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2010年12月19日 (日)

防衛計画の大綱&中期防改正_その1 全般所感

ついに防衛計画の大綱と中期防が改正され、閣議決定されました。
平成23年度以降に係る防衛計画の大綱について」(10年12月17日)
中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)について」(10年12月17日)

今後、何回かに分けて触れていこうと思います。
今回はまず全般をざっと見ての所感です。

正直言って驚きました。
基盤的防衛力を放棄すると言っても、これほどまで意欲的な変革を宣言するモノになるとは思っていなかったからです。

私は、防衛省の自己変革能力については懐疑的でした。
ですが、これだけのモノを打ち出せるとなれば、認識を改めなければならないでしょう。

政権が民主党になったことも、影響したのかも知れません。
ですが、確かに民主臭い部分もありますが、海兵隊が沖縄に所在する理由も理解していないほどの軍事音痴である民主党が主導して、これだけの変革をまとめ上げたとは思えず、防衛省がしっかり考えた成果じゃないかと思っています。

さて、全般所感とは言っても、もう少し具体的な部分に踏み込んでみます。

まず基盤的防衛力から脱却し、動的防衛力に移行することについてです。
以前の記事「悪魔の辞典的「基盤的防衛力」解説-機甲師団廃止の序曲」において、基盤的防衛力整備の問題点を挙げましたが、弾薬の保有量や事態への実効的な対処能力の問題などに対して、改善すると明言しています。
少なくとも、この点は評価して良いと思います。

また、各幕の予算配分に関して、「安全保障環境の変化に応じ、前例にとらわれず、縦割りを排除し総合的な見地から思い切った見直しを行う。」としており、噂されていた海空重視を明確に宣言しました。

島嶼部の防衛に関しては、これを重視して陸自部隊を適切に配置するとされており、直接の島嶼部への配置の他、投入を予期した部隊配備をすると見られます。

人事については、「士を増勢し、幹部及び准曹の構成比率を引き下げ」るとしており、そのための諸施策を講じて、自衛隊始まって以来の人事制度変革を行うつもりのようです。

防衛生産・技術基盤の維持・育成については、「真に国内に保持すべき重要なものを特定し、その分野の維持・育成に注力」するとしており、切り捨てる分野が出てくることを謳っています。

また、統合の強化として、「輸送、衛生、高射、救難、調達・補給・整備、駐屯地・基地業務等、各自衛隊に横断的な機能について、整理、共同部隊化、集約・拠点化等」するとしており、以前も触れた航空救難部隊の統合や基地・駐屯地の統廃合を行うようです。
空自は滑走路が動かせないので、10年後には千歳基地の中に陸自部隊が駐屯するなどということになるのかもしれません。

これら、大幅な変革を宣言した今回の大綱ですが、一方で疑問も湧きます。
果たして、こんなに大幅な変革を行う予算措置が、本当に実行できるのか、ということです。

前述の部隊、基地等の統廃合にしても、新たに施設を造る必要がでてくるでしょうし、潜水艦の増勢など純粋に増額が必要な分野もあります。
戦車を600両から400両に削減することにはなっていますが、人員については定数は削減されたものの、実員を削る必要がある数字ではなく、実際の頭数は変りません。
実際には、これだけの変革を行うための予算が付けられないのではないか、というのが最大の懸念です。

この大綱について、財務省が相当横やりを入れたとのことですが、その理由が分かった気がしました。
変革を宣言したと言っても、まだまだ組織防衛の論理は強そうです。


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防衛政策」カテゴリの記事

コメント

いつもブログを楽しみに拝見しております。

良かったら、大綱の考察に合わせて叩き台となった新安保懇報告(佐藤レポート)の中身にも触れていただけたらと思います。
以前の記事http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-6542.html
では新安保懇を不安視されていたようですが、最終報告書を読んだ限りでは、麻生政権時の報告よりは後退したものの、大差のない妥当な内容になったと思います。まあ審議会報告や有識者会議報告の大半は官僚が作成しているとも聞きますが…。

むしろ報告では武器輸出三原則緩和を明言し、国際平和協力恒久法や集団的自衛権にまで触れていたのに菅政権がぶれてしまったのが残念至極です。

新安保懇はメンバー入替えで自民党政権下の委員は2名しか続投していませんが、結局穏当な内容に落ち着いたのは、民主党もさすがにルーピー首相と尖閣騒動に懲りて、安保分野については原則的に専門家・官僚に丸投げする方向に変化したのかなと感じました。

縦割り排除の一環として航空救難機能の空自への一元化に向けた体制整備への着手と、陸自及び空自の高射部隊の統合を検討開始するとしているのは実現可能なのでしょうか?私個人としましては必要性が余り感じられないのですが。
海自にも空自にもそれぞれ救難機能は必要ではないでしょうか。
空自は広域防空の観点や基地防空の必要性から高射隊は必須です。その一方で陸自も敵の戦闘機による空爆や攻撃ヘリによる攻撃に備える為にも高射特科が必要です。情報の共有化はJADGEシステムで十分可能ですし、統合する必要もないのではないでしょうか。
私もまだ勉強不足の感があるので上記の点ご教授いただければ幸いです。

初※ 様
すっかり忘れておりましたが、レポートの全文も公開されているみたいですね。
量があるので、直ぐ読み込んで書くという訳にはいきませんが、大綱関連記事が落ち着いたら、触れてみたいと思います。

恐らく官僚が書いている部分がほとんどなので、おかしなものになってないんだと思います。

今回の大綱の考え方を補足説明するためにも良い資料でしょうね。

閣議直前で社民党にすり寄ってしまいましたので、この大綱もその時点で若干修正されたと思われます。
修正前のものを見てみたかったですね。

菅政権は、防衛に関する基礎知識がないので、丸投げせざるをえなかったのではないでしょうか。

アシナガバチ 様
航空救難機能の空自集約は、海自ヘリ部隊の航空救難以外の任務を負う部隊を作りさえすれば、そう難しいモノとは思っていません。要員養成などの問題もあるでしょうが、その困難さよりも集約することによるメリットの方が大きいと思います。

この件は、もしご覧になっていなければ過去の記事「空自次期救難救助機の機種決定とCSAR」http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-b995.html#commentsのコメント欄で私と海族様のやりとりが参考になると思いますので見てみて下さい。

少なくとも、空自の救難隊は航空救難”だけ”が任務でしたから、集約できない理由も出せなかったんだろうと思います。

高射の件については、高射関連だけで1つ記事をまとめようと思っていますので、しばらくお待ち下さい。

なお、この件は過去記事「陸自高射特科の全般防空使用は試金石」http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2009/08/post-2ba9.htmlが参考になると思いますので、ご覧になっていなければ目を通して頂ければ幸いです。

もし高射関連でまとめるなら、是非とも(予測のための)計算機がどうなっているのかもお教えください。

弾道計算だけでなく、レーダー等との関連射撃にも計算機(スーパーコンピューター)が必要なはずですが、独自のソフトを開発できているのでしょうか?

アメリカではPS3を利用してスパコンを創ったとか聞いています。
自衛隊はどうなっているのでしょう。

なにとぞヨロシクお願いします。

みやとん 様
個別の記事を書くほど、個別の兵器について詳細は書けませんが、高射に限った話ではなく、各種武器搭載のコンピュータはハードもソフトも、ほとんど専用設計です。

計算性能もさることながら、EMP対策などを含めた耐久性は市販品とは完全に異なります。
オフザシェルフというような言葉がわざわざ使われるように、民生品の転用自体が極めて最近の動きです。

日本の防衛産業の能力は低くありません。
今後もそうだとは言い切れませんが……

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