沖縄こそ、防災活動への米軍参加が必要
ネットには載っていませんが、4月16日付の読売新聞に、ロバート・エルドリッヂ氏の「米軍も防災訓練に参加を」という寄稿文が載っています。
氏は元大阪大学准教授で、在日米海兵隊基地外交政策部次長でもあります。
氏のHP
氏は、沖縄を中心とした日米関係論の専門家で、多数の論文や著書があります。
沖縄問題の起源―戦後日米関係における沖縄
硫黄島と小笠原をめぐる日米関係
奄美返還と日米関係―戦後アメリカの奄美・沖縄占領とアジア戦略
本当は寄稿文の全文を転載したいところですが、さすがにタイプがキツイので、以下に要約を書きます。
在日米軍は、「トモダチ作戦」として日本国民への支援作戦を続けているが、すでに我々は教訓を集めて将来について考えている。
それは、日本国内の防災訓練に在日米軍が参加する機会を増やす必要があるということだ。現在、在日米軍は東京都や静岡県など一部の自治体の訓練にしか参加していない。しかし、これは決して驚くべき事ではない、。阪神大震災(1995年)が起きるまで、地方自治体は自衛隊との間でさえ、防災訓練を取り入れてこなかったからだ。
(中略)
私は、日米両国が災害時における相互支援協定を早急に締結し、日米のどちらかの国が被害を受けた時に備えて、協力関係を積み重ね、育成する訓練を実施すべきだと提言したい。
提案するのは、「災害における日米相互支援協定」だ。(中略)
まず、自衛隊と在日米軍の対応能力と協力関係を向上させるため、東海地震や東南海地震、南海地震を想定した2国間訓練を速やかに実施すべきだ。同じような災害訓練は、米国各地でも行えば、さらに良いだろう。日本各地で行っている防災訓練に、在日米軍や米政府の機関をオブザーバーとして参加できるようにすることも重要だ。
(中略)
人間は、自然の破壊に対して立ち向かう(スタンド・アップ)することはできない。だが。日米が共に立つ(スタンド・トゥギャザー)ことはできるはずだ。
災害における日米相互支援協定という案は、非常に良い案で、日本側として真剣に検討すべきものでしょう。
それがなければアメリカの援助が期待できないというものではありませんが、法的地位を明確化し、必要な権限付与を事前にできるようにしておけば、もっと早く、そしてもっと効果的に米軍が動けるようになります。
それに、氏が米軍人の一人として言うことができない隠された本音として、日本人の世論を改善し、日米安全保障条約を片務条約ではなく、「相互」安全保障条約とすることにも貢献するだろうと思います。
さらに、法的地位や権限を明確化することで、防災に米軍が参加することに及び腰な自治体を積極的になることを即すことができます。
ここで、自治体の姿勢に言及するのは、この寄稿文を読んだ時に、私が自衛隊の担当者として調整段階から参加した沖縄での防災訓練のことが思い出されたからです。
当時は、阪神大震災の後で、多くの自治体が自衛隊の防災訓練には非常に積極的になっていたにも関わらず、沖縄の防災担当者は非常に及び腰で、勢い込んで出て行った調整会議には拍子抜けと言うか、やり場のない怒りさえ感じました。
沖縄では、自衛隊の防災訓練参加でさえ、そんな調子ですから、米軍に至っては言うまでもありません。
ですが、沖縄こそ米軍を防災活動に参加させるべき県です。
在沖の自衛隊は、人員数まで調べがつきませんでしたが、陸自が15旅団のみ、空自は南西航空混成団、海自に至っては沖縄基地隊のみと小規模です。
災害時には本土から支援が来ると言っても、海で600kmも隔てられており、来援は大変です。
しかも、今回のように津波災害などあった日には、港湾はもとより、松島基地以上に海に近く、遠浅のリーフにせり出した形の那覇基地は甚大な被害を受けること間違いなしなので、空海の輸送とも相当に困難となることが予想されます。
一方で、在日米軍は、他国に展開している場合も多いですが第3海兵遠征軍を中心とした海兵隊が1万6千人、嘉手納の空軍は中心部隊の18航空団だけでも1万8千人にも及びます。陸軍と海軍も少数ですが、所在しています。
自衛隊が少なく、米軍が多いとなれば、どう考えても災害時は米軍の力に期待すべきです。
しかも、沖縄は決して地震・津波被害が少なくありません。
1771年に発生した八重山地震による明和の大津波は、最大波高40m、最大遡上高は80mにも達したと言われ、1万2千名もの死亡・行方不明者という被害が発生しています。死傷率で考えれば、今回の地震・津波被害よりも遙かに被害が大きかったと言えます。
八重山地震(wiki)
また、宮古島は、他の沖縄各島と異なりハブがいませんが、この理由が津波により全島が水没したからだとする説もあります。
この状況を踏まえれば、沖縄こそ米軍を災害対処に活用すべきという論が出てくるべきですが、沖縄世論の形成に大きな影響を及ぼす地方紙の状況は……
「沖縄、米軍への共感じわり 地元紙は「普天間問題に利用」主張」(産経新聞11年4月7日)
沖縄でも米軍への共感が広がる中、沖縄の主要地方紙2紙ともが、米軍の活動を売名行為だとしています。
こんな社説もありました。
「米軍の災害支援 それでも普天間はいらない」(琉球新報11年3月18日)
ネットで叩かれたこんな記事も
「存在意義アピールに「不謹慎」 在沖海兵隊が震災支援で」(琉球新報11年3月17日)
沖縄の方は、歪んだ地方紙に染められることなく、本当に必要なことが何なのか考えて欲しいと思います。
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