演習項目から読む日米共同統合実動演習
日米共同統合実動演習が実施中です。
定義は忘れてしまいましたが、訓練は部隊や個人の能力の向上を意図して行うものであるのに対して、演習は能力向上の側面もあるものの、通常は計画の妥当性を検証するという側面が強いモノです。(日本は基本的に行いませんが、政治軍事上のアピールのために行われる場合もあります。)
そのため、日米共同統合実動演習の演習項目を見れば、自衛隊と米軍が何を警戒し、どのような対処をしようとしているのか見て取ることができます。
そこで、現在実施中の日米共同統合実動演習の演習項目から、自衛隊と米軍が何を考えているのか読み取ってみます。
主要な演習項目は「弾道ミサイル対処を含む航空諸作戦」となっており、細部は次の5項目です。
①弾道ミサイル対処
②島嶼防衛を含む海上・航空作戦
③統合輸送
④基地警備等
⑤捜索救助活動
ソース「島嶼防衛など実動演習 来月3日~10日 日米4万4千人」(朝雲新聞10年11月18日)
今回の演習は、以前の記事「対中国防警計画は間違っている」でも取り上げましたが、離島、それも明言はされていないものの尖閣の奪還を想定したものであると早い時期から報じられています。
離島奪還訓練となると、注目は陸自の活動となります。
(戦車や揚陸艦を使った着上陸などと言い出す的外れな方もいらっしゃるので困ります……)
ですが、演習項目を見る限り、自衛隊と米軍が主要な活動として捉えている部分は、「航空諸作戦」です。
もちろん演習のハイライト(普通、最後は敵陣に突撃して終り、というような、まるで小説にクライマックスがあるようなラストの盛り上がりが、演習にも設定されます。)は陸自による空挺降下と敵陣制圧でしょうが、それは「航空諸作戦」の結果による当然の帰結であると自衛隊・米軍は考えているということです。
尖閣問題が注目されると、すわ在沖陸自戦力の増強が言われますが、離島奪還には「航空諸作戦」が重要ということです。
(在沖陸自戦力の増強は、中国への国家意志の明示のために有効なので、当然反対ではありません。)
以下では、現時点では情報が少ないですが、細部項目を、それぞれに見てみます。
①弾道ミサイル対処
設想どこどこというような、演習場を離島に見立てた想定がなされる事が多いので、演習活動から読み取ることが難しい部分もあるのですが、現在ある報道を見ると、米軍は嘉手納と普天間、それにキャンプコートニーに対する弾道弾攻撃を警戒しているようです。
「嘉手納PAC3移動 共同演習に備え普天間に」(琉球新報10年12月3日)
「パトリオット移動訓練、C.コートニーとホワイトビーチ」(リムピース10年12月5日)
コートニー展開のPAC-3(リムピース記事より)
また、米韓演習に参加していたミサイル監視艦オブザベーション・アイランドやコブラボールも、そのままこの演習に参加している可能性が高いと思われます。
「黄海で演習、同時にMDシフトか」(リムピース10年11月30日)
佐世保に居たオブザベーション・アイランド(リムピース記事より)
嘉手納のコブラボール(リムピース記事より)
自衛隊も、先日の記事「H23概算要求-その3_SAM関連」でも書いた通り、那覇あるいは下地島への弾道ミサイル攻撃を想定しているようです。
②島嶼防衛を含む海上・航空作戦
今までのところ、リムピースくらいしか情報がないので、非常に不透明ですが、制空戦闘機による航空優勢の確保、水上艦艇・潜水艦による制海権の確保(機雷掃海、対潜戦、対水上戦)、揚陸艦を使った島嶼の奪還が演練されていると思われます。(揚陸艦へのヘリ搭載が少ないのが疑問ですが)
「日米共同統合演習さなかのホワイトビーチ」(リムピース10年12月4日)
「米揚陸艦隊、海自護衛艦、ホワイトビーチ出港」(リムピース10年12月5日)
③統合輸送
派手な部分ではなく、関連する情報も前述のリムピースくらいしかありませんが、非常に重要な部分で、ここがしっかり出来ていれば、中国は冒険はしない可能性が高いのではないかと思います。
④基地警備等
私が再三指摘しているとおり、以前は軽視されていましたが、ここも非常に重要な部分です。
しっかりと細部項目に入れられたので一安心。
ただ、実働訓練がやりにくい部分でしょうね。
演練場所は、海自佐世保、空自三沢、春日両基地、福江島分屯基地です。
⑤捜索救助活動
中国相手では、被撃墜の発生は必至ということでしょう。
追加情報があれば、また記事にします。
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