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2010年11月18日 (木)

下地島空港を自衛隊が使用する効果

北沢防衛相が、国会の場で下地島空港の自衛隊使用を検討すると発言しています。
下地島空港「大変魅力」 自衛隊利用で北沢防衛相」(琉球新報10年11月12日)

つい先日にも、下地島空港の自衛隊使用は難しいと書いたばかりですが、民主党の防衛相が明言するとなれば、状況は変ってくるかもしれません。
なお、過去には自民党時代に久間防衛相も発言しています。
防衛相、下地島空港「良い場所」 自衛隊使用に言及」(琉球新報07年6月25日)

そこで今回は、北沢防衛相が「自衛隊としては大変魅力あるものだ」と感じる理由として、下地島空港を(航空)自衛隊が使用する効果について書いてみます。

一言で言えば、下地島空港を自衛隊が使用する効果は、尖閣など先島諸島周辺域における、航空作戦の遂行能力を飛躍的に高めることができるからです。

例えば、尖閣上空における航空優勢確保能力について、那覇だけを使用する場合を1とすれば、下地島を加えた場合の能力は、飛行場数が倍になることによって2倍になるに止まりません。
3倍、あるいは4倍にも5倍にも達するかもしれません。

その理由は、なんと言っても下地島の位置にあります。

下地島の置かれた位置関係を確認しましょう。
Ws000006
那覇-尖閣(魚釣島)間の距離は約415km。
対する中国軍が尖閣問題の際に前方展開する可能性の高い2基地、台州市の市路空軍基地ー尖閣間は約380km、福州市の福州空軍基地-尖閣間は約410kmとほぼ同等です。
これらに対し、下地島空港-尖閣間は、わずか190kmと半分の距離です。

尖閣周辺空域の航空優勢を争うに際し、那覇基地しか使用できない場合、中国本土の空軍基地から敵戦闘機が発進したことを察知してから迎撃機を上げるというやり方では、そもそも間に合わない可能性が高く、継続的な航空優勢を確保するためには、それなりの機数をもって常時CAPを行わなければならないことになります。
これに対して、下地島空港を使用する場合は、CAPを行わず、中国の空軍基地から戦闘機が発進したことを察知してからスクランブルしても間に合います。

これは、単にCAPをしなくて済むので楽だ、というに止まりません。
那覇を使用してCAPで対処する場合、相手がCAPの機数以上の機数を上げてくれば、局地的な数的不利になります。
ですが、下地島を使用する場合は、敵の侵攻状況の合わせた柔軟な戦力運用が可能なため、局地的な数的不利の発生は防げるのです。
(敵が10機上げてくれば10機をスクランブルさせ、敵が20機で来れば20機をスクランブルさせるということ)

また、この距離は、戦闘機がそれぞれの基地から飛び立って、尖閣周辺で交戦する際の戦闘可能時間に直結します。

那覇を使用する場合、過去に配備されていたF-4では、ほんのちょっとしか交戦可能時間がありませんでした。
F-15であれば、それなりに戦えますが、中国本土沿岸の基地からも同程度の距離であるため、最新機が出てくれば、良くて互角の戦いというところでしょう。

しかし、下地島空港を使用できる場合、進出に要する距離は半分程度ですから、十分な交戦可能時間を確保できます。
距離をとってリスクの低い中距離戦を展開すれば、互いに被撃墜がなくとも、中国軍機は先にRTB(リターン・トゥ・ベース)しなければならないこととなり、航空優勢は自衛隊が確保できることになるのです。

ですから、下地島空港が使用できる場合は、下地島にF-15を配置して尖閣周辺の航空優勢を確保し、那覇にはF-2を配備して航空優勢確保の予備戦力とするとともに、要事には対艦攻撃を行うのがベスト配置と思われます。

また、下地島は過密した那覇基地に比べ、エプロンなどを非常に余裕を持って使えるというメリットもあります。

警備面でも、周囲にほとんど人家のない下地島は、那覇に比べ優れています。
那覇では、基地の直ぐ近くにまで高いビルが建ち並び、極めて危険な状態でもあるのです。
(あるマンション屋上でパーティがあり、基地内が見渡せるため良い眺めだと話題になっていた折、私が対物狙撃銃を一丁もらえれば、3分で全機非可動にできると豪語して、居並ぶPに白眼視された経験があります)
下地島空港の場合、アンダーウォーターでの接近を警戒する方もいると思いますが、周囲は全てリーフになっており、非常に浅いので警備は比較的楽です。(特に日中は、上空から目視で警戒可能)

以上、書いたような下地島空港のメリットは、宮古島空港や(新)石垣島空港でもほぼ同様ですが、両空港は基本民間空港であり、自衛隊の常駐や有事での使用には問題が多数あります。
対する下地島空港は、訓練飛行場であり、実機での訓練が減っていることもあり、正直過疎ってます。

自衛隊が常駐するとなれば、燃料の輸送や食糧その他の一般資材を地元から購入するなど、地域経済に及ぼす影響は大きなモノがあります。
報道でも言及されている補助金もあります。

尖閣を防衛するため、下地島空港はそのキーになりものです。

地元の方は、屋良覚書撤回のため、自衛隊常駐に是非ご理解を宜しくお願いします。

最後に下地島空港に関連する過去記事をリンクしておきます。
下地島への自衛隊誘致に自衛隊がツレない訳
下地島空港活用時のMD態勢
那覇へE-2Cローテーション配備 尖閣周辺防空網の欠陥を改善

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コメント

下地島空港は3000m級滑走路であり、767どころか777クラスまで運用できる見事な場所ですね
機動戦闘車輌をC-Xで運ぼうがAWACSを連れてこようが、P-1が来ようがなんでもございってな感じで。

交戦になったとしてもドロップタンク要らないですね。
ただ実質一個飛行隊増えるわけで現時点でF-2が手に入らない以上、三沢のF-2を一個沖縄において
沖縄のF-15を下地島に連れてくることになるでしょう。三沢の不足分F-15Eでも買って置いときますか?

ただ中国は空母を持ち出してくるでしょうから、仮に下地島が可能になったとしてもまだ安心出来ません。
滑走路増強したり海上自衛隊や陸上自衛隊のグループもある程度連れてこなければなりません。
あと米軍によるバックアップも重要ですね。

しかし聞けば聞くほどレディイーグルと似たようなシナリオになりつつあると思うのは私だけ?(笑
色々未来を予測していた協力した自衛官および作者万歳としか。

>対物狙撃銃を一丁もらえれば、3分で全機非可動にできると豪語して
できれば↓のバカ議員なんとかしれもらえませんかね?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101118-00000513-san-soci

民主党にもまともな議員がいるのですね。願わくば仲間内に足を引っ張られないように気をつけてください。

小沢さんが言っていたそうですが、いつ総選挙になってもおかしくないーそうですから。

実現すると良いですねぇ。

嬉しいので一首

   中国の  怖さ身にしみ  島々の

        世論はついに  かわりたるかな

ナオ 様
あそこを見ると、国交省って金もってるんだな、ということが分かります。
最近仕分けになった特定財源とかでしょうか。

エプロンの規模とか見ても、2個飛行隊以上入るのではないでしょうか。

空母は目立つせいか、実態以上に騒がれている気がします。
動けることはメリットですが、航空戦力の運用能力としては陸上基地の足下にも及ばないので……
ワシントン級は、大分能力を上げているようですが、多分初期の中華空母は大したものにはならない気がします。

レディイーグルは、背景考察は結構しっかりしてましたね。
掲載誌がもっと続けば良かったんですが……

最後のリンクの方
昔からああいう人はいますが、あそこまでは珍しいですね。

みやとん 様
昨日1日で、一気に政権末期の匂いがぷんぷんしてきましたね。
ホントに年内もあり得るのかも……

トラックバックを送らせていただきました。中国の空母保有に関する最新の動向の真偽は如何なるものでしょう。将来にもし尖閣の近海に中国海軍の空母が出現した場合は大変なインパクトになりそうですね。

アシナガバチ 様
中国も情報が出にくい国なので、進捗具合までは分かりませんが、保有の方向は間違いないでしょうね。

ただ、インパクトについては、アメリカの空母機動部隊に神話的な思い込みがあることもあり、中国が空母を持つことに対して騒ぎすぎな気がします。

アフリカや中南米あたりの国にとっては、今まで気にする必要さえなかった中国の存在が劇的に変ることになるんでしょうが、日本の場合、元々近いですから。

此方の地図を使わせて頂いても宜しいでしょうか?

アシナガバチ 様
どうぞ。
距離を書いただけですから。

許可ありがとうございました。関連記事を執筆し、トラックバックを送らせていただきました。

yahooニュースから飛んで参りました。防衛省が下地島空港へのF15常駐を検討しているとのことです。覚書が存在する限り厳しいとは思いますが、ぜひ実現して欲しいところです。

名無しさん 様
沖縄メディアの反応は、今のところ相変わらずですが、必ずしも世論を反映していないため、しばらく注視したいと思います。

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