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2011年11月

2011年11月29日 (火)

F-15延命プランは、FXへのF-35選定圧力を高める

ブログ「アシナガバチの巣作り日記」様がFXの選定にも影響するかもしれない興味深い記事を載せています。
米空軍のF-15改良計画に思うこと

記事は、ボーイングが、F-15の大幅な延命プランを検討しており、空軍が興味を持っていると伝えています。
F-15C/Dの機体寿命を9000時間から18000時間に倍増できる可能性があるとのこと。

信憑性は不透明ですが、これがもし実現すれば、空自の今後の航空機選択にも影響は必須です。
もう時間がないため、どれだけ影響するか分かりませんが、FX選定にも少なからず影響が出るでしょう。

前記記事で、FXの機種選定後に検討課題となるF-15Pre-MSIP機の後継選定について、FXがF-35となるなら、Pre-MSIP機後継もF-35となるだろうとの、小川和久氏等の見解が紹介されています。
これに関しては、私もこの見解に同意です。

主な理由は、装備機種数を抑えないと、補給・整備・教育などのあらゆる点で、維持コストがかかりすぎるからです。空自は、現在でもF-4、F-15、F-2の3機種体勢です。(F-15は、
MSIP機とPre-MSIP機で大分違いますが
トラブルによる飛行停止などの事態にそなえて複数機種を保有したいという納得のできる理由があるにせよ、これが、コストを押し上げている事実は否めません。
ヨーロッパ各国では、2機種あるいは1機種体勢にする予定の国さえあります。
当然、4機種になれば、更にです。

FXにF-35を選定した場合、Pre-MSIP機もF-35にしないと、4機種体勢になってしまいます。また、FXにユーロファイターやF-18を選定すれば、空自はPre-MSIP機後継に第5世代機を絶対に望むでしょうから、嫌でも4機種体勢です。(まさか、5世代機なしの選択はないでしょう)
ちなみに私がFXを諦め、F-2再生産にすべきだと主張していた主因も、この運用機種数の問題です。今F-2でガマンしておけば、Pre-MSIP機後継に5世代機を持ってきても、3機種で済みます。

ですが、F-15の大幅延命が図られるとなれば、状況は変ってきます。
Pre-MSIP機後継を、新機種導入ではなく、延命+モダナイズでしのげる可能性も出てくるからです。この場合、FXに何を選定していても、3機種体勢を維持できます。
正直、空自としては、嬉しくない情報かもしれません。中古機の延命でガマンしろと言われる可能性が出てくる訳ですから。

前記記事の情報に関して、当然のことながら、空自は、ボーイングに照会しているでしょう。
もし、延命できる可能性があるなら、FXにユーロファイターやF-18を選定してしまうと、空自は、Pre-MSIP機後継においても第5世代機を導入できない可能性が出てきてしまいます。
それを考えると、空自は、FXに、なんとしてでもF-35を選定しようとするかもしれません。

2011年11月27日 (日)

防衛省が文化貢献? 高性能地中レーダーを開発

防衛省が、遺骨収集のため、一般で使用される地中レーダー(探査深度3m)の3倍もの探査深度(10m)を持つ高性能地中レーダーを開発したそうです。

硫黄島遺骨収集 高性能レーダー試作機 防衛省が実地試験 地下10メートルでも探査可能」(朝雲新聞11年11月17日)
Photo
朝雲新聞より

これによって、遺骨収集が効果的に進められるとしたら、もちろん良いニュースです。
沖縄での不発弾探査にも使えるかも知れません。(地雷については、そんなに深く埋まっていることは通常ないので、あまり用がないでしょう)

そして、もしこれが埋蔵文化財の発掘にも使用されれば、文化貢献にもなります。
地中レーダーを使用した埋蔵文化財の発掘については、エジプトでの太陽の船発掘が有名ですが、この地中レーダーが活用されるようになれば、他にもいろいろと見つかるかも知れません。
いでよ太陽の船 ピラミッド脇で発掘・復元作業始まる」(朝日新聞11年6月25日)

ただし、これを国外に持ち出して海外で使ったり、海外の大学等に売るとしたら、防衛省開発品ですから、条件が緩和されなければ、これも武器輸出3原則の縛りを受けることになるでしょう。
他国の軍事力を強化するようなものではないのですから、輸出しても一向に問題ないと思いますが……

2011年11月24日 (木)

H24概算要求-その2_航空・防空

その2は、航空・防空関係です。

・移動警戒隊の展開用地について、私が知る限りでは、今までは、石垣に展開させるとの情報しかありませんでしたが、今回与那国島への展開を検討する旨記載されています。
沿岸監視部隊が配備されることを踏まえて、もう一段踏み込んだというところでしょう。
問題は、場所が南牧場では、尖閣方面の見通しが、あまり良くなさそうな点でしょうか。

・那覇へのE-2Cの整備基盤を整備 2億
額が2億円だけなので、格納庫はなく、本当に整備器材のみかもしれません。整備格くらいは必要だと思うのですが……

・那覇基地の2個飛行隊化に向けた施設整備のための調査 7000万
不発弾探査とかでしょう。

FX 4機551億
産経によると「F2戦闘機の購入費約138億円を基準に551億円を「仮置き」とした。」そうです。
果たして、実際には何機買えるのか非常に疑問です。寡兵敵せずになるようでは、困ります。
F-2再生産のウルトラCもあり?……ないな。

改修等
F-15近代化改修         2機30億
F-15IRST搭載改修       2機14億
F-15自己防御能力の向上   2機48億
F-2空対空戦闘能力の向上  12機41億
F-2JDAM機能の追加     20機28億
中華ステルスは、AWACS含む警戒管制レーダーにも映らない程の高ステルスではなく、機上レーダーに映らない程度のステスル性能と見ているのかもしれません。
だから、対ステルスの決め手とも見られているIRSTには非常に少ない予算しか投下せずに自己防御機能に予算を集中投下しているのではないか……とも思えます。IRST搭載がテストの意味合いが強いだけかもしれませんが。
しかし、もしそうだとすれば、FXにはF-35以外の可能性も高くなったかも。
それにしても、今年まで言っていた集中調達はどうなったんだろう。

SAM関連
ペトリオットシステムの改修 3式362億
今年、沖縄の1個高射隊のPAC-3化が決まっていますが、それによってあぶれた3個高射隊の指揮所運用隊との連接が問題となるための改修でしょう。今年実施すべき施策でしたが、予算が取れなかったため来年に回されたようです。

03式地対空誘導弾の取得  167億

短SAM改Ⅱの取得(陸自用) 49億
短SAM改Ⅱの取得(空自用) 58億

開発案件
・F-2のLJDAM投弾支援支援システム(適当に命名)の開発 33億
・将来ミサイル警戒技術に関する研究 20億
味方ミサイルには警報を発しないようにするとのことですが、地点情報から判断する以外に手段はないと思います。とすれば大した技術ではないので、果たして20億も必要なのか?
赤外線による全周警戒とのことですから、期待各部にセンサーを取付けるための費用かもしれません。
・将来のミサイルシステムに関する要素技術研究 2件 22億
空自ペトリオット、陸自中SAMの後継となる共通システムの研究です。装備が共通となれば、部隊のあり方にも大きな影響のありそうな研究案件です。
内容はロケットモーター等基本的な技術のようです。

編成関連
航空救難団の航空支援集団から航空総隊への隷属替え
相当以前から、ぜったいその方が良いと言われながら、支援集団が手放さなかったのですが、やっと実現して、航空総隊の直轄部隊となるようです。
これは想像ですが、空中給油機や国際貢献で忙しくなった支援集団が、身軽になるために実現したのかもしれません。あるいは、もしかすると、海・空の救難部隊統合に向けた動きとも何か関係があるかもしれません。自衛艦隊と航空総隊は、関係が深いですし。
これで、基地警備事案発生時にも、救難機を偵察及び地上掃射等で使える可能性が出て来ます。

その他
高高度滞空型無人機の海外調査 100万
1百万円って何でしょう。数人で1回出張したら終わっちゃうじゃないですか。
本当に導入する気があるのでしょうか?

2011年11月22日 (火)

「日本の中国包囲網は不発」は当たり前

「日本の中国包囲網は不発」って、産経、いや、それ以上に、野田首相・外務省は、いったい何を考えているのだろう。

日本の中国包囲網は不発 新「海洋フォーラム」先送り 野田首相の構想実らず」(産経新聞11年11月19日)

(以下一部略)
 野田佳彦首相は、海洋安全保障の協議機関「東アジア海洋フォーラム」の創設に向け一定の前進が得られたと強調したが、創設の方向性は打ち出せなかった。首相が就任直後から狙い定めてきた外交構想は実らなかった。

 首相はフォーラムの創設を提案。それに対する各国の反応について外務省幹部は「異議を唱える国はなかった」と説明するが、各国の事前調整で正式な議題から除外されていたとみられる。


「事前調整で正式な議題から除外されていた」ということは、一言で言えば、俎上にさえ上げて貰えなかった、ということです。

それもそのはず、戦争は外交の延長であり、逆に、外交も軍事力を背景に行われます。

対中国包囲網を外交上で実施するつもりなら、軍事力での対中包囲網形成が、その基板になければなりません。
集団安全保障を否定し、軍事的包囲網に加わらないと宣言している日本が、外交包囲を唱えたところで、誰が付いてくると言うのでしょうか。

例えば、ベトナムあたりが、その口車に乗って対中強攻策をとったとした場合、中国がベトナムとの領土紛争で軍事的は手段をとってきても、日本は「平和的に解決しましょう」と言う以上のことは何もできない訳です。

こんな提案は、ホラ話、あるいは詐欺にも等しい話でしょう。
乗るバカはいません。

2011年11月18日 (金)

H24概算要求-その1_海上戦力の増強

24年度の概算要求資料が公開されました。
我が国の防衛と予算-平成24年度概算要求の概要

公開からちょっと間が開いてしまいましたが、今後、何回かに分けて来年度の概算要求について見てみます。

最初に概観です。
今回の概算要求は、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の見直し後、初めての概算要求として注目の発表でした。

全体を見渡してみると、「実効的な抑止及び対処」を実現するために「動的防衛力」として、機動性を上げるための施策が目に付きます。ただし、詳細は別途述べますが、”動ける部隊”作りのための施策はあるのですが、それを”動かすための手段”確保の施策が乏しいことが気になります。
地域的な観点では、やはり南西方面の防衛力強化が、かな~り色濃く打ち出されています。
また、未曾有の災害であった東日本大震災を教訓とした施策も目に付きました。

さて、概観はこのくらいにして、今回の本題である海上戦力の増強について、見てみます。
海上戦力は、言うまでもなく機動性の高い戦力ですし、南西方面はほとんどが海ですから、増強はあたりまえと言える措置です。

艦船に関しては、数的には、
・DDHの建造(19500トン型)
・潜水艦の建造(そうりゅう型+潜水艦魚雷防御システム)
・護衛艦の艦齢延伸(艦齢延伸工事2隻、部品調達6隻)
となっており、随分おごったなという印象です。
予算的にも艦船建造費は23年度の750億円から、1781億円と1000億円以上の増加、パーセンテージで言えば、137%もの増加となっています。
ただし、ただでさえ少ないと言われる海自の自衛官定数は、増減ゼロです。
この要求が全部通ったら、まともに動かせるのだろうか?
ヘリ関連では、
・掃海・輸送ヘリMCH-101 1機
・哨戒ヘリSH-60K 5機
・哨戒へりSH-60J機齢延伸 2機
となっており、可もなく不可もなくと言ったところでしょうか。

質的には、
・艦艇の情報共有能力の向上(衛星利用の目標情報共有とのことなので、Link16の衛星利用機能か?)
・あたご型イージスのBMD艦化
どれも措置としては妥当だと思うのですが、あたご型のBMD艦化は間抜けな話です。
対中国のためには4隻では足りないというストーリーを持って財務に臨むつもりかもしれませんんが、それくらいなら最初からBMD艦として作れよ、という感じです。非BMD艦として建造し、就役からわずか5年でBMD艦化改修をするなんて、予算のムダもいいところです。

開発は2件
・潜水艦用新魚雷の開発(浅海域での運用能力向上が意図されており、浅い東シナ海での戦闘を念頭においていると思われる)
・可変深度ソーナーシステムの研究(現有の曳航ソナーでは能力不足ということでしょうか。まあ古いですからね)

また、海自ではありませんが、対水上作戦能力の向上に資する施策として、与那国島への沿岸監視部隊の配置と、88式地対艦誘導弾システム(改)2セットを取得することも盛り込まれています。

てんこ盛りの海上戦力の増強ですが、問題は、艦艇建造費だけでも、昨年度と比較して1000億円超の増加を要する措置が、はたして実際にどの程度予算化されるかでしょう。

2011年11月15日 (火)

アメリカの対中エア・シーバトル空軍拠点は嘉手納しかない

アメリカが対中エア・シーバトルのために新部局を設けたというニュースの中で、そのための拠点が嘉手納しかありえないと見える情報が出ています。

米が対中新部局「エア・シーバトル」空・海戦闘一体…高官「南シナ海脅威座視しない」」(産経新聞11年11月11日)

記事が長いので、問題の部分のみ引用します。

具体的内容としては、(1)中国側の新型対艦ミサイルを破壊するための空・海軍共同作戦(2)米軍用衛星の機動性向上(3)中国側「接近阻止」部隊への空・海両軍共同のサイバー攻撃(4)有人無人の新鋭長距離爆撃機の開発(5)潜水艦とステルス機の合同作戦(6)海・空軍と海兵隊合同による中国領内の拠点攻撃(7)空軍による米海軍基地や艦艇の防御強化-などの準備や推進が提示された。


この中でも、注目は最後の7項「空軍による米海軍基地や艦艇の防御強化」です。

ここで言及される海軍基地は、ホワイトビーチの事ではなく、グアムの事だと思われますが、空軍(戦闘機)が艦艇の防護を行うとなると、グアムは中国から遠すぎます。

F-35の戦闘行動半径は1100Km程度、F-22でも1300km程度、これに対して中国、グアム間は2500km以上あります。
中国が保有する対艦ミサイルは、せいぜい射程2~300なので、そもそもグアム周辺で戦闘機が活動するエリアまで、中国軍航空機及び艦艇が出てくることは考え難いのです。

空母キラーと呼ばれるDF21Dを戦闘機搭載ミサイルで迎撃するつもり(AMRAAMでは無理でしょうから、行うとしたら対ASBM能力を持たせたミサイルの新規開発?)だとしても、DF21Dも射程2000km程度と見られていますから、グアム近海までは届かず、グアムからそれを行おうとする必然性が低いです。

フィリピンに米軍拠点がない今、となるとこの7項で言われる空軍の活動は、嘉手納中心としか考えられません。

アメリカ政府の高官が、「対中戦争では沖縄を拠点にしますよ」と認めている訳です。
もっと注目されてしかるべきニュースだと思いますが、日本の報道機関は、ニュースを読み解く力がないのでしょうか?

2011年11月13日 (日)

那覇のF-15墜落原因確定

那覇のF-15墜落原因について、最終結果が発表されています。
航空事故調査結果について」(空自発表11年11月9日)

  本事故に影響を及ぼした要因としては、事故機操縦者が高G機動を実施した際に、意識喪失又はそれに近い状態に陥っていたことが考えられ、また、操縦者に重篤な疾患が突発的に発生したことによる意識の低下の可能性も考えられるが、いずれかは特定できなかった。


ノック・イット・オフの宣言を自分でしているので、完全に意識喪失していたことはありえないと思いますが、Gで朦朧としていた(早い話が立ちくらみのような状態)だったか、あるいは、以前の記事で指摘したパイロットの疾患だったか、そのどちらかだろうとの結論になったようです。

果たして、Gがどの程度かかっていたのかが問題ですが、これは公表されていません。しかし、疾患の可能性を否定していないところを見ると、それほど高いGではなかったのではないかと思われます。
空自発表資料にはありませんが、朝日の記事を見ると、耐Gスーツの加圧不良によるG耐性の低下が原因だった可能性も指摘されています。
F15墜落、原因は「意識喪失か低下」 防衛省が見解」(朝日新聞11年11月9日)

FDRでは機体の異常は確認されなかったが、重力に耐えるための装置に異常があったかわからず、何らかの問題があった可能性も否定できないとした。


これを見てもそれほど高いGがかかっていた訳ではなさそうです。

パイロットの遺体、及び着用していた耐Gスーツが発見されていないので、原因の確定には至らなかったようです。

パイロット個人の疾患だったと確定されなかったことで、公務災害にも認定されるでしょう。
これだけは、何よりです。

2011年11月 9日 (水)

東芝も反乱!

2009年に、富士重が防衛省を提訴したことに驚いて、「スバルの反乱」として記事を書きましたが、東芝も反乱を起こしたそうです。

偵察機改修契約解除:東芝が防衛省を提訴」(毎日新聞11年10月31日)

元はと言えば、東芝が納期までに納品しなかったのがいけないのですから、富士重のケースとは異なり、「おまえが悪いんだろ」と思いました。
ですが、毎日の記事を見ると、東芝は「契約書に明記されていない性能を要求された。完成部分は独立して運用可能で、契約解除は不当」と主張しているそうです。

もしこの契約後に要求内容が変ったとの主張が真実ならば、民間同士なら契約書を変更する等の処置がされるべきところです。
防衛省が、それをせずに契約の履行を求めていたのだとしたら、東芝が争うつもりの所を見るとその可能性は高そうですが、それは防衛産業に対する甘えというものです。

自衛官は、メンタリティとしては、善意で報国しているつもりですから、同じように貢献している防衛産業に対しても、善意でやっていると誤解しているかもしれません。
ですが、企業は企業です。

何かを要求するなら、きっちりと対価が必要です。
裁判の経過を見守りたいと思います。

2011年11月 6日 (日)

非武装地帯(DMZ)の水は安全か?

大分古いニュース記事ですが、日本で韓国北朝鮮間の非武装地帯(DMZ)で採水された水が販売されているそうです。
非武装地帯の「水」を激安コンビニで発見」(zakzak11年6月13日)

なんと、調べたらアマゾンでも売っている。


人間の手が入っていない自然の水だから、安全でおいしいとのこと。

「非武装地帯」のwikiにも、「意図せずして野生生物保護区のようになっている」とあり、韓国は、ユネスコに生物圏保護区として申請さえしているようです。
DMZをユネスコに申請へ=「生物圏保護区」指定で観光資源に-韓国
(時事通信11年7月17日)

そう言うことからすれば確かに安心・安全なのかもしれない。

しかし、根拠があって言う訳ではないのですが……

DMZは汚染されているとしたら朝鮮戦争の時ですから、当時は劣化ウラン弾なんてなかったはずで、放射能汚染は心配しなくていいと思いますが……

果たして、鉛汚染は心配しなくていいのか?
射撃場でさえ鉛汚染が問題になるのに、DMZなんて、どれだけの弾丸が埋まっている事やら……

2011年11月 1日 (火)

書評「戦争における「人殺し」の心理学」」

このブログを見てくれている方なら、読んだこともある人も多いでしょうが、知らない人にとっては、何やら怪しげなタイトルに思えると思います。
ですが、本書は戦争に関する数多の書籍の中でも、稀に見る良書です。



アマゾンのレビューでも、★5つが23人、★4つが4人、★3つ以下はゼロという非常な高評価です。
ちょっと厚めとは言え、文庫なのに1500円という値段は、非常に高いものですが、買って後悔することはありません。11月1日時点で、アマゾンのロープライスでも940円となっており、買った人が手放さない本だと言えます。

本書は、そのタイトルどおり、戦場において殺人を行う(敵を殺傷する)ことで発生する心理的問題を研究した学術的な書籍です。
ですが、23年間陸軍軍人として過ごし、その後もウエストポイントで教官を行っている筆者が、自らの体験と、同僚及び多数の実戦経験者からの体験談を元に論述しており、冒頭から最後まで、極めて興味深く読むことができました。
小難しい心理学的用語も使われていないため、理解に苦しむということもありません。

私自身、いざとなれば、人を殺す事を覚悟して自衛官をやっていた経験と、部下に人殺しをさせることができるかどうか、実際に悩んだ経験をもって本書を読むと、共感をもって読むことができる部分が多々ありました。

この本は、人間は、本能として、人を殺すことに強烈な抵抗感を覚えるということを、論議の出発点として記述しています。
その抵抗感が如何に強烈なものなのか、実際の戦場で、第2次大戦までの戦闘では、20%以下の兵士しか、敵を殺傷しようとしていなかった事実などから描いています。
上記の事実は、ちょっと信じがたい数値かもしれませんが、この本を読むと、それが事実らしいと分かります。

私的な経験から書かせてもらいますが、自衛官になった時、自分の生命を犠牲にしても任務を行うことは覚悟しましたし、それができると思っていました。
ですが、いざとなった時でも、人を殺すことを覚悟してはいるものの、本当に殺せるかどうか、自信を持つことはできませんでした。
この本の中でも言及されてますが、この抵抗感は、殺害の方法によっても変ります。
ミサイルで殺すことは、多分できたと思います。機関銃や機関砲でも、できたと思います。
小銃となると、ちょっと自信がなくなります。
ナイフでは、多分できなかっただろうと思います。

そして、この抵抗感の理由や性格(上記の方法によって変る等)について論述し、戦争のための実践書として、この抵抗感を排除するための方策と、それによって上記の20%という数字が、対策を講じた米軍においては、ベトナム戦争において向上したことが書かれています。
また、抵抗感を排除する方法と同様な効果のあるものが、日々の生活に及ぼしている影響などについても記述しています。

この本は、この抵抗感を排除し、兵士に人を殺させる方法を書いた実践書でもあるため、この本を読むこと自体に抵抗を持つ人もいると思います。
ですが、決して人殺しを賛美しているような本ではありませんし、この抵抗感を減少させてしまう残虐性にある映画やゲームに対して、筆者が嫌悪し、警鐘を鳴らせていることを見れば、戦争よりもむしろ平和を指向した本であることが分かります。

この本の魅力を、簡単に書くことは難しいですが、軍事・防衛に興味を持つ人には、是非とも読んで欲しい本です。

私は、この本を自衛隊の退職後に読みましたが、在職中に読むべきだったと、残念な思いをしました。
自衛官以外の方にも、もちろんお勧めの本ですが、自衛官には、まさに必読の書だと思います。

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