日本の偵察機整備が大きく転換か?
最近、日本の偵察機整備が大きく転換すると思わせられるニュースが相次いで報道されています。
まず確定的なニュースとして、事実上のRF-15開発計画中止を意味する東芝との契約解除が発表されています。
「F-15偵察機化試改修事業に係る契約の納期猶予不承認について」(防衛省発表10年10月1日)
「防衛省:東芝との契約解除へ F15改修で部品調達できず」(毎日新聞10年10月1日)
防衛省自身が契約の解除へ向けた協議を行っていると発表しているので、RF-15開発が座礁したことは間違いありません。
手前味噌で申し訳ありませんが、こうなることは予測の範囲内でした。
以前の記事「離島有事に無人偵察機」で、無人機研究システムが制式化されるのであれば、機能が競合するRF-15には、予算を付けることが不可能ではないか、と書いたのですが、やはりそう言う方向になったようです。
強行偵察用として、有人と無人の二つの手段は調達できないということでしょう。
そして、この発表からわずか3日後、今度は防衛省がグローバルホークの導入を検討しているとのニュースが流れています。
「米国製無人偵察機、3機導入へ 中国や北朝鮮想定」(共同通信10年10月4日)
ホントかな~?
と思っていたのですが、さらに3日後、続報が流れています。
「米国:最新鋭無人機を初公開…「グローバルホーク」」(毎日新聞10年10月7日)
米軍がかなり強力にプッシュしていることを証するニュースですし、防衛省が導入に向けて舵を切ったと見てよさそうです。
空自としては、滞空型の機体による継続的な監視をグローバルホークによって行い、要事の危険域における強行偵察を無人機研究システムの実用化機によって行うという2本立ての偵察機態勢を決定したようです。
今まで有人偵察に拘ってきた空自ですが、偵察に関しては完全に無人化する方向のようです。
なお、以前から書いているとおり、無人機の運用には基地対策上の困難が伴いますが、それを踏まえてグローバルホークは硫黄島からの運用になるようです。
しかし、緊急時には本土の空自基地にも下ろす可能性があることを踏まえて、事前に基地対策は必要です。
まだ鬼が笑いそうな予測になりますが、RF-15が消滅したことを踏まえると、運用は偵察航空隊が行うことになりそうです。
偵空隊が全て硫黄島に移駐になるのか、一部が百里にとどまるのか、そのあたりも中期防への盛り込みと併せて検討されているものと思いますが、現時点では情報がありません。
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» 誰かが撃てる、撃てば必ず当たる [荒振る野帖]
という夢のようなコンセプトで構想されている日本の戦闘機が、高度に情報化され(informed)・知能化され(inteligent)・瞬時に(instantaneous)敵を叩くi3FIGTER(アイ・ファイター)だ。次のような七つの能力で、それを実現するという。 誰かが撃てる、撃てば必ず当たる、クラウド・シューティング 数的な劣勢を補う将来アセット・クラウド 撃てば即当たるライト・スピード・ウェポン 電子戦に強いフライ・バイ・フライト 敵を凌駕するステルス 次世代ハイパワー・レーダー 次世代ハイ・... [続きを読む]
LREは硫黄島に置くことになるのでしょうけど、MCEはどこに置くんでしょうね?
米軍の「本土に設置したMCEで世界中どこに展開しているグローバルホークでも管制できる」が本当なら、技術的には日本のグローバルホークのMCEはどこにでも置けることになりますが。
とすると、百里にMCEと言うのが安直ですが、無難な線かと思います。
投稿: 藤宮 直樹 | 2010年10月15日 (金) 10時50分
今後日本が無人機を運用していく上でグローバルホークの導入はいい経験にはなるでしょう。藤宮 直樹氏が指摘されている様に、恐らくグローバルホークの機体そのものは硫黄島に配備し、管制は別の場所にてということになるのではと予測します。
投稿: アシナガバチ | 2010年10月15日 (金) 12時54分
藤宮 直樹 様
アシナガバチ 様
管制はどこでもOKなはずなので、手間もコストもかかる硫黄島はないでしょうね。
百里は有力な線ですが、その他には、収拾した情報の使用の利便性を考えると、作戦情報隊のいる横田とかもアリかもしれません。
投稿: 数多久遠 | 2010年10月16日 (土) 19時28分
数多様
下名としては、あの契約解除が何故発生したのかが不明です。
無人機研究システムは、RF-15が契約になるはるか以前より始まっていました。
よって空自は、RF-15の翼下に無人機を吊り下げたものを運用するのだと想像していました。
東芝の評判を貶める発表を、わざわざ防衛省が行ったことも良く分かりません。
短SAM(改II)やC-2ELINT等、東芝の技術力を必要とするプロジェクトがあるにも
関わらずです。 うーむ。。。と首をひねってしまいます。
投稿: やん | 2010年10月18日 (月) 01時01分
やん 様
何故か、と言えば、やはり予算的に苦しかったということに尽きるのではないでしょうか。
確かに、以前の防衛省なら納期を延ばしたはずだと思うので、私から見ても驚きのニュースでした。
ただ、防衛省は昔からメーカーにはかなりキツイ注文をします。
特に運用系の人間は、開発や調達サイドの苦労なんて気にしませんから。
あと、東芝さんは必ずしも評判が良い訳では……
投稿: 数多久遠 | 2010年10月18日 (月) 22時27分
数多様
予算が全てですねぇ~。 納期延長の再申請だったということも、防衛省は我慢
できなかったんでしょう。
運用の方々の要求は、新規プロジェクトや整備フェーズのプロジェクトでも、かなり
厳しいという話はよく伺います。
東芝って、そんなに評判良くないんですか?(驚)
投稿: やん | 2010年10月19日 (火) 00時38分
やん 様
いえ、決して評判が悪い訳ではありません。
ただ、民生品ほどのネームバリューはないです。
ただ、あんまり厳しいこと言わない方がいいかもしれませんね。
ある所で、防衛装備の生産は厳しいと嘆いている方がいらっしゃって、「それは、撤退も考えているということですか?」と聞いたら慌てて否定されてました。
かわいそうなことしたな。
投稿: 数多久遠 | 2010年10月19日 (火) 21時52分
数多様
そうなんですかぁ~ 東芝さんは高い技術力がある会社だと思っていました。
民生品とは、また違うんですネ。
投稿: やん | 2010年10月20日 (水) 00時17分