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2011年12月

2011年12月30日 (金)

与那国の移警隊展開用地はインビ岳西

ちょ~~マニアックな話題ですいません。
ほとんど防備録記事です。

先日の記事「H24概算要求-その2_航空・防空」において、移警隊の展開地に関して、場所が事前に情報のあった南牧場では、尖閣方面の見通しが、あまり良くなさそうだと懸念を書きましたが、ちゃんと手配されていたようです。

「与那国自衛隊」10億円 防衛省予算案」(沖縄タイムス11年12月25日)

用地は与那国島の久部良地区(南牧場)とインビ岳西側周辺とし、駐屯地を同地区に置く考え。


という訳で、移警隊の展開予定地は、インビ岳西側になるようです。
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与那国島におけるインビ岳の位置(グーグルマップより)

Ws000002
インビ岳西側の開豁地(グーグルマップより)

与那国には行ったことがないのですが、インビ岳は、東西を宇良部岳と与那国岳に挟まれているため、東西のレーダーカバレージは良くなさそうですが、北側は与那国飛行場などを見下ろせる高台となる位置関係のようで、尖閣方面には良好なレーダー覆域が確保できそうです。

恐らく、尖閣をめぐる中国との衝突の際に、TPS-102を展開させる予定なのでしょう。
前掲の開豁地は、幅が500mほどもあり、状況次第では、レーダーを防護するため、対ミサイル用として、短SAM改Ⅱ等も展開できそうです。

2011年12月27日 (火)

不適切管制疑惑の補足

事故時の動画をコメントで教えて頂いたので、前回記事を補足します。



動画を見る限り、やはり1番機の離陸直後に、問題の2番機が滑走を始めています。
動画は、スクランブル機のほぼ背後から撮影されたもので、動きが分かりにくい上、編集されていたため、事故機の制動タイミングが分かりにくいですが、滑走開始からアフターバーナーをオフにするまで、4秒程度のように見えます。

動画でも、はっきりとした証拠(吹き流し等)は写っていないのですが、離陸中止を指示した理由が、着陸機との距離を保つためというものだったため、おそらくスクランブル機は背風離陸(航空機は、風上に向けて離陸滑走するのが通常ですが、風下に向けて離陸滑走すること)をしていたものと思われます。(通常のように向かい風で離陸しようとしていたのなら、離陸を止める管制は、明らかに不適切です)
事故機の滑走路逸脱後に、背後のタクシーウェイを民航機が当該事故機と同じ方向に向けて移動していることから見ても、やはり背風離陸だったと思われます。

つまり、スクランブル機と着陸しようとしていた民航機は、対向していた訳です。

ですから、着陸機との距離を保つという理由は、言葉の上では間違ってはいないと思います。
ですが、前回記事でも書いたとおり、件の民間機は、逸脱事故により、ゴーアラウンドして嘉手納にダイバートしたはずです。
それも、特段危険な状態にはならずにです。

やはり、管制は不適切だったのではなかろうかと思います。

2011年12月25日 (日)

管制官の指示は不適切ではなかったのか?_那覇のF-15滑走路逸脱事故

既にブログ「北大路機関」様が、「F-15戦闘機那覇空港滑走路逸脱事案、管制官の判断ミスが原因?」と題して、同種の記事をアップされてますが、こちらでも取り上げてみます。

今月19日、スクランブル発進しようとした2機のF-15の内の1機(ウイングマン)が、離陸を中止した際、滑走路右の緑地帯に逸脱し、ランウェイが閉鎖となりました。
この際、先に滑走していたリーダー機は、離陸完了しています。

逸脱事故の直接の原因は、離陸を中止しようとした際、パイロットが誤ってエンジンを停止させてしまい、油圧を失ったF-15が方向制御不能となって緑地帯に逸脱したようです。
F15逸脱:原因は操作ミス」(沖縄タイムス11年12月21日)

 航空自衛隊那覇基地は、原因は操縦士の操作ミスとする調査結果を発表した。事故機は、領空侵犯対応の緊急発進(スクランブル)のため先行機に続いて離陸する途中、那覇空港の管制官からの指示を受け離陸を中止した。その際に操縦士の2等空尉(28)が推力を落とそうと誤ってエンジンを停止させたのが事故の原因とされた。

 通常はエンジンを切らずに機体を制動して滑走路を離れるが、エンジンを切ったため電源が失われ油圧系統も働かなくなり、方向制御できず滑走路脇の草地に乗り上げたという。

(一部略)

直接的な原因は、確かにパイロットのミスなんでしょう。
緑地帯に突っ込んで、急激な制動がかかったとは言え、オーバーランエリアに入るでもなく、滑走路脇で停止したのですから、当該機は、それほど速度が出ていたとは思えません。正常な操作を行っていれば、逸脱事故は起らなかっただろうと推察されます。

ですが、この事故は、関門海峡でのくらま衝突事故において、韓国船に第1原因があったものの、管制にも不備があったことと同様に、那覇空港の管制を行うCAB側にも問題があったのではないか、と考えられます。

そもそも、当該編隊は、管制の指示を無視して離陸しようとした訳ではありません。少なくとも、一旦は管制から離陸許可を受けていたようです。

スクランブル発進する編隊は、その時の気象状況などで影響を受けますが、基本的に、2機が立て続けに離陸します。
那覇の管制も、その要領は熟知しているはずですし、飽きるほど見ているでしょう。

それが分かっていたはずなのですから、2機目だけ離陸を中止するような緊急事態が、着陸のために接近していた民間機にも発生していたなら、それ自体がニュースにならないというのは不自然です。
しかし、この逸脱事故で、民間機が危険な状態になったとの報道は、私が見た限りありません。

関係していた民間機は、おそらく嘉手納に降ろされた2機の内の1機ですが、嘉手納に"安全にダイバートできた"程度の状況だったはずなのです。

関係していた民間機は、その程度の状態だったのですから、スクランブル機に離陸許可を出していた以上、せいぜいゴーアラウンド(着陸復行)を指示していれば良かった状況だったはずなのです。

一義的には、パイロットのミスなんでしょうが、那覇管制にも責任はあったと思われます。

空自は弱い立場なので主張はしないでしょうが、正しい原因究明を行わなければ、いずれもっと重大な事故が起きるでしょう。

2011年12月22日 (木)

祝!_FN303調達

ほとんど今更ながらですが……、閉鎖されてしまったブログ「keenedgeの湯治場」様の最後の記事「分かったことと、分からないことであります。」に、現役自衛官時代に欲しかった(個人的にではなく、部隊の装備として)ものが中央調達で調達されると載ってました。

1.圧搾空気銃
 これはF.N.HERSTAL社製であることから、FN303 である可能性が高い。暴徒鎮圧用の非致死性銃。


FN社のFN303ページ


画像は全てFN社HPより
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なかなかカッコイイです。
もちろん欲しかった理由は、カッコイイからではありません。

(主に平時の)基地警備用として、使い勝手がよさそうだからです。

通常の基地警備では、その権限は警察比例の原則に則って行使しなければなりません。

例えば、相手がナイフしか持っていないない状況で小銃を使えば、違法行為となりかねません。(警察が、拳銃を使う度に適正な使用だったと発表するのと同じ事ですが、小銃の方が殺傷力が高いため、より注意を要します)
ですから、そう言ったケースでは、警棒や木銃を使う事が多くなりますが、先日の韓国海洋警察官が中国人船長に刺殺されたように、まかり間違えば隊員が死傷しかねません。

そう言った状況でも、これがあれば安全に相手を制圧できます。
形状が銃に似ているので、素人相手には抑止効果も期待できます。(逆に、相手が銃を所持しているようなケースでは、取り扱いに注意を要しますが)

FN303は、調達名称が圧搾空気銃となっている通り、構造的にはエアガンと同じです。
もちろん、精度、強度はおもちゃとは訳が違います。
特徴的なのは、その弾丸です。
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写真を見ても分かると思いますが、形状・機能は、ショットガン用のスラグ弾に似ています。内部の極小ペレットは金属製で、着弾時に外部のプラスチックケースが割れるようになっています。(マーキング用に、ペイント入りのペイント弾もあります。上記写真の黄色い方)
これにより、非致死性兵器としては、かなりの遠距離と言える、射距離100mでも十分な精度と威力が維持され、着弾時にフランジブル弾のように弾丸が崩壊してすることで、肉体に貫通せずに打撃力を与えます。



撃たれた人間からすると、呼吸が止まるほど、とっても痛い兵器な訳です。

基地等の警備用なのか、それとも特戦群あたりの特殊部隊用なのか分かりませんが、各基地に数挺づつ配備してくれるといいと思います。

2011年12月19日 (月)

FXへのF-35決定により「空白埋める代替案」の必要性_中古F-15、F-2再生産、T-4改

先週火曜の13日、FXにF-35を選定する方向で最終調整に入ったとのニュースが複数紙で報じられました。

この際、16日(金)にも安保会議で決定されると報じられましたが、これは20日(火)にずれ込むことになったとのことです。(金正日が死んで、当然延期でしょうけど)
これは、最終調整に入ったと報じられた13日、F-35の開発が、機体不具合により2年遅れることが明らかになったためだと思われます。

F35 開発2年延長 米国防総省方針 日本2016年導入困難」(産経新聞11年12月13日)

F35に多数の亀裂が見つかったのを受け、米国防総省がF35の開発調達計画を2年間遅らせる見通しとなった。
(中略)
 方針を受けてF35の運用開始は、当初の2017年から19年以降にずれ込むことが確実となり、日本のFX調達計画も抜本的な見直しが迫られそうだ。


今までもFXにF-35を選定した場合の納期の問題は、たびたび指摘されて来ましたが、来年1月に行われる、この国防総省の諮問機関「国防調達委員会(DAB)」会合による決定は、F-35の運用開始時期を2019年以降に確定させるものであるため、F-35の日本への納期も、2019年以降となることを確実にします。

これを受けて、産経がちょっと気になる記事を書いています。
F35開発延長 FX選定見直し必至 空白埋める代替案必要」(産経新聞11年12月13日)

 日本側には、仮にF35を選定する場合、(1)DABの結果を見極めるためにFX選定を延期する(2)F35を選定した上で、(3年間近く生じる)実戦配備までの力の空白を埋めるための措置をとる-という代替案としての“プランB”の策定が不可欠となってくる。


決定が更に遅延したり、土壇場での大どんでん返しの可能性もありますが、以下では、FXにはF-35が選定されるという前提で、同記事が報じる3年(恐らくそれ以上)の”空白を埋めるための措置”について考察してみます。

”空白を埋めるための措置”を講じないというオプションもありますが、空白を放置すれば、財務から純減圧力が高まるのは確実で、空自が措置を講じないことはないと思います。

さて、この”空白を埋めるための措置”ですが、簡単に考えれば”数合せのつなぎ”を調達する方法があります。
その機種に関しては、極めて限られます。FXはF-35に決定するという前提があるわけですから、FX選定に入っていたような新機種調達はありえない訳です。
つまり、F-15かF-2しかないのです。
未だ諦めきれない駐日英大使は、2機種採用なんて言う、愚にも付かない事も言ってますが。
2機種採用も選択肢に FX選定で、駐日英国大使」(産経新聞11年12月15日)

調達方法も限られます。F-2なら再生産するしかありませんし、F-15なら中古機の購入、あるいはリースです。
個人的には、FXへのF-35選定による防衛産業への悪影響を考えても、F-2の再生産がいいと思いますが、数合せのつなぎであることを考えても金はかけられませんし、中古F-15の調達が実現性が高そうです。
自衛隊が中古機を買った事例が少ないですが、先日3次補正で中古C-130を海自が買いましたし、ありえない話ではなくなってます。

ここまで、”数合せのつなぎ”調達について書きましたが、実は、もう一つ可能性のあるオプションがあります。

それは、07大綱を受け、2000年に航空総隊から教育集団隷下に(事実上)隷属替えとなった23飛行隊(飛行教育航空隊:F-15)の機体を引き抜き、作戦機に戻すことです。

ただし、この場合、23飛行隊の機体がなくなりますから、その手当が必要です。
その際の問題は、23飛行隊が行っている戦闘機操縦課程に使用する戦術戦闘訓練が可能な適当な機体が見当たらないことです。(ちなみにF-15の機種転換過程は、他のF-15装備の作戦部隊でも実施できます)

ブログ「北大路機関」様では、戦闘機操縦過程の使用機体として、グリペンを推す案を書かれています。
JAS39Dグリペン:松島基地第四航空団F-2B補填に関するPBL方式運用基盤案

FX候補に推す声まであったグリペンを戦闘機操縦過程に使用するのは贅沢過ぎなので、私はこれが適当とは思いませんが、23飛行隊から機体を引き抜けば、4空団での戦闘機操縦過程が震災によって停滞していることを考えても、飛行教育に対する影響は大きいので、何らかの措置は必要です。

建前的には、T-4は、T-2が負ってきた高等練習機の後継でもあるので、T-4で戦闘機操縦過程を行うべきかもしれません(財務はそう言うかも)が、F-1を原型とするT-2と違い、T-4は純然たる練習機ですから、戦闘機操縦過程を現状のままのT-4で行う事は無理があります。
T-4の改造余地が分かりませんが、もしかすると23飛行隊からF-15を引き抜いた上、T-4改によって、戦闘機操縦過程を代替すると言った案が、今後出てくるかも知れません。

2011年12月17日 (土)

ステルス技術だけでなく、米防諜態勢の危機_RQ170鹵獲事件

米軍無人機RQ170が、イランに鹵獲された事件により、ステルス技術の流出危機が叫ばれています。

ステルス流出の危機…青ざめる米 イラン軍が押収「無人機」を公開」(産経新聞11年12月11日)

もちろんステスル技術の流出、それもイランだけでなく中露への流出は、アメリカだけでなく、日本にとっても大きな影響のあるニュースです。
ですが、このニュースから読み取るべきは、事によってはそれ以上に深刻な、アメリカ防諜態勢の危機です。

 イラン国営TVは。無人偵察機RQ170の映像を公開した。誤作動を起こす電波を送るなどして強制着陸させたとしている。
 イラン政府は8日、革命防衛隊が軍と共同で「サイバーハイジャック」を展開し、アフガニスタンとの国境から約250キロの上空を飛行中だったRQ170を強制着陸させたと説明。

前掲リンク記事から要約転載(写真も同記事から)
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写真を見る限り、鹵獲されたRQ170は、無傷で、墜落あるいは撃墜されたようには見えません。イランは、誤作動を起こす電波によりサイバーハイジャックしたとも言っており、返還要求などアメリカの反応を見ると、イランによる誤情報とも思えません。

RQ170の仕様や性能については、ほとんど情報がありませんんが、イラン領内に250kmも領空侵犯していたようですし、高度な自動操縦能力を持っていることは疑いありません。そうであるとすると、単純なジャミングで誘導電波を妨害したところで、自動的に帰還するようプログラミングされているはずです。つまり、今回の鹵獲が、サイバーハイジャックにより、RQ170のコントロールを奪うものだった事は、ほぼ間違いないと思われます。

このサイバーハイジャックですが、同じ「サイバー」の語が付くと言っても、サイトの情報を書き換えたり、情報を盗み出すと言ったサイバー攻撃よりも、遙かに高度なものです。
なにせ、小規模とは言え、RQ170という、恐らく強固に防護されたシステムを、完全に乗っ取っている訳ですから。
しかも、その後、単に飛ばせただけでなく、着陸させているようです。

問題は、この事実が、何を意味するかです。

今回のサイバーハイジャックが、イランによるトライアンドエラーの積み重ねの結果だとは考え難いです。
もし、過去にも試みられていたのだとすれば、当然ログは残るでしょうし、米軍は対策を講じでたしょう。米軍がそこまで鈍いとは思えません。

となれば、何らかの方法、ヒューミント(スパイ活動)あるいはサイバー攻撃等により、RQ170のコントロール方法の詳細が、事前に漏れていたと考えるべきです。
当然ながら、RQ170のコントロール方法は、極めて機密度の高い情報なはずです。それこそステルス技術と変らないレベルです。
これが漏れていたならば、他にもステルス関連技術が漏れていた可能性も、極めて高いと考えるべきでしょう。

ここから先は、多分に憶測めいた話になりますが、結構当を得ているのでは、と考えています。

今回の鹵獲事件は、たまたま発生したものではなく、イラン及び連携している中国あるいはロシアによるスパイ事件等の結果を受けて計画された、サイバーハイジャックによる鹵獲作戦だったのではないでしょうか。

もしかすると、しばらく経過した後、国防省に食い込んでいたスパイが姿を消した、なんていうニュースが飛び込んでくるかも知れません。

情報活動の常として、重要情報が漏れている事実を発覚させるような、それによって漏洩ルートが発覚する可能性のある活動は、その漏洩ルートが潰れてしまっても構わないと考えるような、情報活動における大物狙いの活動であるはずです。
今回の鹵獲作戦は、そうしたスパイ小説さながらの大作戦だったかもしれません。実際RQ170の現物
鹵獲は、”超”大物です。

別の見方をすれば、ここで推測したような作戦が展開されたのだとすれば、アメリカの防諜態勢が極めて危機的な状況にあり、中露やイラン情報機関により、深く寝食されている可能性が露呈されたと考えるべきです。

2011年12月14日 (水)

意識ではなく厳罰化を

知らずにやったのなら、意識改革を説くことに意味はありますが、知っててやっているなら、厳罰化するしか手はありません。

対中不正輸出 企業も安全保障の意識を」(産経新聞11年12月2日)

 軍事技術に転用可能な半導体製造装置を中国に不正輸出したとして、東京都内の電子機器販売会社が外為法違反容疑で神奈川県警の家宅捜索を受けた。企業の安全保障意識の希薄さを物語る事件である。

 不正輸出された装置は約500台と大量であり、中国の軍事工場の生産ラインで使われ、ミサイルの誘導装置などに組み込まれた疑いが強い。中国側がこの装置で作られた半導体などの電子機器を搭載した新兵器を開発するため、さらに日本の技術情報を入手しようとした形跡もあるという。


商品のメリットを把握していなければ、どんな製品であっても売れるものではありません。
それに、商社が外為法を知らないはずもありません。
更に、兵器開発のための関連技術情報を要求していたとなれば、これはもう、完璧に故意犯です。

そんな企業に、安全保障の意識を持てと言っても無駄です。
厳罰化、それも市場から排除できる程の厳罰化が必要でしょう。

2011年12月11日 (日)

初の陸自によるパトリオット部隊警備

九州・沖縄方面への大規模な部隊機動と奄美の民有地への対艦ミサイル展開などが話題になって統合実働演習ですが、ほとんど話題にならなかった項目で、非常に重要なものがあったので、今回はそこにフォーカスしてみます。

統合実動演習始まる 九州・沖縄方面 島嶼防衛へ対艦ミサイルなど展開
(朝雲新聞11年11月17日)

私が注目したのは、空自パトリオット部隊に対する、陸自による警備です。(朝雲以外は見当たらず)
Photo
朝雲新聞より
空自パトリオットを警備する陸自隊員

 今回の訓練では空自高射部隊の警備に当たる陸自部隊との連携も重要なポイントとされ、空自部隊の周辺に掩体を設置、32普連(大宮)の隊員による歩哨や軽装甲機動車による定期的な哨戒が行われた。
 4高射隊長の松本英法2佐は「首都圏を守る1高群として航空機、弾道ミサイルへの対処が最大の目的。今回は陸自に警備してもらうので連携要領も演練したい」、2高射隊長の芳之内真典2佐は「弾道ミサイル対処訓練を安全確実に実施したい。陸自との共同警備、巡察、車両検索などを行い、陸空で警備要領を確認したい」と述べた。


首都圏防護のためには都心に展開せざるを得ないなどの理由で、警備が非常に困難なパトリオット部隊ですが、訓練を含め、過去には陸自による警備が行われたことはありませんでした。
2009年の北朝鮮による飛翔体発射の時もです。

陸自とすれば、陸自には、他にもやるべき仕事が多数あるのだから、空自部隊は空自が警備しろという話なのです。
ですが、パトリオット部隊自体は、パトリオットの運用を行っている間は、警備に関しては、せいぜい展開地への接近統制を行う程度の人員しかいません。
おまけに警備の技量は、航空陸戦隊と揶揄されるだけに、他の空自部隊と比べれば高いですが、陸自と比べたら雲泥の差があります。

自衛隊全体として考えれば、陸自が周辺の警備を行う以外に、適切な解決策はないと思うのですが、大綱の改正などを受けた陸自の変革の中で、やっと重い腰を上げてくれたようです。

公開している小説の中で、陸自による警備が行われながらも、ペトリオット部隊を警護しきることは難しいことを描いてますが、それが多少なりとも影響を与えたりしたのだとすれば、嬉しいのですが……

今回の協同警備は、初めての機会ということもあり、双方の連携要領の確認が主体になったようですが、どれだけのエリアを安全化しなければならないのか等、しっかり詰めて、イザという機会にしっかり協同できるようにして欲しいものです。

2011年12月 8日 (木)

H24概算要求-その4_その他

24年度の概算要求ネタ最終回です。

サイバー攻撃対処としては、訓練支援機能の強化や情報収集・分析機能の強化が謳われていますが、具体的な措置としては、
・サイバー防護分析装置の機能強化(2億)
・サイバー攻撃等への対処のための調査研究等(2千万)
が盛り込まれているだけです。

国会議員のPCがサイバー攻撃を受けたりと、とかく話題になる案件に対して、「防衛省はこの程度でいいのか?」と思うかもしれませんが、私は十分だと思っています。
なにせ、防衛省が使用しているネットワークは、重要なモノは、全部クローズドネットワークで、インターネットとは繋がっていませんから、外部からハッキングするような芸当は不可能です。
創作作品とかで、サイバー攻撃でワタワタになる自衛隊が描かれていることが多いですが、あれは現実と乖離してます。

・メンタルヘルスケアの充実 2億
震災でショックを受けた隊員が多かったのでしょう。

・統幕への「運用部副部長」の新設
自衛隊幕僚組織の24時間戦えますか的な体質(米軍は交代で休める人員が配置されている)の限界が東日本大震災で露見したのか?、と思いましたが、「統合運用に係る大臣補佐と命令執行を同時並行して持続的に行うため」とされており、やはり震災で大臣補佐のための会議参加等により、命令の決裁(専決決裁)に遅れを来たして部隊の動きが遅延したというような事例があったようです。

・内局、統幕、情報本部の増員
これも震災対応の反省のようです。

・NBC偵察車 2両 14億
Hpnbc
技本HPより
ちょうど開発終了していたものが、震災で予算化に弾みが付いたというところでしょう。

・NBC警報機 1組 2億
必要な機能なんだろうと思いますが、果たして本当に使い物になるものなのか……
・新線量計セット 173組 5億
モロに、震災の影響ですね。


・能力構築支援事業 5億
タイトルでは何やらさっぱり分からない事業ですが、日本版ハート・ロッカーなどと呼ばれる日本地雷処理を支援する会(JMAS)を省として支援する事業のようです。
安全保障環境の安定化に貢献するという表向きの理由以外にも、退職自衛官の雇用確保にも貢献するという効果がありそうです。
日本地雷処理を支援する会(JMAS)HP

・自衛隊業務の在り方に関する調査 予算額不明
駐屯地・基地業務の効率化施策に関する実証実験とのことで、詳細不明ですが外部委託等の実験が行われるのではないかと思われます。

・PBLパイロットモデルの実施
陸自の特別輸送ヘリ(EC-225LP)をモデルケースとして、メンテナンスの外部委託の際の契約方式として、作業量ではなく、稼働率等で評価して対価を支払う方式の実証を行うようです。以前から噂はあった話で、うまく行けば費用低減と高稼働率の維持が両立できる可能性があります。
民間の「民間らしい」能力発揮が期待される所でしょう。

・Xバンド通信衛星の整備・運営事業 1881億
新通信衛星を単に整備するだけでなく、設計から廃棄まで含めた全ての運用までを民間にPFI方式で委託する事業です。
これも、民間の力を期待した事業です。
1881億という金額が、安いのか高いのか良く分かりませんが、海外での活動が増えている他、広範囲で活動する南西方面での作戦の蓋然性が高まっている以上、通信衛星は必須でしょう。

・CBRN脅威評価システム技術の研究 10億
従来気象庁の協力でやっていた拡散予測などを、自前で整備するようです。アメダス等の情報を使って、行うようなので、防衛省が独自に持つ必然性がどの程度あるのか疑問でもあるのですが、防衛省に向かって「どうなってんだ!」とか叫んだ人がいるんでしょうね。

2011年12月 6日 (火)

日和見防衛省_対韓で軟弱

もちろん、民主党政権下での、政府としての方針があるからこそだとは理解しています。

ですが、竹島への大型埠頭の建設など、最近の韓国のつけ上がりぶりを見るにつけ、防衛省までがこうも日和見で軟弱な姿勢を取っているところを見ると、さすがに腹が立ちます。
竹島に大型埠頭と観光施設 韓国、実効支配強化へ構想」(産経新聞11年11月24日)

何の事かといいますと、韓国の参謀本部議長の防衛省訪問の事です。
韓国合同参謀本部議長が朝霞駐訪問」(朝雲新聞11年11月17日)

ただし、この件だけの話ではありません。
最近、防衛省は韓国との交流を深めています。当然、民主党政権の意図を受けてのものですが、韓国が前述のようなつけ上がった態度をとっている以上、日本としては、今はむしろ強行な態度を示すべきです。

以前の記事「竹島領有権問題が解決のチャンス」で書いたように、例えば「半島危機が生起しても周辺事態は適用しない」と宣言するなどすれば、韓国は震え上がり、竹島問題でつけ上がった態度を取ることは難しくなるはずなのです。

それなのに、実際には、参謀本部議長をにこやかに迎えている……
災害派遣用の装備を見せ、戦力としての部分を見せていないところが、防衛省としての、せめてもの抵抗なんでしょうか。

2011年12月 3日 (土)

H24概算要求-その3_陸・輸送力

海、空と来たので、その3は陸・輸送力についてです。

人員関連
・実員増 109人
少ないですが、人員(実員)増は陸自だけです。

偵察関連
・無人偵察機システム 1式4億
盛り込まれたのは、やはり震災の影響でしょうね。

車両
・軽装甲機動車 101両30億
23年度は56両に落ち込んでいた調達数を、再び100両を越えて調達します。他のブログ等でも注目されてないですが、動ける部隊作りのためのメイン施策と言えると思います。費用対効果の高い施策ではないでしょうか。
それにしても、陸の単価が3000万なのに、ほとんど同じ仕様の空の単価が4500万もするのは何でだ? 空は、コマツの言い値で買ってるのでしょうか。
・10式戦車 16両 160億
74が年間40両程度減勢していることを考慮すると、戦車の保有台数としては、これでもかなりのペースで減少している計算。
・特殊トラック(PLS付) 2両 3億
民間でもアームロール等と呼ばれる積載機能を付けたトラックです。米軍の同等装備としてはHEMTTがありますが、湾岸戦争で大活躍しました。自衛隊も、やっとこういう装備を取得するようになったようです。
たったの2両ですけど……

輸送ヘリ・輸送機
・UH-60JA 1機  37億
・CH-47JA 2機 109億
・C-2(空自) 2機 333億
少ない。
C-2は23年度の3次補正に2機滑り込ませられているのでまだ良いとしても、輸送用ヘリの少なさは理解に苦しみます。
動ける部隊を作っても、動かす手段がなければ結局動けません。空中ではなく、海上輸送力で動かすというコンセプトならそれでもいいですが、そのための施策は演習の実施しかありません。

戦闘ヘリ
・AH-64D  1機  52億
裁判対応ですね。
必要だからではなく、和解のために調達されるなんて……

火器関連
・多用途ガン 7門 7000万
モノはカールグスタフM3のようで、実質的には84mm無反動砲(84RR)の更新装備です。
気になるのは、何で新84mm無反動砲と呼ばず、「多用途ガン」なる名称を付けるかです。「そんなことどうでもいい」と思う方がほとんどだともいますが、予算を付ける上で、名前、つまり名目は大切です。従来の84mm無反動砲は、主目的としては携帯型対戦車火器として装備されてきましたが、対戦車火器としては予算が取れなくなっている可能性が考えられます。
もしかすると、財務が「南西方面の島嶼防衛では、戦車が着上陸されてくる可能性なんてないでしょう」と言っており、陸幕もそれに有効な反論ができないのかもしれません。
・96式多目的誘導弾システム 3セット 41億
3年分の集中調達で11億の削減とのこと。何と、今年の「集中調達」はこれだけです。防衛産業の保護育成の上で、集中調達の弊害が出ているのかも知れません。(予想された話ですが……)

通信関連
・新野外通信システム 2式 148億
Yagai_tsushin
技本HPより
金額を見ても、運用イメージを見ても、かなり複雑なシステムのようです。
通信系は、あまりハイテクを使うと、抗たん性が低くなるのではないかとの懸念を持つのですが……

衛生関連
・個人携行救急品の整備 7億
今年の予算にも入ってましたが、今年は額が少額だったようです。実験的に導入して良かったということで、来年は一気に大量導入するということなんでしょう。
以前の救急バックは、軍事組織として信じられないくらいショボかったので、良い施策だと思います。
内容の詳細は不明ですが、コチラが参考になると思います。

編成関連
・4師団、12旅団の即応近代化
動きやすい部隊作りということでしょう。
・化学防護隊の旅団直轄化
震災関連で装備が増える他、役割が重視されて格上げになるというところか。

開発関連
・火力戦闘車(装輪自走砲)の開発 64億
FH-70の減勢対応。開発費は、10式戦車4両分にもなる。わざわざ新規開発しなくても、空輸対応の自走砲ということなら、もともとがそうなのだから、装輪に拘らなくても203mm自走榴弾砲を短砲身化、FCSの小改造等で追加調達する手段もあると思う。
・高射機関砲システム構成要素の研究
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朝雲新聞より
結局、時限信管作動の調整破片弾になるようです。3PでもAHEADでもない新規開発の必要性については、前方破片(AHEAD)と側方破片(3P)の双方を持った弾薬がないとの、非常に苦しい開発理由をこじつけたようですが、概算要求には乗りました。果たして通るんだろうか。口径も同じ40なんだから、3Pのライセンスでも良いと思います。もしCTAにする前提なら、それを名目にした方が良いと思うのですが……
・遠隔操縦式小型偵察システムの研究 15億
朝雲新聞によると、小型UAVを搭載したUGVという親子型システムになるそう。小型UAVの方は、球形UAVの技術が採用されたりするんでしょうか。

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