取り上げたいニュースではないのですが、取り上げずにおく訳にはいきません。
「空自官製談合:311件75億円すべて不正 空幕長退任へ」(毎日新聞10年12月14日)
空自の事務用品発注に関わる談合事件について、空自の調査結果が出ました。
結果、4年間の事務用品発注、総額75億円あまりの全てが官製談合だったとのことです。
誠に残念な調査結果です。
OBの再就職先として妙に事務機器販売業者が多かったことを思い出しました。
当時は、調達関係職域ではない者まで、こんなに雇って仕事があるんだろうか、とぼんやり疑問を持ったものでしたが、あまり深く考えていませんでした。
背景には、こうした談合があったようです。
また、一方で予算を使い切ろうという配慮があったことも報じられています。
年度末に予算を使い切ろうとする行為は、なにも自衛隊や官庁に限った話ではなく、民間企業にもある話ですが、自衛隊のように予算規模が大きいと、年度末に見込み違いから大きな余剰予算が発生することは時々起こりうる話です。
私も、某司令部在籍時に、空幕の担当者から、余剰予算を回してもらえる可能性があるから、明日までに1億円分の調達リストを作れと言われて慌てて作業した経験があります。
(当然、不足している物品を購入する話なので無駄に使われている訳ではありません。)
この時も、リストは出したものの、業者が年度内の納入が不可能だとして、他に予算を取られてしまいました。
今回処分された調達関係者としては、こう言った予算使い切りのための急な案件に対応してくれる業者はありがたかったのでしょう。
優遇したくなる気持ちも分からなくはありません。
しかし、誤った行為であることは間違いありません。
非常に残念なニュースだったのですが、一つ救いだったことがあります。
それは、全調達が官製談合だったという、これ以上ない悪い結果を、自らの調査で明らかにしたことです。
そして、それを公開することで、空自はちゃんとした自己改善能力を持っていることを証明しました。
次から次へと問題が発覚する年金問題等を抱える厚生労働省など、他省とは違うということです。
最後に調査報告書公表に伴う航空幕僚長訓示を転載しておきます。
第1補給処におけるオフィス家具等の調達に係る談合事案に関する調査報告書公表に伴う航空幕僚長訓示
昨日、「第1補給処におけるオフィス家具等の調達に係る談合事案に関する調査報告書」が公表され、改善措置等の方向性が明確に示された。また、これに先立ち、50名の隊員に対して懲戒処分等が実施された。
国民の生命と財産を守る航空自衛隊が、「談合」という違法行為に関与することは断じて許されることではない。この事案をもって、我々航空自衛隊に対する国民の信頼は大きく損なわれたと認識すべきである。
航空自衛隊は実力組織であり、その活動は、国民の信頼無くして成立し得ない。我々は本事案を真摯に反省し、調査報告書に示された改善措置等を速やかに実施するとともに、我々自らが主体的に再発防止のための措置を推進し、国民の信頼回復を図らなければならない。 この機会に、航空自衛隊の全隊員に対して、次の2点を要望する。
第1点、法令やルール等を厳守する組織文化を確立せよ。
第2点、組織の健全性を保持するため、不断に組織の改善を図れ。
そして、以上2点を具現化させる責務は、各級指揮官にあることを銘肝せよ。
我々は、本日ここに、不正の根絶と不祥事の再発防止の決意を新たにし、国民の確固たる信頼を再び手にすることを誓う。そして、航空自衛隊の全隊員が「国民に信頼される、より精強にして健全な、そして明朗闊達(めいろうかったつ)な航空自衛隊」を目指し、心機一転、自信と誇りを持って、職務により一層精励されんことを期待する。
平成22年12月15日(水)
航空幕僚長 空将 外薗 健一朗
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