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2010年1月

2010年1月 1日 (金)

違法となる行為の解説 その1

あけましておめでとうございます。

年末にも更新するつもりだったのですが、インフルではないものの、カゼでダウンしておりました。

みなさんもお気をつけください。

さて、先日の記事「自衛隊による殺人の根拠」で書いた、違法行為として訴追を受けそうな行動の例として挙げた3点について、解説をして欲しいというコメントがあったので、今回はこれを書いてみようと思います。

まず以前に挙げた3つの例です。
例1:自衛隊施設にテロ行為で損害を与えた犯人が基地外を逃走中に、背後から銃撃し死傷させた場合
例2:治安出動中の隊員が、手配中のテロリストを発見し、警告を与える余裕があるにも関わらず、即座に射撃し死傷させた場合
例3:防衛出動中の隊員が、降服の意思を示した敵兵を射撃し死傷させた場合

この3つは、行動命令の発出状況で場合分けをした例となっています。
つまり、例1はなんら行動命令が発出されていない状況ですし、例2は治安出動命令下、例3は防衛出動命令下となっています。

例1から見てみます。
例1:自衛隊施設にテロ行為で損害を与えた犯人が基地外を逃走中に、背後から銃撃し死傷させた場合

これは、なんら行動命令を受けていない状況ですから、自衛隊法第6章の「自衛隊の行動」には、関係する条文がありません。そして、権限としては出動命令を受けていないわけですから、自衛隊に常に与えられている権限だけが使えます。条文としては、同法第7章の「自衛隊の権限等」の内、次の3点が関連条文となります。なお第九十六条条も行動任務とは関係有りませんが、この条文は警務隊にしか関係しません。
・第八十七条(武器の保有)
・第九十五条(武器等の防護のための武器の使用)
・第九十五条の二(自衛隊の施設の警護のための武器の使用)
この例の場合、自衛隊施設にテロ攻撃で被害を与えたわけですから、権限に関する条文で実際に適用されるのは九十五条の二、いわゆる施設警護のための武器使用になります。
そして、この例に関して、この条文の中で関係する部分は、危害許容要件である刑法第三十六条又は第三十七条に該当するか、つまり正当防衛か緊急避難に該当するか、そして「事態に応じ合理的に必要と判断される限度」内かという点になります。
例の場合では、既にテロ攻撃は完了して逃走中なわけですから、自衛隊が武器使用によってテロリストを死傷させても、テロ攻撃自体を防ぐことはできません。
そのため、逃走中のテロリストに対する攻撃を正当防衛(
急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛)や緊急避難(自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避ける)とすることは出来ません。事態に応じていると言うのも無理があります。
おまけに、条文には「当該施設内において」という記述もあり、攻撃対象が既に基地外の場合ちょっとグレーでもあります。(自衛隊員も基地外に出ていれば完全にアウト)
自衛隊は武器を持って警備しているのだから、それ相応の事はできるハズ、と思っている一般の方にはちょっとショックかもしれませんが、実際にはこの程度でも違法になります。

その2へ続く

2010年1月 4日 (月)

違法となる行為の解説 その2

続いて例2です。
例2:治安出動中の隊員が、手配中のテロリストを発見し、警告を与える余裕があるにも関わらず、即座に射撃し死傷させた場合

このケースは治安出動中ですから、例1において書いた権限に加えて、次の条文が関係してきます。
・第八十九条(治安出動時の権限)
・第九十条(治安出動時の権限)
・第九十一条(治安出動時の権限、ただし基本的に海自だけ)
このケースで実際に適用が問題となるのは、警察官職務執行法の準用により、警察官同様の行動を可能とする第八十九条か、もしくはこのテロリストが危険な武器を所持しており、「武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合 」について言及した第九十条1項の三ということになります。
既に手配中とは言え、直ぐにテロを行う可能性が高いのでなければ、警職法の準用を定めた第八十九条に基づき、職務質問等をして逮捕に務めることが必要です。例のように警告もせずに即座に死傷させれば当然アウトです。
もしこのテロリストが、爆弾や化学兵器と言った危険な武器を所持している可能性が高く、手にはそのスイッチを握っていると思われるような場合には、第九十条の規定「暴行又は脅迫をし又はする高い蓋然性があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する適当な手段がない場合 」に該当するとして即座に射撃することも適法となる可能性もありますが、この場合でも第九十条2項により正当防衛または緊急避難であるか、あるいは「当該部隊指揮官の命令」により武器を使用しないといけない事になっています。
この例では、当該部隊指揮官の命令が必要である可能性が高く、「当該部隊指揮官」がどのレベルの指揮官であるのかについては裁判で争点となることが予想され、裁判官によっては相当に上のレベルを求められる可能性もあるので、即座に射撃する場合には、自分がその指揮官に該当すると主張し、それが通らないといけないわけですから、普通に考えるとちょっと厳しいと思われるわけです。
また部隊指揮官の命令ではなく、正当防衛もしくは緊急避難に該当と言うなら、条件はより厳しくなってしまいます。

最後に例3です。
例3:防衛出動中の隊員が、降服の意思を示した敵兵を射撃し死傷させた場合

なお、ここでは国際法については特に触れませんが、このケースは当然国際法にも触れる場合で、その国内関係法規としては「武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律」があります。
さてこの例3の場合、関係する自衛隊法の条文は例1のものに加えて、次の5つです。
・第八十八条(防衛出動時の武力行使)
・第九十二条(防衛出動時の公共の秩序の維持のための権限)
・第九十二条の二(防衛出動時の緊急通行)
・第九十四条の七(防衛出動時における海上輸送の規制のための権限)
・第九十四条の八(捕虜等の取扱いの権限)
この例の場合、敵兵ということが分かっているケースですから、具体的に適用が問題となる条文は第八十八条(防衛出動時の武力行使)となります。
この条文でも、「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守」するとなっていますし、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」となっているため、必要であるはずのない降服の意思を示している場合には射撃により死傷させて良いはずはありません。
ただし、完全な降服の意思を示しているわけではないことが疑われる場合には、死傷させても適法となる可能性もあります。
つまり、「武器を捨てろ」などの命令に従わない場合などです。ただしその場合でも合理的に必要と判断される限度内に限られますから、指示に従わない場合(もちろん理解可能な言語で警告することは当然)であっても、小銃を高く掲げているなど、直ぐに攻撃に移れる姿勢でないのに胴体や頭部を撃つなどすれば違法とされる可能性は十分にあります。

さて、詳細を語りだすと切りもありませんのでこの程度に留めておきますが、ここで書いたことがその通りであるとは、実は誰も明言できません。(逆に、間違っていると断言できることもないと思いますが)
それは端的に言えば、判例がないからです。

では、お前の言うことなど信用できるか!、と言われてしまいそうですが、こう言った問題に関しては、自衛隊の中でそれなりの立場で訓練指導をする役職だったこともあるので、一定の妥当性はあるだろう、という程度に思っていただければと思います。

2010年1月 7日 (木)

今年の本ブログ

新年の抱負といいましょうか、今年のこのブログについて書いておきたいと思います。

昨年は、ブログの移転というイベントがあったものの、通してみるとアクセスが徐々に徐々に増加していったと言ったところでした。
本来なら、ここで「今年はアクセスを倍増させるぞ」なんて言うべきところかもしれませんが、実際には今年もボチボチ行くつもりです。

と言うのも、ブログも趣味と言えば趣味ですが、自分自身としては、本当の趣味?は小説書きだと思っています。
そんな訳で、もう少し小説(と言っても次作はシミュレーションではない予定です)を書く方向に戦力を投入したいと思っておりますので、ブログの方はボチボチで行きます。

ですので、ブログを読んで下さっている方も、ボチボチお付き合い下されば幸いです。

2010年1月 9日 (土)

文句はないのだが・・・

防衛相補佐官に元統合幕僚会議議長の西元徹也氏が内定したそうです。
防衛相:補佐官に西元氏起用へ 元統幕議長」(毎日新聞10年1月5日)

防衛相補佐官は、自民党時代の昨年9月に森本氏が辞任した以降、引き受ける人が居なかったのか、ずっと空席となっていました。
そして民主政権になって始めての補佐官が内定した訳ですが、元制服トップを据えることになるようで、純粋に人選だけを見れば、別に文句を付けるようなものではありません。

ですが、筋違いな気もします。
補佐官が置かれた契機は、不祥事でしたが、置いた趣旨は、より広い観点から防衛政策について助言を聞くためだったハズです。この点から言えば、元制服を補佐官にしても、あまり意味はないはずです。
そして何より、元制服を補佐官に置くぐらいなら、現役制服組の意見をもっと良く聞くべきです。
違ってますか?
北澤防衛相殿

2010年1月11日 (月)

戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会の中間取りまとめ

戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会の中間取りまとめが公表されてます。

中間取りまとめ概要
中間取りまとめ(本文)
中間取りまとめ(参考資料)

概要を更に要約すると、平成23年を最後とするF-2の生産終了以降、防空作戦の中核となる戦闘機に関して、国内の生産技術基盤が喪失・低下する懸念がある一方、それらは戦闘機の運用上、国内に必要なものであり、研究開発ビジョンの策定と共に、維持向上施策を検討・推進する必要があるとなっています。
国内の戦闘機生産技術基盤を、戦闘機の運用上必要なものだと認めていることは重要なポイントです。これは、単に(輸入で)購入すれば、即運用できるものではないと言うことです。
ただし、その維持向上施策は「検討・推進」される事になっており、最終的にはどうとでもできるあいまいな結び方であるため、検討したけどやはり止めましたという結果になってしまう可能性も残されてます。
(実に官僚的だ)

その他、細部で気になった点をいくつか上げておきます。

まず、防衛生産技術基盤の意義ですが、次の5つと捉えています。
①防衛装備品の供給・運用支援の基盤
②潜在的な防衛力としての抑止効果
③バーゲニング・パワーの源泉
④日本の国力の一部
⑤国内の他の産業への経済波及効果を有するもの
③のバーゲニングパワーの源泉について、認識する事は必要ですが、おおっぴらに口にするのはどうかと思います。
バーゲニングパワーの源泉というのは、輸入の交渉をする際、輸入ではなく国産というカードも持っていますよ、という一種のブラフとして使うという意味です。
確かに、そういう意義はありますが、これを言ってしまったら、国内メーカーはやる気を失ってしまうのではないかと懸念されます。

問題点ではなく、むしろ国内の生産技術基盤によるプラスの影響として、注目すべきトピックも載っています。
2007年11月の米国におけるF-15墜落による影響から日本を含め全F-15が飛行停止になりましたが、米国ではこれが4ヶ月にも及んだものの、日本では開発等で培われた解析技術等により僅か約2週間で飛行を再開したとされています。

また、具体的数字として、F-2の生産中断に伴い、関係技術者のうち約7割が散逸(他事業部、他部門等への配置転換等)する可能性に言及しています。

最後に、この取りまとめ全体を通じて、最も問題じゃないかと思った点を書いておきます。
それは、全23ページ(本文)に及ぶこの報告書に、FXのエの字も出てこないことです。
最近FXとしてF-35が有力という情報がちらほらと出ていますが、防衛省として確定の情報は出ていません。
ですが、この報告書でFXについて何ら言及がないということは、既にFX選定からラ国が可能な機種は事実上脱落してしまっているのかもしれません。

2010年1月13日 (水)

北沢防衛相が武器輸出3原則見直しに言及

かなり意外で、驚かされるニュースがありました。
武器輸出3原則見直し、防衛相が前向き発言」(読売新聞10年1月12日)

北沢防衛相が防衛産業の業界団体の会合において、武器輸出3原則について「そろそろこういうものについても基本的な考え方を見直すこともあってしかるべきかな、と思っている。鳩山内閣のなかでしっかり議論しながら考えていきたい」と述べたそうです。

自民党時代でも、防衛相を含む閣僚がここまで踏み込んだ発言をしたことはなかったと思います。正直驚きです。先日記事を書いたばかりの戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会の報告なんかが効いたのかもしれません。
ただし、早速首相から「口が軽い」とお叱りを受け、発言をトーンダウンさせてます。
防衛相は「口が軽い」」(ロイター10年1月12日)

もちろん客筋(売り先)は選ばないといけませんが、武器輸出3原則を緩和することは基本的に悪い点はあまりないと思っています。
装備品の取得維持コストが下がる可能性があることはもちろんですし、防衛協力のできる友好国が増えることもそうです。
マイナス面としては、アメリカに睨まれる事くらいでしょうか。アメリカのマーケットを食うほど売れればの話ですが。
装備品の性能がバレる事も懸念されますが、そもそも日本の開発や訓練環境を考えれば、早期からかなりの性能は諸外国の知るところとなるでしょうから、敵対しそうな国に売らない限り、問題になることも少ないと思います。

さて、では早速に皮算用として売れそうな武器についてちょっと考えてみたいと思います。

日本は航空機、装甲車両、艦船など大抵のものを作っていますが、以前から売れるとすれば、と言われてきたのはやはり誘導弾(ミサイル)でしょう。もちろん価格が下げられればの話です。
ただし、システムとして完結していないモノはまず無理でしょうから、機体の対応が必要な航空機搭載ミサイルなどはほとんど目がないと思われます。
となると、可能性のあるものとしては、SSM-1や中SAM、そして中距離多目的誘導弾辺りでしょう。
信用が付くまでは高額商品の販売が厳しい事を考えれば、最有力はシステムとして小ぶりな中距離多目的誘導弾かなと思います。

中古品としては、アメリカからの横槍が入らなければ、海自の護衛艦は捌ける可能性があるかもしれません。中古の戦闘艦艇はマーケットがありますから。ただし、海自の護衛艦は中古艦艇を欲しがる国の需要からすると、ちょっと大きすぎるようにも思えます。フリゲート程度の方が売り易いでしょうね。

そして、これら以上に売れるんじゃないか、イヤ売れて欲しいと思うのはUS-2、特にその消防飛行艇バージョンです。
これについてはUS-2のウィキペディアにも言及があり、新明和が武器輸出3原則の緩和を視野に入れ、営業活動(航空ショーへの出展など)を行っていることも書かれています。
セットになる消化剤についても良いモノが作られているそうですし、何より完璧なニッチ商品なので、多少高価であっても売れる可能性があります。世界中どこを探してもアレだけ機体規模が大きく(よってペイロードも大きい)、STOL性など性能も高い機体は他にありません。
異常気象の影響などもあり、大規模な森林火災のニュースが流れることも珍しくないですから、活躍の場は少なくありません。

ニュースでは北沢防衛相の念頭に何があったのか分かりませんが、是非実現して欲しいものです。

2010年1月16日 (土)

身幹順

ちょっと最近重くて硬い話ばかりだったので、ちょっと軽いネタを

ユーチューブを見ていて、一つ思い出した事がありました。
それは、自衛隊に入って最も違和感を感じたチョットした事実です。

それは、自衛隊では、小学校から慣れ親しんだ背の順での整列が、全く逆だということです。
つまり、背の順に整列する際、小さい順に並ぶのではなく、大きい順に並ぶという事です。

最初に徹底して叩き込まれるので、しばらくすると違和感を感じなくなったのですが、最初は猛烈に感じました。
大体において、大きい順にならぶと、目の前の人は見えますが、その前の人は非常に見え辛く、整列し難いのです。
どう考えても合理的ではありません。

それでも、自衛隊では背の順での整列は大きい人から順にならぶのです。
ちなみにこれを身幹順(しんかんじゅん)と呼びます。

なぜそうなのか、未だに知りません。
知っている人がいたら、誰か教えてください。

2010年1月17日 (日)

ASWOCの図面が公開されたこともありますから

週刊オブイェクトさんが「反戦平和運動と利敵行為の線引き」として船橋市議会議員が習志野演習場新火薬庫の設計図面などについて、説明を求めていることを書かれています。

JSF氏の言うとおり、保全上好ましくないことこの上ないのですが、過去には火薬類取締法等で構造がある程度推定できる火薬庫どころか、極めて秘匿性の高いASWOC(対潜水艦戦作戦センター)の図面などが公開されてしまった事もあります。
国の敗訴が確定/最高裁が上告棄却/那覇市情報公開訴訟」(琉球新報2001年7月13日)
島田さんに公開/ASWOC非公開文書 」(琉球新報2001年7月16日)

それを考えれば、市議とすればこのくらい説明されて当然と思っているかもしれません。
相変わらず、防衛に関しては世界の非常識が常識としてまかり通ってます。

2010年1月19日 (火)

googleの決定は日本の防衛にも影響する?

軍事ネタとは言いかねますが、先週のgoogleによる中国からの撤退も視野に入れた「自主」検閲の中止は興味深いニュースでした。
「これ以上、検閲を容認しない」 グーグル、中国からの全面撤退も視野」(産経新聞10年1月13日)

中国から撤退する可能性のある決断をするとは、利益を上げ続けなければ生き残れない私企業にとって、非常に勇気のある事だと思います。
1月14日配信のウォール・ストリート・ジャーナルによると、この決定は共同創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏が深く関与したものだそうです。
米グーグル、中国撤退をめぐりトップの意見が衝突」ブリン氏は、「道徳的であれ」というモットーを忠実に守ってきたそうですが、そうであれば検閲を否定することは当然でもあります。
ただし、今回の行動は、yahooやMSが追随することを政治的に誘導し、中国への関与が大きいライバルの追い落としを図っていると見えなくもありません。
ロイターの報道では、yahooやMSの追随の可能性はあるものの、両社の中国市場への関与が大きいことから同様の判断は難しいとも書いています。
米グーグルが中国撤退を検討、マイクロソフトとヤフーも追随か」(ロイター10年1月13日)

しかし、もし両社が追随するようなことになれば、一党独裁が続く中国の政治体制に大きな影響を与える事態に発展しないとも限りません。
それは、日本の防衛にも大きな影響のある事態です。期待を持って見ていたいと思います。

2010年1月22日 (金)

乗客トラブルで戦闘機がスクランブルするか?

アメリカで、乗客が機内で乗務員とトラブルになった結果、戦闘機が緊急発進する事例が発生したそうです。
乗客トラブルでF15戦闘機2機発進 米西部発の航空機」(産経新聞10年1月7日)

結果的には単なるクレーマーだったようで、何はともあれなのですが、大方の感想としては、そこまでするのか?というニュースでしょう。
そこで、日本でだったらどうなるのかについて、ちょっと考えて見ます。

今回の件は、昨年末に爆破未遂事件があったばかりな事もあり、乗客がテロリストである可能性も考慮したと思われます。
翻って、日本の周辺で、ハイジャックなどのテロが起きた際、戦闘機を緊急発進させる事を定めた明文の規定は公開されてません。
ただし、国交省や警察と防衛省・自衛隊との間で秘密の協定等が結ばれている可能性はあり、自衛隊が緊急発進し、対処してもおかしくはありません。

洞爺湖サミットの際、ハイジャック機を撃墜することを含めて事態対処の検討をすると報じられましたが、結局、事態対処の緊急対処方針が作成、閣議決定されることもありませんでした。
(当事の報道は、既にネット上から消えてますが、コピペがあったので末尾に転載しておきます。)
しかし、これを持って自衛隊が何もしない方針だと考えるのも早計です。と言うのも、別にハイジャックを緊急事態として規定しておかなくとも、法的には対処可能だからです。

自衛隊が、戦闘機を緊急発進させる態勢を整えているのは、自衛隊法第84条の規定に基づき、対領空侵犯措置を行うためです。
対領空侵犯措置は、外国の航空機が航空法などの法令に則らずに我が国の領空に侵入することを阻止するための条文で、ハイジャック機、特にJALやANAと言った国内航空会社が運行する航空機に対しては何ら行動を採り得ません。
ですが、対領侵措置に備えて地上待機している戦闘機を「任務転用」して、自衛隊法第79条の2に規定される「治安出動下令前に行う情報収集」として行動させることも可能(内閣総理大臣の承認などが必要)ですし、防衛省設置法第4条18号の規定により「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」として行動させることも可能(大臣の命令さえ必要なし)です。
特に、この調査・研究というのは、とても使い勝手の良い条文(99年の北朝鮮工作船事件など、微妙な事態に良く使われる)で、武器を使用でもしない限り、何でも調査・研究で済ませられます。
その後、本当に撃墜する必要が出てきたら、その際だけ内閣総理大臣が治安出動の命令を出せばOKです。

ですので、国交省からハイジャックなどの可能性があるという通報があれば、即座に自衛隊機が緊急発進することになっている可能性も否定できません。
と言うより、実際そうすべきでしょうし、こう言ったことは、テロを抑止するためにも事前に公表しておくべき事です。

逆にもしそうなっていないとすれば、それは政府としての怠慢と言っても良いと思います。

********************
航空テロは撃墜検討、洞爺湖サミットで政府
1月24日3時4分配信 読売新聞

 政府は、7月7~9日に開かれる北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)で、ハイジャックされた航空機がサミット会場を標的にする航空テロを想定、警告に従わない場合には治安出動に基づいて航空機を撃墜することなど、事態対処について検討する方針を固めた。

 防衛省筋が23日、明らかにした。2001年の9・11米同時テロの後、英独などサミット開催国は、会場周辺に空軍機や対空ミサイルを配備するなど最高レベルのテロ対策を講じており、日本も万全を期すことにしたものだ。

 サミットを標的にした航空テロの防止について、国土交通・防衛・警察など関係省庁は、〈1〉サミット会場周辺に飛行禁止空域を設定〈2〉警察官を民間航空機に搭乗させるスカイマーシャルの強化〈3〉空港での手荷物検査の強化--などの実施を決めている。だが、9・11テロのように民航機がハイジャックされ、重要施設に激突する大規模テロへの対応は、何も決まっていない。

 防衛省・自衛隊では昨秋から、9・11テロで米国防総省に衝突したアメリカン航空77便を事例に研究を重ねてきた。具体的には、ハイジャックが確認された時点で、航空自衛隊のF15戦闘機が千歳基地(北海道)を緊急発進し、ハイジャック機に対し近傍の空港への着陸など警告を繰り返す。それに従わず、ハイジャック機が衝突1分前の地点まで到達した場合には、射撃命令を発して撃墜することが検討されている。

 しかし、国内の空港を離陸した航空機がハイジャックされた場合、衝突するまで長く見積もっても30分しかない。あらかじめ自衛隊が行動するために手続きを決めておかなければ、テロを阻止することは極めて難しいというのが結論だ。

 こうした事態に陥らないためには、ハイジャック機による大規模テロを、政府は、武力攻撃事態対処法の「有事以外の緊急事態」とし、事前に治安出動を前提とした緊急対処方針を作成、閣議決定する必要がある。さらに対処方針は、20日以内に国会の承認も受けなければならない。防衛省幹部は「あくまでも、政府が撃墜もやむを得ないと判断した場合に備え、現行法に基づいて何ができるのか、法的な問題点を中心に検討している」と説明する。
********************

2010年1月25日 (月)

旧ソ連による勲章授与が名誉回復?

ゾルゲ事件で逮捕され獄死した宮城与徳に対して、旧ソ連が授与を決めていた勲章がロシアで発見され、遺族に手渡されたそうです。
ゾルゲ事件で獄死、画家の遺族に勲章伝達 ロシア大使館」(朝日新聞10年1月14日)
ゾルゲ事件:宮城与徳の勲章、モスクワで発見 遺族に」(毎日新聞10年1月13日)
ゾルゲ事件の画家にロシア勲章=宮城与徳やっと「名誉回復」」(時事通信10年1月13日)
与徳の勲章ロシアで発見 初確認 親族に授与へ」(沖縄タイムス10年1月13日)

ゾルゲ事件は、太平洋戦争直前に日本の情報をソ連に流していたとして、ドイツ紙の東京特派員リヒャルト・ゾルゲ、朝日新聞記者尾崎秀実、そして前述の宮城与徳らが逮捕された事件です。その情報は、独ソ戦に非常に大きな影響を与えたとされています。

要は、宮城与徳やゾルゲらはスパイであり、日本の国益にマイナスの影響を与えた訳です。
旧ソ連とすれば、勲章を与えるのも尤もな話ですが、日本が評価する理由はありません。
ですが、今回のニュースを報じた4紙とも、非常に好意的な記事になってます。
その理由としては、宮城与徳が反ファシズムの理念を持っていたという事があるそうですが、反ファシズムは良しとしても、日本の共産主義化を狙っていた以上、とても評価などできるはずはありません。
旧ソ連のために働いた事実によりロシアから勲章を授与されることをもって、名誉回復だなどと報じる時事通信などは、こいつ等は何者だ?と思わざるを得ません。

宮城与徳本人ではなく、遺族まで白眼視されたことは恥ずべき事だと思いますが、旧ソ連の英雄と称えられた事を、日本で同じように評価する新聞の立ち位置とは、一体どんなものでしょう。

2010年1月28日 (木)

うそ発見器

防衛省は、秘密を含む情報に接する隊員を対象にして、任意の内部調査の段階でもポリグラフ(うそ発見器)検査受けるという旨の誓約書を書かせているそうです。
防衛省:「うそ発見器検査」明記 隊員から誓約書」(毎日新聞10年1月20日)

07年に起きたイージス艦情報流出など、情報漏えいが相次いだための措置だそうですが、確かに昔は無かったですね。
昔は、家族構成や部外で所属している団体、交友関係などを書いて提出させられた身上書だけでした。
B4版で3枚もの用紙で「ここまで書くのか。めんどくせ~」と思うものでしたが、ポリグラフの誓約書まで付いたんですね。
いやはや大変です。
しかし、仕方ないでしょうね。

誓約書の提出を拒んでも処分の対象にはならないが、秘密を扱う部署には置かないそうです。
昔から、上記の身上書の審査で落ちても同じことでしたが、実際にこうなると配置される部署は非常限定されます。一切秘を扱わない部署なんて、実際にはほとんどないからです。

後方部門だったら大丈夫じゃないか?、と思う方もいるかと思いますが、秘とは秘密の文書だけではなく、秘の物件というものもあります。分かり易い例を言えばIFF(敵味方識別装置)の部品なんかです。
補給関係の職域なんかでは、当然こういったものを取り扱うことになるので、秘を扱える資格(適格性)は必須です。

もし入隊時から適格性がなければ、最初からそういった部署に配置されるので良いのですが、途中から失うことになると(稀にいます)職種を変らざるを得なくなったりして、かなり大変です。
ポリグラフ検査を受ける宣誓書記入を拒否し、職種転換した人なんかもいるのかもしれません。

それにしても、毎日新聞の記事は防諜の必要性を理解していないというより、防諜を妨害しようとする意図でもあるんでしょうか。
問題の結びの部分だけ転載しておきます。
********************
 公務員の労働問題に詳しいILO(国際労働機関)の中嶋滋理事は「秘密情報を扱う公務員は他省庁にもいるが、同様の措置は考えられない。ポリグラフ受検も含む誓約書は実質的な強制力があり、精神的苦痛を伴う相当なプレッシャーをかけられ問題だ」と指摘している。
********************

それが仕方がない仕事なんですってば。

2010年1月31日 (日)

下地島空港活用時のMD態勢

ブログを書いていて、悔しかった記事というのがあります。
最近では、昨年の10月28日に書いた「普天間の代替候補地条件」です。この記事自体は、それなりに閲覧者も多く、注目していただきましたし、2ちゃんにコピペされた内容が軍事板常見問題&良レス回収機構さんに取り上げてもらうなど、そこそこ良い反応があったと思っています。
しかし、週刊オブイェクトさまが12月21日に掲載した記事「なぜ普天間基地移設先は沖縄県内でなければならないのか」は、移転先選定の条件がヘリの航続距離にあるという点を指摘した点など、記事の主旨がほぼ同じだったのですが、コメント数が900を超えるなど非常に注目されてました。
もちろん、オブイェクトさまと私のブログでは普段の閲覧者からして桁が2つも違うので当たり前と言えば当たり前ですし、主旨は同じようでも、正距方位図法の地図を付けるなど詳しい解説をしていたので、単純に悔しがるのではなく、自明の事のように思えても詳しい解説がいるんだなあと感心することに致しました。
考えてみれば、志方俊之氏のような専門家でも、普天間とシュワブ沖の必然性を「地政学」というあいまいな言葉で述べているだけなので、具体性をもった説明にするためにはもっと解説しなければいけなかったですね。

と、実に長くなってしまいましたが、ここまでは前置きです。
前掲の私の記事でも書きましたが、下地島の活用は台湾への兵力投入拠点として位置的には悪くないものの、SRBMへの備えや防空戦力も必要になります。
では、具体的にどの程度の備えが必要なのか考えてみようかと思いましたが、防空戦力の必要規模算定は非常に難しい作業です。というのも、航空戦力は上がってしまえば強力なものの地上にあっては全くの無力である等、シミュレーションを行う上で、ちょっとしたパラメーターの違いで結果が全く違ってきてしまうからです。

そこで、今回の記事では、SRBMに対して日本の対抗戦力で下地島の機能維持が図れるのかについて見てみます。

まず脅威認識ですが、中国沿岸から下地島まで距離はおよそ500kmですから、中国が保有するSRBMの内、下地島に攻撃が可能な兵器はDF-11A及びDF-15となります。
DF-11Aは、射程500~700km、CEPが200m以内、DF-15は、射程200~600km、CEPが150~500mです。(数値は共にMissile.indexより)
保有数は両者合わせ、既に1000を超えていると言われています。
両ミサイルについて、地図上でCEPを確認すると次のようになります。

Ws000003
DF-11A

Ws000004
DF-15
中国が核を使ってくるとは思えませんが、CEP内には、発射されたミサイルの半数しか落下しないものの、両ミサイルとも弾頭はHEだけではなく燃料気化爆弾やクラスターのようなサブミュニションも使用可能なため、効果範囲を考えると発射されたミサイルの内ほとんど全てを迎撃しないとならないでしょう。
中国のSRBMは、本来対台湾用ですから、下地島に対して使用するとしても一部しか振り向ける訳にはゆかないでしょうが、発射された全数を迎撃しなければならない命中精度を持っているということは結構キツイものがあります。

次にこちらの対抗手段ですが、ここでは自衛隊のPAC-3だけを考えてみます。
というのは、SRBMは、飛翔高度が百数十kmしかなく、SM-3では迎撃タイミングがあまりない可能性がありますし、中国と事を構えるとなれば、東京を射程に収めるDF-21にも備えなければならないため、イージスはそちらに回す必要性があるからです。加えて、SRBMを迎撃するには最低でも宮古島近海までイージスを前進させなければならないこともリスクです。
また、米軍のPAC-3については、本土から増援が来なければ嘉手納から動かす訳にはゆきません。
その一方で、沖縄以外の自衛隊PAC-3は、DF-21に対して十分な性能は期待できないので、PAC-3はほとんどを沖縄に持ってくることできます。

さて、では下地島を防護範囲に納めるPAC-3部隊の配備ですが、ブッシュなどは開墾整地するとすれば、地積的には1個高射群4個FU程度は十分に展開できます。
下地島、伊良部島はさんご礁のため硬い岩が多いものの比較的平坦ですし、宮古島南西部に展開してもフットプリント内に下地島空港を収めることができるからです。
次の図は、下地島、伊良部島、宮古島市南西と下地市付近に各1個FU(高射隊)を展開させた場合のフットプリント(防護範囲)です。

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ちなみにこの配置なら宮古島空港と平良港も2個FUで防護できます。(特に平良港は継戦能力の維持上重要です)

残る問題は、PAC-3のランチャーと弾数です。
PAC-3化される高射群でも、PAC-3化されるランチャーは各高射隊2個しかありません。今後PAC-3弾の取得が順調に進んだとしても、1個高射群あたり最大で128発となります。(リロードを無視した短時間での迎撃能力)
全高射群の保有ランチャーとPAC-3弾を下地島に持ってくる(高教隊、術科学校分を除く)と仮定すれば、384発です。(1個FUの運用可能ランチャー数は最大8個なので、全高射群分を下地島防護の高射群に持ってきても運用は可能です。)

この弾数で、対応可能なSRBM数については、撃墜確率と迎撃の再試行回数で決ってきます。
十分に有効な迎撃確率として、フットプリントを描く範囲を80%と考え、仮に迎撃確率を80%とします。そうすると1回の迎撃試行で20%を打ち漏らしますから、2回目の迎撃を試行するとすると、これに対する撃墜確率も80%となり、2回の迎撃試行を試みるとすると、合計した迎撃確率は96%になります。
96%の確率は、ほとんどを迎撃できるという数値ですから、2回の迎撃試行を行うとすれば、384発のPAC-3弾で、320発のSRBMをほとんど迎撃できることになります。

中国が下地島に振り向けられるSRBM数は、その時の情勢次第ですが、1000発以上あるとは言え、本来台湾用のSRBMを下地島に320発振り向けてもほとんど被害を与えられないとすれば、企図を断念させられる可能性は結構高いと思われます。
しかし、逆に言えば、保有の半数を下地島に叩き込むつもりになれば、下地島空港の機能は破壊されるとも言えます。

日本やアメリカが、沖縄本島まで戦場となるような衝突をしない限り、PAC-3を集中配備することで、SRBMだけを見れば下地島の機能維持は可能である可能性が高いと思われます。

なお先日、米国政府が台湾へのPAC-3売却を議会に通告しましたが、台湾の空港など重要防護目標についても同じような話になるため、中国としては頭の痛い話になるでしょう。

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