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2010年10月 7日 (木)

那覇へE-2Cローテーション配備 尖閣周辺防空網の欠陥を改善

以前の記事「与那国島上空のADIZ再設定は大したニュースじゃない」で、「見えないし、間に合わない」として、不備を指摘した尖閣上空などの空自防空態勢ですが、改善の動きがあります。

空飛ぶレーダーサイト、E2Cの沖縄展開を検討 防衛省」(朝日新聞10年10月6日)

防衛省が、三沢に配備されているE-2C早期警戒機3機程度を、那覇基地にローテーション配備することを検討しているとの報道です。

記事中にもあるとおり、以前から検討されていたようですが、今回の尖閣事案を受け、現地沖縄を含めて、世論が後押しするだろうという観点から、発表することにしたのでしょう。

防衛力強化につながる施策は何かと反対しがちな沖縄ですが、国による警戒の強化まで求めた現状では、反対も出来ないでしょう。
それに、那覇配備機のF-4からF-15への変更でも大した反対はでなかったので、防衛省側の準備が出来れば、問題なく実施されるものと思われます。

以前の記事では、わざとボカして書いたのですが、今回の報道で尖閣上空では2000m以下がレーダーサイトの死角になっており、警戒監視が不可能であると、具体的な数値も出てきました。

この死角を消すことができる施策なので、非常に評価できる施策だと思います。

ですが、効果は限定的だとも言わざるを得ません。
3機程度のローテーション配備では、24時間の連続哨戒を行えば、あっという間に人も機材も音を上げる数だからです。

ただし、E-2Cによる連続哨戒は、滞空時間が短いため、たとえ機数があっても結構大変です。
だからこそ、AWACSが配備されています。
(なお、当然ですが、E-2CやAWACSは普段から連続哨戒を行っている訳ではありません。)

今回検討のE-2Cローテーション配備は、情勢の緊迫時にAWACSが態勢を整えるまでのツナギとしての処置でしょう。
例えば、民航側駐機エリアの借用ができるなど状況が許せば、AWACSの那覇展開の可能性があります。(浜松からでも運用は可能ですが、流石のAWACSも南西方面まで都度進出するのは大変です。)

以前は、那覇基地でのAWACS運用が不可能でしたが、2009年にエプロンの嵩上げ工事が実施され、KC-767とともにAWACSも運用可能になっています。

なお、E-2Cの那覇常時配備が検討されていない理由として沖縄の基地負担を考慮していると報道されていますが、那覇基地が手狭でE-2C全機を受け入れるほどの余力がないという現実問題の方が、実際の理由としては強いと思います。

また、このE-2Cのローテーション配備が実現すると、新たな問題点が発生しないかは気になります。
朝日の報道中でも言及されているスクランブルの回数が急増しかねず、アラートを実施している204飛行隊の負担が非常に高くなることが予想されるからです。
(低高度が見えることにより、今までも本来ならスクランブル対象であるにも関わらず、気が付かずにいた目標にも、今後は対処することになるため。)

204飛行隊のスクランブル負担が大きいことは、以前の記事「21年度スクランブル実績」でも指摘しました。
これ以上スクランブルが増えると、人員だけでも増員するなどの配慮が必要かもしれません。

また、今回のニュースは、航空自衛隊の部隊運用上としても興味深いニュースです。
というのも、米軍では良く耳にするローテーション配備ですが、空自ではついぞ聞いたことがないからです。

似たようなケースでは、那覇の夜間ランウェイ工事が行われた際、当時の配備機であるF-4を嘉手納に展開させ、夜間のアラート待機を嘉手納から行った事例(嘉手納アラート)がありますが、訓練やこうした工事のケースを除けば、一部の機体が他基地で運用されることは非常に珍しい話だと思います。

今後、自衛隊が「実効的」なものに変革を迫られると、部隊運用の形として増えて行くかもしれません。

この措置で、尖閣上空の「見えない」という状態は、かなり改善されます。
(本当は魚釣島にレーダーサイトを作ってしまうのは一番ですが、運用が困難(メンテや給電)なことや防御が困難(常続的な航空優勢確保がムリ)すぎることから妥当な措置と思います。)

後は、「間に合わない」の部分です。
尖閣は、那覇と中国本土の航空基地のほぼ中間にあります。
中国が既にSu-27系の機体を多数配備していることからも、尖閣上空で航空優勢を確保するためには、より近い距離に航空基地が必要です。

航空優勢の確保において、航空基地の距離が非常に重要であることを理解することは難しいかもしれませんが、制空戦闘の際、高速で機動して優位に立つためには、ABの使用は必須であり、つまりは燃料に余力があることが重要なのです。
(F-22があると、話は違ってきますが……)

沖縄県知事や石垣市長まで国に警備強化を要請するような事態は、空自にとって願ってもないチャンスです。
今のうちに、屋良覚書を破棄し、下地島を自衛隊が利用できるよう、プッシュを開始すべきです。

ちょっと想像していなかった事態ですが、石垣市長まで警備強化を言い出すとなると、新石垣空港の軍民共用なんて言うウルトラCもあるかもしれませんが、事実上の遊休地である下地島を使わない手はありません。
(それに下地島を利用した場合、伊良部大橋完成後は、宮古島空港がダイバート先として陸続きとなるので非常に便利)

今回のE-2Cローテーションについても、防衛省はこっそりと検討していたようですから、下地島の利用も、実は水面下で交渉しているのかもしれません。

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コメント

もう下地島空港は閉鎖で良いんじゃないですか。

空港は閉鎖、跡地を国に委譲し空自基地として整備すると言うことで。
これらの手続きを踏むことで、屋良覚書は自動的に無効に…なりませんかね?

空自の場合、E-2Cの直衛に戦闘機が就いたりはしないのでしょうか?
AWACSを出張させるにしても、発表通りE-2Cで警戒するにしても戦闘機部隊の増勢は欲しい気がするのですが。

軍事には素人なので、てっきりローテイション配備は前からやっているものとカン違いしていまきした。

いままでやっていなかったとすると、かなりの負担になりますね。自衛隊の方々には頑張って欲しいものです。

法的(覚書等も含む)な問題ではサヨクがどういう態度をとるかが見ものですね。

尖閣での政府の対応が酷過ぎて、沖縄から言いだしてくれたのは幸いでしたね。ただ民主なので油断はできませんね。

藤宮 直樹 様
JALも新人育成どころじゃありませんし、流れは良い方向でしょうね。
さすがに、自動的に無効という訳にはいきませんが。

一般論として、E-2CにしてもAWACSでも、直援が必要はほど前に出すものではありません。(ロシアみたいに信じられないほどの長射程のAAMがあると、運用は難しいですが)
相手が出てくれば下げます。

戦闘機部隊は、使用可能な飛行場が増えない限り、機数を増やしても十分な運用はできないですね。
那覇はそのくらい過密です。
なので、人だけでもという話です。

みやとん 様
多分、宿舎の整備とかもしないとキツイと思います。
アメリカの場合は、ローテーションにも対応して行けるように、娯楽施設なんかも充実してたりします。

ホント左翼は見物ですね。

沖縄は、普天間を県外とか言ってきましたが、尖閣事案以降、知事も軟化してきたように思います。

伊良部大橋開通後の下地空港については、現地でいろいろとウワサがありまして、土地を買い占めたとの話を関係者から聞いたことがあります・・・


宮古のレーダーで、尖閣を除く八重山諸島の防衛上の監視体制は足りているのでしょうか?
また、「新石垣空港の軍民共用なんて言うウルトラC」ですが、これは物理的に可能なことなのでしょうか?

まあ現石垣市長は右派なので、国が石垣島のどこかに「自衛隊を配備する」と言えば反対はしないはず。「自分からは誘致しない」と言っているだけなので。


>沖縄は、普天間を県外とか言ってきましたが、尖閣事案以降、知事も軟化
>してきたように思います。
仲井眞知事は元々辺野古移転容認派。民主党がぐちゃぐちゃにしたので「現状での県内移転は困難」と言っているだけでは。

野底マーペー 様
おお、土地の買い占めですか。
防衛省の意を受けた有力者(あるいは地上げ屋?)でしょうか。やはり水面下では動きがありそうですね。

宮古のレーダーで足りるかとのことですが、与那国を除けば、おおむね大丈夫だと思います。
欲を言えば、久米みたいな高所にレーダーが欲しいですが、八重山は高い土地が少ないですから、致し方ないでしょう。

新石垣空港の軍民共用ですが、石垣の方が言い出せば、ありえない話ではないと思います。
ただ、固定翼機の運用飛行場としては、いろいろな面で下地の方が上だと思います。それに、平良港の能力が高いことも下地の評価を上げます。

現石垣市長は、そんなに右の方でしたか。
案外、ウルトラCを本気で狙っているかもしれませんね。

普天間は、返す返す民主の不手際ですよね。
誰も良い思いをしてないんですから。

AWACSの直衛…って考えてみるとあまり意味がなかったですね。
誰よりも良く見えるわけですから、旧ソ連のように高空から、マッハ3級の機体を用いて長射程AAM、とかステルス機を用いた奇襲(と言うのができるかどうかは疑問ですが)、ぐらいしか。
敵が中国ならどちらもできませんから、心配有りませんよね。

むしろ浜松近くでMANPADS構えて離着陸時でも狙った方が効率良いかと。

直衛がないにしても、スクランブルを行う戦闘機隊は増やしたいので、その為には基地が必要ですよね。

藤宮 直樹 様
ただ、中国もステルス機を配備しようとしてますから、AWACSの能力向上は必要ですね。
空自がしっかりと金を付けられればいいんですが……

浜松は、MAPADSどころかRPG-7でも当てられるんじゃないかと思えるほどなので、要注意です。
対策には、空自だけでく、政府や法的処置も必要なので難しいですが……

そのためのATD-Xではないでしょうか。
少なくともアレでステルス機を探知するための研究はできますし。

さすがにRPG-7で撃ったら、その後射撃手の命がないような気がするんですが。
あちらの方だったらそれでもやりかねませんかね?

確かに、RPG-7で撃ったら、その後の離脱は難しいでしょうね。
でも、向こうの方に取ったら人命なんて安いでしょうから、あり得るのではないでしょうか。

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