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2012年1月

2012年1月31日 (火)

硫黄島訪問発言は失言ではない

各種失言に、宜野湾市長選を問題が追い打ちをかけ、早くも田中防衛相の命運は、風前の灯火と化してきた感があります。

当ブログでも、その資質に懸念する記事を書いていますが、田中防衛相批判の中には、不適切なモノもあります。

その一つが、田中防衛相が、過去に沖縄を訪れた際、硫黄島に行ったとする発言です。
「沖縄に硫黄島」=田中防衛相が発言」(朝日新聞12年1月23日)
田中防衛相は、
「石垣島には毎年1回ほど家族と伺っているが、大体水族館だとか硫黄島だとかそういうところに出掛けた」
と言ったそうです。

この発言に対して、無知だアホだという批判がネット賑わしてました。

それに対して、防衛省は、単に伊江島を言い間違えただけだと訂正しています。
沖縄旅行で「硫黄島」? 防衛相「伊江島」を言い間違い」(琉球新報12年1月24日)

 防衛省側は、記者団に「本人は伊江島に行ったことがあると言っていた。東京都に属する硫黄島との間違いではない」と説明した。


東京都の硫黄島は、戦略上の拠点ではありませんが、太平洋戦争の激戦地であり、各種試験や特殊な訓練を行う事のできる防衛省・自衛隊にとって、非常に重要な島で、かつ知名度の高い島です。
地理的にも、沖縄とはトンデモなく離れており、語感が似ているとは言っても、伊江島というつもりで口に出てくる単語とは、ちょっと考え難いです。

そのために、マスコミも、かえってアホ扱いをしています。
ですが、これは的を射た批判ではありません。

何しろ、田中防衛相の頭の中には、太平洋戦争の激戦地だった硫黄島など、これっぽっちも浮かんでなかったはずだからです。
これは、田中防衛相の発言を活字にしたことによる、マスコミの情報操作なのです。

それは、元発言を音で捉えれば分かります。
また言い間違えた田中防衛相「伊江島」を「いおうじま」」(スポーツニッポン12年1月24日)

田中防衛相は、「いおうじま」と発言したのです。

東京都の硫黄島は、「いおうとう」、「いおうじま」双方で呼ばれたこともありましたし、米海軍の強襲揚陸艦LHD-7が「イオウジマ」なこともあって、軍事に詳しい方でも「いおうじま」だと思っている方が多いですが、現在では「いおうとう」に呼称統一されており、防衛省・自衛隊でも東京都の硫黄島を「いおうじま」と呼ぶことはありません。
自衛隊で「いおうじま」と言えば、薩南諸島北部に位置し、薩摩硫黄島とも呼ばれる硫黄島のことです。

野田首相が「最善、最強の布陣」と呼ぶ防衛相が、この事を認識していないとは考えられません。
伊江島の事を口にしようとして、東京都の「いおうとう」に言い間違えたハズはないのです。

田中防衛相が「いおうじま」と口にした以上、例え言い間違えたとしても、それは薩摩硫黄島と間違えたのです。
薩摩硫黄島なら、地理的には鹿児島県ですが、同じ南西諸島の島ですし、距離的にも遠くありません。
大臣として、沖縄と鹿児島の県境位置を知らないことは、ちょっとだけ問題ですが、まあ間違えても仕方のない範囲だと思います。

田中防衛相の硫黄島訪問発言は、決して失言などではないのです。


注意:本記事はジョークです。
決して字面通りに理解しないで下さい。

2012年1月30日 (月)

今更ながら……明けましておめでとうございます

今更ながらではありますが、明けましておめでとうございます。
まだ、ギリギリ1月なのでご容赦下さい。

さて、何故今頃なのかと言いますと、一応の経過報告をしたかったからであります。

昨年の新年のご挨拶で、今年は1本まともに小説を書き上げると宣言致しました。
で、一応書き上げまして、先日、某新人賞に応募しました。
まあ、応募は数千通もあるそうなので、甘い期待を抱いている訳ではないのですが、一次選考くらいは通過したいな~などと思っております。

加えて、捕らぬ狸の皮算用ならぬ、狸が捕れなかった時の肉算用として、結果発表の後に、どうやってこれを表に出してやろうか思案中です。
もちろん、サイトで公開しても良いのですが、現在のサイトのカウンターを見ても2万強の数字なので、実際に読んで頂いた人はせいぜい百人がいいところでしょう。やはり商業主義は偉大だなと……

さて、つまらない話ばかりしてもなんなので、最後に元自衛官の小説家デビューについて、朝雲の記事を載せておきます。
元自衛官が小説家デビュー 山形在住の斎藤順一さん 「焔火(ほむらび)」で小説現代長編新人賞を受賞」(朝雲新聞12年1月12日)

小説現代長編新人賞の受賞作発表は知っていたのですが、内容が軍事モノではなかったので、書かれていたの方(ペンネーム:吉村龍一)が元自だったとは、この朝雲の記事を見るまで知りませんでした。
アマゾンのレビューでは、★5つが二つのみと、数は少ないですが、かなりの高評価です。

次回作は、元自衛官が活躍する小説になるとのことなので、そちらも注目です。

それにしても、この吉村氏、4年間で20の新人賞に応募したとのこと。
年間5本も書いていることになります。
凄すぎる。
確かに筆の速い作家さんは、原稿用紙換算で1日80ページとか書く方もいらっしゃるので、それを考えればできる話なんでしょうが、私には到底マネできません。

今年も何か書くつもりですが、改めて自分の筆力のなさは痛感したので、習作としてミリタリー以外のモノでも書こうかなと思ってます。
せめて1本くらいは……

2012年1月27日 (金)

ホルムズ海峡危機_米軍の軍事目標は革命防衛隊

経済制裁に端を発したホルムズ海峡危機ですが、制裁に対するイランの反発は、当然予想された結果です。
イランがホルムズ海峡封鎖に言及することも、アメリカは当然織り込み済みです。
イランもアメリカも、実際にドンパチやることは望んでいないでしょうが、アメリカは経済制裁を実施することを決めた段階で、もしアフマディネジャドが暴走した際の対応策は検討しているはずです。

と言う訳で、イランが海峡封鎖に打って出た場合、アメリカ(軍)が「何を目的」として、「何を目標」にするかを考えてみました。
以下、面倒なので確定的に表現しますが、基本的に推論です。

結論から書きますと、アメリカ軍の目標は、イスラム革命防衛隊です。

イランの軍隊は、正規軍たるイラン・イスラム共和国軍(以下正規軍)とイスラム革命防衛隊(以下革命防衛隊)の二つです。
共に、陸海空の3軍をかかえる、少々へんちくりんな編制です。
詳細は、wikiでも見て下さい。

革命防衛隊は、治安維持も実施しており、ロシアの内務省軍的な性格もありますが、治安維持だけが任務ではなく、イラン・イラク戦争でも、正規軍と肩を並べて戦っています。

以下、彼等がアメリカ軍の目標となる理由を書いてみます。
・中国製地対艦ミサイルを保有する沿岸ミサイル部隊など、実際に海峡封鎖を行う能力は、正規軍の海軍よりも革命防衛隊海軍の方が高い。
・海峡封鎖の他に、アメリカが警戒するイランのオプションは、弾道ミサイル攻撃ですが、シャハブシリーズを運用する弾道ミサイル部隊は、革命防衛隊の所属。
・民兵部隊バスィージを統括しており、アフマディネジャド大統領の支持基盤。

軍事的な要素としては、前の2つの影響が強いと思いますが、もっとも重要なのは、最後に上げた大統領の支持基盤となっているという点です。

イランの大統領は、国家元首ではなく、法的には決して強い権限を持っていません。
アフマディネジャドは、強行的な対米批判を行う大衆主義で人気を集め、その支持基盤としてきました。
その集票装置が革命防衛隊です。
ですが、近年の孤立化により、国民の人気は下がっています。

一方、この経済制裁で、イランの経済と国民生活は、窮乏しています。
欧米が原油の禁輸を課したことは、代りに中国が購入するでしょうから、それほど強い影響を与えるとは、私は思いません。
ですが、既にイラン通貨リヤルは20%以上の下落が起きています。
イラン市民、外貨に殺到 制裁への不安反映、自国通貨売り加速」(産経新聞12年1月21日)

これにより、深刻な影響を受けるのは、おそらくガソリンでしょう。
意外かもしれませんが、イランは世界有数の産油国でありながら、ガソリンなど石油製品は、かなりの量(30~40%)を輸入に頼っています。
ブラック・ユーモア?産油国イランのガソリン不足
しかも、国内ガソリン価格を安価に維持するため、多額の補助金がかけられています。
リヤルが下落したこと、及び銀行決済を凍結させるなどの制裁により、このガソリン輸入が困難になります。

これにより、ただでさえ低下気味のアフマディネジャド人気は、さらに下がります。

この状態でホルムズ海峡危機が顕在化し、米軍がアフマディネジャドの支持基盤である革命防衛隊を叩けば、イラン国民が離反する可能性は高いと思われます。
そして、それ以上に、最高指導者であるハメネイが、アフマディネジャドを切り捨てる可能性もあるでしょう。

米軍の、「目標は革命防衛隊」、「目的はアフマディネジャドの追い落とし」ではないでしょうか。

2012年1月24日 (火)

核兵器使用の正当性とキリスト教

ちょっと古いニュース記事になりますが、軍事教育と宗教に関して、興味深い記事がありました。

米空軍、核ミサイル発射担当将校にキリスト教で聖戦教育」(朝日新聞11年8月4日)

地上発射式の核搭載弾道ミサイルを管制する幹部に対する教育だと思われますが、「nuclear ethics(核の倫理)」なるコースで、聖書の記述などをテキストとして、核兵器を使用することの正当性を教育してきたようです。

なお、この問題を公にした「軍における信仰の自由財団」のリンクを貼っておきます。
軍における信仰の自由財団

前掲の朝日の記事では、あまり詳しく語られていないので、関連する記事を探したところ、二つほど見つかりました。

Air Force suspends ethics course that used Bible passages to train missile launch officers

Air Force yanks nuclear ethics course

キリスト教の教義と核兵器使用(及びそれによる大量虐殺)については、個人的には興味のあるテーマなのですが、軍事・防衛からは外れて行くので、ここでは触れません。

ただし、非常に気になったのは、2つめにリンクを載せたエアフォースタイムズの記事に次のような記述があったことです。

While much of the presentation is aimed at preparing airmen for potential internal conflicts over their faith and job responsibilities that could involve killing others, one slide notes that fewer than 20 percent of soldiers in World War II shot at the enemy.


これによると、このコースで使用されていた教材が、以前の記事「書評「戦争における「人殺し」の心理学」」」でも紹介した、2次大戦において20%未満の兵士しか敵に対して発砲できなかったという事実に、注目していたとあります。

地上発射式の弾道ミサイルの撃ち合いでは、管制官の秒単位の逡巡が、結果を大きく変える可能性があります。
ですから、管制官が確固たる信念で、ミサイルの発射ボタンを押せるよう、こう言った教育をしたのでしょう。
そう言う意味では、理解のできる話です。

そして、もう一つ、ここからは、推測になりますが、米軍がこう言った教育を行っていた理由が考えられます。
このような教育が行われていた背景として、もしかすると、語られていない歴史があるのかもしれません。

私が知る限り、広島や長崎に原爆投下を行った爆撃機の乗員が、戦後、罪の意識に苛まれ、メンタルヘルスが必要な事態に陥ったというような話はありません。(ただし、原爆投下作戦に気象観測機の乗員として参加したクロード・イーザリーという人はいます)
ですが、ベトナム帰還兵やイラク戦争後の米兵に、メンタルヘルスを要する兵が多数発生していることを鑑みても、そうした事実が全く無かったと言う方が、むしろ違和感を感じます。

東京大空襲のカーチス・ルメイや、ドレスデン爆撃のアーサー・ハリスといった、指揮したことで虐殺者となった人間では、原爆投下機の乗員以上に人を殺した人間はいるでしょう。
ですが、人類史上、直接に手を下したという点では、彼等ほど虐殺を行った人間はいません。

隠された歴史として、原爆投下機の乗員に、メンタルヘルスが必要になった人がいたのかもしれません。
それもあって、米空軍はこういう教育をしたのではないかと思われます。

これ以上の情報は出てこないと思いますが、なかなか考えさせられる話題でした。

2012年1月22日 (日)

総額3億円の小型衛星_防衛省も検討してみたら?

総額3億円の小型衛星が打ち上げられるそうです。
最先端の衛星は「ヘリ感覚」で 大学発VBが任務絞り小型化 総額3億円で9月打ち上げ」(日経新聞12年1月17日)

 大きさわずか27センチメートル四方、重さ10キログラム。北極海周辺を漂う海氷の観測に、任務を特化した衛星だ。重さ1トンを超す大型衛星に比べれば、撮影画像の鮮明さは劣るが、海氷を観測するだけなら十分な性能だ。


24年度政府予算案における防衛省の宇宙・情報通信関連事業費は、Xバンド衛星通信の整備・運営事業(1,224億円)を含め、総額1908億円です。

まだまだ決して大規模に宇宙利用をしている訳ではない自衛隊でも、年間1900億を使っています。

前記記事のように、機能は限られるとしても総額3億円で運用できるとすれば、小型特定機能衛生は十分に検討すべき衛星利用形態ではないでしょうか。

解像度が低くても利用価値のありそうな情報としては、海表面の温度測定とかがありそうです。

それに1基3億なら、日本が独自に早期警戒衛星を持つことも、それほど困難ではなくなってくる可能性があります。
これに関しては、以前の記事「日本独自の早期警戒衛星は不要だ!」で、日本が独自に早期警戒衛星を持つことに、主としてコスト面から反対しました。
ですが、弾道ミサイルの赤外線を検知して警報を出すだけなら、センサー機能は大したことないのですから、今回紹介したような小型衛星でも載せられる可能性があります。
そうなると、仮に北朝鮮の監視に10基が必要だとしても30億で実現できることになります。
全世界をカバーする米軍STSSからの情報を貰うよりも、むしろ安く(直接に金を要求されはしていないでしょうが、「タダより高いものはない」状態です)つきそうです。

防衛省も、採用を検討してみては?

2012年1月19日 (木)

やっぱり出来レースだったFX選定

昨年末の20日、FXの選定結果について、防衛省から正式アナウンスがありました。

航空自衛隊の次期戦闘機の機種決定について

「性能」、「経費」、「国内企業参画」及び「後方支援」の4要素について総合的な評価を行い、これら4つの要素の評価点の合計が最も高かったF-35Aを次期戦闘機として決定した。


詳細は、
別添資料(PDF)
で公開されています。

「性能」、「経費」、「国内企業参画」、「後方支援」の4要素で評価でしている訳ですが、詳細を見ると、「やっぱり出来レースだったんだな」、というのが感想です。
で、その詳細を見てみます。

まず「性能」
Ws000010
ここはまあ当然でしょうね。問題は、どの程度評点に差があったかですが、肝心のそこは公開されておりません。

次に「経費」
Ws000012
経費でも、F-35が最高点?
僅差だったとは言え、俄には信じられません。

そして、この「経費」要素に、空中受油方式を評価項目として盛り込んでいる点が、非常に恣意的に見え、ついては、全体が出来レースだったと印象を強化しています。

プローブ・アンド・ドローグ方式のF-18及びタイフーンは、追加の改修経費が必要とのことですが、KC-767の方をプローブ・アンド・ドローグ方式にも対応できるよう改修すれば、それほど費用は要しないでしょう。機数が少ないですから。それに、将来的に、KC-767による空中給油での国際貢献(海自の補給艦のように)の場が出てくる可能性等を考慮しても、なんで当初から両方式対応にしなかったのか疑問なくらいです。(イタリアのKC-767Aは、両方式対応)

それに、F-35では、国産ミサイルをウエポンベイ内に搭載しようとすれば、ミサイル側を含めて、相当の改修費用が必要になるはずですが、それらの費用は見込んでないのか疑問です。
(国産ミサイルを搭載するつもりは、はなから無いのかもしれません)

続いて、「国内企業参画」
Ws000013Ws000015
一応、F-18と特にタイフーンを持ち上げてはいます。ですが、F-35は、明確に低かったと思われるものの、やはり、どの程度低かったのかは分かりません。

最後に、「後方支援」
Ws000016
3機種で評価が拮抗したとされていますが、F-35に関しては、各所で表面処理に係わるメンテナンスの困難があると言われているものの、それによるマイナス評価については言及されていません。現場の苦労を相当すると、この点ではF-35は、相当のマイナス評価を下すべきと思うのですが、おそらく安易にセールストークを承認してしまっているのではないかと思われます。
また、F-35については、故障部位の特定機能や交換時期の予測診断機能があることをもって高評価を下したようですが、米軍なら良いでしょうが、自衛隊では、大した役には立ちません。(個人的には、むしろマイナス評価を下したい)
米軍では、マニュアルを読むだけで精一杯の整備員が整備を行うからですし、補用品のストックが少ない自衛隊では、故障部位を特定した上でデポに送り返せと言われるのが関の山で、こんな機能があれば、かえって現場での整備は苦労させられるくらいです。
どう見ても、無理くりF-35に最高評点を付けたように見えます。

以上の4要素をもって、総合評価を決めた結果、F-35になったとのことです。
Ws000017

ですが、総合評価の決めてとなる配点は、残念ながら資料に載っていません。
ただし、ソース不明ながら、wikiには「性能」50点、「経費」22.5点、「国内企業参画」22.5点、「後方支援」5点となっています。
これだけ見ても、経費や国内企業参画、後方支援で無理な評価を付けなくても、F-35に決まりそうです。まあ、その意味では、妥当な結論になったとも言えますが。
一川当時防衛相も「基本的に性能重視に尽きる」と言っておりました。

それならば、最初から出来レースなのであれば、大仰な選定などしなくても良かったのに……と思えてしまいます。

まあ、ロッキード・マーチンから誓約書を取付けるための揺さぶりとしては役に立ったのでしょうが、当て馬にされた2機種のメーカーや国はたまらないでしょう。
Ws000018

2012年1月17日 (火)

東洋経済誌特集「自衛隊のコスト」

まだ一部しか目を通してませんが、早く紹介しないと店頭から無くなってしまうので、取り上げます。

ビジネスマン向けの週刊誌「東洋経済」が、武器輸出三原則の緩和などを受け、「自衛隊のコスト」という特集記事を載せています。



ちょこっと載ってるだけかな、と思ったのですが、かなりのページ数を割いた特集になってました。
予算や防衛産業に視点を当て(ビジネス誌なのであたりまえですが)て書かれており、軍事の専門誌とは、ちょっと方向性が違うため、かえって興味深く読めます。

記名記事が清谷信一氏と桜林美佐氏の記事くらいで、突っ込みが足りないのではないかと思いましたが、扇情的なタイトルを付ける一般雑誌の軍事記事と比べれば、遙かに掘り下げた内容になっています。(FXにF-35以外を選定した場合の将来的な運用機種数への言及等)
当ブログを見て頂いている方でも、興味を持って読めると思います。

書きぶりも、元来防衛に興味を持ってはいない人を対象にかかれているため、分かりやすく書かれており、読みやすいです。

キオスクで見つけたら、手に取ってみたら如何でしょうか?

2012年1月16日 (月)

これは酷い……、素人以下だ!

2回続けて、似たような記事を書くのは望ましくないと思うのですが、あまりに酷いので取り上げます。

田中防衛相「素人」露呈 武器使用と輸出を混同」(産経新聞12年1月15日)

 番組で司会者が武器使用基準緩和の是非を聞いたところ、田中氏は「武器輸出三原則の基準を見直し、国連平和維持活動(PKO)で使った建設機械はその国に置いていくことも検討している」と述べ昨年末に官房長官談話で発表した武器輸出の新基準を説明した。

 司会者は「武器を使って安全を確保する基準の緩和には積極的か」と問い直したが、田中氏は「積極的でも消極的でもない。官房長官が発表した基準を具体的にどうするか防衛省も検討する」と述べ、最後までかみ合わなかった。


これって、素人を自認してしまうより酷い話です。
何せ、着任早々の大臣としては、ある程度仕方がない”知識の不足”ではなく、どう見ても”理解力の不足”だからです。
基礎知識がなく、理解が及ばなかった可能性は、参院の外交防衛委員長だったことを考えれば、ありえません。どちらの話題も聞いたことがないということ、はあり得ないですから。

恥をかかせないように助け船を出した司会者の言葉にも気が付かないようでは、今後、山積する問題について、役人から説明があっても理解できないかもしれませんし、国会答弁が満足にできるのか、ましてや諸外国の国防担当大臣等と渡り合えるのか、非常に不安です。

普天間問題でも、不用意な発言をして、早々に撤回するハメになっていますし、一川氏以上の短命になるんじゃないでしょうか。

というか、こんな理解力なら、もっと理解力のある本当の素人に、一から説明した方がマシな気がします。

2012年1月14日 (土)

素人の次は……?

内閣改造で、防衛大臣が一川氏から田中直紀が就きました。

一川氏は、「素人」として名をはせましたが、田中氏は、参院の外交防衛委員長も務めており、それなりに識見はあるはずです。(不十分だとは思いますが)

なお、北沢元防衛大臣も、参院の外交防衛委員長経験で防衛相に就きましたから、北沢氏の実績を考えても、経歴を持って田中氏の人事を批判する訳にはいきません。

ただし、不安はあります。

田中氏の人選は、民主党内の派閥人事であり、小沢グループに配慮したものだと言われています。
小沢氏は、民主党が政権を取った直後に、大訪中団(田中氏は参加していない)を率いて朝貢外交を行ったように、民主党内親中派の中核です。

それに、田中氏の義父、田中角栄は、親中派の親玉のような存在です。

ですから、田中氏が、そういう方向性で仕事をしないか、不安に思えるのです。
早速、中国側からは期待を込めた目で見られているようです。
田中角栄氏の娘婿に注目=中国通信社、「軍事関係」改善も-内閣改造」(時事通信12年1月13日)

日中国交正常化を実現した田中角栄元首相の娘婿であることに注目、「防衛相への起用は、両国の軍事関係改善につながる」


素人の次は売国奴、だったなんて事にならないことを祈ります。

2012年1月11日 (水)

書評「ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり」

自衛隊関係の小説をネットで漁っていると、度々ヒットしたのがこの本(シリーズ)です。



ヒット率が高いので、以前から気になってはいたのですが、解説などを見ると異世界ファンタジーもののライトノベルと言った感じで、ちょっと手を出すには至らずにおりました。

ですが、「自衛官が書いた自衛隊が出てくる作品だし、まあ一巻くらいは読んでみるか」と思って手をだしたのですが、結果、4巻まで一気に読んでしまいました。
(最近になって、最終刊となる5巻が出たようですが、未読です)

ジャンルとしては、印象どおり異世界ファンタジーもののライトノベルです。主人公は、青年と中年の中間と言った年齢設定ですけど。

内容は、銀座に異世界への「門」が突如として現れ、そこから出現した軍勢を撃退、門の向こう側を確保した自衛隊が異世界で奮闘するというものです。
タイムスリップものSFだった「戦国自衛隊」のファンタジーバージョンと言ったところでしょうか。

さて、なぜこの本を紹介したかと言いますと、本書に描かれている自衛官(の考え方)が、非常に”自衛官らしい”からです。
冒険活劇的ファンタジーなので、戦闘能力はちょっと過剰に書かれてる気もしますが……

自衛官が”自衛官らしい”小説は、他にもあると思う方も多いと思います(浅田次郎の「歩兵の本領」とかは、別として)が、それらの多くは、ステロタイプな自衛官然とした自衛官であって、本当の自衛官像とは、結構異なります。
もっと明確に言えば、それらは”一般の方がイメージする自衛官らしい”自衛官です。

その点、本書の自衛官は、かなり自衛官臭い自衛官です。
それは、前述のとおり、おそらく本書の筆者が、実際に自衛官だったからでしょう。
また、異世界に放り込まれた自衛官が、周囲の状況が分からない中、行動規範を「意図的に」自分達の慣れ親しんだ行動規範にそって行動しようとしていることから、尚のこと強く印象付けられているのかもしれません。

という理屈はさておき、タイムスリップもののSFでも無い限りは、自衛隊が活躍する創作作品が、なかなか作り得ない中で(その点、世界中で暴れ回っている米軍であれば、いくらでも創作できるんでしょうけど)、自衛隊が痛快に暴れ回る小説を読みたい方には、お勧めできる作品です。

ただし、フリルだらけの女の子とかまで出てくる小説に抵抗がなければ、……ですが。

2012年1月 7日 (土)

自衛官が公立校校長に!

大阪府が公募していた府立学校の校長として、現職自衛官の採用を決定したそうです。

海上自衛隊1佐ら7人、公募校長に採用 大阪府教委」(朝日新聞11年12月19日)

 文部科学省によると、民間人校長は企業経験などを学校運営にいかす目的で2000年に制度化された。教員経験がない公立小中高校の民間人校長は今年4月時点で97人。


震災後、学校で自衛官が講演したといった事例を紹介したこともありましたが、日教組に汚染された教育現場にも新風が吹きつつあるようです。

「自衛官に教員がつとまるのか?」
と疑問に思う方も多いと思いますが、心配は無用だと思います。

自衛隊は、民間企業よりも定年が早く、勤続年数は長くありません。特に任期制隊員においては30前に退官することが普通です。
自ずと、教育訓練をしっかりしないと、使い物になる頃には退職という事態になりかねません。

そのため、3自衛隊とも、入隊時の基礎教育を施す学校や、専門技術を教育するための各種学校が数多くあります。
幹部であれば、そのキャリアの中で、大抵1回くらいは、何らかの学校で教官に就くケースがあります。

今回、校長として採用された竹本三保1等海佐の経歴を見てみると、
S54. 4    幹部候補生学校入校(江田島)
S55. 3    横須賀教育隊(武山)
S56. 3    幹部候補生学校第1学生隊付(江田島)

S57. 7    東京通信隊(市ヶ谷)
S61.12    自衛艦隊司令部通信電子班(船越)
S63. 8    プログラム業務隊本部プログラム1科(船越)
S 4. 3    航空集団司令部通信電子幕僚(厚木)
S 5. 3    海上幕僚監部防衛部通信課(六本木)
S 7. 8    海上幕僚監部防衛部防衛課(六本木及び目黒)
S 9. 1    中央通信隊群司令部計画幕僚(市ヶ谷)
H10. 8    厚木航空通信隊長(厚木)
H13. 3    海幕防衛部指通課指揮通信保全班長(市ヶ谷)
H14.12    自衛隊兵庫地方連絡部募集課長(神戸)
H16. 9    舞鶴システム通信隊司令(舞鶴)
H18. 3    システム通信隊群司令部首席幕僚(市ヶ谷)
H19.12    呉システム通信隊司令(呉)
H20.12    自衛隊青森地方協力本部長
H23. 4    海上自衛隊中央システム通信隊司令(市ヶ谷)(現職)
となっており、横須賀教育隊と幹部候補生学校で都合2年4カ月、教育に携わってます。

なお、竹本1佐は、奈良女子大で教育学を学んでおり、恐らく元々教育に対する意識が高い方なのでしょう。

ちなみに、奈良女子大卒で分かるとおり、女性自衛官です。
パイオニア的な女性幹部ですし、自衛官から校長へと、なかなかにチャレンジャーですね。

2012年1月 4日 (水)

共同通信が軍事知識の不足を露呈

12月19日、共同通信が、RC-135Sコブラボールのフライトを、金正日死亡に伴う不測の事態対応だろうと報じています。

米偵察機、北朝鮮方向へ 総書記死去で嘉手納基地から」(共同通信11年12月19日)

 目撃者によると、死去報道前の19日午前5時45分ごろ、弾道ミサイル観測を行う電子偵察機コブラボールが北朝鮮方面に向けて離陸、同日午後4時半ごろ、嘉手納基地に戻った。

 同機はここ数日飛行しておらず、死去報道前に何らかの情報を得た米側が、不測の事態に対応するために投入した可能性がある。


RC-135Sは、”発射された”弾道ミサイルを観測するための航空機で、同機がミサイルを探知してから、イージスやパトリオットを準備したところで、当然間に合いません。
金正日死去に伴って、北朝鮮が韓国や日本を弾道弾攻撃する作戦見積もりがあるなら、米軍や自衛隊、そして日韓両政府は大混乱に陥ったはずですが、実際には落ち着いた対応でした。
つまり、RC-135Sのフライトは、機体の性能から考えても、関連する機関の動きを見ても、金正日の死去とは関係がないはずです。

大体において、RC-135Sは嘉手納常駐ではありませんから、展開が偶然でなければ、アメリカは、金正日死去を北朝鮮の発表前に察知していたことになりますが、知っていたら当然知らせるであろう韓国政府のドタバタぶりを見ると、米韓両政府が死去を知っていたとは思えません。
この点から見ても、RC-135Sは、何か別の動きがあって嘉手納に展開させられていたはずだと分かります。

この程度の事は、軍事の専門家でなくとも、通信社の軍事担当記者は知っていて当然と思いますが、共同通信には居なかったようです。

このRC-135Sのフライトですが、実際にはスカッドの発射訓練対応だったようです。
北朝鮮が弾道ミサイル2発 総書記死去とは無関係か」(産経新聞11年12月20日)

経済や防衛以外の政治に比べて、軍事専門記者の育成がおろそかになってるから、こんな記事を載せちゃうんでしょうね。

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