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2010年6月19日 (土)

状況おわり

創作作品を見ていて、どうにも気になる点があります。
それは、自衛隊が登場する創作作品(小説や映画など)で結構頻繁に「状況おわり(状況終わり、状況終り)」というセリフがあることです。

それらの作品中、このセリフは作戦の終了を命じる指揮官のセリフとして描かれているのですが、これはオカシイのです。
大抵の場合、それらは「作戦終了」と言い換えられるべきものです。
どういう訳か、自衛隊が協力した作品でさえこのセリフが入っていることがあります。
(確か「ガメラ」にもありました)

自衛隊用語として確かに「状況おわり」という用語はあります。
作戦が終了した時点で指揮官が言う言葉であることも確かです。

おそらく、自衛隊の訓練を見る機会のあった人が聞きつけて、何かで使い始めたことが広がってしまったのだと思いますが、創作作品でこれを見ると一気に興ざめしてしまうのです。

用語としての「状況おわり」は、演習用語、つまり訓練時のみに使用される用語であり、実戦で使われることのない言葉です。
演習用語としては警報を現す言葉などが有名(今更ではありますが、書くと支障があるので書きません)ですが、「状況おわり」は、そう言った、ある意味違和感のない演習用語ではないのです。
これが「作戦終了」を意味する演習用語ならまだ良いのですが、実際には全く違う意味の演習用語なのです。

訓練や演習は、ある意味ロールプレイングゲームのようなもので、想定された状況の中で、それぞれの役割を演じて訓練します。
訓練では、「状況下に入れ」とか「状況の人になれ」と言われるのですが、これは役者に対して、役に成りきれと言うのと同じことです。

「状況おわり」は、この想定した状況を終了する、つまり隊員に対して状況下に入ることを終了せよ、という意味なのです。

ちょっとややこしい話になるのですが、このセリフは、正確に言うと、冒頭で書いたように指揮官が口にする言葉ではありません。
訓練を実施する場合、訓練の状況に入らず、訓練をコントロールする立場になる人々が居ます。統裁部と言うのですが、その統裁部の長として、訓練を統制する者の代表者たる統裁官が発する言葉が、この「状況おわり」なのです。
訓練をコントロールする者として、想定した状況を終了し、役者であることを終わってよい、という言葉が「状況おわり」なのです。

ただし、多くの場合、統裁官は部隊の指揮官が兼ねてます。(兼ねない場合は、本来の指揮官が統裁官となり、副指揮官などが想定上の指揮官の役を演じるケースが多いです)
ですので、演習などを見た人が、統裁官として喋った「状況おわり」の言葉を、指揮官として喋った「作戦終了」の意味に捉えてしまったとしても、無理なからぬことでもあります。

ですが、激しく違和感を感じるので止めて欲しいです。
創作する立場の方は、素直に「作戦終了」と言わせて下さい。
お願いします。

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自衛隊の子ネタ」カテゴリの記事

コメント

自衛隊の「状況開始」は実戦でも使う用語!

アニメや漫画で自衛官が「状況開始」と宣言して、「実戦が始まる場面」は正しいらしいです!

http://tomoe2lt.blog25.fc2.com/blog-entry-101.html
今回、元自衛隊のレンジャー隊員様に貴重なお話を聞くことができました。
(注釈。正しくは元自衛官のレンジャー課程修了者でしょう)
ちなみに、
私「訓練でも実戦でもやっぱり状況を開始せよ」っていうのですか?
と訊ねたところ、
「その通りです」
とのお答えでした。

状況を開始する、とは、
あらかじめ計画した行為を実行に移す、
の意であり、
訓練だろうが実戦だろうがこの言葉を使うんだそうです。

http://okadamari.blog112.fc2.com/blog-category-66.html
何人かの自衛官さんに、「実際の戦闘でも『状況開始』、『状況終了』って言うの?」と聞いてみたんですが、やはりみなさん「うーん……」としばし悩まれた後、「『状況』は使わないと思う」、「『状況開始』と言うと思う」とさまざまなお考えを頂きました。

 本物の自衛官たちの答えを総合すると、こうなります。 
 アニメや漫画で自衛官が「状況開始」と宣言して、「実戦が始まる場面」は正しいらしいです!
 複数の本物の自衛官が「実戦でも、状況開始と宣言する」と証言しているのです。
「状況開始は用語の誤用だ」という主張は根拠がないようです。

 皆さんから、さらに広く情報を募集します!

Kattasu-sakura 様
陸と空では、若干異なる可能性もありますが、この手の基本的な用語は、空は陸のコピーですし、統合演習の際に不具合になるので、同じだったはずです。

元レンジャーの方ですが、おそらく陸曹でしょう。
曹の方ですと、演習用語をちゃんと理解していなくても、さほど不自然ではありません。
お恥ずかしい話ですが、私自身、ちゃんと理解したのは、自分が統裁部に入るようになった2尉の後半からです。

もし聞けるようであれば、その方に、状況中止が状況終了とどう違うのか、聞いて見るといいと思います。
おそらく、状況中止をちゃんと答えることはできないと思われます。

空自に関しては、定義が記載された文書が公開されています。
航空自衛隊の演習の実施に関する達
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/2005/gy20060324_00010_000.pdf
これによると、次の通りです。
(4) 状況 演習を指導するために示す仮定の状態をいう。
(5) 演習開始 状況開始のできる態勢に移行することをいう。
(6) 状況開始 状況の付与又は現示により、演習の実演を開始することをいう。
(7) 状況中止 気象上、演習の指導上その他の理由により演習の実演
を一時取りやめることをいう。
(8) 状況再興 状況中止により一時取りやめていた演習の実演を再び開始することをいう。
(9) 演習中止 実任務に即応させるため、演習を中途でやめ、じ後、当該演習を行わないことをいう。
(10) 状況終了 演習の実演を終了することをいう。
(11) 演習終了 演習開始前の態勢に復帰することをいう。

陸自の同様の達は公開されていませんが、最初に述べたとおり、この手の文書は、空自の場合陸のモノをコピーしている場合が多いです。

なお、後の方のリンク記事については、コメント欄に私が指摘したコメントが残っています。
前の方のリンクについても、ブログ主にお知らせしておきます。

数多久遠 様
詳しい知識をありがとうございます。
要するに、すべての自衛官が用語を熟知しているわけではない、というのが真相のようですね。
だから、自衛官によって答えが違う、という事態になっていたようですね。
これで解決しました。

はじめまして、友絵少尉と申します。
数多様、ご一報下さり大変ありがとうございます。

わたしがお話を伺った元自衛官の方の階級、失念してしまっており、メモの類いもないんです。正式な取材ではなかったものでして。
実は当時、わたしが総火演のバスツアーに申し込む機会がありまして。
元自衛官の方はそのバスツアーの責任者でした。それでバスの車中にて、数分間、お話しをする機会を得たのです。

わたしのブログにて、訂正記事を書きたいと思います。
その際、貴ブログの当該記事を紹介すること、お許しいただけますでしょうか?

Kattasu-sakura 様
最初にメディアで流した方も、元あるいは現職の自衛官から、間違った話を聞いたのかもしれません。

間違っていたところで、自衛隊が困ることでもないのですが、日本の創作でも、欧米並みのミリタリーリテラシーを持って創作して欲しいと思っているため、書かせて頂きました。

今後とも宜しくお願いします。

友絵少尉 様
総火演のバスツアーというと、部外で募集されているモノでしょうか。
だとすると、階級は上も下もありなので、予想は付かないですね。

訂正記事を書くまでもないと思いますが、この記事、あるいは空自達の紹介でもして頂ければ良いと思います。
紹介、引用等はご自由に行なって頂いて結構です。

今後とも、宜しくお願いします。

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