事業仕分け後半 その2
後半その2は、国際平和協力センターからです。
結論から書くと、なんと廃止です。
「【事業仕分け】防衛省の「国際平和協力センター」は廃止 刷新会議」(産経新聞09年11月24日)
「PKO施設「廃止」、官庁営繕費削減…仕分け再開」(読売新聞09年11月24日)
これは、典型的なハコモノ事業として目を付けられた結果でした。
事業の内容を見てみると、国際平和協力活動等に携わる要員の教育施設の建設です。
行政刷新会議の資料
統幕学校や各幕幹部学校が所在する目黒地区に地上7階地下1階建ての施設を建設する事業なのですが、20年から事業は開始されており、既に3.2億円が投入されています。
この事業は、PKOだけでなく、対テロやイラク特措法、加えて友愛ボートにも必要な事業であるはずなのですが、上記各学校や目黒地区以外の既存施設でなんとかすべきということだそうです。
しかし、資料にもある各学校教場の使用率は高く、既存の利用では無理があると思われるのですが・・・、ハコモノ=悪という図式に押し切られた形のようです。
評価コメント及び評価結果
実に残念な結果なのですが、よく見ると防衛省としても反省すべき点はあるように思います。
施設は地上7階地下1階建てなのですが、1階は全てエントランスフロア、2階と地下1階の一部は展示フロアになる予定のようです。
エントランスは言うに及ばず、自由に出入りの出来ない目黒地区内に展示フロアが必要なのかと言われると、疑問と言わざるを得ません。要は、確かに1/3ほどは無駄に見えるのです。
防衛省も、もう少しコスト意識が必要なことは確かでしょう。
続いて、自衛官の実員増要求
これは早い話、定員と実員の乖離を是正し、充足率高めよう(それでも100%じゃない)というものです。
行政刷新会議の資料
資料を見ると、次の3点からこの事業の必要性が語られています。
1 多様化している脅威は予測困難性が高く、緊急募集等では対応できない。
2 本年4月の北朝鮮によるミサイル発射事案に鑑み高充足が必要(言い換えれば、4月は苦労したということでしょう。)
3 任務の拡大によって種々の問題が発生(事故増加の背景に充足率の低さがあるということか)
任務の拡大などで極めて必要性が高くなっている事業なのですが、これほど通すことが難しい事業も少ないです。
なにせ、今まで要求してこなかった以上、定員を充足しなくても良いと認めて来てしまったという事実があるからです。
来年度は、総人件費改革改革による純減が見込まれており、これによる影響が我慢の限界を超えたとも言えるのでしょうが、ロジックの構築が難しいことは確かです。
実際、結果は「来年度の予算計上は見送り」でした。仕分け人のコメント見ると、防衛計画の大綱や中期防が宙ぶらりんなことも影響しているようです。
評価コメント及び評価結果
しかしこの事業は、22年度は通らなくとも、継続的にしつこく要求すべき事業だと思います。実際、充足率の低さには苦労させられましたから。
なお、これに関して、要注意な事があります。それは、「後方部隊の民間委託の努力不足」などというコメントがあることです。
アメリカが後方をアウトソーシングしていることを見て言っているのかもしれませんが、遠い他国を戦場とし、後方部隊の多くが安全な地域にいるアメリカの真似を、全土が戦場となる可能性のある日本がしたら、必ず痛い目を見ます。
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コメントの中では、「後方部隊の民間委託」よりは「駐屯地の統廃合」の方が検討に値するかなと思いました。
リンク先で、他の資料も見ましたが、高齢化(曹士の3割が40代)はショックでした。
他の問題も、1つずつクリアできるものでもなさそう。根本的にやらないと、解決にならないみたいですね。
国民が、これまで有事がなかった事由に自衛隊の存在を認めてくれると、すべてが楽になるんですが。
投稿: 否丸 | 2009年12月 4日 (金) 10時56分
高齢化の問題は、かなり以前から言われていますが、ホントに難しい問題です。
背景には、終身雇用を基礎とした日本の雇用慣習があります。
高齢化を防ぐためには、早期退職を勧める必要があるものの、3、40代で有利な条件で再就職をさせることは不可能でしょう。
相当の国民の理解が進まないと、根本的な解決はできないように思えます。
投稿: 数多久遠 | 2009年12月 5日 (土) 18時03分