ブログランキング&ツイッター

  • 軍事・防衛 ブログランキング
  • ツイッター

« 横田基地フレンドシップフェスティバル2010 その3(その他とオマケ編) | トップページ | 日本の偵察衛星、光学系のみに »

2010年8月31日 (火)

対中国防警計画は間違っている

自衛隊が離島の奪還を意図した訓練を実施することが報じられています。

自衛隊が離島奪還訓練、南西諸島想定し12月」(読売新聞10年8月19日)
********************
 防衛省が今年12月、新たに策定した沖縄・南西諸島の防衛警備計画に基づき、陸海空自衛隊による初の本格的な離島奪回訓練を、大分・日(ひ)出生(じゅう)台(だい)演習場などで実施することが、18日、明らかになった。

(中略)

 訓練は、青色(味方)軍と赤色(敵)軍に分かれ、大分県内の陸上自衛隊日出生台演習場の一部を離島に見立てて行われる。

 まず、赤色軍が自衛隊の配備されていない離島に上陸、占拠し、島内に対空ミサイルなどを備え付けるとともに、周辺海域に海軍艦艇を集結させているという状況から始まる。

 すぐさま防衛出動が発令され、防衛省は、対地、対艦攻撃能力の高い空自F2戦闘機と海自P3C哨戒機を出動させる。赤色軍の対空兵器を弱体化させるとともに、陸自空挺(くうてい)団員など約250人が乗り込んだ8機の空自C130輸送機が、空自F15戦闘機の護衛を受けながら離島に接近する。空挺団員らは次々にパラシュートで降下し、海空自の援護射撃を受けながら赤色軍を制圧、島を奪い返すというシナリオだ。

 訓練は同演習場のほか、沖縄・南西諸島周辺の訓練海域も使って行われる。

(中略)

 防衛省幹部は「中国に対し、日本は南西諸島を守りきる意思と能力があることを示す。それが抑止力となる」と訓練の目的を説明する。同省は訓練の一部を公開する予定という。
********************

自衛隊の場合、予算として盛り込まれてない大規模訓練を実施することは事実上不可能ですから、この訓練は、今年度の予算資料で実施が盛り込まれていた陸自方面隊実働演習(離島対処)に米軍の協力を取り付けたものだと思われます。

同訓練については、以前の記事「H22概算要求-離島侵攻対処」において想定がおかしいと注文をつけています。

まさか、それを見て変更した訳ではないでしょうが、今回の報道を見る限り、想定はまともなものになっているようです。
予算資料にあった内陸部への侵攻対処は消えて、純粋な離島侵攻対処になっています。

ただし、日出生台の一部を設想(せっそう:自衛隊用語で、演習などで状況付与のために想定すること)離島とするようですが、それが魚釣島だったとしたら、あの急峻な島に8機ものC-130輸送機から空挺降下することが本当に可能なのか、少々疑問でもあります。

それはともあれ、今回の本題はこの訓練ではなく、この訓練が検証を兼ねるであろう防衛警備(以下防警と表記)計画です。
防警(ぼうけい)は、正式な名称を「防衛、警備等に関する計画」と言い、訓令で作成することが定められています。
内容は、「(重大な事態が発生した際)自衛隊が対処する場合における基本的事項等について定め」たもので、端的に言えば作戦計画の一種です。
ちなみに、前は毎年1回作成していたので年度防衛及び警備計画、略して年防(ねんぼう)と呼ばれてましたが、今は防警となっています。

防衛省が今回の訓練に際し、どの程度情報をリリースしたのか分かりませんが、読売の報道では「新たに策定した沖縄・南西諸島の防衛警備計画に基づき」となっており、沖縄・南西諸島を対象とした防警が存在することが報じられています。(私の認識では、以前は、防警計画が対象とする事態が明らかにはされていませんでした。)
記事中では、防衛省幹部のコメント扱いになっているので、防衛省が正式にアナウンスした訳ではないと思いますが、対象が中国であることも匂わされています。

さて、問題はその中身です。
特に焦点となる所は、離島対処の計画(あるいは作戦)では、いつも話題になることですが、取られないようにするか、あるいは取られてから取り返すか、という点です。

軍事的な危機が何時発生するか明確はではない状態で、離島を取られないようにするためには、大部隊を長期に渡って展開させなければなりません。
インフラが皆無の無人の離島では、これは非常に負担の大きな作戦です。
竹島に韓国部隊が常駐していますが、あのように恒久展開のための施設を設けない限り事実上困難です。
また、同時に、海は周辺の制海権、空は航空優勢を持続的に確保しなければなりません。特に、制空権と言う言葉が使われなくなった事で分かるように、持続的な航空優勢の確保は非常に困難です。

ですから、軍事的には、取られてから取り返す方式は妥当性のある作戦です。

そして今回の訓練想定を見れば分かるとおり、現防警も取られてから取り返す方式になっています。(恐らく)

しかし、防衛省がこの方式で防警計画を作っていることについて、私は間違っていると思っています。

それは、日本政府が信じられないからです。

取られてから取り返す方式は、前述した通り、軍事的には妥当性のある方式です。
ですが、政治的にはハードルの高い作戦でもあります。

今回の訓練概要が示すとおり、取られてから取り返す方式では、敵が離島を占拠した後、奪還作戦として、航空優勢、制海権を確保し、当該離島に爆弾や艦砲で攻撃してから陸自戦力が乗り込みます。
何が言いたいかと言いますと、作戦が非常に攻勢的な作戦からスタートすることになるのです。
(見ようによっては一方的な虐殺に見える。特に正規兵以外を送り込まれると非常にやっかい)

もしコレが行われそうな状況になれば、相手は国際世論や安保理事会に訴える宣伝戦を展開するでしょう。
しかも、その相手はウソをつこうが気にもしない独裁国家です。

もしかすれば、乗り込ませた兵を意図的に殺される事も意図するかもしれません。伝統的に人海戦術を得意としてきた中国にとって、それは難しいことではありません。

そんな状況で、攻撃を意図できるほど日本政府に根性や気合いがあるとは思えないのです。

自衛官が軍事的合理性に則ってモノを考えることは正しい事です。ですが、軍事的合理性だけで考えることは危険です。

対中国の離島を巡る戦いでは、中国が躊躇するほどの大部隊を事前に展開させるのでなければ、非情な作戦にはなりますが、中国がやりかねないと書いたように、少数を展開させ、殺される方からスタートしなければ、その後の展開は難しいように思います。

今回のような演習はもちろん必要ですが、机上演習(CPX)で、政府の対応を検証することが必要です。
(そしてそれを国民に明らかにすることも。)
取られてから取り返す方式は決意の敷居が高い作戦です。
毅然とした対応が出来るのでなければ、泣き寝入りになりかねません。

« 横田基地フレンドシップフェスティバル2010 その3(その他とオマケ編) | トップページ | 日本の偵察衛星、光学系のみに »

先島防衛」カテゴリの記事

コメント

>しかも、その相手はウソをつこうが気にもしない独裁国家です。
たしかにそうですが、一番厄介なのはアメリカの存在です。
最近じゃベトナムに原子力空母を持ってきたり、「尖閣諸島は日米安保対象」 と国務次官補が言っておりますし
離島奪還では日米共同ということになります。だから日本政府だけというより、米国も一緒になってくれるから
安心しているというところではないでしょうか。(米国だって中国が沖縄近くの島をねらって来る可能性は潰したいですから)国境警備隊も敷くようですし、現時点では現実的な路線をたどっているように思います。

ナオ 様
訓練は日米共同でやるようですが、アメリカがコミットメントを続ける限り、危機は顕在化しないと思っています。
国務次官補の発言も共同通信の誤報に慌てて反応したものでしたし、中国はそのへんきっちり見ているでしょう。

ただ、こんなこと(誤報+国務次官補発言)がニュースになっていることは、このコミットメントが既に怪しくなってきている証左だと思えます。

>取られないようにするか、あるいは取られてから取り返すか、という点です。

この国には「取られたら話し合う」という選択肢もあって、尖閣有事における日本政府の方針はこれかと。
無人島を人命を賭けてまで取り返すと、政府が決断出来るとは思えません。

心配なのは有人離島の場合。

それにしてもこの訓練のシナリオ、初代先島スレで議論された想定と似ているのが(・∀・)イイ!!

数多久遠様

>このコミットメントが既に怪しくなってきている証左だと思えます
確かに日本人がアメリカを丸々信頼できるかというと怪しい部分はありますが、
アメリカの立場になって考えると、たとえ尖閣諸島およびその周辺の島が
取られて(アメリカが)静観しているようだったらアメリカに対する信用は一気に無くなりますので。

ある程度は信頼していかないと何も出来ませんからね。台湾が吸収されるまでは(されちゃ困るが)
見守るとしましょう。

野底マーペー 様
私もそんな気がするのですが、「取られたら話し合う」って、事実上の泣き寝入りですよね。
となるとやはり、その前に、治安出動でも出して貼り付けないと偽装漁民には対処できません。

有人離島は、流石にまだ中国が手出しできる状態ではないでしょう。政治的に
パワーバランスが悪化して、住民感情が中国寄りになると怖いですが……

先島スレ……落ちちゃってましたが、復活したので一安心

ナオ 様
アメリカとの同盟の信頼性ですが、既にNATOもアメリカ頼みではなくなっており、同盟の信頼性を危惧しているのは、日本と韓国の保守派それと台湾くらいでしょう。
となると、冷戦期ほどアメリカが同盟の信頼性を気にしないのではないか、という危惧があります。

中国が台湾→尖閣で動いてくれればいいのですが、最近の情勢を見ると尖閣→台湾の方向になりそうで怖いです。

いくらなんでも政府が国民を見捨てることは無いだろう、やるときはやってくれるだろう、動向を察知すれば行動に移るだろう、伊豆大島や三宅島の全島避難という前例があるじゃないか、と期待する一方、日本政府は「いざ先島」って時に信じられるのか?

取り返す際には島民や民間資産も自衛隊の“攻撃”にさらされます。
日本政府にその決断が?

*****
「自衛隊が早く白旗上げちまえばいいんだよ。どうせやったってかないっこないんだ。降参すりゃ撃ち合いは終わる。ソ連はまさかオレたちを殺しはすまい」
「ヘタに手出しをするからこっちがこんな目に会うんだよ。共産党だってなんだっていいんだ、戦争なんかよりずっといい……」
               (佐瀬稔 著『北海道の11日戦争』より抜粋)
*****

戦火に震える島民がテレビに映ったら・・・
あるいは、侵攻軍が手厚い処遇を島民に施し、それを宣伝戦の材料としたら・・・

野底マーペー 様
今の先島住民の方々の置かれた状況って、冷戦期の北海道、特に道北、道東の方々と結構被るところがあるでしょうね。

「ソ連の戦車が来たぞ」なんて流言で小学生がパニックになった、なんてにわかには信じがたい話が本当にあったと、知人に聞いたことがあります。

私は、日本政府、もっと言えば民主国家である日本の主権者である国民の戦争にかける気合いや根性には、極めて不信感を持っています。
だからこそ、それらが当てにならないことを見込んだ作戦が必要だと思うのです。

それぞれの投票日が迫る、八重山三市町における議会議員選挙。
地元紙「八重山毎日新聞」は八重山への自衛隊配備を争点に誘導したいご様子。(いまいち盛り上がりに欠けてますが)
私はこの件が争点になるのはとても良いことと考えています。
しかし、お金目当てでの自衛隊配備賛成では無いならば、国防は国の専権事項と主張するのならば、未策定状態の国民保護計画をどうにかしようと考えている候補者がはたして何人いるのか…
配備がなければ、島は「取られる」ことが前提ですから。

野底マーペー 様
確かに防衛問題が選挙の争点になるのは良いことだと思います。
そこにお金が絡んでしまうのは、致し方ないでしょうね。
票にも直結しますから。

常時配備でなくとも、緊迫時には迅速に展開できる態勢を整えておくだけでもOKだと思います。
それにしても本島が南端というのは不十分過ぎる状態ですが。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/544438/49308505

この記事へのトラックバック一覧です: 対中国防警計画は間違っている:

« 横田基地フレンドシップフェスティバル2010 その3(その他とオマケ編) | トップページ | 日本の偵察衛星、光学系のみに »

アマゾン

  • 半島へ 陸自山岳連隊
  • 黎明の笛 陸自特殊部隊「竹島」奪還 (文庫)
  • 深淵の覇者
  • 黎明の笛
  • 空飛ぶ広報室 DVD-BOX

最近のトラックバック

ブックマーク、RSS