長距離救難が可能になり武器禁輸見直しが必要
先週、長距離の救難活動に関連する2つのニュースが流れています。
具体的にはプローブアンドドローグ方式での給油を可能にするC-130配備のニュースと同方式でのUH-60Jによる訓練の実施についてのニュースです。
「ヘリに空中給油できる改造型輸送機配備 空自小牧基地」(朝日新聞10年2月26日)
「空中受油機能を付加したUH-60J救難ヘリコプターの試験について」(空自報道発表)
長距離での救難活動が出来るようになる訳ですから、この2つのニュース自体はもちろん喜ぶべきニュースです。
ですが、問題の端緒ともなりかねない可能性もあります。
それは、海自が持つUS-2救難飛行艇の必要性が薄くなってしまう事です。
従来、ヘリの行動可能半径外の救難活動は船舶とUS-2しか可能ではありませんでした。速度を考えればUS-2の独壇場だったと言っても過言ではありません。
もちろん、(巡航)速度性能や要員の疲労などを考えれば、まだUS-2の方にアドバンテージがありますが、US-2しかないという状態ではなくなったことになります。
空幕は海幕に十分調整してこの事業を進めてきたでしょうが、先日行われた事業仕分けが防衛省の考えをバッサリ切り捨てたような事態は想定していなかったでしょう。
もしかすると、今頃海幕のUS-2関係者と新明和は青くなっているかもしれません。
個人的にも、世界に冠たる飛行艇技術が失われてしまう事は残念です。
以前の記事にも書きましたが、早急に消防飛行艇として海外を含めて売れる体制を作らないと、国産飛行艇はUS-2が最後になってしまいかねません。
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コメント
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新明和の方から伺ったのですが、US-2消防艇は海外から多くの引き合いがある
らしいのです。 但し、海外に整備拠点を新たに作っていくコストが莫大になるので、
なかなか話が進まないらしいです。
多大な犠牲を払って得た飛行艇の技術が、無くなるのは非常に残念ですので、
ぜひとも国の保護で継続していってもらいたいです。
投稿: やん | 2010年3月 4日 (木) 00時24分
あれだけ機体規模の大きな消防飛行艇はありませんから、大規模森林火災の起きる場所であれば、マーケットは間違いなくあるので引き合いはあるんでしょうね。
独自に整備拠点を作るのは大変でしょうし、どこかとアライアンスを組むとしても今は縛りがあって難しいでしょう。
なんにせよ、政治が決断してくれないとどうしようもないですよね。
投稿: 数多久遠 | 2010年3月 4日 (木) 20時21分
お金が無いという理由で、独自の技術が失われるという結果は避けて
もらいたいです。 いろんな分野で同じような話があるんでしょうネ・・・
国家予算とのバランスなのですが、飛行機好きにとっては、US-2は
好きな機体のひとつですから、新明和の方には頑張ってもらいたいです。
投稿: やん | 2010年3月 5日 (金) 00時47分
初コメントさせていただきます。
宜しくお願いします。
>海自が持つUS-2救難飛行艇の必要性が薄くなってしまう事です。
下記の点で疑問に思うのですが・・・・・・
1、C-130+UH-60JでP-3C(XP-1も含む)の乗員の救助は可能か?
次期救難ヘリの選定に於いて機体の大型化を検討していると
聞かれますが(少なくとも海自は機体が小型でUH-60Jに満足してないと)
2、C-130+UH-60Jの救難体制が確立されたとした場合・・・・
当然ながら2機種分の運用コストがかかる。
常時2機種分をアラート体制スタンバイをするか?
※US-2の1回当たりの飛行コストが上記の組み合わせより
高ければ当然US-2の命運は決まるのでしょうけど・・・・
以上素人考えですが・・・・
単純にUS-2の存在価値が少なくなったと書かれていますが、どうなのでしょう?
完全に代替をするにはハードルが少々高い気がします。
ご教授をお願いします。
機体の特殊性及び高価格である為に
>国産飛行艇はUS-2が最後になってしまいかねません
同意します。
(国家の)インフラの1つとしての防衛装備としてUS-2(若しくは洋上で活躍
できる飛行艇技術)は財産だと思います。
投稿: ebi | 2010年3月 6日 (土) 01時46分
やん 様
今は国家予算をちょっと思慮の足りない方々が握ってますからね……
はたしてどうなるやら
ebi 様
UH-60Jで同時に何人までの救難が可能かは私も寡聞にして知りませんが、当然1機では無理でしょうね。
ただUHの方は数がありますから同時に数機を飛ばせば良いだけかと
海のUHは空中給油可能にされていないという言い方もできるでしょうが、空中給油装置を付けろという話もでてくるかもしれません。
運用コストは、C-130、UH-60Jに加えてUS-2を運用するほうが余程かかると思いますよ。C-130もUH-60Jも既に運用態勢にあるわけですから。
アラートと言っても、後から追いつけば用が足りるC-130はそれほど高い待機態勢を採る必要もありませんし、US-2より余程手のかからない機体でしょう。
記事主旨でもそうですが、コストで言ったらUS-2に勝ち目は無いと思います。なにせUS-2の運用を続けるとしても、ヘリでの救難態勢をなくす訳にはいかないのですから。
目があるのは進出速度やパイロットなどの要員の疲労、ペイロードなどでしょう。
問題は、今後もこれで財務省への説明だけでなく、事業仕分けにも耐えられるかということです。
防衛省とすれば財務には耐えられるとして事業を進めたんでしょうが、仕分けは果たして……
民主政権が倒れてくれれば良いかもしれませんが、倒れたとしても仕分けがあれだけ世論の支持を得たことを考えると、自民政権でも似たような事はある程度迫られるのではないでしょうか。
投稿: 数多久遠 | 2010年3月 6日 (土) 11時20分
失礼します。
>日の丸飛行艇の未来・・・・
まあ「事業仕分け」も怖いですが。正直一番分からないのが「海幕の腹の中・・」です。 意外かも知れませんが「US-2」の開発が決定するまでに、飛行艇以外の別の機種を採用する検討がされました(むろん何処まで本気かは知りませんが)。
それは「V-22オスプレイ」です。しかし開発が遅れていたのでUS-1Aの後継機には間に合わないとして、US-1A改ことUS-2の開発が進められたのです。
むろんV-22のカタログデータだけを見れば、航続距離などでUS-2に劣る部分が多数ありますが。陸上や艦艇に垂直離着陸が出来ますので自衛隊に新たな可能性をもたらす機種であるのは間違いなく(特別警備隊の支援機に適した、これ以上の機体はない)今回空自に整備される「ヘリ空中給油能力」をも採用することも合わせて考えれば海幕がどのような未来を考えているかは分からないですよね・・・・
少なくともF-Xでの空幕さんの態度は明らかに運用側の人間は「防衛産業」のことまで頭にないのが分かりますが。
>海のUHは空中給油可能にされていないという言い方もできるでしょうが、空中給油装置を付けろという話もでてくるかもしれません。
これは結構解決しないといけない問題が大きいですよ。それは「燃料」の問題です。空自の燃料は「JP-4」ですが、海自のヘリの燃料は「JP-5」です。いちいち時間をかけて空自の給油機の燃料を入れ替えたり、それぞれの燃料を搭載した機体を別に待機させてくれるもんでしょうかね・・・
艦艇での航空機の運用を行う海自ヘリは、発火点が高く安全性の高く(その分高々度でのパワーがないと言う話もありますが)、また世界の海軍との相互運用性をも考えると「JP-5」以外の選択肢は現在ない。じゃあ空自のヘリが合わせてくれればと思いますが、「JP-5」は「JP-4」より高価であり、なかなか難しいものがあります。
艦艇での陸海空ヘリ統合運用を考え、私は陸海空ヘリはJP-5を統合燃料として採用して欲しいと考えますが、コストの問題から難しいと思います。何せ米軍ですら、陸空軍はJP-8を使い、海軍はJP-5を使っていますから・・・・
以下余談
いや~海自のヘリはとっくの昔に「空中給油」をしてますよ。護衛艦からホイストで燃料ホースをヘリのキャビン内受油口につないで飛行したまま着艦しないで給油する技術です。
着艦不能な時に行う方法ですが海自しかしてない技ですね(笑)
投稿: 海族 | 2010年3月 6日 (土) 23時25分
どなたか判りませんが「ebi」と私の名前を使って投稿するのは止めて下さい。
投稿: 海老浩司 | 2010年3月 8日 (月) 10時20分
ドバイや産油国の王様あたりが、シャレでUS-2買ってくれないですかねぇ~。
ちょっと、フザけて考えてみました(笑)
観艦式で、US-1Aの着水/離水を見たことがあるのですが、凄い低速で
着水/離水していくのを見て感動した記憶があります。 本当にあの技術は
凄いと思います。
投稿: やん | 2010年3月10日 (水) 00時13分
海族 様
海の方々はUS-2を大事にしているのかと思いきやそうでもないんですね。
V-22が候補だったとは。
当事はまだ情報が少なかったからなんでしょうが、V-22は救難に使えるほどホバー性能良くないんじゃないでしょうか。
使えるレベルだったらアメリカのCSAR-Xは間違いなくV-22になるでしょう。
そうか、燃料の問題があったんですね。
統合を考慮して共通化というのはありえなくは無いですが、アメリカも分かれた状態だと、まあ無理でしょうね。
有るとすればC-130を空陸用、海用と分けることでしょうか。
海の空中給油は驚きです。
そんな荒業をやってたんですか。
着艦不能な時って、相当荒れてる場合って意味ですよね。
そんな時にそんな荒業を使ってたとは……
やん 様
産油国ですか。
やっぱし難しいでしょうね。
スゴイ技術だといは思うんですが、カッコイイって訳じゃないですし……
ロシアとかの方が買ってくれそうな気がします。
投稿: 数多久遠 | 2010年3月10日 (水) 22時22分
海老浩司 様
私も本名はからの名前なのですが・・・・・
>どなたか判りませんが「ebi」と私の名前を使って投稿するのは止めて下さい
なにか貴殿の気になる事で発言したのでしょうか?
頻繁に投稿される名前でもないの私自身これでも問題ないと思ったのですが?
投稿: ebi | 2010年3月12日 (金) 21時10分
再度失礼します。
>そんな時にそんな荒業を使ってたとは……
もちろん荒天時が主にですが「発着艦拘束装置」を用いた発着艦をしますので皆様が想像する以上の気象海象時でも航空機の運用を行います(航空機と飛行甲板上の拘束装置をケーブルワイヤーで繋ぎワイヤーを牽引して凧を引きつけるように着艦とする)。
しかし悪天候以上に航空機に対して艦艇の飛行甲板の強度・面積が不足している場合に、この空中給油が可能であれば艦を選ばず燃料給油が可能となりますので諸外国海軍は熱心に訓練をしております。
例えば空・陸のCH-47でも、この方式の空中給油が可能なら、海上に散在する航空燃料を保有する海自艦艇から給油を受けつつ長距離渡洋も理論上は可能となります。
まあ運用上知っていて損はない技術なんでしょうね。
投稿: 海族 | 2010年3月13日 (土) 22時41分
海族 様
拘束装置は知ってましたが、それでダメなら陸上基地に行くのかと思ってました。
CHで「空中給油?」ですか。
素直に22DDH作った方がよさそうな気が……だからこその22DDHでしょうが
運用上知っていて損はないんでしょうが、訓練はなかなか大変そうですね。
投稿: 数多久遠 | 2010年3月15日 (月) 21時33分