦において20%未満の兵士しか敵に対して発砲できなかったという事実に、注目していたとあります。

地上発射式の弾道ミサイルの撃ち合いでは、管制官の秒単位の逡巡が、結果を大きく変える可能性があります。
ですから、管制官が確固たる信念で、ミサイルの発射ボタンを押せるよう、こう言った教育をしたのでしょう。
そう言う意味では、理解のできる話です。

そして、もう一つ、ここからは、推測になりますが、米軍がこう言った教育を行っていた理由が考えられます。
このような教育が行われていた背景として、もしかすると、語られていない歴史があるのかもしれません。

私が知る限り、広島や長崎に原爆投下を行った爆撃機の乗員が、戦後、罪の意識に苛まれ、メンタルヘルスが必要な事態に陥ったというような話はありません。(ただし、原爆投下作戦に気象観測機の乗員として参加したクロード・イーザリーという人はいます)
ですが、ベトナム帰還兵やイラク戦争後の米兵に、メンタルヘルスを要する兵が多数発生していることを鑑みても、そうした事実が全く無かったと言う方が、むしろ違和感を感じます。

東京大空襲のカーチス・ルメイや、ドレスデン爆撃のアーサー・ハリスといった、指揮したことで虐殺者となった人間では、原爆投下機の乗員以上に人を殺した人間はいるでしょう。
ですが、人類史上、直接に手を下したという点では、彼等ほど虐殺を行った人間はいません。

隠された歴史として、原爆投下機の乗員に、メンタルヘルスが必要になった人がいたのかもしれません。
それもあって、米空軍はこういう教育をしたのではないかと思われます。

これ以上の情報は出てこないと思いますが、なかなか考えさせられる話題でした。

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核と核戦略」カテゴリの記事

コメント

メンタル・ヘルスということでは、米空軍のパイロットにも、教育やカウンセリング等の機会が与えられていると聞きます。

9・11以降、スクランブル発進して、乗客が多数搭乗しているハイジャックされた旅客機を撃墜せねばならない事態が想定されますので。
米民航機のパイロットには州空軍や予備役の人も多いので、友人や、乗客には知人や、ひょっとしたら自分の家族が搭乗している可能性すら考えられます。
それでも撃墜せねばならない時には撃たねばならないわけですから、パイロットへの精神面でのサポート体制が必要なわけです。

日本でもそのような事態が発生する可能性は当然あるわけですが、空自ではその辺はどうなっているんでしょうねえ~

公機関の政教分離が進んだ日本では有り得ないですし、一般的日本人の宗教感では、このアプローチは有効ではないのでしょうね・・・
日本でこの種のメンタルヘルスサポートを行う場合の方向性は研究されているのか興味があります。

トコロで自衛隊も他の政府機関と同様「政教分離」が徹底されておりますが・・・ 最近・・・神社での安全祈願も許されないのか、神社に行く名目が「文化研修」と銘打たれております・・・

スレ違いかもしれませんけど、
原爆投下を正当化したいが為に、
某大陸国や某半島国の反日プロパガンダを、
検証無しで鵜呑みにするの止めて欲しいですね。
日本人はとっくの昔に水に流しているのだから、
アメリカ人も拘らないで欲しいです。

 ある漫画家が複数の自衛官に会った経験談として、皆自分の仕事に誇りを持ってらっしゃる一方で、ものの考え方・思想がてんでバラバラだったが大丈夫なのかという話をしてらっしゃいました。思想を過度に縛るのは勿論問題ですが、価値観・倫理観の教育をすることはある程度必要なのではないかと思いました。一方で幹部の高級課程の講義で常識から考えてかなり疑問な偏った人たちを呼んでいて、その結果として田母神氏のような方が輩出されていることを考えると、尚更心配というべきかそれともだからこそ教育が大事というべきか・・・(注:田母神氏を全否定するつもりは全くないのです)。

おっさん 様
米軍は既に「虐殺器官」的世界になってますね。

日本の場合、国内航空会社の機体を使えば、法的に撃墜が不可能なので、そもそも論として、カウンセリング等が必要ないかと……
それでいいのか?という話は当然なのですが……

海族 様
日本は当然ですが、アメリカでも、キリスト教徒以外もいるのですから、よくこんな教育やっていたものだと思います。

陸自は、何かやってるかもしれませんね。
肉眼で目標が見える世界では切実でしょうから。

安全祈願がなくなったのだとしたら、うらやましいです。
正座は拷問でしたから……

いぬざめ 様
止めて欲しいのは同感ですが、お願いベースよりも、こちらも日本の立場でしっかりと宣伝すべきだと思います。
予算を使っても良いくらいではないでしょうか。

だ 様
私の感想からすると、自衛官(を全体として見た時)は、かなり固定的な思考をする人間の集団だと思うのですが、その漫画家さんは、さらに固定的なステロタイプ的自衛官が、イメージとしてあるのではないでしょうか。
仰るとおり、型にはめることもある程度必要ですし、それは実際に出来ていると思います。

私は、むしろ、もっと自由な発想のできる自衛官が増えるべきだと思っていますけど。

数多 様
ただ諸々の反日宣伝は原爆投下の罪悪感を和らげてくれる、
アメリカ人にとっては一種の『麻薬』ですので、
理屈でどうにかするのは非常に難しいでしょうね。

>キリスト教(カソリック?)

米軍の核兵器取り扱い部隊の士官は、キリスト教信者しか配属されていない可能性もありますね・・・定められているというより・・・暗黙の了解として・・・(○○は○○には、なれないとかいう、触れてはならない話はドコにでもあるのかもしれません)。

>安全祈願
イヤー無くならないと思います。非科学的な行為ではありますが、行わなかった後でも「大事故」でも発生したら上の者は堪らんでしょうから・・・ 最後は神頼みです。

後、慰霊祭とかもありますが、海の艦は海外に行くときは、どうしても、そーゆー海域を頻繁に通過するので、慰霊祭を行うのが通例ですが、訓練スケジュールの関連で後回しにした時に限ってヘリを落としたりしていますので・・・・

イヌザメ 様
多少なりとも罪悪感を感じている人は、それほどいないのでは……と思います。
原爆の威力も悲惨さも知らない人が多いみたいですし。

海族 様
私も、同様に核兵器オペはキリスト教徒だけなんだろうと想像します。明文化はされてないんでしょうけど。

なお、ワシントンポストの記事を見ると、カトリック、プロテスタント双方の方が教育を受けていたようです。キリスト教徒であれば、宗派までは選別していなかったようです。

アメリカのキリスト教トには、聖書の記述をすべて真実だと主張するのもいます。

たとえば進化論は論外、神が人間を含むすべてを想像した。とか、復活(肉体をともなったもの)するとかいうシロモノを主張していますから、キリスト教といってもカルトに近いものもたくさんあるそうです。
モルモン教などもカルトに近いですね。

しかし、信じられないのは本当に聖書に書いてある事を100%真実だと主張し、教科書でさえ進化論などをのせないようにさせるという勢力がいる事ですね。こんなヤカラにはキリスト教の教育自体が必要な気がしますよ。

それもあってのキリスト教教育なんじゃないでしょうか?(まあ、考え過ぎですかねぇ)

みやとん 様
アメリカを擁護する訳ではないですが、非科学的なのは、アメリカのキリスト教徒(福音主義派のこと?)に限らないと思います。

法王庁が、ガリレオとコペルニクスを復権させたのは最近のことですし、進化論については尚更ですから。

ソースがなく、記事本文では詳しく触れませんでしたが、キリスト教を使った教育は、朝日の記事のように「聖戦」ではなく、「正戦」概念からミサイル発射ボタンを押すことの抵抗感をなくすためのモノだったろうと想像してます。

ええ、それは判ってますが、アメリカの草の根(南部を中心としたもの)は大真面目で信じているのですよ。

進化論はともかく、人が墓場から甦る、なんて信じられますか、バイオハザードや吸血鬼じゃあるまいし(こういいのを真面目に信じているんですよ)

たしかに正戦概念から抵抗をなくすためのモノという効果もあるでしょう。
しかし、今は脳科学からも抵抗をなくす(少なくする)方法が考案されつつあるのが怖いですね。

みやとん 様
確かに、彼等が少数とは呼べない数なのは不気味ですね。
人種差別とも結びついてますし。
もっとも、同じ原理主義ですが、イスラム原理主義の方が遙かに多数ですけど。

アメリカの場合、抵抗感の低減のためには、薬物なども含めて、いろいろやっていそうで怖いですね。

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