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2011年11月 1日 (火)

書評「戦争における「人殺し」の心理学」」

このブログを見てくれている方なら、読んだこともある人も多いでしょうが、知らない人にとっては、何やら怪しげなタイトルに思えると思います。
ですが、本書は戦争に関する数多の書籍の中でも、稀に見る良書です。



アマゾンのレビューでも、★5つが23人、★4つが4人、★3つ以下はゼロという非常な高評価です。
ちょっと厚めとは言え、文庫なのに1500円という値段は、非常に高いものですが、買って後悔することはありません。11月1日時点で、アマゾンのロープライスでも940円となっており、買った人が手放さない本だと言えます。

本書は、そのタイトルどおり、戦場において殺人を行う(敵を殺傷する)ことで発生する心理的問題を研究した学術的な書籍です。
ですが、23年間陸軍軍人として過ごし、その後もウエストポイントで教官を行っている筆者が、自らの体験と、同僚及び多数の実戦経験者からの体験談を元に論述しており、冒頭から最後まで、極めて興味深く読むことができました。
小難しい心理学的用語も使われていないため、理解に苦しむということもありません。

私自身、いざとなれば、人を殺す事を覚悟して自衛官をやっていた経験と、部下に人殺しをさせることができるかどうか、実際に悩んだ経験をもって本書を読むと、共感をもって読むことができる部分が多々ありました。

この本は、人間は、本能として、人を殺すことに強烈な抵抗感を覚えるということを、論議の出発点として記述しています。
その抵抗感が如何に強烈なものなのか、実際の戦場で、第2次大戦までの戦闘では、20%以下の兵士しか、敵を殺傷しようとしていなかった事実などから描いています。
上記の事実は、ちょっと信じがたい数値かもしれませんが、この本を読むと、それが事実らしいと分かります。

私的な経験から書かせてもらいますが、自衛官になった時、自分の生命を犠牲にしても任務を行うことは覚悟しましたし、それができると思っていました。
ですが、いざとなった時でも、人を殺すことを覚悟してはいるものの、本当に殺せるかどうか、自信を持つことはできませんでした。
この本の中でも言及されてますが、この抵抗感は、殺害の方法によっても変ります。
ミサイルで殺すことは、多分できたと思います。機関銃や機関砲でも、できたと思います。
小銃となると、ちょっと自信がなくなります。
ナイフでは、多分できなかっただろうと思います。

そして、この抵抗感の理由や性格(上記の方法によって変る等)について論述し、戦争のための実践書として、この抵抗感を排除するための方策と、それによって上記の20%という数字が、対策を講じた米軍においては、ベトナム戦争において向上したことが書かれています。
また、抵抗感を排除する方法と同様な効果のあるものが、日々の生活に及ぼしている影響などについても記述しています。

この本は、この抵抗感を排除し、兵士に人を殺させる方法を書いた実践書でもあるため、この本を読むこと自体に抵抗を持つ人もいると思います。
ですが、決して人殺しを賛美しているような本ではありませんし、この抵抗感を減少させてしまう残虐性にある映画やゲームに対して、筆者が嫌悪し、警鐘を鳴らせていることを見れば、戦争よりもむしろ平和を指向した本であることが分かります。

この本の魅力を、簡単に書くことは難しいですが、軍事・防衛に興味を持つ人には、是非とも読んで欲しい本です。

私は、この本を自衛隊の退職後に読みましたが、在職中に読むべきだったと、残念な思いをしました。
自衛官以外の方にも、もちろんお勧めの本ですが、自衛官には、まさに必読の書だと思います。

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書評・DVD評」カテゴリの記事

コメント

生還の軍隊、玉砕の軍隊という題名だったように思うんですが、WW2j従軍米兵と日本兵にアンケートの結果、米兵では第二次大戦でJAPを皆殺しにしたいというのがほとんどで、ドイツ軍に対するものは大きな相違がありました。戦後朝鮮人の残虐行為や太平洋戦線での米兵の勇猛な働きの事実から見て、このテーマは主語が人は、とか人間とはということでは語れないものがあるとおもいます。つまり、人間的普遍性ではなく社会的要因、教育的要因が大きいように思います。韓国兵、中国兵、米兵の本根を知っておくことも重要です。

こんばんは

残念ながら、この本に関しては未読ですが、私は、一人の剣道家として、いざと言うとき、剣道の究極手段として、真にやむを得ざる状況下において、真剣で人を斬ることができるかを自問したこともあり、この抵抗感というのは非常に納得できるものです。
もともと現代剣道が、本当に人を斬る技法から解離してしまっていることはもちろんあるのですが、それより何より、自らが修めた業で、人の生を奪う覚悟を備えることは非常に重い、かつ高いハードルがあると感じます。

このことは、有事において、コンバットストレスに晒される可能性の最も高い陸さんにあっては非常に大きな問題であろうと思料しますが、この問題に対する啓発がなされ、十分な支援が得られるよう願うものです。

自衛官の人だったんですか。
戦場に行く人の心理的な負担がわかる記事で、なんだか大変そうだと思いました。
殺すか殺されないかという緊迫した場面には、一生出会いたくないものです。

はるばる 様
相手を「人間」と見ているかどうか、という問題はあるでしょうね。

奴隷制度在りし頃のアメリカの話で、奴隷の前で、裸になっても羞恥心を感じない女性がいたという話を聞いた記憶があります。

米兵を「鬼畜」と教えたのも、同じ話だと思います。
紹介した本の中でも、殺傷率を上げるための手段として同様のモノが紹介されてました。

アルフォンス 様
剣で人を斬ることができるかを自問したことがあるのなら、この本は、強烈に面白い本です。
基地の図書室にもある可能性が高いと思いますので、是非一読をお勧めします。

この問題は、もちろん陸にとって一番切実だと思いますが、海も海賊対処などで、空自よりも真剣に考えなければならない問題ではないかと思います。
災害派遣でのストレスについては、今回の派遣で大分クローズアップされたと思いますが、コンバットストレスの問題がもっと注目されて対策がとられるべきだろうと思います。

ふつか 様
自衛隊を始め志願制の軍隊等は、本人納得でなっているはずですからまだいいですが、意に反して徴兵されている人は、本当に苦しいでしょうね。

初めてのコメントになります。

自分の好きな作家で伊藤計劃さん(故人)の「虐殺器官」という作品が、
近未来、抵抗感や罪悪感などの感情を、
薬物等でコントロールされた軍隊の中の
特殊部隊の隊員が主人公のモノが有ります。
ストーリーが進んで行き最後には・・・。

現在も各基地・駐屯地には「覚せい剤」のようなものが保管されており、
実際に有事の際には使用が認められていると、聞き及んでいますが
その後のことを考えると、やはり躊躇ってしまうのが人情ですよね。

最後になりますが、すばらしい書籍をご紹介していただき有り難うございました。
amazonを「ポチ」らせて頂きます。

中国兵や朝鮮兵(韓国兵)の残忍さからすると、少々違うかもしれませんよ。
これは神を信じる者同士(キリスト教徒)が闘った場合のような気がします。

確かに第一次大戦における塹壕戦などでは、20パーセントもアヤシイでしょう。

しかし、日中戦争時の中国兵の残忍さ(拷問、死体に対する損壊、誘拐等の中国の一般人に対するものも含む)はコレとは別物のような気がします。共産党と国民党との間での戦闘またしかり、です。

朝鮮戦争における南北両軍の一般人にたいする虐殺もそうでしょう。
そういう軍隊(の人間)が相手を殺すことを躊躇うでしょうか?

さらに言えば、ベトナム戦争のときの韓国軍の振る舞いにしても、相手を殺すことに躊躇いがあるとは到底思えません。
アメリカは韓国軍に対しても、対策を講じたのでしょうか?

現在の中国にしても人を轢いた時、生きていると(治療費などの)賠償金が多くかかるからもう一度轢く、というのが実際にあるというのです。
これには宗教的なものも関係している、と思うのですが、この本にはそういう事も書いてあるのでしょうか?(探してみたのですが、見つかりませんでしたので)

旧陸軍兵士の優秀さは日本人の律儀さと村意識に根ざした郷土連隊システムに負うところが大きいと思います。今日の日本人には期待できないものです。
しかし、韓国兵や中国兵が日本に上陸したら何が起こるか、元寇の東路軍の蛮行を見ても明らかなように、事実を事実として東亜諸国の国民性を我が国民に知らしめること、このことが唯一、勇敢な日本兵を作る方法でしょう。

越前蟹 様
「虐殺器官」は、話は聞いたことがあったのですが、未読でした。
レビュー等を見ても面白そうですね。
これを機会にアマゾンで注文しておきました。

実際に、抵抗感を有効に抑制する薬物はないと思いますが、恐怖感克服のために、ベトナムで米兵が薬物を使ったケースは多かったみたいですね。

基地で保管されている麻薬の類ですが、詳細は知りませんが、おそらく最強の鎮痛剤モルヒネでしょう。
軍隊では非常にメジャーな薬物ですから。

みやとん 様
はるばる 様
中国、朝鮮兵の残虐性については、対馬での事例等、もっと紹介されてしかるべきでしょうね。
歴史には詳しくないですし、彼等の残虐性の理由は、はっきりとは分かりませんが、過去にこう言う事例があることは認識しておくべきことだと思います。

ベトナムにおいて、韓国軍を教育したか否かは知りませんが、米兵が驚いたと言う話は聞いたことがありますから、教育が行われていたとしても、それ以上だったのかもしれません。

この本では、宗教に対する記述がない訳ではありませんが、どの宗教がどうと言った記述はなかったと思います。

ナム戦の帰還兵が空港で反戦団体にツバ吐きかけられる話がありましたね。
この本読んでつくづく戦争したくないものだと思いました。

空 様
兵員の心的負担を知るには、非常な良書ですよね。

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