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2011年3月16日 (水)

未曾有の大震災 災害派遣を行う自衛隊に法の不備はないか?

アメリカのメディアが、災害時にも秩序を失わない日本の社会に驚きと賞賛を表わしています。
NYタイムズが支援コラム 阪神大震災時の東京支局長」(産経新聞11年3月12日)

阪神大震災の取材の際、商店の襲撃や救援物資の奪い合いが見られず、市民が「勇気と団結、共通の目的の下に」苦境に耐えていたことに感嘆したと説明し、「仕方がない」「我慢」という日本語を紹介した。


「なぜ略奪ないの?」=被災地の秩序、驚きと称賛-米」(時事通信11年3月16日)

米国で、被災者の忍耐強さと秩序立った様子に驚きと称賛の声が上がっている。「なぜ日本では略奪が起きないのか」-。米メディアは相次いで、議論のテーマに取り上げている。


災害が起った際、商店の襲撃や救援物資の奪い合いが起ることは、日本では考えられなくても、世界のニュースを見れば、むしろ一般的、というよりほとんど常識です。
米紙の記事を見るまでもなく、日本でこれが起らないことは非常に誇らしいことです。

ですが、今回の東日本大震災のような未曾有の大震災に際して、これからもこう言った火事場泥棒的行為が起らないと果たして言えるでしょうか。
そしてその時、災害派遣で現地入りしている自衛隊部隊は適切に対応できるでしょうか。

実は、この点で、法制上の問題があります。
それを不備とまで言うのかは議論の余地があると思いますが、現場に出ることを考えていた元自衛官としては、不備だと考えていました。

自衛隊法には、警察官職務執行法(以下警職法)の準用等により、災害派遣が行われた際、避難等の措置や道路上の車を強制排除するといった応急措置等を行う権限は規定されています。

ですが、その際に暴動が起っても、警職法5条(犯罪の予防及び制止)及び7条(武器の使用)が準用されることになっていないため、武器を使用(威嚇を含む)して暴動を押しとどめることができません。
(有害鳥獣駆除を目的として災害派遣では、武器も使用できます)

「政府お得意の抜け道的法解釈でなんとか出来るハズじゃないか?」と考える方もいるかもしれません。
確かに抜け道的方法はあります。
前述の権限は、自衛隊法第94条1項から4項に記述された(災害派遣時等の権限)に書かれていないために問題となります。
となれば、常時使用できる権限でカバーできれば問題ないことになります。

ここで活用の可能性がある条文が、自衛隊法第95条(武器等の防護のための武器の使用)です。

第九十五条  自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料を職務上警護するに当たり、人又は武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備若しくは液体燃料を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。


この場合、武器を使用するためには、武器等の防護が目的でなければならないので、略奪を防ぐためには、略奪される商店等の前に小銃等を持って立ちはだからなければなりません。
それでも襲いかかってくる暴徒がいれば、商店ではなく、武器を奪う意図がある可能性があった、とこじつけて武器を使用することが可能ではあります。法の濫用だと思いますが。

ですが、この解釈は、そもそも法の制定意図と矛盾しています。
というのも、この条文は、武器等が奪われ悪用されることを防止するための条文であるため、武器が奪われることを防止したいのなら、最初から丸腰でいれば良い訳です。
特に、現在の自衛隊法においては、災害派遣では武器を使用することを考慮していませんから、武器を携行すること自体がおかしいのです。
「武器等」には車両なども含まれますから、車両を守るためだ、と言えなくもないですが、ちょっと視線を向けただけで、ガンを付けたとして、因縁を付けるようなものです。

やはり、自衛隊法の第七章(自衛隊の権限等)に、警職法5条(犯罪の予防及び制止)と7条(武器の使用)を準用する旨、盛り込むことが必要です。
ちなみに、治安出動時は当たり前ですが、国民保護等派遣でも前記警職法の準用により、武器の使用が可能になっています。

諸外国の災害派遣においても、武器を使用して治安維持を行わせることは、一般的ではないようです。
しかし、ここで忘れて欲しくないのは、諸外国の軍隊は、自衛隊に比べて平素からの武器使用に関する権限が非常に大きいということです。
例えば、在日米軍の基地では、立ち入り禁止区域に許可無く立ち入った場合には、武力行使を受ける可能性があります。
Img_5074
横田基地における警告表示

今回の大震災でも、暴動が発生する事態に陥ってはいないため、これらは問題として顕在化してはいません。
しかし、顕在化してからでは遅いのです。
災害派遣において、むやみに武器を使用することは適切ではないでしょう。
ですが、必要な事態が生じても、権限がないというのは、やはり法の不備と言うべきです。
検討しておくべき問題だと考えます。

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コメント

阪神大震災の時に、外国メーカーの人間から「なぜ略奪が発生しないのか?」
と質問されて、個人的には「なぜ震災で略奪が発生するのか?」と不思議に
思ったことがありました。

ポツポツと窃盗事件は発生していますが、全体的には非常に秩序のある状態
です。日本は、本当に良い国だと誇らしく思います。

たしかにこの問題は重要ですね。
いくら民度の高い日本人でもパニックになることは考えられますから。

その場合、有事立法とのからみはどうなのでしょうか?

災害救助活動が海外でも行なわれる事となれば、なおさら必要になる、と考えられます。(今回の自衛隊に活躍をみた外国の方から要請があるかもしれません)
その場合、米軍、その他の軍隊との整合性をつけるため、有る程度の共通化も視野に入れなければならない、かもしれませんね。

現在派遣中の自衛官も、水や燃料を守るために警備しているようです。
被災地には自衛隊の水や燃料も、無警戒なら奪おうという人間もいるようで、事業所に対する略奪行為も起きたようです。
原状、強奪する輩はいないようですが、準備は必要でしょう。

やん 様
SUS 様
さすがに一部では秩序が崩れてきたようです。
この記事の懸念が杞憂で終わればよいのですが……

みやとん 様
有事立法の方は、国民保護法制の方でカバーされているので、そこで区分けはできていると思います。
ただ、敢えて区分けが必要だとも思いません。共通でも構わない気がします。

数多様
どこの国でも、どこの組織でも、ろくでもない輩というものはいます。
全体として秩序が崩れることがなければ、大成功です。
普通の国であれば、大規模な暴動・略奪が発生するのが、残念ながら
当たり前のことですから。

警察で対処できないような事態も発生する訳ですから、その時は自衛隊
のチカラで事態を収拾しなければなりませんので、その為の縛り(法律)
は絶対に必要です。

下名も横田基地祭に行った時に、オフ リミットの前に機関銃を持った兵士
が立っていて、「あそこに入ったら機関銃で撃たれても文句言えないんだ
ろうな」と怖い思いをしたことがあります、

やん 様
銃をもっているだけで犯罪抑止効果はありますよね。

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