与那国島上空のADIZ再設定は大したニュースじゃない
予てから一部では問題視されていた与那国島上空にADIZ(防空識別圏)が設定されていた件ですが、この度改善されました。
「与那国島沖に拡大 防空識別圏、台湾に説明」(産経新聞10年5月26日)
「防空識別圏:与那国の設定変更 台湾寄り洋上に…政府方針」(毎日新聞10年5月26日)
勿論、これは良いニュースです。
自国の領土上にADIZが設定されていると言うことは、一部領土はADIZ外ということですから、これが異状であることは間違いありません。それが改善されるのですから、当然良いニュースです。
ですが、大したニュースじゃありません。
詳しい解説は、私が書かなくともその道のプロ、元要撃管制官で参議院議員選挙出馬予定の宇都隆史氏がブログに書いているので、詳細は割愛しますが、ADIZに入ってなかったからと言って自衛隊が識別の動きを取ってない訳でも、対領侵措置のためにスクランブルしない訳でもありません。
「防空識別圏って?【決戦まで、残り46日!】」(宇都隆史氏公式ブログ)
(ただし、宇都氏のブログにも一カ所だけ誤りがあります。知らないということではなく、実態で話されているのだろうと思いますが)
この件で今まで自衛隊が怠慢だったというような事を書いているブログなども見受けられますが、実体上大した問題があった訳ではないのです。
むしろ、ADIZよりもFIRが引っ込んでいる事の方が問題です。
もっとも、それでさえ通報が遅れることでスクランブルする必要のない民間機にまでスクランブルしてしまう可能性があるだけで、防衛上問題とするほどのことでもないと言えます。
それよりも更に問題なのは、与那国だけでなく、尖閣上空なども含めて「見えないし、間に合わない」と言う事です。
言うまでもなく、これは与那国に一番近いレーダーサイトが宮古島であり、スクランブル発進する飛行場が那覇だということです。
レーダーサイトが遠すぎるため、高高度でも近くに来てからでなければ見えないし、低高度であれば全く見えません。
レーダーサイトの情報を元にスクランブル発進させる基地は、宮古島よりも更に更に遠い那覇です。
対比の例としては北方領土を挙げる事ができます。
北方領土では、千歳は遠いものの、レーダーサイトは根室と網走にあり、上空は非常に良く見えてます。
ADIZ再設定よりもサイトの建設を考える方がより重要です。
もっとも、ADIZの再設定は1円もかけずにできるので、やらないに超したことはありません。
歴代自民党政権が放置してきた事項ですから、ちょっとは鳩山政権を評価しても良いでしょう。
また、この件に関して台湾が反発してます。
「日本の防空識別圏「引き直し」に台湾が反発」(読売新聞10年5月29日)
「台湾:日本による防空識別圏変更、外交部が受け入れ拒否」(毎日新聞10年5月29日)
ふざけんな!
って感じですね。
「ホントに沖縄から海兵隊を追い出すぞ!」ぐらい言ってやってもいいでしょう。
それにしても、冒頭にリンクを張った記事は、産経にしても毎日にしてもウソを書きすぎです。
産経の方は、宇都氏が指摘している通りですし、毎日に至っては「ADIZは防衛上の観点から領空の外側2~3カイリを囲む形で設定された空域」って、ちょっと調べればそんな範囲じゃないことは直ぐに分かるし、頭で考えただけでも、そんなんじゃ間に合う訳ないって分かりそうなものですが……
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