自衛隊の防諜を任務とする部隊、情報保全隊が自衛隊OBの佐藤議員などの講演会等を監視しているとの報道がされています。
「国会議員講演会に防諜部隊投入、自衛隊員監視、防衛相直轄部隊が「不当調査」」(産経新聞11年1月14日)
情保隊については、以前の記事「自衛隊の思想調査」でも書いていますが、右翼を含め、自衛官の中に、情報漏洩やクーデターを企てる人間がいないか調べている部隊です。
(左だけでなく、右も調査するようになったのだから、これは良いニュースだと言っているブロガーもおりますが、情保隊は調査隊と呼ばれていた時代から、右も対象にしてます)
調査対象となっていると書かれている佐藤議員、田母神元空幕長、荒谷卓氏(陸自OB、初代特戦群群長)の講演会等ですが、これらには極右の方等も参加している可能性も高く、情保隊が調べる上で、建前が成り立たない訳ではありません。
ですが、共産革命を目指す共産党を調査対象とするのとは訳が違います。
ここに見えるのは、政府(民主党)に異を唱える自衛官をすべて排除しようという強権的姿勢です。
監視目的は現職自衛官の参加の有無を確認し、参加している場合は氏名も特定する。佐藤、田母神両氏の発言内容もチェックし、報告書の形でまとめ、提出させている。
大きな問題は、情保隊がこうした動きを取っていることが自衛官の中で噂になることで、民主支持を半ば強制することになることです。
自衛隊もお役所なので、キャリアに一度傷が付くと一生出世に響きます。
情保隊にマークされているなどという噂が立てば、他の人もその人との接触を控えるようになりますし、自ずと評価は下がります。
(もちろん、情保隊のマークが確かならば、重要ポストへの配置はありえません。)
この辺りが、佐藤議員や宇都議員、そして自民党が問題視している部分でしょう。
同日付の産経新聞の評論記事「狙いは「反民主OBと現職遮断」政治主導で部隊利用の疑い、防諜部隊の不当調査」(産経新聞11年1月24日)の一部を引用します。
昨年11月に事務次官名で出された「隊員の政治的中立性の確保について」と題する通達にも、同じ意図がみえる。通達は民間人に自衛隊行事での「言論統制」を強いる一方、自衛官が部外の行事に参加することについても、政権批判が予想される場合は参加を控えるよう求めている。
この規定は、現職自衛官が佐藤氏や田母神俊雄元航空幕僚長の講演会に参加することを監視する「根拠」とも位置づけられる。
通達後、保全隊による監視も強化された。昨年12月、田母神氏が会長の保守系民間団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」が都内で開いた政府・民主党に対する抗議集会について「自衛官の参加を厳重に確認するよう改めて指示が出された」(防衛省幹部)という。自衛官の間にも保全隊が調査に入っているとの情報は拡散しつつある。
なお、防衛省側は佐藤氏を情報収集の対象にしたことはないと否定したそうですが、これは当たり前の話です。
なぜなら、情保隊は佐藤氏の集会に参加する(反民主)自衛官を監視するのであって、佐藤氏本人を監視することが任務ではないからです。
「「自衛隊員監視は魔女狩り」自民国防部会で批判噴出 防衛省は否定」(産経新聞11年1月25日)
「自衛隊情報保全隊、自民・佐藤正久議員を監視か」(読売新聞11年1月25日)
この件については、佐藤氏の「自衛隊員は(中略)、政党や政治家の私兵ではない」が的を射ていると思います。
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