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2010年10月27日 (水)

「海保法改正による公用船への危害射撃」は不可能

前回記事「自衛隊法の不備「領域警備」について法改正の動き!」に対して、ブログ「おたくのたわごと」を書いておられるぬくぬく氏から、「何でも自衛隊と言う前に、海保法改正による公用船への危害射撃を認める事。」とのコメントを頂いております。
また、同氏は前掲ブログでも、コメントと同内容の自衛隊法より先に海保法を改正する必要があるとの認識を書かれています。

基本的にネットでのケンカ(建設的な議論も含めて)はしたくない(何せ面倒)のですが、基本的な知識不足を前提とした主張なので、簡単に反論を書かせて頂きます。

なお、「領域警備」に関する法の必要性についても解説した方が良さそうな気がしてきましたが、長くなるので別の機会にします。

ぬくぬく氏のブログでは、同じ内容について、次の通り書かれています。
【領域警備を自衛隊任務に】自衛隊云々以前にやることがある
********************
現在の法律では、民間籍の船舶に対しては、停船目的の船体射撃は認められていますが、政府の公用船への射撃は認められていません。
現在、海上保安庁が第一義的には領域警備を担当し、常に自衛隊が行っているわけではありません。しかも、現行法における自衛隊の海上警備行動などでも、この、海保法による武器使用規定が準用されているので、今のままならば、どんなに自衛隊の任務を増やしたところで、警職法の「正当防衛」や、海保法の「民間船に限定した危害射撃」以上の事は行えない可能性が高いです。
まず、自衛隊云々よりも、この海保法にある武器使用規定を改正して、政府の公用船への射撃も認めるようにしなければ、自衛隊を動けるようにしても、まったく無意味になります。
********************

根拠法令を見てみると、海上保安庁法(以下海保法と記述)第20条2項に「当該船舶の進行を停止させるために他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由のあるときには、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。」と規定されています。

ただし、この規定は、同条2項一号において「当該船舶が、外国船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であつて非商業的目的のみに使用されるものを除く。)と思料される船舶」の場合のみに適用されることとされており、ぬくぬく氏が指摘するとおり、海保は公用船(軍艦及び非商業的目的のために運航されるその他の政府船舶)に対しては、停船目的などのための危害射撃ができません。
海警行動中の自衛艦も同様です。

公用船への危害射撃を認めるべきと言うぬくぬく氏の主張は、一見妥当なモノに見えます。
ですが、これは暴論です。
陸や空と異なり、海については長い伝統による「そんなのアリか?」と思えることが国際的にアリなのです。

海保法20条の規定は、日本も批准している明文化された国際法、海洋法に関する国際連合条約(略称国連海洋法条約)の規定を受けたものです。
国連海洋法条約の第29条から32条までは、「軍艦及び非商業的目的のために運航するその他の政府船舶に適用される規則」となっており、内容をはしょって書くと、外国の公用船は、沿岸国の警察権が免除され、臨検・拿捕はおろか、停船命令に従う義務はないことになっているのです。
(可能なのは退去の要求のみ)

ですから、海保法が外国の公用船に対して危害射撃を認めていないことは当然のことですし、それを認めることは国連海洋法条約違反となってしまいます。

国際法上、公用船は国土に匹敵するほどの強い権限を認められています。
言い方を変えれば、公用船に対する敵対行為は、即戦争行為に等しい訳です。
(航空機の場合は全く扱いが異なります)

日本の国内法令上も、外国の公用船に危害射撃をするとなれば、自衛隊に防衛出動を発令しなければなりません。
(戦争行為を行おうというのですから当然です)

という訳で、海保法を改正して、公用船への危害射撃を行わせることなど、到底不可能なのです。

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防衛関係法規・規則」カテゴリの記事

コメント

国際海洋法条約の規定云々の話は存じていますよ。

問題は、警察権としてできないという話です。
ここで問題になるのは海保の交戦資格のみですよ。

準軍隊として、交戦資格を得るのであれば、領土、領海、領空侵犯に対する措置はいささかも不可能ではありません。
米コーストガードや、ロシア国境警備隊のように。

それとですね。
防衛出動というのは、話が飛躍しすぎていると思います。

最近も韓国と北朝鮮の哨戒艇同士による海戦が起きていますが、あのような事例では、部隊が政府より前もってある程度の権限を付与され、その枠内でROEに従って警告から武器の使用に至るまで行われています。

自衛隊の領域任務と言う場合にも同じような権限付与が必要で、ならば、準軍隊として海保を認めれば、自衛隊を出すまでも無く、海保に権限付与並びにROEの策定を行えば、何も問題ありません。

このような権限付与事態が抑止力であり、なおかつ、不用意な戦闘の拡大防止にも役立つ措置になる訳で、一足飛びに防衛出動などと言う話になるようなものではないはずです。

いわば、いまだにこのような精密な話が出来る土壌には無い。

ならば、なおもこと、自衛隊への領域警備など、まだまだやってもらう訳にはいきません。

ぬくぬく 様

海保の交戦資格?
それは、海保を(それなりの)重装備もある警察組織から、装備の軽い軍隊組織にするってことですよ。

ご承知の通り、自衛隊に海警行動が発令された際でも、自衛隊の権限は海保法の準用です。
自衛権ではなく、警察権の発露として対処を行う訳です。
当然、自衛艦でも公用船に危害射撃はできません。

国連海洋法条約(国際海洋法条約×)は承知してらっしゃると書いてますが、理解はされてないのでは?

(準)軍隊として、「交戦」させると言ってますが、そんなことをすれば諸外国も海保を警察組織とは見なくなり、海保が海保(警察)であることのメリット自体がなくなります。

防衛出動は飛躍だとおっしゃいますが、では誰が何を根拠にしたら公用船への射撃ができると?

それと、自衛隊は防衛出動が発令されなければ(警察権ではなく自衛権として武力行使)、公用船への射撃ができませんが、国会承認が必要とされる防衛出動に対して、海保には通常の権限として戦争にも等しい公用船への危害射撃をさせるとおっしゃるのでしょうか。
それとも、海保にも行動任務を作りますか?
どう見ても、発令された時点で、装備が海保なだけの軍隊だと思いますが・・・

また、韓国と北朝鮮を例に上げられていますが、両国は現在でも朝鮮戦争の停戦中であり、衝突は休戦協定違反でしかないため、そもそも例になってません。(あれは戦争としての行動です)

在野の有識者にお話を聞いたとのことですが、多少なりとも法や関係規則、朝鮮戦争等の紛争について知っている方なのでしょうか?

おたくがプロに咬み付いて返り討ちに合うの図

果たしてそうでしょうが?

英語版のUNCLOSに因ると:
第二十五条第一項:
The coastal State may take the necessary steps in its territorial sea to prevent passage which is not innocent.

軍艦であろうと、第25条の規範から逃れられるとは聞いた事が無い。もし要求しか出来ないの場合、とでもPreventを出来ると読めません。

第三十条
If any warship does not comply with the laws and regulations of the coastal State concerning passage through the territorial sea and disregards any request for compliance therewith which is made to it, the coastal State may require it to leave the territorial sea immediately.

そして、もし要求(request/demand)しか出来ないなら、Requireとは出来なくなるんじゃない?

香港からの客人 様
お! いらっしゃい。
香港からですか。
多分、海外からは初のお客様かと。

25条に関しては、
Preventするために、take the necessary stepsすることができるだけでしょう。

で、30条において、軍艦に対するnecessary stepsとしては、Requireできることになってます。
Requireは、requestより強い語ですが、武力行使を伴う強制措置を可能にする言葉ではないと理解しています。
なお、Requireも、requestも、demandも、日本語では要求と訳されることが多いです。

25条が、全ての船舶に適用される規則で、30条が軍艦等に対する規定なので、軍艦等も25条の扱いでいいと理解されているなら、条約の読み方の問題かと思います。

ただし、無害でない通行が、戦闘行為と認識されるようなら、海洋法条約前文の最後で規定されるように、既にこの海洋法条約で規定される事態ではなく戦争ですから、自衛隊も防衛出動が発令され、戦闘行為も可能になります。

また、2004年の中国漢級原子力潜水艦領海侵犯事件においては、潜没したまま航行したため、無害通航にはあたらず、領海侵犯となり、necessary stepsとして、自衛隊に海上警備行動が発令されました。
潜没したまま中国の国旗も掲げていませんでしたから、日本としては、海洋法条約29条に定義される「軍艦」と認識する必要も無かったので、条約上は撃沈することも可能だったはずです。
撃沈すべきだった、という意見も多かったですね。
ヘタレ日本政府は見逃しましたが……
で、その後は中国の潜水艦も、日本近海を通過する際は、浮上して航行しているようです。

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