国内事情でエスカレーションする朝鮮半島情勢 韓国がROEを変更
延坪島砲撃事件に対する韓国の対応について、いろいろと報じられていますが、一つ気になるものがあります。
「民間人攻撃なら強力に報復…交戦規則を全面見直し」(中央日報10年12月1日)
国内主要紙でも関連記事が複数ありますが、最も詳しく報じている日本語記事が上記の中央日報です。
「現行の交戦規則(ROE)は「比例性の原則」に基づき、同じ種類と数量(同種同量)の武器を使用することになっているが、民間人無差別砲撃のような状況では現場指揮官が報復の種類・規模を決められるよう修正する」とのことです。
具体的には、砲撃に対して航空機で爆撃すると言った方向が考えられています。
一言で言えば「倍返し」するということです。
この方針転換は、延坪島砲撃事件において、民間人に対する攻撃まであったにもかかわらず、K-9自走砲による応射が少ないとの世論の批判が元になっています。
一方、北朝鮮が今回の事件を起した理由は、金正恩氏の権威付けであったと見られています。
もし韓国が倍返しで応射していれば、面目は丸つぶれだったでしょう。
韓国・北朝鮮ともに、国内的な事情で自らの被害よりも相手の被害を大きくせざるを得ない状態となった訳です。
交戦規定(ROE)は、本来現場の判断で事態が拡大しないように定められるものです。
そのROEが「倍返し」を基本にしてしまえば、事態は無制限に拡大しかねません。
朝鮮半島情勢は、双方の国内的な事情からエスカレーションしやすい状態になったと言えるでしょう。
前回記事にしたマレン統参議長の焦りも、この辺りを懸念してのことかもしれません。
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もしこれが制定されれば北の息の根は止まるでしょうね。
韓国に比べて北朝鮮の一番の弱みは、航空戦力(訓練時間を含む)ですから、空戦になったら制空権(あえて航空優勢とは言いません)を韓国が取るでしょう。
そして北朝鮮全土に宣伝ビラを撒きまくったとしたら食料不足の住民はどっちにつくでしょうね。
また、燃料やオイル等の石油製品も不足していると考えられますから、戦車戦に持ち込むのもまず無理でしょう。
ゲリラ戦で対抗するしかないでしょうね。しかし、その場合、北の民衆の支持が絶対に必要です。
半島では昔から強いものについて前政権を売るのが常ですから、内部分裂を起こして韓国(アメリカ軍)につくものが相当でると思われます。
以上のことから、無制限に拡大することは無い。と私は考えています。
ただし問題となるのは中国の出方でしょう。
中国がどこまで北を支援するか?おそらくアメリカも読み切れていないのではないか、と考えています。
マレン参謀長の言葉は日本に向けてというより、中国に向けて『6か国協議なんかより北朝鮮に圧力をかけろ』という意味合いがあるんじゃないか、と思っています。
投稿: みやとん | 2010年12月15日 (水) 22時44分
みやとん 様
先日も宣伝ビラを風船で撒いてましたが、相当嫌がってましたね。
確かに、事が起った時に韓国側に付く人もかなりいそうな気配です。
ただ、先日の砲撃事件の際、平壌は戦勝ムードだったなどという報道もありますし、金父子にとっては権威の失墜はなによりも避けなければならない事態ですから、倍返しされて黙っている訳にはいかないと思っています。
大本営発表みたいにウソを報道するのも手ですが
確かに、中国はキーになりますね。
もっとも、最近の北朝鮮は中国でももてあましているようですけど。
投稿: 数多久遠 | 2010年12月16日 (木) 21時44分