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2011年1月22日 (土)

防衛計画の大綱&中期防改正_その6 その他&まとめ

大綱及び中期防関連で、いままでの5回の記事で取り上げた以外で気になった点を上げるとともに、まとめとして陸自へのエールを書きます。

まず、その他の一つは「拡大抑止」です。
大綱の中で、拡大抑止の信頼性向上が必要だとされました。

拡大抑止とは、同盟国に対する核攻撃に対して、核をもって報復するという、いわゆる「核の傘」と同義の言葉です。

従来の大綱でも、核に対する攻撃に対しては核の傘に期待することになっていたのですが、その信頼性向上を図る、逆に言えば信頼性が怪しくなっているという現状認識が表わされたことはありませんでした。

普天間問題などによって生じた、民主党政権による日米関係の冷え込みを懸念しての言葉かもしれません。

もう一つは泥縄のアパッチ再調達です。
再調達の方向は、23年度の概算要求に盛り込まれていたため見えていた話ではありますが、それを反映するように中期防で3機のアパッチ調達が盛り込まれました。

防衛省は、一言も触れてませんが、富士重工による提訴に勝てる見込みがなく、この3機の調達で予定調達数から削減された機数分のライセンス料や設備投資分を含めることで、裁判を和解に持って行くつもりなのでしょう。

このこと自体は、そもそもその費用が予算計上されなかったために発生した問題なので、処置としては妥当だと思います。

ですが、防衛省は52機の調達予定を13機で打ち切らなければならなくなった失策の説明を国民に行っていません。

今回の大綱改正は、そのために非常に良い、そして最後の機会だと思いましたが、臭いものにはフタ方式で通すつもりのようです。

ここからは、今回の大綱及び中期防改正のまとめになりますが、このアパッチの調達数削減とも関係してきます。

言うまでもなく、今回の改正で、もっとも変革を求められている軍種は陸です。
「本格的な侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持に必要な範囲に限り保持することとする。」とされ、戦車や火砲が大幅に削減されましたが、アパッチの調達数削減もこのコンテクストに沿った話です。

大綱の改正は、もともと2009年中に行われる予定でしたし、当然もっと前から内容は検討されています。
その検討に整合をとったため、アパッチも2008年度予算を最後に調達を打ち切るつもりだったと見るべきです。

従来の大綱では、「本格的な侵略事態」を考慮していた訳ですが、その際の陸自の戦闘は、着上陸への備えであり、航空優勢や制海権を巡る空海の戦闘の敗北の後のことを考えてたのです。
つまり、同じ戦争を見ているハズの3自衛隊の内、陸自は海空とは別の局面を見ていた訳です。

従来の大綱下では、統合を巡る話が3自衛隊間で行われても、陸と海空は、それぞれ全く別の局面を見ているため、話が噛み合いようがありませんでした。

この話がもっとも端的に表れるのが、以前の記事「陸自高射特科の全般防空使用は試金石」で書いた、陸自高射特科の扱いです。
空自としては、中SAMやホークも航空基地等のポイントディフェンスに使用できれば、FIは相手の接近を阻止するために無理な体勢で戦闘する必要が少なくなり、FIの損耗も減って航空優勢確保をしやすくなります。
ですが、攻撃する側とすれば、航空作戦の初期にSEADの実施は必須です。そうなれば、中SAM、ホークもつぶされる可能性が高くなり、陸自が想定している着上陸対処間の師団防空には使えなくなります。
当然、陸自はそれを嫌がり、パトリオットがつぶされる間も、中SAM、ホークについては隠匿することを望みます。
統合どころか、協力さえろくに出来なかったのです。
大綱は軍政事項のものであり、用兵への言及は少ないですが、統合強化などを謳う内容となっているため、今後は防警計画などで、陸自SAMも「全面的に」全般防空へ投入されることになるでしょう。

今回の大綱では、陸自の使い方は、航空優勢や制海権の確保と同時に行われる可能性のある、小規模部隊による侵入などに的確に対処することに主眼があるように思われます。
陸自の使い方を抜本的に変えているのです。

このため、陸自は大きな変革を余儀なくされます。
変革には痛みを伴うでしょう。
表面的には、自殺者や服務事故の増加といった形で現れるかもしれません。

ですが、これは正しい方向への進化だと思います。
陸自には、痛みを乗り越えて新生陸自として生まれ変わって欲しいと切に願います。

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コメント

場違いな話題で恐縮ですが、
東アジアの雲行きが怪しくなり自衛隊の出番が現実的になりつつある今日、場合によっては国家のために命を失う可能性がある自衛官に対して、ふさわしい待遇が平時にも、一旦緩急ある時にも準備されていなくてはなりません。この意味で、私は、自衛官に対する報償制度や戦死傷者及びその家族への補償制度などが必要と考えるものです、
また、戦争遂行と機密保護の観点から警察や海上保安庁とは別筋の「憲兵」と「軍法会議」の制度がぜひとも必要と考えるものです。(憲法上の課題は承知していますが)
この点に関してのご意見をいただきたいと思います。

陸自が大きな変革(痛みを伴う)を余儀なくされる、というのは同感です。

ソ連崩壊以後、ロシア軍で変革が始まってしまったように、自衛隊でも変革せざるを得ないでしょう。
尖閣以後は世界の政治情勢が根本的に変化しました。ベルリンの壁が壊れたようなものですね。

その中でどのように変えるか?難しい問題です。
場合によっては、憲法の改正まで必要となるかも知れません。

ただ、自衛隊が生き残るには、この変革は避けては通れないでしょう。

核の傘に対しては、やはり民主党の姿勢でしょうね。
新たな条約が必要かも知れませんね。(核を使われた場合は必ず核で報復する等の成文化されたモノが)

調達方法や兵器の開発に関しても変化が生じざるを得ないとも思いますが、その点はいかがお考えでしょうか。(政治が考えてくれれば良いんでしょうけど)

しかし、兵器単独ではなく、運用方法や組織の変革まで視野に入れている方がいられるのは心強い限りです。
これからも頑張ってください。

はるばる 様
報償制度としては、自衛官も叙勲を受けることはありますし、戦死傷者及びその家族への補償制度などは制度としてはあります。
額を覚えていないので確かなことは言えませんが、「その程度か」と思うような額でしたが……

「軍法会議」については同感です。
これに関連しては以前の記事「海賊対処は改憲問題につながる」http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2009/02/post-5060.htmlで多少触れてますので、見て頂ければ幸いです。
「憲兵」は警務隊がその機能を持っているので、存在としてOKだと思います。ただし、もう少し、強い捜査権限が必要だとは思います。

みやとん 様
ドイツ陸軍なんかは、もっと激しい改革をしているのですから、自衛隊も変らなければいけないと思います。

もっと外部から変革の圧力がないかぎり、そう簡単に変革の方針を打ち出せないだろうと思ってましたので、今回の大綱には少し驚きましたが……
まあ、民主からの圧力もあったとは思いますが。
もっとも、軍事音痴ばっかりなので、予算削減圧力だけでしょうけど。

調達に関しては、国内生産の分野を限定するとか、今回の大綱でも言及はされてました。
あまり具体的な記述ではなかったので、細部はこれからなんでしょう。
研究開発については、今まで以上に、省外(大学等)との協力を進めるとかしないと、広範な研究はできなくなって行くのではないでしょうか。
武器輸出3原則を大幅に緩和して、開発の成果をお金に還元するのが一番ですが……、民主には出来そうもありません。

応援ありがとうございます。
これからもマイペースでやってゆきます。

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