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2010年5月29日 (土)

書評「レディイーグル」

「レディイーグル」は、コミックチャージ誌に2007年の第2号から2009年の3号まで掲載され、同誌廃刊のため書き下ろしを加えた全5巻が発売されている漫画です。


原作は、航空アクション物の著作がある鳴海章氏。作画は、ミリタリー物を書いた事もある千葉きよかず氏です。

内容としては、304飛行隊長になった女性イーグルドライバーを主軸に展開する航空アクション物です。

空幕広報室を始め、各地の自衛隊基地が協力しており、おそらく相当の写真提供を受けて作画されていると思われます。
そのため、基地内や官舎、隊内生活の描写は非常にリアルです。

フランカー的改造を施されたF-15改など秘密兵器も登場しますが、突拍子もないものは少なく、リアルなものを描こうという意志を感じます。

突っ込みどころは山ほどあるのですが、リアルに描こうという姿勢が見えるからこそ、気になってしまうのかもしれません。

空戦については、少しでも中距離戦を描こうとしている(逆に言えば格闘戦メインだということ)だけでも評価して良いように思います。
特に漫画では近距離戦になってしまうのは仕方ないでしょう。

と、ここまで褒めてきましたが、ストーリー全体として見るとあまり評価できません。
私自身人様の著作を評価できるような立場ではないのですが、そこを敢えて語らせてもらうと、いわゆる中だるみになっている作品で、序盤から中盤までがそれ以降の展開を期待させない作品と言えます。
ですので、面白いかと言われると……と言うところです。

しかし、後半については、兵器オタクを脱皮して防衛問題に興味を持っていると言える方には興味深い展開になっています。
昨今の中国軍の活動と領土的野心について、漫画という人の目に触れやすいメディアで描いている事は評価できます。

ネットで評価を探しても見つからないくらいですので、おそらく中古を探すことは困難だと思います。新刊でも軍事関係の書籍を積極的に置いている店でないと見つからないでしょう。(私も書泉で買いました)

以下、詳細を書きますのでネタバレあり、注意です。









クライマックスになっている尖閣を巡る軍事的衝突では空海戦力、特に時間的占有効果の得られる海の重要性が高いと思われますが、この作品でも同様に描かれてます。
主人公は制空戦闘機であるF-15のパイロットという設定ですが、クライマックスの作戦目的は日中双方とも対艦攻撃であり、主人公はそのミニストライクパッケージのエスコートファイターという脇役的役回りに徹している点は好感が持てます。
どうせ空対空しか描かないんだろうな、と思っていたのですが、良い意味で裏切られました。
(しかし、こう言う描き方をするならば、主役は艦艇乗りの方が良かったような気もします)

空幕の協力を得たことが弊害になったと思われる部分もありました。
作品中、どこに航空基地を置くかということが重要だということが描かれているのですが、下地という単語は一語も出てきません。
その代わり、宮古島と多良間島の間に、架空の島が存在し、そこに飛行場もあるという設定になっています。
この飛行場は民間航空の訓練飛行場として使われており、モデルはどう見ても下地島です。
下地島空港の軍事利用などについて発言した那覇基地司令を口頭とは言え空幕長が注意までした空自としては、協力している作品が下地島の軍事的利用を描くのはマズイと言うことで口を出したに違いありません。
参考:「航空幕僚長、司令呼び厳重注意 下地島空港発言

掲載誌が廃刊となり、事実上の途中打ち切りとなったため、最後が非常に慌ただしくなったのは残念でした。
中盤で描かれた訓練での米空母攻撃なんかは、本来のクライマックスが中国の空母攻撃だったと思わせられる布石の打ち方でしたが、話がそこまで行かず、クライマックスでの標的が駆逐艦になってました。

こう言う作品がもっと増えて欲しいと思うのですが、商業的に成功するためにはリアルさを犠牲にして、もっと突飛なものを描かないと難しいんでしょうね。
沈黙の艦隊とか

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コメント

全巻私も読みました。
まぁ兵器はアイディアですからそれはいいんですけど、ヤケに中国の装備を高く見せていたのは
ちょっとやりすぎのような気もしますね。
そんな状況にありながら、どうでもいい装備ばかり開発しているのが気になります。F-15DJ-iの存在意義が
全く分かりませんし、仕舞いには対弾道ミサイルF-15とか出てきて「イージス艦のMDどうしたんだ?」と突っ込みいれたかったです。

F-15の改修もかなり遅れてましたし、中国の軍拡を知りながら打った対策がそれかよ、みたいな所はあります。

最近の空自協力作品だと「レスキューウィングス」とか良かったですね。

救難隊を描いたのも良かったですし、メディアミックス展開できた点も広報的には良かったのではないでしょうか。
少なくともアニメは突飛な話ではなかったですし。

あとは古い作品になりますけれど、「青空少女隊」
さらに遡って「イーグルドライバー」ですかね(この作品は取材のみかも知れません)

イーグルドライバーは面白かったんですが、マイナーなのと描かれたのが冷戦期と言うことで色々今とは違っています。
何せソ連の領空侵犯機はともかく、F-15Jで空中給油受けるのがフィクションだった時代ですし。


しかしやはり自衛隊物の作品は少ないですね。
リアルを追求すれば活躍するのは戦争や災害といった凶事になりがちですし、その状況下で自衛隊を脇としてではなく主として描くような作品はなかなか受け入れられないのでしょう。
トップガンの大成功に対してベストガイが失敗だったのも、映画の出来不出来だけでなく米軍が大活躍して喜ぶアメリカ人と自衛隊が活躍してもあまり喜ばない日本人の国民性の違いもあると思います。

アニメ・コミック・ラノベ等のいわゆるオタク産業は自衛隊を悪者・脇役・やられ役と描くほうが主流ですから。

自分でもちょっと考えてみましたが、マニア受けにならずにエンターテイメント性を持ち、それなりのボリュームで…となるとなかなか思いつかないですね。
海自の訓練支援艦とか、WAVE主人公にしてひゅうがを舞台に描くとか、どちらも一般向けには少し苦しいですね。
ブルーインパルスだと見栄えが良くて良いのですが、今度は話のボリュームが不足しそうです。

個人的にはイラン・イラク戦争の時にできなかった、「中東辺りで戦争が起きたときの邦人救出作戦」をフィクションで描いても面白そうかな、とは思いますけど。
海外派遣も今はそんなに抵抗ないですし、やっぱり自衛隊が日本人を救う話って良いと思うのです。

ナオ 様
読みましたか。
あれに出てくる架空の兵器は、多くがドッグファイトを描くためのギミックでしょうね。
DJにしてるのは、ストーリーが描きやすいからでしょう。
単座で無線だけでドラマは書きにくいと思います。自分でも話を書いたから分かります。
ある程度は仕方ないと思いますね。

藤宮 直樹 様
レスキューウィングスは見ようと思いながら見逃しました、DVDもレンタルがあれば見るんですが、近くの店には置いてないですね。

自衛隊モノが少ないのは、やはり自衛隊に実戦経験がないからでしょうね。
訓練をドラマにするのは難しいです。
結果、レスキューウィングスみたいに救難モノになるのでしょう。

邦人救出モノは良いかもしれませんね。
ひゅうがや22DDHが活躍するストーリーなんかはドラマになりそうです。

個人的には、防疫とかも好きです。
ちょっと知識が乏しくて書ける気がしませんが……

千葉きよかず先生は、石を投げればマリーンか自衛官に当たるという静岡県御殿場市出身だそうです。
ベトナム戦争の頃の米軍キャンプ(たぶんキャンプ富士)に隣接するバーを舞台にした、千葉少年がモデルであろう少年とホステスや米兵との交流を描いた「僕んちはBAR」という作品もあります(未単行本化)。

ひまじん 様
千葉氏は、軍事に興味を抱きやすい環境で育ったんですね。
「僕んちはBAR」には、興味をそそられます。

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