H23概算要求-その1_潜水艦増強
23年度の概算要求資料が公開されました。
我が国の防衛と予算 平成23年度概算要求の概要
今後、何回かに分けて来年度の概算要求について見てみたいと思います。
今回は、防衛省資料の発表前にも報じられていた潜水艦の増強についてです。
「海自潜水艦を増強 活発化する中国海軍に対処 防衛大綱改定」(産経新聞10年7月25日)
潜水艦の建造は、既存艦の延命措置と相まって、艦数増となるものですし、そうりゅう型AIP艦への更新ですから、かなりの能力向上になるものです。
ですから、悪くない要求だと思っています。
ただ、この件でホンネを隠した、というより欺瞞した要求になっていることに関しては、嫌な感じがします。
というのは、潜水艦の建造や延命が「平素からの情報収集・警戒監視活動」の項目として盛り込まれているのです。
潜水艦が情報収集や警戒監視に寄与しないと言うつもりはありませんが、潜水艦は主にその隠密性から攻撃的性格の強い兵器です。
言わば暗殺者のようなもので、敵の防御網をかいくぐって親玉を一撃で仕留めることのできる兵器と言えます。
その攻撃力をもって、敵の行動を牽制することに最も効果を発揮する兵器なのです。
素直に、中国が建造中の空母の行動を規制する、そしてそれによって我の行動の自由を確保するためだと言うべきです。
もっとも、素直に言ったら買ってもらえそうにないからこんな言い方なんでしょうけど……
また、この潜水艦増強については、背景にアメリカの意向があるのではないか、と思っています。
中国の海軍力、特に空母については、アメリカも先月発表した中国の軍事動向に関する年次報告で警戒感を示しています。
アメリカも中国の海軍力を牽制する必要を感じている一方で、日本同様に軍事費の工面には苦労しています。
そのため、攻撃型原潜は減勢傾向で、2013年の55隻をピークとして減少し、2020年には50隻を割り込む、2030年には40隻を割り込む予定となっています。(軍事研究誌10年5月号「米海軍313隻艦隊の30年建造計画より」)
海自が米海軍と非常に強い結びつきを持っていることは、冷戦期にウラジオストックの潜水艦を封じ込めるために大量のP-3を装備したことなどから読み取れる通りです。
米海軍の攻撃型原潜の減勢を補い、中国の空母を中心とした海軍力を牽制するため、海自に潜水艦の増強を求めたのではないか……というのは、決して穿ちすぎとは思えません。
防衛計画の大綱を見直すことを前提としたこの要求ですが、人員確保など現実的な問題もあるものの、最大のハードルは小沢氏が首相にならないかどうかだと思ってました。
とりあえず小沢首相の登場だけは回避されたようなので、このまま通るかもしれません。
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船と共に人も増やして欲しいですね
潜水艦の使用目的に関しては、平時においても有事においても主任務は情報収集と警戒監視ですから嘘ではないということでw
投稿: SUS | 2010年9月15日 (水) 10時04分
本当に、人民解放軍野戦司令官が首相にならなくて良かったです。
防衛力の整備は、一朝一石には無理なのですから、軍事費を削って喜んでいる
場合ではないと思います。
投稿: | 2010年9月16日 (木) 01時55分
SUS 様
海自は増減0みたいですね。
空自は増、陸自も常備化で実質増なのに……
名無し 様
人民解放軍野戦司令官……なにせ自称ですからね~
ホント幸いでした。
投稿: 数多久遠 | 2010年9月17日 (金) 22時29分