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2010年2月

2010年2月26日 (金)

大型機によるSAM回避機動

昨年5月の記事「スパイラルアプローチ」で、スパイラルアプローチやランダムスティープアプローチが、MANPADS(スティンガーなどの携帯式SAM)を撃たれないための機動だった事を書きました。
これに関連して、今回は撃たれた場合の回避機動はどうするべきなのかについて書いてみます。

「大型機がSAMを機動で回避なんてできる訳ないだろ。電波な事かいてんじゃねえ」と思う人もいるでしょうが、C-130などの戦術輸送機レベルの大型機であれば、効果のある機動が可能です。(C-17くらいまでは可能でしょう)
もちろん回避機動をする余裕がある程度の距離から発射された場合に限りますが。
このことは、「スパイラルアプローチ」中で取り上げた、イラク派遣輸送飛行隊隊長だった北村1佐のインタビュー中にも「C-130ならば、MWSで脅威を捉え、機動性を発揮してこれをかわすことも期待できるでしょう。」とあることでも分かっていただけると思います。
もちろん機動だけでは十分ではありませんが、フレアなど機動以外の回避手段を併用することは戦闘機でも同じです。

さて、では実際にどう機動すべきなのかですが、いきなり結論から書きます。
それは、MANPADSの発射を確認したら、旋回し機首をミサイルの方向に向ける事です。
多分、この記事を読んでいただいている方の頭の中にはクエスチョンマークが浮かんでいることでしょう。
映画「レッドオクトーバーを追え」やかわぐちかいじ氏のマンガ「沈黙の艦隊」で魚雷の起爆を防いだような安全距離を利用する訳ではありません。(MANPADSの安全装置は、発射時のGなどで発射直後に解除されています。)
回避機動は、正確に書くと、機首をミサイルの方位に向け、速度・エンジン出力の許す範囲で緩上昇をかける(無理ならレベル(水平飛行))事です。
エンジン出力をどうするかは、機種や状況によります。効果的な機動のためにはエンジン出力をあげる事がベターですが、赤外放射をおさえるには出力は絞った方がベターです。判断は個別の状況でパイロットに任されますが、C-130の場合は、元々赤外放射は多くないので出力はあげ、上昇する方が得策でしょう。

さて、ではなぜそんな機動がSAM回避に効果的かと言うと、直線的なトラジェクトリーを採るMANPADSなど小型短射程なミサイルの場合、次のようなことが言えるからです。
・ロケットモーターのエネルギーの内、位置エネルギーに変換される分が多くなり、速度エネルギーが不足してミサイルの機動性が悪くなること
・ミサイルから見て下方に高温の排気が来るため、目標よりも下方に誘導されやすいこと
・フレアを併用した際に、フレアが沈降するためミサイルがより下方に引っ張られること
・(基本的に)重力加速度を検知、補正する手段を持っていないため、ミサイルが根本的に目標の中心よりも下方に飛翔しやすいこと(それでもミサイルの機動性による誤差修正が目標の大きさの範囲に収まるため命中するし、ミサイルによっては発射時に重力加速度分のリード角を挿入して発射される)
結果として、上記の回避機動をとると、ミサイルは目標の下方を通過することになります。

ただし、ここまで読んでセンスのある方は分かるかもしれませんが、この回避機動には根本的な制約があります。
それは、迅速に2発目の発射が予想される場合には使えないということです。機体がミサイルの発射点に近づくため、2発目があればより近距離で発射されることになりますし、その時にはより上方に向けてリード角が取られた上で発射されるからです。
逆に、ミサイル側とすれば連射機能があれば、この欠点は補えることになるため、多くの短射程SAMは連射能力に優れています。自衛隊の短SAMなんかもそうです。

ですが、イラクではこの機動は有効です。それは、飛行場周辺にはびっしりと米軍の地上部隊が配備され、武装勢力とすれば2発目の発射をする余裕はないからです。

という訳で、大型機でもSAM回避機動が取れることは分かって頂けたでしょうか。

しかし、戦術というのはじゃんけんのようなものです。
スパイラルアプローチやランダムスティープアプローチが採られ、ミサイルを撃たれた際にもこのような回避機動が採られることが分かっていれば、それを踏まえた戦術も可能です。
それを書くことはマズイと思うので書きませんが、「戦術眼には自信がある!」という方は考えてみてください。(もちろん、地上部隊にやられても構わないという決死の覚悟で2発目を撃つ、なんてのはダメです。)

2010年2月23日 (火)

防衛問題は素人でもOK?

「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」のメンバーが正式に発表されました。
防衛力懇談会メンバー正式発表 座長に佐藤茂雄・京阪CEO」(産経新聞10年2月16日)

同懇談会は、あらたな防衛計画の大綱を検討する重要な懇談会です。

防衛問題に関する重要な会ですから、普通ならその道に詳しい専門家が委員となるべきです。少なくともこれが防衛問題でなく経済や福祉などであれば、その道の専門家で構成されるでしょう。

ところが、発表されたこの懇談会のメンバーは、11人の委員の内、伊藤康成・元防衛事務次官▽加藤良三・前駐米大使▽斎藤隆・前防衛省統合幕僚長の3方を除けば、とても専門家とは思えません。
特に、座長は京阪電鉄の佐藤茂雄CEOだそうで、経歴を見てもずっと経済畑の方です。どうみても防衛問題に関しては素人です。
佐藤氏プロフィール
【生年月日】昭和16年5月7日
【年齢】65歳
【出身地】大分県
【学歴】昭和40年3月京都大学法学部卒業
【経歴】
昭和 16年5月7日生
昭和40年3月京都大学法学部卒業
昭和40年4月京阪電気鉄道㈱入社
平成7年6月同社取締役
平成11年 6月同社常務取締役
平成13年6月同社代表取締役社長(現在)
平成15年6月同社事業役員社長(現在)
平成17年7月同社監査室担当(現在)
平成19年6月同社代表取締役CEO取締役会議長

こういう方を「客観的立場で人格、識見ともに素晴らしい人を選んだ。経済活動の部分で安全保障についての発言もあると聞いている」という程度の認識で座長に据えてしまうのですから、ちょっと政府関係者の神経を疑います。
と言うより、これは防衛問題の軽視に思えてなりません。

素人を委員にするくらいなら、2chの軍事版に常駐しているようなミリタリーマニアの方が百倍マシじゃないでしょうか。

2010年2月21日 (日)

「しらせ」はウェザーニューズ社が保存

以前の記事「「しらせ」解体決定 ネットオークションに出せ!」に解体してネットオークションに出してでも保存を図れと書いた南極観測船の初代しらせですが、天気予報会社のウェザーニューズ社が引き取り、保存されることになったそうです。
初代「しらせ」ウェザーニューズ社に移籍」(読売新聞10年2月10日)

しかも、単に保存され広報施設的な運用をされるだけでなく、レーダーを設置して観測拠点にもなるそうです。また、当面は船橋港に係留されるものの、その後はたの港に移動することも考慮されているそうで、船としての機能も維持されそうです。
ウェザーニューズ社ニュースページ

一時はクズ鉄になる運命でしたが、かなり理想的な第2の船生?を送れそうです。

2010年2月19日 (金)

宇都隆史氏公式HP

フォローしきれていませんでしたが、宇都隆史氏の公式HPが開設されてます。

プロフィールや活動報告、励ます会の情報などが載せられています。

もちろん手伝っている人がいるのだと思いますが、ブログやツイッターまでリンクされており、議員に当選された以降も果たして可能なのか、と疑問が湧くほどてんこ盛りです。

と、HPの紹介だけではなんなので、氏のHPトップにツイッターでの発言が載せられていたので、そのことについてちょっとだけ書きます。

宇都氏は、政府がインド洋派遣部隊の帰国に際して、艦艇を晴海に寄らせた事を非難しておられました。
現場の苦労を慮っての事ですが、私は良かったと思っています。

確かに実際に乗り組んでいた方としては、余計な苦労かもしれませんが、派遣部隊を政府が表立って慰労するということは、彼らに対する肯定的な評価だと言えます。
政府としては活動は終了させることにしましたが、決して評価をしていない訳ではないことを示したのは悪くないと思います。

以下、宇都氏のつぶやきからコピー
********************
ハイチの陸自部隊と入れ替わり、海自のインド洋派遣部隊は帰国に。隊員の皆様にはお疲れ様でした。留守を守り抜いた家族の皆様にもありがとうという気持ちで一杯です。

それでも釈然としないのは、野党時代には自衛隊に否定的だった総理、そして防衛大臣は本当に心を伴って労いの意を持ってくれたのか?そして、母港が舞鶴でも横須賀でもない船籍が、どうして遠回りして晴海に寄稿せねばならないのか?

現場は口が割けても言えないと思うので、敢えて叫びます。総理や大臣の都合に合わせて任務疲れの部隊を遠回りさせ、慰労するから晴海に来いというのは、国益ではなく単なるパフォーマンスでしかないのではありませんか。

航路の変更で生じるロスタイム。平時/有事に関わらず「ミリミリ」行動する事を余儀なくされる自衛隊にとって、予定にない指揮官の好意は感謝よりも迷惑の方が多いです(経験上。もちろん、摺り合わせした上での表敬視察は嬉しいですが)。
********************

2010年2月16日 (火)

ISAFの作戦で住民12人が死亡

米政権の命運握る作戦、誤射で住民12人犠牲 アフガン」(朝日新聞10年2月15日)
というニュースが流れています。
リンクは朝日のみですが、各紙ともボリュームの差はあれ報じています。

記事では多連装ロケット砲とか命中精度の低いロケット砲とか言われているので、一体なにを使ったんだ?と思いましたが、ソースらしきISAFの発表を見るとHIMARSだったそうです。

ということで、弾種としてはMLRSと同じですね。
作戦の内容を考えると、子弾内臓のロケットなど使うはずはないので、おそらく単一弾頭のM31ではないかと思われます。
M31はGPS誘導です。

単純にロケットが不良弾だった可能性もありますが、ISAF発表を見ても「Two rockets」とあるので、その可能性は低いでしょう。

となると、GPSジャマーなどが使用されていた可能性があります。

ですが、現時点ではISAFによる続報はないようです。

軍事はイタチごっこが常とは言え、タリバンにそこまで振り回されているのだとしたら、やはり今後のアフガン情勢も厳しいと見るべきでしょうか。

2010年2月13日 (土)

無抵抗?

44普連連隊長による「『信頼してくれ』という言葉だけで(日米同盟は)維持されるものではない」との発言問題に関して、件の連隊長に注意処分(文書)が課せられたそうです。
不適切発言で陸自幹部を文書注意 「『信頼してくれ』では日米同盟維持できぬ」発言で防衛省」(産経新聞10年2月12日)

上官である最高指揮官の発言を貶めるような発言は、確かに褒められたものではありません。

ですが、「言葉だけで」はダメだとする発言自体、実の部分を体現する自衛官であれば当然の発言でもあります。
日米同盟が言葉だけで担保されるのであれば、防衛省など不要で外務省だけでOKです。

件の発言は、実の部分を担う自衛官としての自負でもあるでしょう。
そう考えれば、この件での処分について、制服組は反発しなければなりません。

しかし、報道を聞く限りでは制服組が反発したという内容は聞こえてきません。
「注意」に落ち着いたことが反発があっての結果かもしれませんが、たとえ「注意」に過ぎないものでもご本人の経歴に残るものですし、自衛隊としても処分したという結果の残るものです。

政治的には、この件はこの程度で済む問題かもしれませんが、自衛隊内のことを想像するにつけ、こんな姿勢は末端の上層部に対する不審に繋がります。

結果的には押し切られる結果となったとしても、統幕長なり陸幕長なりが職を辞す覚悟を示すなどして反発しなければ、末端からすれば上層部が腑抜けに見えるでしょう。

この程度の事ですぐに処分と言い出す防衛大臣や内局が問題なのは当然ですが、それに無抵抗な制服組上層部も問題です。

2010年2月11日 (木)

ライダーは対ステルスセンサーになる?

宇宙航空研究開発機構が、晴天乱流を検知するシステムの開発を、米ボーイング社と共同で行うことが発表されました。
晴天時の乱気流検知、米と共同開発へ」(読売新聞10年2月3日)

どうやってやるつもりなんだ?
と思ったのですが、電波の代わりにレーザーを使用するレーザーレーダー、「ライダー(LIDAR)」を利用するシステムだということです。

このシステムは、空中の水滴やちりなどに当たって反射してくる光をとらえて、晴天乱流を検知するとのことですが、ライダーはレーダーに比べ波長が短いため、こういった事に向いているものです。
学術用途以外は、どこまで実用になるのかと思っていましたが、ここまで話が進んでいるとなると大分実用的なものになりそうです。

晴天乱流の検知ができるとなれば、航空安全上すばらしい事なのですが、今回の記事を見て思った一つことがあります。

それは、晴天乱流を検知できるレベルであれば、航空機の飛行によって乱される空気の動きも検知できるのではないか。
とすれば、ライダーを使ってステルス機の検知もできそうな気がします。

ライダーによってステルス機を直接捜索することに関しては、レーザーが電波と同じ電磁波であり、機体表面で正規反射されれば、機体表面の工夫だけで電波用の4ローブのRCSパターンを活用されてしまうでしょうが、エアロゾル利用の技術なら、簡単には回避できるとは思えません。

もっとも、アクティブ捜索をする時点で逆にこちらが見つかりそうですが……
今のところ、15km程度の捜索範囲しかないようですし。

まだまだ発展途上の技術なので、ライダーでの対ステルスを語るのは鬼でなくても笑いそうな話ですが、可能性としては面白そうな気がします。

2010年2月 9日 (火)

無人機研究システム墜落

評論するような内容ではないですが、一応ニュースなので

硫黄島で自立飛行の研究を行っていた無人機研究システム4機中の1機が墜落したそうです。
無人偵察機のエンジン停止=飛行試験中、落下処理-防衛省」(時事通信10年2月10日)

記事の数値が変な気もしますが、どの辺りで故障が発生したのか不明なので、追及しても意味はないでしょう。

墜落の理由はエンジントラブルのようなので、機体が減ることでスケジュールが狂う事は兎も角として、根本的な問題ではありませんから、特に気にする必要はありません。
また同種のトラブルが起こるようなら話は違ってきますが……

2010年2月 6日 (土)

なめられてる?

1月28日と29日、ロシア機に対して、連日のスクランブルがかかってます。
防衛省資料「ロシア機の沖縄方面への飛行について
防衛省資料「ロシア機の日本海における飛行について

2日目(29日)の飛行は、機体が明らかに偵察機型ですし、収集飛行として納得のできるルートですので、取り立てて言うことはないのですが、1日目(28日)の飛行はちょっとカチンと来ます。

Ws000006
防衛省資料より

飛行ルートを見れば、一目瞭然なのですが、先島地方をぐるっと一回りしており、あからさま挑発的です。
もっとも、日本列島を一周するような飛行に比べればましかもしれませんが……

この飛行は、機種がTU-95ベアでした。
写真から詳細な型を判別するほどの知識はないのですが、パッと見に偵察型特有のアンテナなどは見当たらず、後方銃座も残っておりどうやら爆撃機型のようです。

爆撃機型となると、レーダーサイトに向けたジグザグ飛行を取っていればミサイル攻撃訓練とも思えるのですが、それらしき進路はほとんど取っておらず、どうやら単なる航法訓練のようです。

ロシア政府として意図的に日本を刺激したい理由も見当たらないので、末端部隊による通常訓練なのかもしれませんが、これを末端に自由にやらせている神経は、日本人とすれば、ちょっと常識の範囲外です。

これが彼らの常識なら、同じことをしても気にもならないでしょう。
空自も、北方領土を一周するような訓練をやりましょう。
(ヤラネエだろうなあ)

2010年2月 3日 (水)

書評「萌えよ!空戦学校」

今までにも軍事研究誌などの雑誌記事に関係した記事は書いてましたが、ミリタリー関係の書評・DVD評なんかも書いてゆきたいと思ってます。

という訳で、第1回は萌え系ミリタリー本として有名になった「萌えよ!戦車学校」の航空版「萌えよ!空戦学校」を取り上げてみます。


初版発行が2008年の3月なので、もう2年近く前の本ということになりますが、内容としては航空機が初めて戦争に使われた頃から現代まで網羅した内容ですので、内容的には古いということはありません。

ただし、空戦学校というタイトルなので、空戦技術の本かと思っていると拍子抜けという印象になります。というのも、空戦技術については第5講において、その歴史的変遷とともにチョビッと言及されているのみだからです。
特にBVR戦闘など、現在空戦が行われたとすれば生起すると思われる戦闘様相についてはほとんど言及さえないので、この点は非常に残念です。まあ、マニアを含めて「空戦=ドッグファイト」という認識が強いでしょうから、無理なからぬことかも知れません。

本書の内容は、タイトルよりその副題が正確です。副題は「空の王者・戦闘機のすべて!」となっており、戦闘機の解説本だということが分かります。
第1講が「戦闘機の種類と分類」、第2講が「戦闘機の構造と機能」となっていて、この前半2講で、戦闘機の基本的な理解ができるようになってます。

第3講と第4講は、過去の主要な戦闘機の紹介で、本書の中核となっている部分です。
内容も平易に書かれていましたし、正直なところを白状すると、私の知識はベトナムより前がほとんど真っ白でしたので、そう言う意味では良い本でした。

ただ「萌え」の部分は、本文とは別にコラム的なイラスト付き解説があるだけで、あまりうまく本文と連動していないことが残念なところです。(それをやろうとすると編集が大変なのでしょう)
それに「萌え」の度合いなどはNCって事で。

総じて、これからミリタリー系航空を勉強しようという人には良い本でしょう。既にマニアな方にはオススメしません。

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