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2011年4月

2011年4月29日 (金)

沖縄こそ、防災活動への米軍参加が必要

ネットには載っていませんが、4月16日付の読売新聞に、ロバート・エルドリッヂ氏の「米軍も防災訓練に参加を」という寄稿文が載っています。

氏は元大阪大学准教授で、在日米海兵隊基地外交政策部次長でもあります。
氏のHP
氏は、沖縄を中心とした日米関係論の専門家で、多数の論文や著書があります。
沖縄問題の起源―戦後日米関係における沖縄

硫黄島と小笠原をめぐる日米関係

奄美返還と日米関係―戦後アメリカの奄美・沖縄占領とアジア戦略


本当は寄稿文の全文を転載したいところですが、さすがにタイプがキツイので、以下に要約を書きます。

 在日米軍は、「トモダチ作戦」として日本国民への支援作戦を続けているが、すでに我々は教訓を集めて将来について考えている。
 それは、日本国内の防災訓練に在日米軍が参加する機会を増やす必要があるということだ。現在、在日米軍は東京都や静岡県など一部の自治体の訓練にしか参加していない。しかし、これは決して驚くべき事ではない、。阪神大震災(1995年)が起きるまで、地方自治体は自衛隊との間でさえ、防災訓練を取り入れてこなかったからだ。
(中略)
 私は、日米両国が災害時における相互支援協定を早急に締結し、日米のどちらかの国が被害を受けた時に備えて、協力関係を積み重ね、育成する訓練を実施すべきだと提言したい。
 提案するのは、「災害における日米相互支援協定」だ。(中略)
 まず、自衛隊と在日米軍の対応能力と協力関係を向上させるため、東海地震や東南海地震、南海地震を想定した2国間訓練を速やかに実施すべきだ。同じような災害訓練は、米国各地でも行えば、さらに良いだろう。日本各地で行っている防災訓練に、在日米軍や米政府の機関をオブザーバーとして参加できるようにすることも重要だ。
(中略)
 人間は、自然の破壊に対して立ち向かう(スタンド・アップ)することはできない。だが。日米が共に立つ(スタンド・トゥギャザー)ことはできるはずだ。


災害における日米相互支援協定という案は、非常に良い案で、日本側として真剣に検討すべきものでしょう。
それがなければアメリカの援助が期待できないというものではありませんが、法的地位を明確化し、必要な権限付与を事前にできるようにしておけば、もっと早く、そしてもっと効果的に米軍が動けるようになります。
それに、氏が米軍人の一人として言うことができない隠された本音として、日本人の世論を改善し、日米安全保障条約を片務条約ではなく、「相互」安全保障条約とすることにも貢献するだろうと思います。

さらに、法的地位や権限を明確化することで、防災に米軍が参加することに及び腰な自治体を積極的になることを即すことができます。
ここで、自治体の姿勢に言及するのは、この寄稿文を読んだ時に、私が自衛隊の担当者として調整段階から参加した沖縄での防災訓練のことが思い出されたからです。

当時は、阪神大震災の後で、多くの自治体が自衛隊の防災訓練には非常に積極的になっていたにも関わらず、沖縄の防災担当者は非常に及び腰で、勢い込んで出て行った調整会議には拍子抜けと言うか、やり場のない怒りさえ感じました。
沖縄では、自衛隊の防災訓練参加でさえ、そんな調子ですから、米軍に至っては言うまでもありません。

ですが、沖縄こそ米軍を防災活動に参加させるべき県です。

在沖の自衛隊は、人員数まで調べがつきませんでしたが、陸自が15旅団のみ、空自は南西航空混成団、海自に至っては沖縄基地隊のみと小規模です。
災害時には本土から支援が来ると言っても、海で600kmも隔てられており、来援は大変です。
しかも、今回のように津波災害などあった日には、港湾はもとより、松島基地以上に海に近く、遠浅のリーフにせり出した形の那覇基地は甚大な被害を受けること間違いなしなので、空海の輸送とも相当に困難となることが予想されます。

一方で、在日米軍は、他国に展開している場合も多いですが第3海兵遠征軍を中心とした海兵隊が1万6千人、嘉手納の空軍は中心部隊の18航空団だけでも1万8千人にも及びます。陸軍と海軍も少数ですが、所在しています。

自衛隊が少なく、米軍が多いとなれば、どう考えても災害時は米軍の力に期待すべきです。

しかも、沖縄は決して地震・津波被害が少なくありません。
1771年に発生した八重山地震による明和の大津波は、最大波高40m、最大遡上高は80mにも達したと言われ、1万2千名もの死亡・行方不明者という被害が発生しています。死傷率で考えれば、今回の地震・津波被害よりも遙かに被害が大きかったと言えます。
八重山地震(wiki)
また、宮古島は、他の沖縄各島と異なりハブがいませんが、この理由が津波により全島が水没したからだとする説もあります。

この状況を踏まえれば、沖縄こそ米軍を災害対処に活用すべきという論が出てくるべきですが、沖縄世論の形成に大きな影響を及ぼす地方紙の状況は……
沖縄、米軍への共感じわり 地元紙は「普天間問題に利用」主張」(産経新聞11年4月7日)
沖縄でも米軍への共感が広がる中、沖縄の主要地方紙2紙ともが、米軍の活動を売名行為だとしています。
こんな社説もありました。
米軍の災害支援 それでも普天間はいらない」(琉球新報11年3月18日)
ネットで叩かれたこんな記事も
存在意義アピールに「不謹慎」 在沖海兵隊が震災支援で」(琉球新報11年3月17日)

沖縄の方は、歪んだ地方紙に染められることなく、本当に必要なことが何なのか考えて欲しいと思います。

2011年4月26日 (火)

福島原発の放射性物質拡散は本当に大丈夫か?_特殊武器防護のスペシャリストが逃げ出す

先週、二日続けて、震災対処に関わる自衛官の服務事故がニュースになっています。

「原発怖く逃げた」トラック窃盗容疑の自衛官を懲戒免職」(朝日新聞11年4月19日)

自衛隊員:下半身露出容疑で逮捕 被災地派遣嫌がり」(毎日新聞11年4月20日)

どちらの事故でも、震災対処の災害派遣任務から逃亡したのですから、戦前であれば敵前逃亡で銃殺となるところです。
が、自衛官の半数もが派遣されている事態を考えれば、よくこの程度で済んでいるなとも思います。

とまれ、このニュースを取り上げたのは、事故件数が気になったからではありません。

2件目のニュースは、おそらく個人的な問題だと思いますが、1件目のニュースは必ずしもそうとばかりとは思えないからです。

1件目の服務事故の当事者は、32歳の3等陸曹で第1特殊武器防護隊所属していました。
彼は、3月13日から、原発事故に伴い福島県の郡山駐屯地に派遣され、放射性物質の除染作業に必要な通信手として連絡役を務めていたそうです。

第1特殊武器防護隊は、NBC対処の専門部隊で、中央即応集団隷下の中央特殊武器防護隊を除くと、全国でも4つしかない師団隷下の特殊武器防護隊の一つです。

その所属人員は、言うまでも無くNBC対処のスペシャリストであり、3曹昇任日が不明なので微妙な線ですが、32歳と言えばそろそろ中堅陸曹と言っても過言ではない隊員だったハズです。
放射性物質やその影響についても、一般的な教育を受けただけでしかない一般的な自衛官などとは比べものにならない知識を持っていたのは間違いありません。

その人間が、「原発事故への恐怖心でパニックになって逃げた」と言っているのです。
必ずしも本音ではないかもしれませんが、この発言が本音だとしたら、現場は一般的に報道されている以上に過酷な状況なのかもしれません。

当該自衛官は、原発から直線距離で約70kmほどの距離にある郡山駐屯地で、除染作業の通信手として活動していたとのことなので、原発自体に直接出向くことはなかったと思いますが、通信手として、汚染状況に関する情報には多く接してきたと思われます。

70kmの距離は、設定されている警戒区域からは大きく外れており、常識的には逃げ出したくなるような状況とは思えませんが、放射線物質の飛散状況などの詳細情報を接して怖くなった可能性があります。

いたずらに恐怖を煽るような記事を書くつもりはありませんが、当該自衛官自体に問題があったのではなく、スペシャリストが逃げ出したくなるような情報が本当にあるのであれば、問題です。

2011年4月24日 (日)

韓国の弾道ミサイル関連政策に変化

李明博(イミョンバク)政権下の韓国は、国防面で前政権とはかなりの差異がありますが、弾道ミサイル関連でも大きな変化が出てきています。

まず、弾頭ミサイル防衛について、米韓協議が始まりました。

米韓がミサイル防衛の協力協議を開始(読売新聞11年4月18日)

 米国防総省は、韓国との間でミサイル防衛(MD)協力に向けた協議を開始したことを明らかにした。

 北朝鮮が開発中の弾道ミサイルを念頭に置いたものだ。

 (中略)韓国が将来的に弾道ミサイル防衛システムの実用性について有効な判断を下せるようにすることが目的という。

 (中略)韓国は、北朝鮮に対する融和政策をとった盧武鉉(ノムヒョン)前政権が北朝鮮や中国への配慮などを理由にミサイル防衛参加を拒否。(後略)


米韓の弾道ミサイル対策は、韓国が短・中射程弾道ミサイルへの対策を必要とする反面、米国は大陸間弾道ミサイルへの対策を必要としており、日米関係以上に同床異夢な環境ですが、アメリカとの連携を強める李明博政権は、アメリカに向かう北朝鮮と中国からの弾道ミサイル迎撃に協力することを決心したようです。

おそらく、日米の弾道ミサイル防衛での協力から得た技術的裏付けも、アメリカを後押ししたのではないでしょうか。(FPS-5やイージス艦のセンサーシステムとJADGEのC4ISRが、アメリカの弾道ミサイル防衛に効果が大だと評価した)

また、極めてリアクションタイムが短いため、高速で長射程の弾道ミサイル対策とは、別の方向で技術的困難を伴う短射程弾道ミサイルに対する防衛網の構築にも目処が立ってきたのかもしれません。

一方で、日本と違って、韓国は、弾道ミサイル防衛を進めると共に、弾道ミサイルによる攻撃能力の確保にも力を入れています。

韓国弾道ミサイル、最大射程引き上げか 米韓が最終調整」(朝日新聞11年3月11日)

 米韓両政府は、韓国の弾道ミサイル開発の上限を現行の射程300キロから800キロに引き上げる方向で最終調整に入った。(中略)

 米韓両国は昨年末から「米韓ミサイル指針」の改定作業を進めていた。現行指針は朝鮮半島の緊張を高めないよう、韓国が米国から技術提供を受ける条件として、韓国の弾道ミサイル開発の射程を300キロ以内、弾頭積載重量を500キロ以下に、それぞれ制限している。

 (中略)今後の調整次第では、射程を500キロ程度まで抑える可能性もある。弾頭積載重量は現状を維持する。

 韓国内には従来、弾道ミサイル開発の制限に不満があった。北朝鮮が射程300~500キロのスカッドを約600発、同1300キロのノドンを約200発、それぞれ実戦配備しているためだ。(中略)

 これに対し、米国が韓国の要求に応じて射程延長を認めた背景には、日米韓の弾道ミサイル防衛(BMD)体制構築の環境を整える狙いがあったとみられる。韓国は日米主導のBMD体制への加入に慎重な姿勢を維持している。

(中略)
 ただ、韓国側には射程千キロまでの延長を求める声もあったが、米国は応じなかった。日中ロなど周辺国を刺激する可能性を考慮した結果とみられる。


韓国と日本は、弾頭ミサイルに関しては防衛上の環境が似ています。
日本が弾道ミサイルの配備に舵を切ったとしても、アメリカもこれを支持せざるを得ないように持って行くことも可能でしょう。(そのためには、日本が集団的自衛権の行使に踏み込むとも言えるアメリカ向け弾道ミサイルの迎撃に表だって協力する必要があるでしょうが……)

2011年4月19日 (火)

防衛省、補正予算にに1890億円

やっとネット環境が復活しました。
まだゴタゴタしておりますが、ぼちぼちと更新します。

防衛省が、震災対応のため、第1次補正予算として1890億円を要求しました。

防衛省、震災対応で1次補正に1890億円要求」(読売新聞11年4月18日)

この1890億円には、派遣されている自衛官の食料、車両や航空機の燃料、救援物資、急遽調達する装備品、それに支給される手当などが含まれていると思われます。

漠然と1890億円と言っても、ピンと来ません。
23年度の防衛予算の内、陸自の予算が1兆7817億円なので、この1890億円は、陸自の年間予算の約1/10と言える金額です。
戦車などの装備品購入などを含めた年間予算の1/10ですから、かなりな額と言えますが、自衛官の半数が震災対応のため災害派遣行動中であることを考えれば、その程度で済むのかと疑問の湧く金額でもあります。

ただし、この金額は、今後6ヶ月の間、派遣が続く場合の予算なので、10月以降も派遣が続く場合は、更に2次以降の補正予算に要求することになります。
さすがに、行方不明者の捜索が半年も続くことはないと思いますが、原発関連の活動やガレキの除去作業は半年では終わらないでしょう。

また、この1890億円には、水没したF-2の調査・分解検査費350億円と災害により直接被害を受けた自衛隊施設の復旧費70億円が含まれているとのことです。

F-2の調査等費用ですが、新造機3機分もの予算になります。
調査の結果、やっぱりダメでしたとなるようでは無駄な費用となる訳ですから、恐らく再稼働が可能と見積もっていると思われます。
再稼働まで持って行くには、更なる費用も必要になるでしょうし、防衛産業界にとっては、望外の僥倖と言えるかもしれません。

自衛隊の施設復旧費ですが、基地全域が水没した松島の他にも、各駐屯地等が被害を負っているにも関わらず、わずか70億で済むというのは驚きです。
元からしっかり作られていることが幸いしたのでしょう。

派遣から1ヶ月以上が経過し、このニュースを聞いてゲンナリしている自衛官も多いかもしれませんが、完全に復旧が復興に移行する日までがんばってください。

2011年4月 6日 (水)

F-2水没でパイロット育成方法見直し

当然に予想されていたことですが、震災によるF-2水没被害でパイロットの育成方法が見直されます。

ソースは読売新聞ですが、ネットには載っていないので転載しておきます。

操縦士育成方法見直し 防衛省方針 空自松島基地被災で(読売新聞11年4月5日)

 防衛省は4日、宮城・松島基地を拠点に行っていた航空自衛隊のF2、F4両戦闘機のパイロット育成方法を見直す方針を決めた。
 東日本大震災で同基地が大きな被害を受けたためだ。週内に岩崎茂航空幕僚長ら幹部による対策会議を開き、具体案作りに着手する。
 松島基地では、パイロット育成用に使ってきた18機のF2全機が津波に流されたり、水に浸かったりした。このほか、T4中等練習機4機、U125A救難捜索機2機、UH60J救難ヘリ4機も被害を受け、被害額は航空機だけで最大2300億円に上る見込みだ。
 修理して使用が可能になるかどうかを調べる内部点検も終わっておらず、新たに調達する場合も5、6年かかるとみられるという。
 このため、対策会議では、①育成業務を他の基地で代替できるか、②他の基地のF2を育成用に松島基地に移せるか――などを中心に検討を進める。
 同省幹部は「松島基地の被災は日本の防空体制の維持にボディーブローのように効いてくる」と懸念しており、早急に見直し案をまとめて実施に移す考えだ。


松島のF-2は18機は、基本操縦課程及び戦闘機操縦基礎課程を終了したパイロットに対して、実戦部隊で使い物になるように戦闘機操縦課程の教育を施すために使用されていました。
もしこの18機が全損であれば、このままだと戦闘機操縦基礎課程を修了し、戦闘機を飛ばすことだけはできるようになったヒヨっ子パイロットを、即実戦部隊に送らざるを得なくなります。

そうなれば、部隊の負担は過大なものになり、記事にあるコメントのように「防空体制の維持にボディーブローのように効いてくる」ことになるでしょう。
ちなみに、F-15での同等の教育は、新田原の第23飛行隊が実施しています。

F-16Bをリースして代用すると言った意見もありますが、次の図を見れば分かるとおり、原型がF-16であっても、翼面積等大きく異なっているために操縦特性には違いがあり、代用は難しいです。
松島での教育が、戦闘機操縦基礎過程であれば良かったかもしれませんが、現場で使い物になる戦技を教え込む戦闘機操縦過程の教育用としては、使えません。
F2andf16
F-2とF-16の機体平面形比較(wikiより)

記事によると、対策会議でまな板に乗る案としては次の2案があります。
①育成業務を他の基地で代替
②他の基地のF2を育成用に松島基地に移す

三沢の第3飛行隊か第8飛行隊あるいは築城の第6飛行隊に任務を移す、あるいは飛行隊自体を教育集団隷下に入れて第21飛行隊にとって替わらせるということになります。
対象となる部隊は、対領侵の負担などを考えれば第6飛行隊が良いかなとも思いますが、そうなると西空の実戦配備機は、F-15が第304飛行隊1個とF-4が第301飛行隊1個となりあまりにも手薄な感があります。やはり2個飛行隊ある三沢のどちらかを教育任務に当てることになるのでしょう。

どちらにしても、「ボディーブローのように効いてくる」ことは避けられません。

それを避けるには、以前から主張しているようにFXをF-2の再生産とし、教育所要を含めて追加調達することが望ましいのではないでしょうか。
この点では、ブログ「朝日将軍の執務室」を書いている朝日将軍氏と同意見です。
<ほぼ日刊ラプターJ 468機目>F2戦闘機を90機緊急調達が望ましい

ただし、朝日将軍氏が書いているRF後継や損耗予備まで含めるのは、この予算逼迫のなか難しいと思います。
私は、その金があるなら、FXXの開発資金に回すべきだろうと思います。

F-2では殲20やT-50に太刀打ちできないと見向きもありますが、空自の場合、敵地上空で戦う可能性は低いのですから、対ステルス化した地上レーダーとリンクを使った連携をとりつつ、AAM-4改のさらなる能力向上を図るなど、国産であることのメリットを活かせば対応可能ではないかと考えています。

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