22年度政府予算案
22年度の政府予算案が出ました。
防衛省公開資料の方は、数字ばっかりで概要が掴み難いですが、財務省の資料にはそれなりに情報がまとめられていますので、こちらを見てみたいと思います。
まず、トピックと言えるものとして、先日の記事「22DDHは座礁、新戦車は擱座か?-防衛予算方針閣議決定」でヤバそうだと書いた22DDHと新戦車ですが、どちらも予算案には載りました。
どちらも閣議決定された「平成22年度の防衛力整備等について」において、「老朽化した装備品の更新(中略)を中心として防衛力整備を効率的に行う」とされたことを受け、装備品の更新(しらね他→22DDH、74式戦車→新戦車)として通ったようです。
ただし、新戦車の方は修正された概算要求よりも更に数が減り(16→13)、全て教育所要(部隊用ではなく富士学校用ということ)ということになったようです。
22DDHについては、どういうわけか概算要求よりも額が上がってます。もしかして友愛ボートの影響でしょうか?
しかし、こういった大物が通ることで、資料には載っていないその他の装備は軒並み削られたのではないか、という懸念があります。
続いて、事業仕分けの反映状況ですが、自衛官の実員増の予算計上を見送ることによって72億円、情報システム借料等を20%削減することによって52億円、国際平和協力センターの予算計上見送りによって25億円、それぞれ削ることなどで168億円を浮かせたことになっています。
情報システムの借料は20%も削るようですが、そうなるとメーカーサービスが低下するでしょうし、必要なシステムがちゃんと稼動するかどうか果たして疑問です。
次に、後方支援の充実として資料に記載されている事項として、装備品の修理の充実というものがあります。
対前年度55億となっており、一見すると良い内容にも思えますが、新規装備の購入を減らせた分、既存装備を長持ちさせるための措置ではないかとも勘ぐれます。
また、教育訓練の充実として、教育訓練器材の整備等が対前年度比41億となっており、こちらも一見すると良いじゃないかと思える内容なのですが、後でも書く一般物件費における教育訓練費は、対前年度比マイナス10億円となっているため、概算要求資料でも出てこなかったP-1訓練シミュレーターなどが大きく響いているだけかもしれません。
おまけにP-1シミュレーターなどは、まさかP-1の取得自体を削ったのではないか、とも思えてしまいます。(この資料にはP-1の取得自体についての記述はない)
研究開発については、研究開発の充実という項目が書かれており、対前年度比94億円増と悪くなさそうです。
果たしてホントに通すのか、と思った中SAM(改)開発も盛り込まれてますし、削れるはずの無いSM-3の共同研究も入ってます。
個人的にはあまり良くないと思うのですが、レーザー兵器の研究もあります。
なお、これに関しては、私の私見としてはより後発者利益を享受することができるよう、もっと先送りにしても良いのではないかと思ってます。
米軍絡み(思いやり予算など)については、仕分けでも削るような話にはなってなかったため、概算要求とあまり違いはなさそうです。
この資料でも、実質22ページ中、8ページも割かれており、重視されていると言う位置付けのようです。
さて、ここまでは主に表読みの部分ですが、それほど悪くないようにも思えます。
ただし、22DDHや新戦車のように記述のない装備品は相当削られている可能性がありますし、実員増が認められなかったのは部隊にとっては、影響がボディーブローのように効いて来る可能性があります。
そして、もう一つ気になるのは、経費の分類の中で書かれている一般物件費の内訳です。
一般物件費総額としては、前年度比195億円増となっており、良い数字と言えるのですが、中を見てみると基地対策経費等の増額が大きく、油購入費や修理費、そして教育訓練費などは対前年度比マイナスです。
つまり、部隊にかけるお金は減らし、民主党として票を稼げる周辺住民対策にお金を増やしたということです。
部隊は既に青色吐息ですが、来年度はもっと酷いことになりそうです。
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