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2011年5月21日 (土)

普天間移設にウルトラC案_ヤンバルに基地建設

普天間移設問題では、米有力議員が嘉手納統合を唱えたり、政府が移設期限を設けない案を言い出すなど、先の見えない混迷状態が続いていますが、その原因はなにより地元である名護市や沖縄県の反対姿勢にあります。

ところが、ここに来て逆に沖縄県内から移設先として誘致する動きが出てきました。

過疎化に危機感 国頭・安波普天間受け入れ案」(沖縄タイムス11年5月15日)

 国頭村安波区(渋井登志代区長)の評議委員らが、高速道路の整備など地域振興策を条件に、米軍普天間飛行場の代替施設を受け入れる可能性があることを、政府に伝えていたことが明らかになった。背景には、普天間問題の打開策を示すことで国から振興策を引き出し、深刻化する人口減少や遊休農地の解消につなげたいとの思いがある。


場所はヤンバルのど真ん中で、北部訓練場にも隣接した国頭村安波。太平洋沿岸で、シュワブから北東に30km程の位置です。

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国頭村安波の位置関係

区の主張は、正確に言うと海兵隊の誘致ではなく、空自の誘致で、普天間受け入れはオマケ的な考え方のようです。

那覇空港から航空自衛隊基地を受け入れる案が浮上、普天間基地の移設受け入れも条件に加えた。


国頭村は、道路事情が悪く、観光客がせいぜい北に足を伸ばしても本部町の沖縄美ら海水族館までしか行かないため、過疎化が激しい地域です。
私は沖縄勤務時に何回か足を伸ばしましたが、ヤンバルの森と時折見えるパイナップル畑の他、何にもありません。
ガソリンスタンドもほどんどなく、ガス欠の恐怖に怯えながら走った記憶があります。

このままでは、どんどん過疎化が進むことは間違いなく、窮余の策と言えるでしょう。

その後の続報によると、計画は、2500mの滑走路を集落から1km以上離した位置に建設する案となっており、騒音の予想範囲や地権者のリストを付すなど、かなり突っ込んだ検討がされている模様です。

滑走路2500メートルを想定 普天間飛行場移設」(琉球新報11年5月18日)

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予定する基地・滑走路の位置・範囲(琉球新報より)

計画は、外務・防衛省にも伝えられている他、民主党の下地議員を通じて米側にも提示されているそうです。

沖縄県知事は既に反対姿勢を明確にしているようですが、今後の各方面の反応が注目です。

さて、ではこの国頭村安波案が、軍事的に検討する価値があるかどうか、考えてみます。
以前の記事、「普天間の代替候補地条件」で書いた通り、沖縄本島内で嘉手納以外の飛行場を作る案なので、大筋は問題ないはずだからです。

自衛隊の基地としては、那覇や嘉手納とそれほど距離はなく、南西方面防空のための航空機の発進帰投基地として位置は悪くありません。
度々指摘している那覇基地のコマンド攻撃に対する脆弱性の問題も、相当改善されます。
基地のあおりを食って、周辺民家が被害を受ける可能性も減るでしょう。

しかし、計画範囲を見ると、滑走路以外の面積が少々狭いように思われます。特に、普天間と那覇の機能統合をするつもりなら、完璧に手狭です。

また、問題もあります。
一つは、燃料などの補給の問題です。
燃料に関して言えば、沖合にタンカーを接続できる燃料パイプラインを設けるのでなければ、かなりの距離を陸送することになり、コストの増大に繋がりますし、戦力発揮上はこれがボトルネックとなり道路を爆破された結果飛行機が飛べないなどと言う結果になりかねません。
もし、近隣に港湾まで整備できるのであれば、OKです。

もう一つは、パトリオットの配置が現在のままでは、SSMやASMによる攻撃に対して、安波は防護困難であることです。空自那覇基地を移転させるのであれば、パトリオットの部隊も移動させなければならないでしょう。

さらにもう一つ、案が具体化しても空自が言い出せない問題として、隊員の福利厚生のこともあります。
基地ができれば、周辺にこれを当て込んだ飲食店ができるでしょうが、那覇基地とは比べるべくもありません。

普天間の移設先としても、問題点の部分はほぼ同じですが、北部訓練場に近接することになるため、訓練上は魅力的ではないかと思われます。

さて、この案に米側が乗ってくるかどうか、補給上も必要な道路建設等、振興策に国頭村が乗ってくるか、注目です。

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コメント

米側がのるかどうかは、かなり疑問ですね。特に、今は議会対策で忙しいでしょうから、まず無理でしょう。

しかし、沖縄側からこういう案が出てくると(沖縄の)世論もかわってくるのでしょう。

空自の部隊がF18を使用するようになったとしたら、(この場所は)テロ、騒音その他の問題に強くなるでしょうから、かなり魅力的だと思いますね。

みやとん 様
しかし、先日のレビン議員等による嘉手納統合案支持に関しても、このままでは地元理解を得ることは難しいという考えがあってのことでしょうから、米側だってわかりませんよ。

確かに、ここに空自が移転する可能性が高くなれば、FXにあのウルサイF-18が選択される可能性は高くなるでしょうね。
ちょっと盲点でした。

燃料の問題、大変じゃないでしょうか。
私も一度通ったことがあるくらいなのですが、地形図を見る限りあの辺りは海面よりかなり高いです。

安波川の河口付近が小さな湾状になっているのですが、写真を見る限りタンカーを着けられるようにするのも大変そうです。
http://www.kasen.net/pref/47okinaw/aha/index.htm

藤宮 直樹 様
すぐ西に安波ダムがあるくらいですから、沖縄の中でも標高差がある土地ですね。
燃料パイプラインの接続口は、沖合に作ることが可能なので、一旦作ってしまえば、タンカーを直づけできます。

恐らく、この辺りも既に検討中だとは思います。

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