防衛計画の大綱&中期防改正_その2 対中華空母
以前にも、現行の18隻体制から20隻体制に増強されるとの情報で、記事「H23概算要求-その1_潜水艦増強」を書いた潜水艦についてですが、閣議決定された大綱の別表では、なんと20隻どころか22隻態勢への大幅増強となっています。
背景は、前掲記事にも書いた中国海軍、それも空母保有の動きです。
大綱における中国の軍事力に関する認識では「中国は国防費を継続的に増加し、核・ミサイル戦力や海・空軍を中心とした軍事力の広範かつ急速な近代化を進め、戦力を遠方に投射する能力の強化に取り組んでいるほか 後略」となっており、空母を中心とした外洋作戦能力の増大に対して、懸念を顕しています。
そして、これに対するキーワードとして「非対称的な対応能力を有する機能」を優先的に整備するとしています。
ちょっと分かりにくい表現ですが、非対象的な対応能力とは、ものすごく乱暴な言い方をすると、戦車に対して戦車をぶつけるのではなく、戦車に対してロケット砲を持った歩兵で対処する、相手の空母に対して空母をぶつけるのではなく、空母に対して潜水艦をぶつけるといった戦術を指します。
上記の表現は、潜水艦のことだけを現した表現ではありませんが、潜水艦の増強も意図した表現であることは間違いないでしょう。
中国の海軍力については、対潜能力の低い歪な形であると言われています。
空母に空母で対抗するより、潜水艦を増やした方が相手の弱点を突ける訳です。
大綱で明記されたため、今後は、この方針で防衛力整備されます。
海自空母を夢見る人も多いですが、少なくとも今後10年は海自空母の話は出てこないでしょう。
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コメント
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空母を主張する輩は少ないですから問題ないです。潜水艦の増強は中国にとって
非常に嫌な存在であることは間違いないですからね。なんだかんだイチャモンつけてますし
日本の潜水艦の静穏性は非常に高いものですから、見つけることは容易ではありません。
陸上戦車の削減は正直に言って理解しがたいものがありますが、実際には予備機や教育用などは
含まれていないとの事でなんだかんだ600両程度揃えるのでしょう。政権がまた自民に戻り戦車が増強
される可能性もありますし、そちらはあまり心配してません。
問題は空自です。「いつまでステルスに夢見てやがるんだ!」と。中国が簡単にF-22並のステルス機を
作れるとは到底思えませんし、4.5世代機を導入しても問題ないと思うのですがね。
さっさと決めないと純減とかシャレにならんので
投稿: ナオ | 2010年12月21日 (火) 23時22分
欲を言えば攻撃原潜が欲しいところですね。空母以上に見果てぬ夢ですが。
海自の潜水艦は静粛性が高いので待ち伏せ攻撃には適していますが、速度面で劣るため空母艦隊にせよ原潜にせよ、全速で逃げられると追跡しきれない、と言う問題があったかと。
まあそれを補うために数を揃えるのは定石なので良いとは思うんですが、22隻にも増やすとなると人員は足りるんでしょうか? 新造艦を多く揃えるわけではないですから、一隻当たりの人員を減らせるとも思えませんし。
空母に関しては私は予算が潤沢にあれば持っても良いと思っていますが、中国相手にはほとんど役に立たない(北京空爆でもするつもりなら別ですが、それは米軍にやって貰うとして)ので、やはり優先順位は低いですよね。
どうしても空母が必要なら、F-35Bなどを調達して22DDHを改装すれば良いわけですし。
ひゅうがだっておおすみだって、イギリスがフォークランド紛争でコンテナ船を使ったような臨時空母の使い方はできるでしょう。
>ナオさん
空自はF-Xに第5世代戦闘機しか考えていないように見えます。
実際に4.5世代機で十分だとしても、空自にその気がないのですから4.5世代機を導入する訳はないと思います。
投稿: 藤宮 直樹 | 2010年12月22日 (水) 13時30分
>空自にその気がないのですから4.5世代機を導入する訳はないと思います
自分もそう思っていたのですが、いつ手に入るのかも分からず価格はいくらになるのか全く
不明瞭です。
AvitationではF-35A が 1億3060万ドル F-35Bが1億4360万ドル F-35Cが1億6290万ドル とのことです。(アメリカ価格)
アメリカ価格で手に入るとは思えませんし、こいつに固執してせっかく今回作った防衛計画にある装備に大きな
影響を及ぼすのではないかと思われます。
ま、今の遅延状態からいって今回の防衛計画のうちの新戦闘機12機だけはさらに後回しになるでしょうから問題ないかもしれませんがね。
投稿: ナオ | 2010年12月23日 (木) 00時54分
ナオ 様
戦車については別記事を書きますが、私は賛成です。
政府に北方領土を奪還する気概があるなら話は違ってきますが、そんなことは……
空自は……、私も理解できません。
F-35については、大綱が念頭に置いている10年後までに配備できるのか、極めて不透明というかほとんど灰色なのに……
藤宮 直樹 様
人員は、本当に頭の痛い問題だと思います。
水上艦艇の乗員ですら確保に悩んでいると言われるのに、さらに過酷な勤務を強いられる潜水艦ですから……
なかなか意欲的な変革を謳っている各種人事施策に期待するしかないでしょうね。
投稿: 数多久遠 | 2010年12月23日 (木) 19時27分