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2010年11月

2010年11月30日 (火)

菅首相が韓国砲撃事件で言ってはならない発言 周辺事態法適用は考えてはいない

韓国砲撃事件で、ちっとも関連の記事を書かないので、不審に思われていた方もいらっしゃると思います。
書かなかった理由は、砲撃ではあっても、これが、軍事というより政治の領域の話題だと思ったからです。
で、政治面の話はブログ「リアリズムと防衛を学ぶ」が「北朝鮮による砲撃、または「若将軍」のバクチ」との記事で、これ以上はないというくらいに見事な解説を書かれた(新聞など有料のマスメディアでも、ここまで掘り下げた記事はない)ので、私が書けることはなくなりました。

が、菅首相がオオボケをかましてくれたので、簡単に書きます。

この人は、本当に一国のトップとして向いていません。
絶対に言ってはならない一言を言ってしまいました。

菅首相、周辺事態法検討を否定=北の砲撃対応、渡辺氏と食い違い」(時事通信10年11月29日)

周辺事態法は、一言で言うと周辺事態に際して、日本が米軍の後方支援を行うための法律です。

周辺事態法の実際の法文は、オブラートに包まれ、分かりにくくなっています。
ですが、その成立経緯などを見れば、アメリカからの働きかけもあり、韓国北朝鮮の衝突や台湾海峡有事において、必ずしも日本に直接の脅威が及んでいない時点においても、(我が国の平和及び安全の確保に必要な措置として)米軍の後方支援を行う事を可能にするために制定されたことは明らかです。

周辺事態法成立の発端は、1994年の北朝鮮危機の発生です。
この時、アメリカは本気で北朝鮮を爆撃することを検討したと言われ、一触即発の状態にまでなりました。
この時、日本は法的に米軍を支援する枠組みが不備だったため、水面下で相当の圧力を受けたものと思われます。
そのため、これを契機として、日米間で日米防衛協力ガイドラインが改訂され、それを国内法的に担保するため、周辺事態法が成立しました。
詳細が知りたい方は、森本敏氏の書いた次の論文を見て下さい。
日米防衛協力ガイドラインと周辺事態法

と、成立の背景とその目的が分かれば、菅首相の発言の意義が分かります。
つまり、菅首相の「私がその法律の適用を検討していることは全くない」との発言は、「日本政府として、(韓国と北朝鮮が衝突して米軍が介入する事態になっても)米軍の後方支援をすることは考えてない」と発言したに等しいのです。

現在、アメリカは米韓軍事演習を実施し、北朝鮮に圧力をかけています。
当然、日本はこれを支持しなくてはなりません。

ところが、菅首相は支持するどころか冷や水を注いでしまいました。

日本の立場としては、「米軍の軍事行動を支持する」というような、明確なコミットメントは、現時点では必ずしも必要ではないでしょう。
ですが、「可能性として排除しない」程度の言い方で、あり得る事だとしておく必要があります。

アメリカから表向きに抗議が来ることはないでしょうが、防衛・外交当局者は、今頃釈明に追われている可能性さえあるのではないでしょうか。

本当に、危機意識のない指揮官です。

2010年11月29日 (月)

P-1調達は中国空母の牽制にもなる

次期中期防でのP-1調達数が10機となる見込みのようです。
防衛省:哨戒機P1、10機調達へ 対中警戒強化」(毎日新聞10年11月17日)

P-1ですから、その主任務は、報じられている通り、不審船や潜水艦に対する監視と対処です。

ですが、多少なりとも、中国が建造中の空母に対する牽制にもなります。

中国の空母に対抗して、日本も空母を持つべきという議論があります。
以前の記事で、対抗して空母を持つくらいなら、経済性などの観点から爆撃機を持つ方が良い、という趣旨の記事を書いた事があるのですが、P-1配備は、爆撃機導入と同じ効果をもたらす可能性があるのです。

それは、P-1が対艦ミサイルの運用能力を持ちながら、B-1などと同様に、高い低空飛行能力と、それなりに長い航続距離を持つからです。

爆撃機やP-1が対艦攻撃力を持つことにより、敵機動部隊にとって脅威になるのは、その航続距離によるところが大きいです。
(近くならF-2の方がいいに決まってます)

例えば、もし日本が中古のB-1を買って運用するようなことになれば、フィリピンの南を回り込んで、海南島を奇襲することだって可能になります。
P-1では、そこまでの長駆作戦は困難ですが、それでもF-2だけの場合よりも、余程遠方まで脅威を及ぼせます。
(なお、F-2+給油機による長駆作戦も可能ですが、情報の秘匿が困難で、奇襲は難しいように思います。奇襲が難しいと後述する敵空母への常時警戒を強いることができず、牽制としての効果は今ひとつです。)

P-1が対艦攻撃力を持っていると、中国の空母は日本近海に接近する以前から、攻撃を警戒せざるを得なくなるのです。

P-1の場合、速度が低いので、実際に対艦攻撃ミッションを実施すると、迎撃を受けた際に逃げ切れないため、帰ってこれない可能性が高いと考えられます。
となると、実際に作戦を行うのは躊躇われますが、可能性を考慮させることで牽制するには十分です。

攻撃を受ける可能性があれば、中国の空母は、(日本から遠方にあっても)常時警戒を解けないため、運用の困難さが増大します。

P-1が配備されたら、模擬ASMを抱いて南シナ海まで進出させる訓練をこれ見よがしに実施しておくと効果的でしょう。

ちなみに、P-3も対艦ミサイルを運用できますが、流石に遅すぎて作戦実施はリスクが高すぎです。

2010年11月27日 (土)

これは示意行為 ロシア機による日本周回飛行

11月12日にロシア機が実施した日本周回飛行は、示意行為(造語、示威ではなく)ではないでしょうか。

防衛省発表資料「ロシア機の沖縄方面への飛行について

Tu-95が2機、沖縄を含めた日本を1周しており、またしても挑発的な飛行をしているのですが、良く見ると単なる挑発的な飛行ではありません。

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防衛省発表資料より

良く見ると、実に丁寧な飛行です。
日本の領空をなめるように、そして非常に狭い領空の間隙(対馬海峡、沖縄本島先島間、伊豆諸島間)を縫うように飛行しています。
この間、一度も領空侵犯はしておらず、領空を犯さないよう、細心の注意を払って飛行したことが分かります。

この飛行に政治的な意味を読み取るとしたら、「我々は日本の主権を侵すことはしません」とでも読めるでしょう。

ですが、最後に思いっきり北方領土の上空を飛行しています。

やはり政治的な意味を読むとしたら、「北方領土はロシア領です」と読めるでしょう。

大統領の北方領土訪問だけでなく、実行支配している証拠として見せつけているものと思われます。

日本は北方領土の主権を主張する以上、法的には強制着陸させたって良いはずですが、そこまでの事はしていません。
おそらく、無線では日本領土だって通告しているのでしょうが、ロシア機のパイロットからすれば、鼻で笑ってるのでしょうね。

ロシア機の挑発的な日本周辺の飛行は少なくないですが、今回の飛行は特段に政治的意志の明示を意図したモノに見て取れます。

そして、この飛行によるメッセージの翌日には、日露首脳会談において、メドベージェフ大統領は平和条約交渉のアプローチを変えるよう日本側に提案したそうです。
弱腰外交のため、いいようにたたみ込まれています。

2010年11月25日 (木)

アメリカにミサイル攻撃?

ロス沖で、ミサイルの飛翔かと思われる状況がテレビ局によって撮影され、騒ぎになりました。
謎の飛行物体に米軍困惑 ミサイル? ロス沖でCBS系テレビが撮影」(産経新聞10年11月10日)

問題のテレビ報道動画


ですが、結局のところただの飛行機雲と断定されました。
ロス沖の「謎のミサイル雲」、正体はただの飛行機雲」(AFP10年11月11日)

産経は、単に騒ぎを煽るだけでなく、自分で報道したならちゃんと事の顛末も記事にして欲しいものです。

2010年11月24日 (水)

日韓で軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結で協議

日韓間で、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)締結のための協議が行われています。
防衛秘密保全、日韓が協定へ協議 北朝鮮の非常事態懸念」(朝日新聞10年11月9日)
軍事情報包括保護協定 韓国とも締結目指す 米、NATOに次ぎ近隣国で初」(朝雲新聞10年11月11日)

同様の協定が締結されているのは、アメリカとNATOのみだったとのことですが、これに韓国が加わる見込みです。

以前にも、日韓間ではACSA締結の動きがあるなどを記事にしていますが、またしても軍事面で両国の接近が図られるます。

この協定は、主に北朝鮮の非常事態(体制崩壊など)を想定し、関係情報を共有化する目的で話が進められているようですが、将来的には軍事的に肥大する中国に対する日米韓の協力態勢にも資するでしょう。

韓国は、日本を仮想敵にもしているため、渡す情報については注意しないといけませんが、基本的には歓迎すべき動きだと思っています。

朝鮮民族の居住地域は、既に一部中国の版図に組み入れられていますが、北朝鮮崩壊の際には、中国がなしくずし的に領土を拡大する恐れがあります。
韓国もそれを恐れているでしょうし、それを阻止するとともに、尖閣を巡る日中衝突に際して、韓国が日本側を支持してくれる方向に誘導するためにも、日韓の協力態勢推進は望ましい方向だと思います。
(日中間の衝突に乗じて、なし崩しに対馬に侵攻するような事態にならないよう注意は必要ですが。)

今回の砲撃事件でもそうですが、秘密保全の取り決めがないと、重要な情報を教えてもらえないので、早めに話を進めるべきでしょう。

2010年11月22日 (月)

民主政権がオバマ大統領による外交上の約束を履行不可能にする可能性 武器輸出3原則の緩和基準で

NATO首脳会議が、全ての加盟国を守るミサイル防衛システムの整備などを盛り込んだ新戦略を採択しました。
米大統領 NATO新戦略を評価」(NHKニュース10年11月20日)

これは、実体的には、オバマ大統領が全てのNATO諸国に対して、ミサイル防衛を約束したことになります。

しかし、このオバマ大統領の約束を、民主政権が履行不可能に追い込む可能性があります。

この構造の概略は、過去の記事「武器輸出三原則が菅政権に引導を渡す-12月解散?」で触れました。
その要点は、武器輸出3原則の緩和を渋ると、ヨーロッパへのSM-3Block2A陸上型を阻害することになる、と言うものです。

今回、3原則の緩和概要が見えてきたことで、この危惧が現実問題になりつつあります。

武器輸出三原則 19カ国対象に緩和を検討 年末に公表で調整」(産経新聞10年11月13日)
武器輸出、民主が「解禁」案 共同開発・生産を視野に」(朝日新聞10年11月16日)

特に詳しいのは産経の報道です。
緩和の範囲を、厳しい輸出管理を行う「ホワイト国」(現在26カ国)中のNATO加盟国17カ国と韓国、オーストラリアに絞る方向とのことです。

ここで、冒頭に触れたNATO新戦略との関係で問題になってくるのは、NATO東端でイランと国境を接しながら、「ホワイト国」とはなっていないトルコです。
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NATO加盟国(wikipediaより)

緩和が19カ国に留まる場合、アメリカがSM-3Block2A陸上型をトルコ防衛のため、トルコに配備しようとしても、日本がこれを拒否することになります。
(その他のNATO諸国は、ギリシャが「ホワイト国」となっており、ギリシャに配備すれば防護範囲に含めることができると思われます。)

もし、ギリシャ配備のミサイルでトルコも防護範囲に入るなら良いのですが、イスタンブールは良くても、首都アンカラはトルコ中部にあるため、難しいのではないかと思われます。
(ただし、そもそもトルコはイランに近すぎ、SM-3では困難な可能性もあります。)

またあるいは、アメリカがトルコ防衛のためには、黒海もしくは地中海にイージスを常駐させるつもりなら問題ありません。

何にせよ、アメリカと密接な協議が出来ているのなら良いのですが、防衛省はともかく、民主党がその辺をしっかり認識しているかは非常に怪しいモノです。

民主党が、オバマ大統領に恥をかかせたり、世界でも類を見ないほど親日のトルコを、反日にしたりすることのないよう祈ります。

2010年11月21日 (日)

「俺を誰だと思っている」 民主議員が自衛隊行事で暴言

埼玉10区民は民主党松崎議員を当選させた事を後悔して下さい。
Photo
産経新聞より

民主・松崎議員が自衛官を「恫喝」か 「俺を誰だと思っている」」(産経新聞10年11月18日)

自衛隊の行事において、空自側が議員にも一般の方と同様に、規則どおりの対応を求めたところ、特別扱いされないことに不満を抱き、隊員に「おれをだれだと思っているのか」と恫喝ともとれる暴言を発していたそうです。

自民党時代にも、大きい顔をする議員は少なくなかったですが、こうもあからさまな話は聞いたことがありません。

たかだか30mを歩けば済む話なのに、「おれをだれだと思っているのか」、「お前では話にならない」、「やればできるじゃないか」、「もう1度、言ってみろ」と強圧的な暴言を吐いた上、「2度と来るな」とつぶやいた自衛官の胸をわしづかみにしたとのことです。

つぶやいた自衛官も大人気ないですが、気持ちは分かります。
多分、怒られていると思いますが、私はエールを送ります。(どこの部隊の人間だろ?)

議員でなくとも自衛隊施設に来ると気持ちが大きくなる方が多いので、接遇をする自衛官は忍耐力の鍛錬を強いられることが多いのですが、これほどの方はカタギじゃない方くらいじゃないでしょうか。

埼玉10区民の方は、しっかり反省して、次の選挙はまともな方を選んで下さい。

2010年11月20日 (土)

民主党は、党名を独裁党に変えるべき 民間人の言論を封殺

開いた口がふさがらない。
暴力装置発言の方ばかり注目されてますが、こっちの方が余程重要です。

民主党は、党名を独裁党に変えるべきです。

「政治的発言する人、行事に招くな」防衛省、幹部に通達」(朝日新聞10年11月17日)
防衛省が来賓発言の記録まで指示 自民「検閲だ」「言論統制だ」批判相次ぐ」(産経新聞10年11月18日)

防衛省は、自衛隊が主催する行事において、参加者に政治的発言をしないよう要請させる事務次官通達を出していたそうです。
更に、来賓ら部外者の発言について概要を記録し、報告するよう指示する「事務連」まで存在するとのこと。

防衛省が、隊員の発言について指示することは理解できますが、来賓など部外の人間の発言を制限させるよう通達するなど、想像することすら出来ません。

民主党(北沢防衛相)が発簡させたことは間違いありません。

しかも、防衛相は「部外の言論を封殺するものではなく、撤回する考えはない」と発言し、居直ってます。
仙谷官房長官も、民間人であろうとも、自衛隊施設の中では、表現の自由は制限されるという旨発言しており、強権的どころの騒ぎじゃありません。

部外者が行事で政府批判をしたからと言って、それが隊員の政治的行為の制限違反と理解されるなんて、誰が考えたって有り得ない。

仙谷官房長官が自衛隊を暴力装置だと言いましたが、民主党は言論の暴力装置です。

民主政権は、瓦解前のパニック状態にあるのかもしれません。

しかし、内局の方も苦しいのだとは思いますが、こんな前代未聞な通達を出せと言われて抵抗はしなかったのだろうか。
人事権が握られているとは言え、致し方無いとは、とても言えません。

政権が変わったら、即刻この通達は廃止して下さい。

2010年11月19日 (金)

仙谷官房長官が自衛官に謝罪 「自衛隊は暴力装置」

仙谷官房長官が「自衛隊は暴力装置」と発言しました。
官房長官:自衛隊は「暴力装置」…すぐに訂正「実力組織」」(毎日新聞10年11月18日)

なんかものすごく騒がれていますし、問題の本質は佐藤正久議員がツイッター(内容は末尾に転載)で切って捨てているので、私は感想だけ書きます。
(盛り上がりは、次の画像を見て下さい。昨日の産経サイトの政治記事人気ランキングですが、5位までの内、4つまでをこの暴力装置ネタがしめてます)
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暴力装置と聞いて、私は「そうだね」としか思いませんでした。
「だから何? 何か問題?」
国の防衛のため、という錦の御旗はあるにせよ、行為の実態としては殺人も行わなければならない訳で、そう言う意味では暴力と表現されても間違ってはいないと思います。

ただ、この言葉は、軍事組織の内向きの役割(国内に対する治安機関として)ばかりを強調している言葉として、左翼思想が「再定義しちゃっている言葉」なので、外国からの侵略を防ぐという本来の役割をあえて無視している言葉でしょうね。
まあ、sengoku38(左派)の方からすれば、そういう見方なんでしょう。

私としては、仙谷官房長官が「自衛隊の皆さん方には謝罪する」と述べた事の方が気分が良かったので、むしろ良いニュースなような気がします。

それにしても、民主党のおかげでネタが多すぎる。

以下、佐藤正久議員のつぶやきから転載
***********************
「マックス・ウェーバーによる「暴力装置」とは「軍隊・警察は国家権力の暴力装置である。国家から権力奪還するためには社会の中に新たな暴力が組織化されなければならない」と暴力革命を是とし、国家は悪であるとの認識では?仙谷官房長官がこの考えであれば、マルクス主義から脱却していないの?」
***********************

2010年11月18日 (木)

下地島空港を自衛隊が使用する効果

北沢防衛相が、国会の場で下地島空港の自衛隊使用を検討すると発言しています。
下地島空港「大変魅力」 自衛隊利用で北沢防衛相」(琉球新報10年11月12日)

つい先日にも、下地島空港の自衛隊使用は難しいと書いたばかりですが、民主党の防衛相が明言するとなれば、状況は変ってくるかもしれません。
なお、過去には自民党時代に久間防衛相も発言しています。
防衛相、下地島空港「良い場所」 自衛隊使用に言及」(琉球新報07年6月25日)

そこで今回は、北沢防衛相が「自衛隊としては大変魅力あるものだ」と感じる理由として、下地島空港を(航空)自衛隊が使用する効果について書いてみます。

一言で言えば、下地島空港を自衛隊が使用する効果は、尖閣など先島諸島周辺域における、航空作戦の遂行能力を飛躍的に高めることができるからです。

例えば、尖閣上空における航空優勢確保能力について、那覇だけを使用する場合を1とすれば、下地島を加えた場合の能力は、飛行場数が倍になることによって2倍になるに止まりません。
3倍、あるいは4倍にも5倍にも達するかもしれません。

その理由は、なんと言っても下地島の位置にあります。

下地島の置かれた位置関係を確認しましょう。
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那覇-尖閣(魚釣島)間の距離は約415km。
対する中国軍が尖閣問題の際に前方展開する可能性の高い2基地、台州市の市路空軍基地ー尖閣間は約380km、福州市の福州空軍基地-尖閣間は約410kmとほぼ同等です。
これらに対し、下地島空港-尖閣間は、わずか190kmと半分の距離です。

尖閣周辺空域の航空優勢を争うに際し、那覇基地しか使用できない場合、中国本土の空軍基地から敵戦闘機が発進したことを察知してから迎撃機を上げるというやり方では、そもそも間に合わない可能性が高く、継続的な航空優勢を確保するためには、それなりの機数をもって常時CAPを行わなければならないことになります。
これに対して、下地島空港を使用する場合は、CAPを行わず、中国の空軍基地から戦闘機が発進したことを察知してからスクランブルしても間に合います。

これは、単にCAPをしなくて済むので楽だ、というに止まりません。
那覇を使用してCAPで対処する場合、相手がCAPの機数以上の機数を上げてくれば、局地的な数的不利になります。
ですが、下地島を使用する場合は、敵の侵攻状況の合わせた柔軟な戦力運用が可能なため、局地的な数的不利の発生は防げるのです。
(敵が10機上げてくれば10機をスクランブルさせ、敵が20機で来れば20機をスクランブルさせるということ)

また、この距離は、戦闘機がそれぞれの基地から飛び立って、尖閣周辺で交戦する際の戦闘可能時間に直結します。

那覇を使用する場合、過去に配備されていたF-4では、ほんのちょっとしか交戦可能時間がありませんでした。
F-15であれば、それなりに戦えますが、中国本土沿岸の基地からも同程度の距離であるため、最新機が出てくれば、良くて互角の戦いというところでしょう。

しかし、下地島空港を使用できる場合、進出に要する距離は半分程度ですから、十分な交戦可能時間を確保できます。
距離をとってリスクの低い中距離戦を展開すれば、互いに被撃墜がなくとも、中国軍機は先にRTB(リターン・トゥ・ベース)しなければならないこととなり、航空優勢は自衛隊が確保できることになるのです。

ですから、下地島空港が使用できる場合は、下地島にF-15を配置して尖閣周辺の航空優勢を確保し、那覇にはF-2を配備して航空優勢確保の予備戦力とするとともに、要事には対艦攻撃を行うのがベスト配置と思われます。

また、下地島は過密した那覇基地に比べ、エプロンなどを非常に余裕を持って使えるというメリットもあります。

警備面でも、周囲にほとんど人家のない下地島は、那覇に比べ優れています。
那覇では、基地の直ぐ近くにまで高いビルが建ち並び、極めて危険な状態でもあるのです。
(あるマンション屋上でパーティがあり、基地内が見渡せるため良い眺めだと話題になっていた折、私が対物狙撃銃を一丁もらえれば、3分で全機非可動にできると豪語して、居並ぶPに白眼視された経験があります)
下地島空港の場合、アンダーウォーターでの接近を警戒する方もいると思いますが、周囲は全てリーフになっており、非常に浅いので警備は比較的楽です。(特に日中は、上空から目視で警戒可能)

以上、書いたような下地島空港のメリットは、宮古島空港や(新)石垣島空港でもほぼ同様ですが、両空港は基本民間空港であり、自衛隊の常駐や有事での使用には問題が多数あります。
対する下地島空港は、訓練飛行場であり、実機での訓練が減っていることもあり、正直過疎ってます。

自衛隊が常駐するとなれば、燃料の輸送や食糧その他の一般資材を地元から購入するなど、地域経済に及ぼす影響は大きなモノがあります。
報道でも言及されている補助金もあります。

尖閣を防衛するため、下地島空港はそのキーになりものです。

地元の方は、屋良覚書撤回のため、自衛隊常駐に是非ご理解を宜しくお願いします。

最後に下地島空港に関連する過去記事をリンクしておきます。
下地島への自衛隊誘致に自衛隊がツレない訳
下地島空港活用時のMD態勢
那覇へE-2Cローテーション配備 尖閣周辺防空網の欠陥を改善

2010年11月16日 (火)

空自次期救難救助機の機種決定とCSAR

空自の次期救難救助機の機種がUH―60J(近代化)に決定されました。
航空自衛隊の次期救難救助機の機種決定について」(防衛省発表10年11月5日)
空自の次期救難救助機 UH60J「近代化」型に 3自衛隊で共通化 コスト削減に寄与」(朝雲新聞10年11月11日)

機体規模などの点で、もっと大型の機体というような意見もありましたが、経済性などの点(陸海との共通機種選定による整備コストの低減など)が評価されたためか、現有装備であるUH―60Jの近代化改修機が選定されました。

整備コストなどの経済性が評価されたことは評価できますし、空自の任務を考えた場合、航続距離の長い機体は使いやすいでしょう。

空自救難部隊の場合、普通救難対象は最大2名ですし、任務もCSAR(戦闘捜索救難)ではなく、単なるSAR(捜索救難)のケースが大多数ですから、大きな機体はオーバースペックという判断だったものと思われます。

私としても、妥当な判断だったのではないかと思います。

ただ、CSAR能力の確保には、もっと訓練をして欲しいと思います。
今年の航空救難団戦技競技会もCSARではなく、SARで行われたようですが、戦競でCSARをやらないと、部隊の目があまり向きません。
航空救難団戦技競技会 百里が初V 3部門で技量競う」(朝雲新聞10年11月4日)

2010年11月15日 (月)

陸自部隊 違法出動の可能性?

陸自部隊が違法に出動している可能性がネットで指摘されています。

ソースは、在日米軍の監視活動をしているリムピースのHPです。
APEC期間中、陸自NBC部隊が「災害派遣」

災害派遣の垂れ幕を掲げた車両が、実体的にはAPECの警備支援を行っているようです。
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写真は全てリムピースHPより転載

現在、防衛省は災害派遣が行われた場合にはHPのお知らせページに掲載していますが、15日現在、この横浜ノースドックでの災害派遣については一切触れられていません。

実態的にはAPECの警備支援を行っているのに、災害派遣として行動しているのならば、違法な出動です。
自衛隊法には、地震防災派遣という災害が起る前に部隊を派遣する根拠もありますが、これは特定の大震災が予想されるケースのもので、今回は該当しません。

私は、自衛隊がAPECの警備支援をすることには全く異論はありません。
特に、警察において不足しているであろうNBCテロに対する対処準備として、自衛隊が控えているのは非常に適切だと思います。

ですが、それを災害派遣を根拠に行っているとしたら違法ですし、当たり障りの少ない災害派遣を装っているとしたら姑息です。

こう言ったケースでは、警察庁から防衛省に依頼があれば、国家行政組織法を根拠とし、
官庁間協力としてNBCテロの警戒を行うことは可能です。
もし実際にNBCテロが行われれば、その時点で災害派遣を発令すればよいことです。

おそらく、今回のケースは、この官庁間協力で動きながら、目立たないようにという配慮で災害派遣を偽っている、あるいは災害派遣が発令された場合の準備として垂れ幕を出しているだけだと推測しますが、リムピースで取り上げられるなど目立っているので誉められたものではありません。

発令された場合の準備でしたら、災害派遣の垂れ幕だけは出さずにおくべきでしょう。

2010年11月14日 (日)

悪魔の辞典的「基盤的防衛力」解説-機甲師団廃止の序曲

基盤的防衛力
みなさんは、この言葉をどんなモノと認識しているでしょうか。

年末に迫った防衛計画大綱の見直しにおいて、遂に削除されるかもしれないと噂される、日本の防衛力整備の核心と言えるキーワードですが、私から見れば、日本の防衛力整備を歪んだ形にしている諸悪の根源です。

という訳で、今回はこの「基盤的防衛力」(整備)の解説を、普通は隠される行間を補って、悪魔の辞典的に行います。

しかし、まずは行間を見る前に、歴史を見てみましょう。

「基盤的防衛力」構想は、昭和51年の防衛計画の大綱、いわゆる51大綱において登場した言葉で、白書によれば「わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、(中略)独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」となっています。
登場の背景としては、日本独力では対処不可能なほど強大なソ連軍を仮想敵(公式には仮想敵とはしていない)とする上で、ソ連軍の戦力に合せた(巨大な)防衛力整備は不可能なので、要事に戦力の拡大が図れるよう、各種の基盤的な戦力を配備しておく、というものです。

この考え方は、07大綱によっても「基本的に踏襲」されましたが、「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」を、「限られた資源」(人・物・金)で行うために見直すべきとする考えが強くなり、16大綱においては「有効な部分は継承」となっています。
そして現在は、完全に脱却すべきではないか、ということで、年末の大綱見直しが注視されている状況です。

ここまで、歴史を見ただけでも、怪しい部分がちらほらと見えるのですが、以下では白書に記述された解説の行間を読み解いてみます。

白書では、基盤的防衛力について、「平時において十分な警戒態勢をとりうるとともに、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処可能」と書かれています。
これは、裏読みすれば、限定的ではなかったり、小規模じゃなければ対処不可能でも構わない、ということです。

自衛隊の保有弾薬は少なく、開戦から3日しか保たない、などと言う噂は良く耳にする話です。
3日が妥当かどうかはともかくとして、そんなに少ないってことはないだろう、と思うかもしれませんが、現に大綱において基盤的防衛力として、限定的かつ小規模な事態にだけ対処できる(弾薬)だけで良い、と書かれているのですから、何ヶ月も戦えるだけの弾薬を持っているはずはないのです。

また、「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めて組織および配備において、均衡のとれた態勢を保有することを主眼」とも書かれています。
これは、前述した「わが国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも」という部分とも関わってくるのですが、基盤的防衛力が、わが国の国力では対抗しようもない巨大なソ連軍を想定していたこともあって、実際に想定される事態に実効的に対処できるかどうかを考慮する必要はなく、単に各種の機能が一通り揃っていれば良い、と言っていることになるのです。

軍事評論家の清谷信一氏が、日本の装備品選定や調達数を決めるに当たって、起こりうる事態や対処を想定していないと頻繁に批判していますが、それは当たり前なのです。
大綱が基盤的防衛力として、実際に想定される事態に実効的に対処できるかどうかを考慮する必要はない、としているのですから。

このことは、自衛隊も問題であることは認識しており、07大綱において、「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応」と盛り込み、それまでの考え方のおかげで、現有装備体系が「実効的でない」との反省していることでも覗えます。

ともあれ、実際に想定される事態を考慮する必要はない、とされているおかげで、「均衡のとれた態勢」として、自衛隊は、専守防衛の政治的な配慮で保有が止められる物を除き、基本的に何でも持っています。

例を挙げれば、戦車です。
ドイツのように陸続きではないため、ソ連の大機甲部隊と戦うためには、航空作戦や上陸作戦を経た後でなければ戦う事態が想定されません。
そのため、戦車が本当に必要なのか、自衛隊内部にも疑問がありましたが、にもかかわらず機甲師団を配備しているのは、基盤的防衛力という考えの基、必ずしも実際に起こる事態を考慮していないからです。

ですから、大綱から「基盤的防衛力」が消えると機甲師団は解体の可能性が出てくると思われます。(流石に戦車自体を廃止にはしないでしょうけど。)
現在はソ連の機甲師団が大規模な上陸作戦を行う可能性よりも、中国の特殊部隊が離島に侵入してくる事態の可能性の方が遙かに強いからです。

もう一つの例として、逆に、基盤的防衛力というお題目に守られる必要がなくなっているものとして、FSがあります。(今はFI、FSという区分事態が無くなりましたが)
冷戦当時、ソ連の航空戦力に対して、わが国のFIとSAMの戦力では、DCA(防勢対航空)の段階で、航空優勢確保が到底おぼつかない状況でした。
FSは、ソ連の着上陸阻止のためのAI(航空阻止)任務を実施するような段階になる前に、地上で壊滅させられる可能性が高かったのです。

ですから、戦車無用論と同様に、FSは不要で、全てFIに回した方がいいんじゃないか、という話がありましたし、おかげでFS(のP)の地位は低く見られていました。
今は、離島防衛のために対艦攻撃能力を不要と見る方はいないでしょうから、基盤的防衛力というお題目に守られる必要はなくなっているでしょう。

総括すると、実際に起こる事態を想定するのではなく、装備・部隊は、何でもカンでも一通りの物を用意して、弾薬などの継戦能力は、最小限の量を用意しましょう、というのが「基盤的防衛力」整備構想でした。

日本のように、周囲を海で囲まれ、長い海岸線と持つ反面、縦深がほとんどないなど、特殊な防衛環境にあれば、世界の主要国とは異なった特色ある防衛力でも良いはずですが、日本は基盤的防衛力という考えの基、何でもカンでも、世界の趨勢を追っかけて来ました。

もし、年末の大綱見直しでこのキーワードが消えれば、日本の防衛力整備は大きく変って行く可能性があります。
変って重要になりそうなキーワードは、今のところ「実効性」、「弾力的」、「多機能」というあたりですが、今後数十年の防衛力整備の方向性を示す、○○的防衛力なんて言葉を案出中かもしれません。
答えは、近いうちに漏れ出してくるでしょう。

2010年11月13日 (土)

武器輸出3原則緩和に向け、防衛相補佐官に及川氏を起用

先日の記事「武器輸出3原則の緩和は、自衛隊の海外での活動制約の緩和にも寄与することを意図」においても、3原則緩和には経産省が大きく絡んでくることを書いたばかりですが、その翌日になって、その道の専門家を防衛省補佐官に充てる人事が発表になっています。

防衛相補佐官に及川・元特許庁長官を起用」(読売新聞10年11月5日)

3原則緩和は、いよいよ既定路線となって来たようです。

読売の記事に対して、特にコメントすることもないのですが、読売は直ぐに記事がネットから消えるので、以下に記事を要約しておきます。

補佐官への発令人事は11月5日付。
及川氏は経産省出身で、同省で安全保障貿易管理担当の官房審議官、旧防衛庁では装備局長を歴任。
今回の人事により、防衛省補佐官は、西元徹也・元統合幕僚会議議長との2人体制となる。

2010年11月12日 (金)

金正男氏を囲おう!

金正男氏が北朝鮮の崩壊を予見する発言をしています。
「北朝鮮は滅びる」金総書記の長男、正男氏が批判的発言」(産経新聞10年10月27日)

この方、ディズニーランドに遊びに行くため日本に密かに入国するなど、なかなかお茶目な行動を含めて、憎めないと言うか、何気に気に入っている方です。(公開している小説では切れ者として描きました。)
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(産経新聞より)

既に権力闘争には敗れていると見るべきですが、北朝鮮の中枢にいたことは間違いない方ですし、そのせいか、世の中をなかなか冷めた見方でみているようです。

こう言う方は、北朝鮮の崩壊後を見据えて、日本政府として囲っておいて損はないと思います。
拉致問題や安全保障上の案件に関して、有力な情報ソースともなるはずです。
少なくとも、機密費を使って資金援助するくらいはしても良さそうな気がします。

現在マカオにいるようですが、中国にいることにも不安を感じるようなら、政治亡命を受入れても良いのではないでしょうか。

ディズニーランドの時から、極秘に接触を続けて来た、なんて話ならば、関係者を誉めたいところですが……
ないでしょうね。

2010年11月10日 (水)

FXへのF-35選定は発想の貧困から

2011年度の予算も通ってないのに、2012年度予算の概算要求話題です。

FXにF-35を選定し、2012年度から調達費を要求するそうです。

F35軸に12年度予算化へ 次期戦闘機で防衛省」(共同通信10年11月8日)

ニュースの信憑性はいまいちです。
何せ、今日には次期中期防には「新戦闘機」として機種に触れないという報道も出ています。
次期戦闘機、機種触れず…F35開発遅れで」(読売新聞10年11月10日)

しかし、F-35の調達予算要求が本当だとしたら、防衛省(空幕)は発想が貧困です。

以前にも、FXとしてF-35を選定することに反対する記事「F-2がベスト」を書きました。
重複になりますが、FXにF-35を調達すれば、F-15Pre-MISPもF-35となる可能性が高いですし、そうなれば国内の戦闘機生産基盤は崩壊となるからです。

もしこの報道が本当だとしたら、今回の尖閣漁船衝突事案のおかげで、政府がビビッて、空幕の口車に乗せられたのではないかと思います。

中国と尖閣周辺で衝突するとなれば、上空での航空優勢確保に、F-15あるいはF-2では不安が残ることは確かです。

数でなんとかする、という発想もあるでしょうが、それを運用する航空基地が那覇だけでは運用可能機数が限られる上、遠すぎて話になりません。
下地島もフルで使える(常駐の空自基地化)のであれば、数で何とかするという手も使えるかも知れませんが、いろいろとハードルがあります。

ですが、これらは固定化された発想のたまもので、F-35を導入するという以外にも、中国に対抗する手はあります。

今回の事案で、政府も身にしみたと思いますが、尖閣だけに限定された衝突でも、米軍の存在は欠かせません。
ですから、もっと米軍の存在を前提に考えても良いはずです。

日本の航空作戦は、専守防衛という建前のため、防御(DCA:防勢対航空作戦)としての航空優勢の確保を自衛隊が、攻撃(OCA:攻勢対航空作戦)を米軍が行うという役割分担となっています。

ですが、時代は変りましたし、保有する航空機に併せて、役割分担を替っても良いはずです。

つまり、尖閣上空の航空優勢の確保を嘉手納から運用されるF-22が行い、対艦攻撃による水上戦力の接近阻止を自衛隊が行う、ということです。

そのような発想に立てば、FXにはむしろF-2の方が都合が良いくらいです。

事案が突発したり、奇襲を受けたりしたら、嘉手納にF-22が展開するのが間に合わないんじゃないか、と思う方もいるでしょうが、別に間に合わなくてもOKです。

何せ、尖閣防衛のための作戦計画である防警計画は、「取られてから取り返す」方式だからです。(以前の記事「対中国防警計画は間違っている」参照)

つまり、尖閣が占領された後、おもむろに米本土からF-22が展開し、自衛隊はそれを待ってから作戦を開始したって良いのです。

防空自衛隊(航空自衛隊ではない)が航空優勢の確保を自前で行いたいのは理解していますが、国内開発基盤の確保やF-35開発の遅延など、諸般の情勢を鑑みれば、従来の発想を脱却した戦力構成と作戦の役割分担を考えても良いはずです。

2010年11月 9日 (火)

ロシア大統領の北方領土訪問に対しては軍事的ブラフを

ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島を訪問しました。
国後島を「ロシア領として発展」…大統領が確約」(読売新聞10年11月2日)

対する日本の対応は、首相を含む閣僚が遺憾の意を唱えたこと、駐日大使を呼びつけて外相が抗議したこと、駐ロシア大使を一時帰国させたこと(直ぐ戻りましたが)、これだけです。
菅首相「我が国の領土」 前原外相、ロシア大使呼び抗議」(朝日新聞10年11月1日)
駐ロシア大使、一時帰国へ 首相指示「事情を聴くため」」(朝日新聞11月2日)

一番抗議らしい行動でも、大使の一時帰国であり、召還ですらありません。
拒むことが可能なのか知りませんが、APECに来るという大統領に対しても、いらっしゃいませと言うつもりのようです。
ロシア大統領、APEC出席の意思 菅首相に書簡」(朝日新聞10年11月5日)

ほとんど何もしていないも同然です。
ロシアによる支配を認めているようなものです。

では、何ができて、それが本当に効果があるかどうかですが、手はあります。

それは、「直接行動を排除しない」と言った類の軍事的ブラフを、首相や関係閣僚が発信し、自衛隊に今後の演習において、北方領土の奪還を企図した演習をさせることです。

憲法9条の武力による威嚇の放棄に微妙に反する気もしますが、北方領土は自国領なので自衛権の発動が可能なエリアです。

どうせ実行するはずはないのだから、日本によるブラフなんて効果がない、と思う方もいるでしょうが、そんなことはありません。

ブラフの意図するところは、ほぼ100%ロシアに対する嫌がらせです。
実際に行動に移さなくても、日本が軍事的オプションを選択肢に入れているとなれば、ロシアは対応せざるを得ないからです。

ロシアによるミストラルの購入も、日本の軍事的オプション行使に対する措置の一環ですが、明言されていない状態での措置なのですから、閣僚が発言したり、自衛隊がそれを企図した演習をしているとなれば、より準備が必要になります。

北方領土に所在するロシア軍は1991年には9500名あまりだったものが、現在は1995年までに3500名ほどに削減され、現在も同程度であると見られています。(by防衛白書)
その多くが国後島に所在していると思われます。
1万近くもいたのでは苦労しそうですが、3500名ほどしかいないとなれば、奇襲的な上陸ができれば、なんとかなってしまうかもしれません。

戦域を北方領土に限定できれば、北方領土の奪還作戦は決して非現実的な話ではないのです。
(限定できない場合(北海道や本州が攻撃目標になる場合)は、空海で劣勢に立たされ、奇襲上陸した陸自戦力も追い落とされてしまうでしょうが……)

こうした状況でブラフが行われれば、ロシアとしては、あの辺境の地である北方領土配備の兵力を再び増強するなど、対応措置に軍事費を費やさざるを得ないのです。

ブラフの意図は、そこにあります。
完璧な嫌がらせです。

ロシア経済の行く末は私には分かりませんが、苦しい時代が来れば自発的に北方領土を手放す日が来るかもしれません。
中央アジアで火の手が上がるなど、日本が行動を起しても本当に対処できなそうな情勢になれば、本当に奪還してもいいでしょうし。

しかし、そんな発言が出来るとしたら、石原都知事くらいだろうな……

2010年11月 8日 (月)

安全保障上の必要性から外国人による土地取得を制限へ

菅内閣も、少しはまともな事をします。

有名無実化している外国人土地法を実効的なものとするため、必要な政令を制定し、安全保障などの必要性から外国人による土地取得を制限する方向で検討に入るようです。
外国人の土地取得「安全保障も考慮」 法改正検討の構え」(朝日新聞10年10月26日)

韓国人による対馬の大量土地購入が週刊誌等で報じられて問題になっていることなどを受け、やっと政府が重い腰を上げました。
ものもと必要は法律はあったので、政令さえ制定すれば実現できる状態だったようです。
閣議決定した以上、さっさと実施してもらいましょう。

空自の基地周辺や有事に陣地化が必須の重要な土地については、外国人による土地取得は制限される必要があります。

この件は、自民党政権下でも放置されてきました。
私は、多分外国人から献金を受けている自民党議員が多かったのではないかと勘ぐっています。(実態は知りませんが)

やっと普通の国に一歩近づくようです。
やってあたりまえなんですが……

2010年11月 7日 (日)

ウィキリークスに中国関連情報の予定 尖閣問題での新情報もあるかも

米政府の機密文書をインターネット上で公開して話題になっているウィキリークスが、早ければ今年中にも日本や中国に関するものも含まれる機密文書を多数公開する予定とのことです。

日本・中国関連情報も公表へ=スイス移住検討―ウィキリークス創設者」(時事通信10年11月6日)

現時点では具体的情報は何もありませんが、尖閣問題では日本に問題のあるものが出てくるはずはないので、期待して待ちましょう。

2010年11月 5日 (金)

尖閣ビデオ流出の犯人捜しは早期逮捕か迷宮入り

尖閣ビデオ流出の犯人捜しは、難しい作業ではないでしょう。
あれだけの情報に接する事が出来る人数は、極めて限られているからです。

恐らく容疑者のリストは、数十人にも及ばないでしょう。
もちろん、持ち出しと配布は別の人物による複数犯の可能性はありますが、今はネットカフェでも個人情報の登録が必要ですし、googleにアクセスログを出させれば、流出犯の特定にはそれほど時間を要するとは思えません。

ですが、それでも敢えて迷宮入りする可能性に言及するのは、今回の流出事件が、憂国の志士による完璧な故意犯だからです。
何も、日本政府が中国のように愛国無罪などと言うと考えている訳ではありません。

逮捕すれば、更なる爆弾となりかねないからです。

特に犯人が海保ではなく、検察の人間だった場合、政府が否定する介入の事実を暴露する可能性が考えられます。
また、海保だったとしても、複数の巡視船から撮影されたビデオが含まれることを鑑みれば、11管本部以上のレベルの人間である可能性が高く、臨検までの弱腰政府のグダグダな対応を知っている可能性もあります。

国家公務員法の守秘義務違反による罰則は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金と定められています。
普通は捜査もされないような微細な罪を付けたとしても、1年そこそこで公衆の面前に出てくるはずです。
(裁判を長期化させて、未決勾留を続けるという手もあると思いますが、その前に民主党政権が倒れそうです。)

更なる爆弾を破裂させかねないとなれば、政府は犯人を特定したとしても、公開せず、そして本人にも明かさずに、事件を迷宮入りにする可能性も考えられるのです。
(そして当の犯人は、閑職に追いやられ、以後重要情報に関わることはなくなります)

新聞は、こんな与太話を書きませんが、可能性としてはあり得る話です。

今回の流出事件が、法令違反の犯罪であることは明確です。
ですが、流出したビデオを見る限り、臨検の手法など、海保にとってマイナスとなる要素は何一つ見られません。
犯人は、その辺りの弁別はしっかり行っているようです。

最後に、今回のビデオを見た感想です。
ふと、現在公開中の映画「桜田門外ノ変」を思い出してしまいました。

2010年11月 4日 (木)

武器輸出3原則の緩和は、自衛隊の海外での活動制約の緩和にも寄与することを意図

武器輸出3原則の緩和に関して、北沢防衛相の意図には、自衛隊の海外での活動制約の緩和も含まれていることが報じられています。
武器輸出3原則 大綱策定と併せ検討 参院質疑 首相、防衛相が意向」(朝雲新聞10年10月21日)

以前の記事「自衛隊が保有する武器の輸出」で書きましたが、自衛隊は海外に展開する際(訓練目的も含め)持ち帰る装備についても逐一輸出の手続きをとっています。

ただただ煩雑で、よけいな業務であることは明白なのですが、年末に向けて検討されている武器輸出3原則の緩和により、これを廃するなどの改善も念頭に入っているようです。

北沢防衛相は「日米訓練でグアムなどに行くとき、自衛隊が持って行く装備や弾薬はすべて経産省がチェックする。」と発言しました。

また、「今ハイチに国際救援隊が行っているが、重機をたくさん持っていっている。私どもの発想からすれば、これはハイチに置いてきて有効利用してもらえばいい。しかし、武器輸出3原則でできない。」とも述べています。
誰かが同種の事を言っていた記憶があるのですが、どこでだったか、ちょっと記憶がありません。

実に良い案だと思います。
わざわざアントノフをチャーターし、逐一輸送費をかけるくらいなら、民生品と同等の装備は、被災地に置いてきて、自衛隊は新規に調達すれば良いのです。
装備も新品になりますし。

治安の悪い地域に展開した際は、現地の警察用に小火器を置いてくる程度までは、やっても良いのではないでしょうか。
この手で、64式小銃を89に換装しましょう。(やりすぎ?)

2010年11月 3日 (水)

「準自衛官」制度の創設は疑問

11月3日文化の日は、毎年出撃している入間基地航空祭の日でしたが、私は風邪を引いて寝込んでました。最近めっきり冷え込んで来ましたので、みなさまもお気をつけ下さい。
航空祭は、雲もあったもののブルーも無事飛べたようでなによりでした。

さて、会計や調達事務など行う新たな自衛官の身分として「準自衛官」なる制度が検討されていることが報じられています。
事務専門の「準自衛官」創設、財務省が提案」(読売新聞10年10月29日)

財務省が積極的に動いていることからも分かるとおり、「準自衛官」創設の最大の狙いは人件費の削減にあるようです。
また、報じられている内容にはありませんが、一定年齢に達した自衛官を準自衛官にスライドさせることで、自衛官の高年齢化対策を考えている節も見られます。

狙いとしているところは理解できますが、非常に問題のある制度のように思います。
こんな制度を作ったら、戦前の「輜重輸卒が兵隊ならば 蝶々トンボも鳥のうち 焼いた魚が泳ぎだし 絵に描くダルマにゃ手足出て 電信柱に花が咲く」のような後方軽視が再燃してしまいそうです。
太平洋戦争の帰趨には、この後方軽視が悪影響を与えていますが、同じ轍を踏まないか心配です。

この件については、財務省主導で動いているようですが、この制度に対して、防衛省がどんなスタンスでいるのか注目したいと思います。

なお、財務省が勝手にぶち上げていることに対して、北沢防衛大臣がおかんむりになっています。
北沢防衛相、財務省が「座敷に踏み込んできた」」(読売新聞10年10月29日)

防衛省が反対しているのなら良いのですが……

自衛隊装備もオークションに! ミラージュは1140万円

ベルギー空軍で使用されていたミラージュ5がオークションにかけられ、1140万円で個人のコレクターに落札されたそうです。
戦闘機「ミラージュ」1140万円で落札…飛べません」(産経新聞10年10月30日)

以前にも、南極観測に使われていたしらせの部品をオークションにかけろ、と書いた事がありましたが、用途廃止にした自衛隊装備もオークションで売り払ったらどうでしょう。

確かに保全上の問題はありますが、機種毎用廃(用途廃止のこと)が完了したもの、例えば今であればF-1とか、ならOKでしょう。

現在は、用廃になった装備は、細かく切り刻まれてスクラップとして売り払われてます。
(用廃になったミサイルを大まかに切っただけでスクラップとして売り払ったところ、原型に再現されてミリタリーショップの店頭を飾ったという実例があるため。)
原型のままオークションにかければ、裁断する手間も費用も省けますし、単なるスクラップとして売るより高く売れるでしょう。
文化財としても残ります。

欲しい人もいるでしょう。
消防車だって売れるんです。
アメリカみたいに、戦車まで売れとは言いませんから、検討して下さい。
防衛省。

2010年11月 1日 (月)

日豪軍事同盟に向けて前進! 日豪ACSAで自衛隊法改正

今年5月に締結されていた物品役務相互提供協定(ACSA)を実現させるための根拠法令として、自衛隊法等が改正されることになりました。
「日豪ACSA」で隊法改正へ 米以外で初の協定」(朝雲新聞10年10月14日)

改正自衛隊法法案

ACSA自体はそれほど大した事ではありませんが、これによって日豪防衛協力が進展することは、日本の防衛にとって大きなプラスになります。

将来、日豪軍事同盟が結ばれるようになれば、中国との衝突において、豪軍が日本の後方(地政学的な意味、補給の観点双方)を支えてくれることになるでしょう。

また、自衛隊が苦しむ訓練用地の確保の観点で、オーストラリアは魅力のある場所です。
現在、日本国内で実施が困難な実弾射撃訓練などで派米訓練が行われていますが、アメリカは距離が遠く、より近いオーストラリアの演習場が使えれば、手間も費用も削減できます。

それに加え、アメリカは演習場の使用費用などが非常に高いのです。
細かい数字は忘れてしまいましたが、訓練に際して、驚くような額をアメリカに支払っています。
オーストラリアの演習場は、アメリカと比べると使用費用などが安いと思われており、費用の縮減ができるのではないか、という噂は随分前から耳にしていました。
加えて、アメリカより広い演習場が使える可能性もあります。

何れにせよ、日本とオーストラリアが防衛面で接近することは、非常に喜ばしい話です。

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