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2010年10月 2日 (土)

今回はエスカレーション・ラダーを上がるべきだった

何度も似たような記事になってしまい申し訳ありませんが、今回も尖閣ネタです。

コメント欄にお邪魔したり、ツイッターでこちらの記事を紹介したりして頂いているzyesuta氏が書かれているブログ「リアリズムと防衛を学ぶ」が、「自衛隊を出すばかりが防衛ではない」と題して、国境係争における警察等組織の活用と、今回の事案では事態をエスカレートさせ、自衛隊を出すようなことは不適切であったとする記事をUPしています。

前半部分(国境係争における警察等組織の活用)については異論はありませんが、後半(今回の事案に関わる部分)については私の考えが異なるので、今回はzyesuta氏の記事への反論として書いてみます。
なお、以下についてはzyesuta氏の記事を読んでいることを前提として書いていますので、まだ読まれていない方は、「自衛隊を出すばかりが防衛ではない」を先にお読み下さい。

実を言うと、中国漁船船長の解放前、私は「尖閣問題解決のためには火に油を注げ」として、事態収拾のためには、事態の沈静化を図るのではなく、逆にエスカレートさせるべきだという記事を準備していました。(船長の解放でお蔵入りしましたが)
「交渉で収められるところを、むやみにエスカレートさせるメリットはあまり大きくありません。」とするzyesuta様の主張とは逆の方向です。

私も、何でもかんでも強硬な主張をしてエスカレートさせろなどと言うつもりは毛頭ありません。チャベス大統領やアフマディネジャド大統領などはそういう方ですが、一言で言えば頭が悪いとしか思えません。

ただ、今回はエスカレートさせるべきだったと考えています。

今回、中国は、尖閣が中国領土であるから船長の逮捕が不当だとして難癖を付けてきました。
そのため、事態を交渉で治めるつもりなら、いずれにせよ、法的措置をせずに釈放せざるを得ませんでした。
日本が船長を起訴、有罪とする法的措置を採り、中国がこれを黙認してしまえば、尖閣を日本が領有していることを、認めてしまうことになるからです。
交渉で事態を収拾するためには、今回と同様に日本外交の敗北でしか収拾が図れなかったのです。

しかし、今回のレアアース禁輸で世論に動揺が生じたように、事態を長期化させることが得策だったとも思っていません。
ですから、中国が国内の言論統制をしても事態を無視するように仕向けるためには、「火に油を注げ」としたとおり、早期に事態をエスカレートさせるべきだったと考えるのです。

台湾海峡ミサイル危機が米空母機動部隊の派遣で収まったように、最終的には尖閣周辺にワシントン(空母)が展開するような事態までエスカレートすれば、中国は折れざるを得なかったと考えています。(もちろん、途中の段階で折れればそれに超したことはありません。)

エスカレーション・ラダー(普通核戦略で使われる言葉ですが、キューバ危機でよく使われたエスカレーションの段階のことです)とすれば、まずは船長の起訴、そして有罪判決、警察等日本の公機関の尖閣上陸、最終的には自衛隊の尖閣上陸となります。

日本が、梯子(ラダー)を上りながら、エスカレーションを厭わないことを明確なメッセージとして中国に伝えることが出来れば、その段階で、中国は方針を転回したはずです。
米国と軍事衝突する訳にはいかないからです。

今後、(おそらく領海内で違法操業を行い、)漁船を巡視船に体当たりまでさせて摘発から逃れようと公務執行妨害図った船長を起訴・有罪にしなかった以上、海保を如何に増強して警備強化したとしても、海保は現場ではろくな活動はできません。
違法操業を発見しても、スビーカーで警告を行うのが関の山でしょう。
相手が無視して操業を続けても、臨検しようとしたところで、相手が逃げに入ったら見過ごすしかできません。

外交的敗北を喫すれば、その一つの事例が、現場の手足を縛るのです。

そうした事態が継続し、違法操業が常態化すれば、日本は尖閣周辺において管轄権の発露である警察権の行使を行っていないことになり、尖閣を統治しているという事実を失います。
竹島と同様に、口で主張するだけの状態となってしまうのです。

ただし、実際問題として、それ(エスカレーション)を行えと主張しても、現政府のそれが出来たかと問われれば、無理だったろうとも思えます。
その意味では、私の主張は砂上の楼閣とも言えます。
強い意志と指導力をもった指導者がいなければ、実施できない選択肢だった訳です。

今回のように日本側が折れることで事態を収拾するか、エスカレーションさせても相手を折れさせることを意図するかは、他の政治的情勢も考慮して選択する問題ですが、多分に思想的な問題でもあり、難しいものです。
ですので、こういう(多分過激な少数派と目される)考え方もあると思って頂ければと考えています。

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コメント

民主じゃムリでしょう。

それに今回はエスカレートさせる準備が足りないと思いますよ。(逆にいえば準備が整っていればやる価値はあると考えられます)

さらに言えば、相手にも強力な指導者が必要でしょう。(キューバ危機みたいに--)

今回の件では、どうも中共の指導者層が弱体化しつつあるような印象を受けました。昔の周恩来のような人間が不在なのでは--としか思えません。国共合作時の国民党のようになりつつあるのでは?と考えられます。

エスカレーションはまだ早い。今は可能な限り引き延ばして、『民主党政権にダメージを与える』べきだと思いますね。

もし中国の指導者層がまともであるなら、民主党のほうが自国にとって有利になるのだから長引かせないでしょう。しかし、どうもその様子はないようですので、まともな指導者がいないか、内部での権力闘争にかまけているかなのでしょうね。

カン内閣の支持率がガタ落ちになったようですが、速いとこ総選挙になることを願っています。

私も今回の反論は砂上の楼閣という言葉が正しいと思います。
実際にエスカレートさせるとしてどんな手段が取れたか甚だ疑問です。
相手が尖閣にいないので巡視船程度の増派可能かもしれませんが自衛隊には出動する根拠法がありません。
尖閣は個人所有地なので借り上げることで国が管理しているからこそ迅速に海上保安官が活動できますがやはり個人所有地に借り受けているからといって平時に自衛隊が上陸できるとは思いません。
アメリカの空母の派遣にしてもアメリカ自身があの状況で派遣に踏み切るとは到底思えません。

今回の件で一番思ったのは、日本の政治の未熟さです。私は民主党が潰れればいいと思っていますがそれと同時に助け舟を出さなかった(若しくは出せなかった)自民党も情けないと思いました。
国家の危機に際して我を捨てて協力できない政党や政治家にどんな価値があるでしょうか?
そして気軽な気分で政権交代を実現させた底の浅い有権者にも失望しています。

現状中国は軍事衝突して日米に敵わないのですから、日本は相当強気でも大丈夫だったでしょう。
今回に限っては日本の方が、軍事的オプションを選択し事態をエスカレートさせることが可能でした。
アメリカ政府高官の一連の発言も、その事を日本政府へ伝えて早期に腰砕けさせないようにしたのだと思います。

しかし”戦闘が発生した時点”もしくは”軍隊が動いた時点”で世界が終わると認識しているような日本の政治家に、そんな政治は不可能でしょう。
武力を伴う事態を極度に恐れるように、日本人を洗脳した時点であちらさんの勝利でした

結局の所は日本が強気で出られる情勢であったにも関わらず、強気で出られる指導者でなかったことが敗因かと。

良く民主じゃダメのような話を聞きますが、中でも現首相の菅さんでは全く期待できず。
では自民政権なら大丈夫だったかというと、そうでもなく。
個人的には小泉、麻生両元首相辺りでなければ厳しかったと思いますね。

みやとん 様
確かに民主党じゃムリですよね。
アメリカの民主党なら、普通にやるところですが……

準備ですが、これと言った準備は大して必要ないと思います。
実際の軍事衝突になんて、なるはずはないですから。

内閣支持率は、たしかに大分落ちましたが、まだ50%もあるんですから、まだまだ国民が目覚めてないと思えます。

っと 様
今回の事態でも、漁業監視船が近づいてきた時点で、海上警備行動くらいは十分に発令可能です。
それに、自衛隊を出す前に、船長を起訴・有罪にする方が先です。
菅首相が行っていた国連の場でも、強力なアピールはいくらでも可能でした。
やる気がないだけですよ。

自衛隊は、私有地を借りて訓練だってしたことがあります。(事実私もやりました)
国が借用している土地なら、事前に断りを入れる必要さえありません。
少し、警戒しすぎじゃないでしょうか。

アメリカの空母は、最終的に出てくるのであって、あの状況で出てくるはずはありません。
そのように読み取れたのなら私の筆力不足です。

確かに自民党の対応も誉められたものではありませんでしたね。だから自民支持率も上がらないんでしょう。
仰るとおり、全ては国民の判断の結果なんですよね。

SUS 様
全ては軍事アレルギーのせいですかね。
エスカレーションの用語にしたって、多くの人の理解では、エスカレーションは始まると際限なくエスカレートするものだと理解されているくらいですから。
確かに、この状態のままでは、次も敗北でしょうね。

藤宮 直樹 様
仰るとおり、指導者で負けたというのは、その通りでしょうね。
少し期待していた前原外相でさえ、あんな調子でしたから。

上げられている元首相以外となると厳しいですね。
谷垣氏も、当てにはならず、中国寄りでさえなければ田中真紀子氏あたりが良いかもしれませんが……

意外と森喜朗氏が、骨がありそうに思います。
台湾の元総統の李登輝氏のビザ発給問題で、中国の圧力と外務省のごご進講
にも屈せず、李登輝氏にビザを発給するよう外務省に指示したあの度胸は政治家
として立派でした。

やん 様
森元首相ですか。確かに度胸はありそうですね。
ただ、失言とか多くて、国を撒かせるにはちと不安です。
中国寄りでないのは、良いですね。

佐藤正久氏がもっとメジャーになってくれれば……。

数多様
下名も、森元首相は失言が多いなと感じていましたが、これはマスコミが
何でもかんでも悪い方向にもっていこうとする報道にも問題がありました。
素質のある政治家を育てる為には、ある程度のことは我慢する姿勢も大事
です。 中国だけを慮る政治家のなんと多かったことかと思います。
小沢氏と菅氏は、今でも「中国が大事」の姿勢ですから。。。。。

佐藤氏の活躍を期待しています。

やん 様
小沢氏は別の問題で退場してくれそうですが、菅はまだ居座ってますね。
早く解散しないかな。

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