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2010年1月 4日 (月)

違法となる行為の解説 その2

続いて例2です。
例2:治安出動中の隊員が、手配中のテロリストを発見し、警告を与える余裕があるにも関わらず、即座に射撃し死傷させた場合

このケースは治安出動中ですから、例1において書いた権限に加えて、次の条文が関係してきます。
・第八十九条(治安出動時の権限)
・第九十条(治安出動時の権限)
・第九十一条(治安出動時の権限、ただし基本的に海自だけ)
このケースで実際に適用が問題となるのは、警察官職務執行法の準用により、警察官同様の行動を可能とする第八十九条か、もしくはこのテロリストが危険な武器を所持しており、「武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合 」について言及した第九十条1項の三ということになります。
既に手配中とは言え、直ぐにテロを行う可能性が高いのでなければ、警職法の準用を定めた第八十九条に基づき、職務質問等をして逮捕に務めることが必要です。例のように警告もせずに即座に死傷させれば当然アウトです。
もしこのテロリストが、爆弾や化学兵器と言った危険な武器を所持している可能性が高く、手にはそのスイッチを握っていると思われるような場合には、第九十条の規定「暴行又は脅迫をし又はする高い蓋然性があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合 」に該当するとして即座に射撃することも適法となる可能性もありますが、この場合でも第九十条2項により正当防衛または緊急避難であるか、あるいは「当該部隊指揮官の命令」により武器を使用しないといけない事になっています。
この例では、当該部隊指揮官の命令が必要である可能性が高く、「当該部隊指揮官」がどのレベルの指揮官であるのかについては裁判で争点となることが予想され、裁判官によっては相当に上のレベルを求められる可能性もあるので、即座に射撃する場合には、自分がその指揮官に該当すると主張し、それが通らないといけないわけですから、普通に考えるとちょっと厳しいと思われるわけです。
また部隊指揮官の命令ではなく、正当防衛もしくは緊急避難に該当と言うなら、条件はより厳しくなってしまいます。

最後に例3です。
例3:防衛出動中の隊員が、降服の意思を示した敵兵を射撃し死傷させた場合

なお、ここでは国際法については特に触れませんが、このケースは当然国際法にも触れる場合で、その国内関係法規としては「武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律」があります。
さてこの例3の場合、関係する自衛隊法の条文は例1のものに加えて、次の5つです。
・第八十八条(防衛出動時の武力行使)
・第九十二条(防衛出動時の公共の秩序の維持のための権限)
・第九十二条の二(防衛出動時の緊急通行)
・第九十四条の七(防衛出動時における海上輸送の規制のための権限)
・第九十四条の八(捕虜等の取扱いの権限)
この例の場合、敵兵ということが分かっているケースですから、具体的に適用が問題となる条文は第八十八条(防衛出動時の武力行使)となります。
この条文でも、「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守」するとなっていますし、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」となっているため、必要であるはずのない降服の意思を示している場合には射撃により死傷させて良いはずはありません。
ただし、完全な降服の意思を示しているわけではないことが疑われる場合には、死傷させても適法となる可能性もあります。
つまり、「武器を捨てろ」などの命令に従わない場合などです。ただしその場合でも合理的に必要と判断される限度内に限られますから、指示に従わない場合(もちろん理解可能な言語で警告することは当然)であっても、小銃を高く掲げているなど、直ぐに攻撃に移れる姿勢でないのに胴体や頭部を撃つなどすれば違法とされる可能性は十分にあります。

さて、詳細を語りだすと切りもありませんのでこの程度に留めておきますが、ここで書いたことがその通りであるとは、実は誰も明言できません。(逆に、間違っていると断言できることもないと思いますが)
それは端的に言えば、判例がないからです。

では、お前の言うことなど信用できるか!、と言われてしまいそうですが、こう言った問題に関しては、自衛隊の中でそれなりの立場で訓練指導をする役職だったこともあるので、一定の妥当性はあるだろう、という程度に思っていただければと思います。

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