ビンラディン急襲作戦に軍用犬も参加
ビンラディン急襲作戦に軍用犬も参加していたそうです。
「襲撃作戦で軍用犬も活躍」(産経新聞11年5月7日)
米メディアは7日までに、国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者がパキスタンの潜伏先で殺害された際、急襲作戦を担った米軍特殊部隊に軍用犬が加わっていたと報じた。
爆弾の臭いをかぎ分けたり、パラシュートで空中から降下したりするなど特別な訓練を受けた軍用犬のうち、最も能力があり実戦での経験が豊かな“エリート犬”が選ばれたとみられる。素顔はベールに包まれており、米国内でどんな犬だったのか話題を呼んでいる。作戦決行後、オバマ大統領との面会も果たしているという。
横田基地で使用されている軍用犬
軍用犬に思い入れのある人間として、こう言うニュースは嬉しい思いがします。
と言うのも、米軍はかなり犬を活用しているのですが、自衛隊は後述のように、あまり犬を重用してはおらず、犬に対する風当たりも結構強いからです。
米軍と自衛隊の犬舎を比べても、米軍の犬の方がきれいな犬舎に住んでます。
ですが、こんな重要作戦に投入されているように、訓練次第では犬は非常に効果的な戦力になります。
自衛隊では、海空自衛隊で犬を使用しています。陸自もかつては使用していたものの、制度自体を廃止してしまったと記憶しています。海自では警備犬、空自では歩哨犬という名称で、名前からわかるようにどちらも基地の警備のために使用しています。
入間基地航空祭での空自の歩哨犬訓練展示の様子
空自では入間基地の警備小隊内に歩哨犬管理班という部署があり、全国の基地で使用される歩哨犬をここで訓練して送り出しています。
歩哨犬管理班については、入間基地のHPに歩哨犬管理班勤務者のインタビューが載っているので興味のある方はコチラを見て下さい。
さて、自衛隊内で犬が重用されていないと書きましたが、その理由は簡単に言えば訓練が大変だからです。
まず第1に、高練度の軍用犬を作るためには実に多くのことを教える必要があります。どんな事を行うかは、以前の記事「入間航空祭レポート その2」をご覧下さい。
基本的に、基地の警備しか行わない空自であってもこれだけの事を教えるのですから、今回の作戦に投入された軍用犬は相当な訓練を行っていると思われます。
加えて、それだけ訓練しても、たとえ大型犬であっても人間と比べると寿命は非常に短く、15年程度であることを見れば、体力面などで実戦に耐えられる期間が非常に短いことは確かに問題です。(10歳以上の犬なんて人間で言えばジジイな訳です)
第2に、軍用犬を効果的に使うためには、犬以上に犬を使う側の訓練が重要です。
空自では、前述の歩哨犬管理班で集合訓練などを行っていますが、それだけ専門家が育つはずはないことは、簡単に想像が付くでしょう。
陸自が制度を廃止してしまったのも、同じ理由です。
ですが、こう言うニュースが出てくると、駐屯地の警備ではなく、特殊作戦群あたりで使おうと言う意見が出てくるかも知れません。
今回、軍用犬が投入されたというニュースを聞き、厳重に警備され、おそらくトラップもあるであろう危険な場所に先陣を切るために使用されたのではないかと個人的には想像していました(公開している小説中でも同じ役割で登場させました)が、その後の続報によると、やはりそのような用途で使用されていたようです。
「ビンラーディン襲撃作戦に軍用犬も活躍」(産経新聞11年5月8日)
一方、米CNNテレビなどによると、急襲作戦に加わった軍用犬はジャーマンシェパードで、弾薬の臭いをかぎつけると敵に猛スピードで突撃する訓練を受けていた。チーム6のメンバーといっしょにパラシュートで空中から降下し、兵士がビンラーディン容疑者の隠れ家のドアを突き破ると、先陣を切って邸内に突撃。敵をひるませ、兵士が突入するのに必要なコンマ数秒の時間を稼ぐのにも貢献した。
軍用犬は防刃、防弾性に優れたアーマー(防身具)を身につけ、アーマーには赤外線夜間カメラも備えつけられていた。チーム6のメンバーと同じく、特別な訓練を受けた軍用犬の中でも最も能力が高く、実戦経験も豊富な“エリート犬”で、日ごろの訓練の成果を発揮した。
こう言った用途での犬の使用については、ちょっとした思い出があります。
最近では空自でもCQBの訓練を行っていますが、危険エリアへの先兵として歩哨犬を訓練して投入すべきだと意見具申した際、ある上司からダメ出しをされました。
それ自体は良いのですが、その理由を聞いて絶句。
曰く「そんな危険な事をさせたら、犬がかわいそうだろ」
犬を使わなければ、最初に先陣を切るはずの隊員がもっとかわいそうだろと思いました……
こう言った役割は、いずれはロボットが行うのかもしれませんが、敏捷な動作などの点でまだまだ軍用犬に遠く及びません。
当分は軍用犬活躍のニュースは聞けると思います。
ちなみに、軍用犬については詳しいサイトがあるので興味のある方は覗いてい見て下さい。
軍犬物語
« 墜落は無理にステスル性を追求した結果? | トップページ | B型枯渇で、総隊の訓練は大丈夫? »
「基地警備」カテゴリの記事
- 歩哨犬の災害救助犬としての活用に異論(2012.07.25)
- 実弾装填で実戦的警護_2012北朝鮮「衛星」発射(2012.04.22)
- レーダーサイトもやっと……(2012.02.20)
- 祝!_FN303調達(2011.12.22)
- 初の陸自によるパトリオット部隊警備(2011.12.11)
こん**は。以前、横田フレンドシップデイと百里航空祭とで軍用犬の訓練展示を見ましたが、その内容の差は歴然としてましたね。百里のほうではハンドラーの言うことを聞かない場面もあったりして(汗)、真剣味が全く違いました。
投稿: KWAT | 2011年5月11日 (水) 09時47分
KWAT 様
残念ながら、横田と同レベルなのは、歩哨犬管理班のある入間だけでしょうね。
投稿: 数多久遠 | 2011年5月11日 (水) 22時32分
日本人と米国人の文化の違いもあるかもしれませんね。実は私は海外で生活をしていたことがありますが、その時に現地の方々は「虫は痛みを感じない」という認識でしたので、カルチャーショックを受けたことがあります。
その一方で海外の映画でもそうなのですが、人間の死よりも動物の死の方がインパクトが強く描かれている場合もあります。なお、私の勘違い記憶違いであれば申し訳ありませんが、朝霞駐屯地で隊員の方々がなでなでしているのを見たことがあります。何とも微笑ましいものでした。
投稿: アシナガバチ | 2011年5月11日 (水) 23時37分
アシナガバチ 様
宗教的な背景もあるでしょうね。
日本人的な、一寸の虫にもといった感覚ではないのは確かだと思います。
使いこなすためには、もちろん普段はかわいがります。
ですが、デカイ個体を選んでいるのかもしれませんが、ホントにデカイので、近寄るのは隊員でも怖いです。警備の人間にしかなついていませんし。
朝霞だと、公式に飼っている犬ではないはずです。
野良犬に残飯を与えてるとかは、田舎の部隊だと良くある話ですが、朝霞だと……?
何でしょう。
投稿: 数多久遠 | 2011年5月12日 (木) 21時50分
敵を怯ませるのは閃光弾より犬の方がいいんですか?
投稿: 空 | 2011年5月15日 (日) 20時24分
空 様
犬と閃光弾は2者択一ではなく、併用でしょう。
閃光弾を放り込んで、爆発後に犬を突入させることになるでしょう。
ただし、今回のケースでは、当初から殺害目的だったらしいので、逮捕目的の際に使用する閃光弾ではなく、放り込むなら最初から手榴弾だったと思います。
警察のCQBと軍隊のCQBは大分違います。
一部では、そこを承知せずに自衛隊が警察に学んでたりもするんですが……
投稿: 数多久遠 | 2011年5月15日 (日) 22時00分
失礼します。
>軍用犬
使えるモノは活用する・・・その原理で言えば当然でしょうね。
しかしイスラム教の世界では「犬」は邪悪なモノとされてますので・・・この件が、更にイスラム世界の反米の意識を高めなければ良いのですが・・・
>海自・警備犬
そういえば、アレ(警備犬)・・・「2等海曹」らしいですよ。
投稿: 海族 | 2011年5月15日 (日) 22時33分
海族 様
さすがに、犬を使ったことで反米感情が高まるという程のことはないと思いますが……
もっとも、ビンラディンの死因が犬にかみ殺されたとかですと影響あるかもしれませんね。
私も2等空曹だという話は何度かききました。
で、調べたこともあるのですが、正式に階級付与されているというような事実は無かったですね。
補給上は物品扱いですし。
維持費に2等空・海曹なみにかかっている訳ではありませんし……ナゾです。
投稿: 数多久遠 | 2011年5月16日 (月) 21時13分
再度失礼します。
>2曹
空も2曹って言われてるんですか・・・謎といえば謎ですが・・若い曹士達に警備犬に対して、それなりの「愛護精神」を発揮させる為の方便でしょうか。
投稿: 海族 | 2011年5月18日 (水) 14時31分
海族 様
海でも2曹だと言われているのは知っていましたが、海の警備関係者に聞いてもその根拠はご存じ無かったですね。
理由の程は、ホント謎です。
ただ、海空ともに2曹という話があるからには、何らかの理由はあったんでしょうね。
もしかして、新兵に対して、「お前より犬の方がえらいんだ」なんて言うイジメも共通なんでしょうか……
投稿: 数多久遠 | 2011年5月18日 (水) 23時20分